2009/1/23 | 修大学付属高校女子バレーボール部合宿中の草野恵さん(高1・15)死亡事件 証人(医師)尋問 | |
2009年1月20日(火)、この日は午前中、横浜地裁で、そのまま東急東横線、日比谷線で、霞ヶ関の東京地裁まで。 13時30分から103号法廷で始まる予定が、13時前に到着すると、正面玄関前に傍聴券配布の列があり、草野さんがその前で支援者らに声をかけていた。 103号法廷は大法廷なので、傍聴券は不用と思われたが、1度設定すると変更がきかないとのこと。草野さんが苦笑いをしていた。結局、裁判関係者席を除く80数傍聴席に対して、並んだのは20数人。全員に傍聴券が配布される。 それでも、遅れてきたひとには、入り口で係員から傍聴券が手渡され、裁判が始まる頃には、傍聴席の7、8割方は埋まっていた。 平成18年(ワ)15821、裁判官は今まで同様、裁判長は河野清孝氏、裁判官は小西洋氏、草野克也氏。 今回も前回の2人に続き、医師の証人尋問。ただし、今回は被告側の立場にたつ証人。 従って、主尋問は被告弁護士から始まった。 前回同様、医学的な専門用語が多く、どういう漢字を書くのかさえわからないものもあり、私の頭ではほとんど理解不能だった。 前回と同じく、法廷に脳のCTスキャンのフィルム画像が持ち込まれた。 ある程度理解できたは、急性硬膜下血腫には、単純型と複雑型と2種類あること。 単純型は、脳内の血管が切れてだんだん血がたまると、脳を圧迫し、脳器質に傷害が起きるということ。CTスキャンフィルムで見ると、血腫の幅がほぼ同じであることが特徴。 そして、複雑型は、脳そのものが圧迫を受け、傷ができる。血の量は多くない。血腫のない側に脳が移動する。CTスキャンを見ると、本来真ん中にあるべき脳が、移動しているのがわかる。脳そのものが脳腫脹、脳浮腫を起こし、かさをなすことで圧迫される。 恵さんの場合、典型的な複雑型。右側から左側に圧迫されている。フィルムで白くみえるところが血。脳は真ん中にあったものが移動している。血腫は先ほどできたことを示している。出血して間もないか、出血しつづけている状態。 受傷時期について、急性は3日以内。あ急性は3日から3週間。慢性は3週間を超えるものを言う。 出血が3日前か、当日なのかはわからない。恵さんがいつ脳外傷を受けたかははっきりしない。 脳幹部周辺に脳脊髄液が存在しないので、これは、急激な外傷性によるもの。 強い衝撃がなければ、架橋静脈断絶は生じえない。普通に生活しているような脳への衝撃ではない。 架橋静脈断絶は、たんこぶができていなくとも生じることがある。 たとえば、柔道などで畳の上にころんだ場合、畳が緩衝材になる。揺さぶられっこ症候群などで首から上が振られた場合。皮下血腫はできない。回転で強い物理的な衝撃が加わると、脳全体が傷つく。架橋静脈が断絶することがある。 架橋静脈が断裂していた場合、いつもよりボールに触れたなどということはありえない。 若いひとは脳の血管が切れにくいとは断定できない。 回転運動で脳実質に影響を与えた場合、軽い場合、脳震とうが起きる。重い場合、回転の衝撃で、脳が回転して急に止まる状態。加速度がかかり、脳障害を起こす。 脳震とうで、意識をなくす。前後を忘れることもある。回転の衝撃でけいれんを起こしたり、意識をなくす、前後のことを忘れている、健忘症があることもある。 脳内で出血すると、脳の表面に血液がたまる。脳の圧迫が進むと、受け答えがとんちんかんになったりする。食欲がなくなる、元気がないなどの症状が出る。 一旦、症状が出始めてから改善するということはない。 バレーボールは頭をぶつけやすいスポーツかといえば、そうは思わない。頭をぶつけやすいのは、ボクシングやラグビー、アメフト、柔道などの格闘技。 ふつうにバレーボールをやっていて、前のめりに倒れて、硬膜下血腫が生じるということは考えられにくい。 29日に恵さんが倒れて、過呼吸状態になったのは、熱失神ではないか。過呼吸と熱失神の違いは、知らないひとにとっては難しい。呼吸をつかさどる脳幹が損傷を受けて意識障害を起こした場合、袋をかぶせて意識が戻るということはありえない。 恵さんの場合は熱中症でも、軽い。熱痙攣も軽く、全身には及んでいない。熱疲労も中程度。水が飲める、自分で休んで回復できるのは中程度。 ****************** 私は医学的な知識がないので、話を聞いても非常にわかりにくかった。 証言にたった医師は、このようなことに慣れていないため、原告からの反対尋問に、「何が聞きたいのか、はっきり言ってくれなければわからない」「どこに結論をもっていきたいのか、わからないと答えられない」「ひとの記憶を試すようなことをする」などと、何度も怒りだすシーンがあり、限られた時間内での尋問が中断された。 なんとなく、私が理解した範囲では、恵さんが脳に強いダメージを受けたのは、亡くなった日の前日ではなかった。そのあと、日誌を書いたり、練習に参加して、いつもよりボールに触れたりしているのだから、救急車で運ばれる直前に起きた事故なのだから、もっと早く医者に見せるべきだったという前回の医師の主張は間違っていると主張しているのではないかと思った。 そして、恵さんがふらふらしたり、過呼吸状態になったりしたのも、一連の流れとして考えるのではなく、一つひとつがばらばらに生じたことであると言いたいのではないかと思われた。 なお、なぜ恵さんが受傷したのかについは、原告側が立証すべき内容として、言及されなかったと私は理解した。 尋問中の裁判長の様子は、以前にも感じたことだが、どうも原告側の弁護士に対して、表情に不快感が表れている気がしてならない。証人の抵抗に対しても、これは裁判の尋問であるから、聞かれたことだけに端的に答えるようにと注意するかと思えば、かえって、原告側の弁護士に、医師の意向に沿って、もっとわかりやすい質問の仕方をするようにと注意した。 被告側の弁護士と何らかのつながりがあるのか、あるいは人間的な好ききらいなのか。 あくまで私が感じた印象にすぎないが、時折見せる裁判長の表情が気になった。 多くの事故で、死の原因を特定することは難しいと思う。医学はいまだそれほど万能ではない。しかし、それが特定できなければ、裁判にさえならないというのはおかしいと思う。 恵さんは少なくとも、バレーボールの合宿に参加しなければ、死なずにすんだと思う。あるいは、別の学校の、別のコーチのメンバーだったら、死なずにすんだと思う。 万が一、避けられなかった事故だったとしても、やるだけのことをつくしたうえでと思えば両親も、納得はしないまでも、あきらめはつく。しかし、28日に頭をうったあと、あるいは29日の午前中に意識を失ったあと、医師の診断を受けさせていたら、死は免れたのではないかという思いは消えない。 次回は3月10日(火)、1時30分から東京地裁103号法廷にて。原告両親の人証調べの予定。 |
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