わたしの雑記帳

2007/5/27 保育園児・榎本侑人くん(4)熱中症死亡事件  ※9/15一部追記

2007年5月23日、さいたま地裁105号法廷で、平成19年(ワ)537号 園児・榎本侑人(えのもと・ゆうと)くん(4)の熱中症死亡事件の第1回目の民事裁判が行われた。
裁判官は岩田眞氏、瀬戸口壮夫氏、清水亜希氏で、所沢高校の井田さんの裁判の裁判官と同じ。法廷も当初、同じ504号法廷と聞いていたが、当日になって105号の広い法廷に変わっていた。傍聴人の多さに配慮したものと思われる。

事件は、2005年8月10日。上尾市上尾保育所の本棚のなかで、榎本侑人くん(4歳5ヶ月)が熱中症による心肺停止状態で発見された。
侑人くんを含む4歳児クラスが散歩から帰ってきたのが、10時30分頃。11時35分頃に保育士が侑人くんがいないことに気づくまで、1時間余りもの間、侑人くんがどこで何をしていたのか把握されていない。
侑人くんがいなくなったことに気づいた保育士たちが捜索活動を行ったが、園外に捜索に出てしまったこと、侑人くんの顔と名前が一致していない保育士が18人中5人もいたこと、園児たちが本棚の中に出入りしているという情報が保育士間で共有されていなかったことなどから、発見に手間取り、発見されたのは、12時25分頃だったという。すでに心肺停止状態だった。

両親は、保育所の設置者である埼玉県上尾市を訴えた。
提訴の主な理由は、2つの注意義務違反。
すなわち、1.動静把握義務違反、2.捜索活動上の注意義務違反。


初回ということで、原告である両親が陳述書をそれぞれ読み上げた。
たったひとりの大切な息子を、安全であるはずの保育園で亡くした親の思い。しかも、不可抗力などとは到底言えない。何度も注意を喚起していた。自由保育といいながら、放任保育をしていた。

事件後の対応は、学校での事件・事故と全く同じだった。
子どもたちを傷つけるからという理由で、一切、調査が行われず、「誰も見ていなかったのだから仕方がない」というだけで、事件後に満足の行く説明もない。
そして、担当者の配置換え。幼い命が奪われるという事件に対して、反省も教訓も何もなく、むしろ、市側に保育園の民営化施策に利用されてしまった。市も、保育所も、何ひとつ本質がわかっていないという。事実を知るためには、そして、自覚と反省を求めるためには、民事裁判に訴えるしかなかったという。

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我が家も、娘が3歳のときから保育園に預けて、私はフルタイムで働いていた。
少しは寂しい思いをさせたかもしれないが、保育の手を抜いたわけではなく、多くの人の手で育ててもらったと思っている。私は保育園に預けたことを後悔していない。
娘の行っていた保育園も、型にはまらず、のびのびと子どもを育てる方針だった。しかし、その分、他の幼稚園や保育所以上に保育士さんたちの配慮が行き届いていたと感じる。
担当でなくとも、常に子どもたちに目配り、気配りがあったと、3年間預けたなかで感じていた。子どもの成長にも、母子だけの空間で育つよりもよほどプラスになったと思っている。今でも、とても感謝している。それだけに、このような保育所があり、幼い命が奪われたことがとても残念でならない。防げなかった事故ではなく、安全配慮を欠いた起こるべくして起きた事件であると私は思っている。

保育園、保育所の事件・事故はけっして少なくない。ベッド内での窒息死。誘拐。交通事故。園を抜け出してのため池での溺死や線路に入っての轢死。(下記一覧を参照)
親がなぜ、保育園に子どもを預けるか。親が働いている間、家でひとりで置いておくのは危険だから、大人の目の届くところに預ける。基本的に幼稚園とは異なる。生活の場でもある。一番の理由は、教育目的ではなく、安全確保にあるはずだ。

家庭内の事故でも、冷蔵庫内で窒息死したり、お風呂場で溺死したり、2005年10月7日も沖縄県那覇市で、留守番の児童(小1・6)が旅行用のプラスチックのトランクのなかで熱中症により死亡する事件があった。(このトランクは閉まると自動的に鍵がかかる仕組み)。子どもには常に危険が伴う。
それが、保育のプロが、1時間も、しかも給食の時間にいないとわかるまで気づかなかった。命を預かっているという自覚があまりにたりないと思う。

しかも今回、なぜ、本棚に入っていたのか、出られなかったのか、なぞだ。園児にどうやら、聞き取りもされていないらしい。4歳児といえば、記憶もそう長くはもたないのではないか。真相は永遠に闇のなかなのだろうか。責める、責めないではなく、まずは何があったかを解明するのが先ではないだろうか。でなければ、また同じことは起こりえる。事故なのか、事件なのかさえわからないまま、大切なわが子の死を受け入れられるはずもない。

せめて、この事件が教訓として生かされるよう、裁判を見守っていきたいと思う。
次回は7月17日(水)さいたま地裁105号法廷で、10時から。


 以下に簡単に、今まで起きた保育所や幼稚園での主な事件・事故をあげておく。同じ園や系列で何件もの事故が起きていることもある。
ずさなんな経営、安全を無視した園の方針が取り返しのつかない結果を招いている。


保育園(所)・幼稚園での主な事件・事故(虐待や食中毒、交通事故などを除く)
                                                       2007.5.武田さち子 調べ
                                                  ※9/15一部追記 
1991/4/6 千葉県千葉市の無認可託児所「キャンディールーム」で、うつぶせになって寝ていた男の乳幼児(9カ月)の頭の上に女児の頭が乗っており、窒息死。
両親が託児所を提訴。

1992/3/23 千葉地裁で、「乳幼児の保育に従事する者は、不測の事態が発生しないよう常時注視する注意義務がある」として、経営者に計約3610万円の支払い命令。
窒息死
1992/5/ 大阪府大阪市東淀川区の私立小松幼稚園に通っていた姉弟が、入園(1990/4/)直後から園生の兄妹にぶたれたり、けられるなどのいじめを頻繁に受け、こぶや切り傷などのけがをする。保護者が園に申し入れ、通園バスを別にするなどで一旦はおさまったが、すぐ再発。転園を余儀なくされた。姉は小学校に上がってからも心因性の股関節痛などで治療。

1993/5/17 両親が園を経営する学校法人専念寺学園と加害児童の両親を相手に計400万円の損害賠償を求めて提訴。
いじめ
1992/11/10 鳥取県八頭郡郡家町の町立保育園で、園児(1歳9カ月)が近くの水路に転落。心配停止状態で水路に浮かんでいるのが発見された。命はとりとめたが、四肢のまひなど、重度の障がいが残った。

園児と保護者が町を相手に約3億6000万円の損害賠償を求めて提訴。
1997/1/21 鳥取地裁で、町に約1億1600万円の支払い命令。広田聡裁判長は、「幼児の挙動は予測困難なものがあり、万全の注意をする義務があったのに保育所の監視、保護に手落ちがあったと推認でき、事故は保育所の過失で発生した」と認めた。
溺死
1993/8/25 大阪府高槻市の三箇牧幼稚園で、園児が溺死。 溺死
1994/2/14 神奈川県川崎市の無認可保育所「ちびっこ園川崎」で、女児(4カ月)がうつぶせ状態で発見され、死亡。女児は別の男児(7カ月)と同じベッドで寝かされていた。当時、0歳児9人を含む乳幼児55人がいたが、保母は3人だけ。女児から約1時間、目を離していた。園側は「突然死(SIDS)」を主張。

両親は「死因は窒息死」と主張して園を相手に民事裁判を提訴。
窒息死
1994/12/ 北海道札幌市の私立幼稚園で、「ほかの子をいじめる」などの理由で、男児(5)が退園させられる。

両親が、「不当な退園処分で、精神的損害を受けた」として、幼稚園に慰謝料500万円の支払いを求めて提訴。
1996/9/25 男児に問題行動はあったが、いじめとまでは言えないとして、園に50万円の支払い命令。
いじめ
1995/2/24 高知県宿毛市の幼稚園から会社役員の長女(4)が誘拐され、身代金3500万円を要求されたが、7時間後に保護。会社員の男(37)を逮捕。 誘拐
1995/7/4 福井県鯖江市の市立保育園で、昼食後の自由時間に園児2人(3.2)が、かぎのかかっていなかった玄関から外に出て、近くのJR北陸線で電車にはねられ死亡。

1996/6/ 市が補償金や慰謝料など1人につき5140万円支払うことで遺族と合意
轢死
1997/12/ 埼玉県川口市の保育施設「ちびっこ園」で、女児(1)が、壁にかけてあった袋のひもに首をひっかけ死亡。 事故死
1998/2/5 静岡県焼津市の幼稚園で、設置されて20年以上の鉄製の門扉が倒れ、園の男子児童(3)が下敷きなって死亡。 設備瑕疵
1999/11/22 東京都文京区音羽の幼稚園で、若山春奈ちゃん(2)が、春奈ちゃんの兄の同級生の母親・山田みつ子(35)に殺害される。 誘拐
2000/3/ 神奈川県厚木市の会社員の長女(5)が通っていた幼稚園から誘拐され身代金800万円を要求されたが、5時間後に保護。ポスター製作業の男(50)を逮捕。 誘拐
2000/6/24 千葉県千葉市中央区の私立「中央保育園」で、遊戯用ホール内で園児6人が遊んでいたところ、高さ2メートルの木製台が突然倒れ、園児2人(2・4)が下敷きになった。1人が頭の骨を折るなど重傷、1人は左手中指を骨折。 遊具
2001/1/19 島根県の幼稚園で、男子児童が、舟形ブランコにはさまれて死亡。 遊具
2001/3/15 東京都池袋の「ちびっこ園池袋西」で北条涼介ちゃん(4カ月)が、同じベッドに寝かせられていた別の乳幼児がおおいかぶさるのを放置され窒息死。
「ちびっこ園」は全国約66カ所で保育施設を経営。内57箇所で職員数や施設に問題があったことが判明。これまで21件の死亡事故が起きていた。
窒息死
2001/4/28 神奈川県横浜市戸塚区の民間保育所「みどり共同保育所」で、女児(1歳2カ月)が、近くの池に落ちて、水死。
同園は、「門なし保育」を理念とし、出入り口に門扉を取り付けていなかった。
事故前にも、何度か別の園児がいなくなることがあり、帰宅時に同じ池に転落したこともあった。
溺死
2001/5/2 大阪府大阪市の公立保育園に男が入り込み、園児らを人質に立てこもる。 人質
2002/1/22 新潟県の私立鵬(おおとり)幼稚園で、園児(3)が「缶ポックリ」を首にかけたまま遊具(網目のネットとすべり台が一緒になったもの)で遊んでいて、ひもが首にからまって窒息死。
2005/4/23 園長ら3人を「安全対策や監視を怠った」として、業務上過失致死容疑で逮捕。
事故死
2002/7/30 新潟県新潟市の無認可保育園で昼寝中ベッド内で立ち上がった女児(1)が転落防止用にベッドを覆っていた板とベビーベッドとの間に首を挟まれ、柵に手をかけたまま窒息死 窒息死
2004/11/ 東京都世田谷区の区立新町保育園の園外保育で、女児(6)が多摩川に転落、水死。
2005/8/12 元女性保育士2人(32・34)(事件後諭旨退職)を業務上過失致死容疑で書類送検。
溺死
2005/8/10 埼玉県上尾市の市立上尾保育所で、榎本侑人ちゃん(4)が、保育所内廊下の本棚のなかで、熱中症による心肺停止状態で発見され、死亡。約1時間もの間、所在確認がされていなかった。園では本棚のなかで遊ぶことが常態化していたが、捜索に当たって職員らに情報共有されていなかった。両親が刑事告訴。

2007/4/3 業務上過失致死で保育所の元所長ら3人に、罰金の略式命令。

2007/3/7 両親が保育所側に注意義務違反があうったとして、慰謝料など約8500万円を求め上尾市を相手に民事裁判を提訴。
熱中症死
2007/7/27 福岡県北九州市小倉北区の無認可保育園「中井保育園」で、園外保育から戻った園児らが車を降りる際、職員らが人数確認を怠り、浜崎暖人ちゃん(2)が3時間以上放置され、熱射病症状で死亡。
当時の車の車温度は50度近くになっていた可能性が高い。その後の調べで、車が保育園に到着して以降のおやつ提供やおむつ交換の際にも、職員が暖人ちゃんがいるかを確認していなかったことや、発見後も直ちに119番せず、30分以上、車のエアコンをかけるなどして処置していたことが判明。
熱中症死


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