川口の大野悟くんの裁判が、7月9日(水)、さいたま・浦和地裁で行われた。
裁判官は、廣田民生、大工強、上原三佳。
本来なら、とっくに証人尋問に入っていてもよさそうだが、今だに被告の川口市と生徒たちからの情報がきちんとあがってこない。次回、次回と引き延ばされてきた。
被告側の言い分は、「生徒たち9人の行為はそれぞれバラバラであって共謀ではない」「集団暴力はない」というもの。誰が中心的な役割をしたものでもなく、クラス、部活なども別々で、横の繋がりはないという主張。
要するにいじめのなかの「共同正犯」を否定しようという意図なのだろう。
学校側の校長等の陳述書もなかなか出てこなかったが、生徒たちの陳述書も、それぞれ行動も認識も違うのでまとめることはできないとのことで、具体的なことが出てこない。
まとめなくてもいいので、一人ひとりの陳述書を出すよう、再度、裁判官が要請した。
それに対して、大野さんは言う。生徒たちの証言では休み時間などに悟くんを数人で取り囲んで、その内の何人かが腹を殴ったり、蹴飛ばしたりしたと。端から見れば、仲良しグループがただ話をしているように見えたと。
また、9人の内の数人は同じ小学校出身だ。部活はバラバラで、クラスも違っても、休み時間に廊下などで暴力を奮っていた。
また、学校側は校長をはじめとする教師が生徒らを連れて弔問に訪れたとき、「人殺し!」と罵倒を浴びせられたり、おじいさんからひっぱたかれたりしたということを出してきた。もし、あったとしても、子どもを殺された親族としては当然のことだとは思うが、遺族も、その場に居合わせたひとも否定している。
きちんと親の了解をとってから、一人ひとりに何をしたのか、話を聞いたという(その内容を居合わせた知人が記録として残している)。そのなかで一人の少年が「僕は毎日やりました」と答えた。それを聞いたおばあさんが、こらえきれず、少年の母親の了解をとって、ひっぱたいたという。
被告側は、「少年たちの心の傷は深い」と、まるで自分たちのほうこそ、被害者であると言わんばかりのことを出してきたいう。マスコミ攻勢と裁判、そしてインターネット(2チャンネルに少年たちの実名と住所、電話番号などが掲載され、イタズラ電話が頻繁にかかった)と、非難している。
学校や教育委員会、市側は今だに事実を明らかにしようとはしない。公務員には守秘義務があるので回答を拒否するという。では、自分たちの不祥事はどう責任をとるつもりだろう。安全なはずの学校のなかで、子どもがひとり死に追い込まれたことを、何も知らない遺族にどう説明するのだろう。
遺族に言うことと、自分たちに言うこと、外で言うことが違う。学校の保身には、被告生徒やその親たちも不信感を抱いているという。
原告側は、この手の裁判には珍しく、加害生徒たちの証人尋問を望んでいない。もちろん、将来のある、未成年者である彼らを思いやってのことだろう。しかし、その思いやりを逆手にとって、学校と共謀して何も事実を出そうとしない、一旦は遺影の前で「やりました」と話したことについてまで否定するのであれば、証人としての出廷を要求せざるを得なくなるだろう。学校があまりにウソを並べ立てるのであれば、悟くんの名誉を守るためにも、子どもたちの証言を要求せざるを得ない。ほんとうは、そんなことは誰も望んでいないのに。大人たちは、そのことのプラスとマイナスをよく考えてほしい。
次回はまだ書類のやりとりが続く。(2003年9月3日、午前10時から、浦和地裁504号法廷にて)
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