裁判は未だ書類でのやり取りが主だが、原告側から学校側に悟くんの死後、川口市では具体的にどんな対策をしたかの質問があった。その回答のひとつが「いじめ問題対策委員会」だが、内容について聞かれて被告側が出してきたのは、何月何日に会議を行ったことと議題のみ。また「緊急いじめ対策指導」についても具体的なことがわからない。
いじめの具体的な事実について、市と学校側は、いじめの調査結果は手元にあるが、これは教師=公務員としての守秘義務があるとして出そうとはしない。原告側から出たことに対しての反論としてのみ使うという。(最も、事件直後に誰が何をしたかは、学校の調査でアルファベットで出ているので、今さら秘密にする意味がわからないと原告弁護士は反論。)
また、生徒たちの代理人弁護士からは、「なぜ、このメンバーが(被告として)選ばれたのかわからない」と言った。
一度出した事実さえ今さら知らんふりをしようというのだろうか。
また、学校内で行われたいじめを遺族に証明しろというのは無理な話である。しかも、学校は生徒から調査して事実は分かっているが、子どもたちの人権や守秘義務を楯にして、出せないという。
被害者の人権やいじめを止められなかった責任はどうするのだろう。被害者側にそれを証明することができなければ、自分から口にすることはない。わからなければ何をやっても、やらなくてもいいというのだろうか。
次回は3月6日、進行協議が行われる(非公開)。証人に誰を呼ぶかなどが話し合われるのだろう。
公判後に弁護士さんから説明があった。
今日、被告側から提出された書面は2通。前回の質問に対する回答(上記の内容)と、「自殺はいじめだけが原因ではない」という医師の著書からの引用文だったという。
それから、大野さんは、この裁判とは別に、昨年12月末、別件提訴した。
加害生徒の母親のひとりが、事件直後から脅迫文ともとれるような手紙を3回も出してきた(筆跡から問いつめた悟くんの遺族に対して、署名・捺印して自分が書いたと認めた)事件に対して賠償を請求する。大野さんは、もし母親が謝罪のひとつでもしてくれば、提訴まで考えなかったという。しかし、反省の色ひとつ見せない相手に対して、責任の所在をあいまいにしたくないと、今、行っている裁判とは別の裁判を起こすことにした。
事件後に遺族のもとに脅迫文が届いたり、嫌がらせの電話がかかることはめずらしくない。しかし、差出人が特定でき、しかもそれが加害者の母親だったというのは聞いたことがない。裁判で責任が追及されるとなるのは、かなり珍しいケースではないかと思う。
今まで野放しになっていた被害者への誹謗・中傷も、これを機に無責任なことはできないという戒めとなることを願う。そして、加害者や家族の反省や態度が今後、問われるだろう。
世間は、司法は、学校は、加害者の更正のためにとその責任を追及しようとしない。しかし、大人たちが、はっきりといけないことはいけないと言ってやらなければ、子どもたちにはわからない。「あれはいじめではなかった」「お前は悪くない」「お前を悪く言う、死んだ子やその親が間違っている」「弱い子が勝手に死んだ」「お前はむしろ被害者だ」と言っているうちは、絶対に子どもは反省しない。
改正になった少年法では、加害少年の保護者にも勧告できるようになったという。今の時代、子どもだけでなく、まず親に、「悪いことは悪い」と教えてやるひとが必要なようだ。そして、もっと深刻なのは学校だ。学校と教育委員会と国と、一体誰が、「悪いことは悪い」「いじめるほうが悪い」「いじめられるほうは悪くない」と、「見て見ぬふりをする大人はもっと悪い」「いじめる側に味方する大人はもっと悪い」と教えてやれるだろう。その役割を司法に期待するのは無理なのだろうか。
こちらのほうの裁判の第一回公判は、2002年2月20日(水)、浦和地裁にて、午前10時からとなっている。
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