三多摩「学校・職場のいじめ」
ホットライン学習会
子どもたちは二度殺される     (15号掲載)

武田 さち子


 2001年7月14日、八王子市民会館にて開催された三多摩「学校・職場のいじめ」ホットラインの相談員のための学習会で、実行委員のひとりとして、いじめの事例について話すことになった。

 人前で話すことが苦手な私が引き受けたのは、7月7日に発行したプラッサ別冊「子どもたちは二度殺される」の宣伝はもちろんあるが、事例を本としてまとめるにあたって行った分析結果を、少しでも多くの人と共有したいと思ったからだ。

 ここでは、その一部と、話の時間配分が悪くて言い足りなかったことを少し補足して紹介したいと思う。いずれにしても、現段階で私の言いたいことの全ては、「子どもたちは二度殺される」に詰まっている。これはその抄訳と考えていただいてもよいだろう。

 (注:本文中の6桁数字は冊子の中の事例番号である。「日本の子どもたち」(http://www.jca.apc.org/praca/takeda/)の「子どもに関する事件」の事例番号とも対応している。ここで各事件の詳細を見ることができる)



●三多摩「学校・職場のいじめ」 ホットライン


 5回目を迎える三多摩「学校・職場のいじめ」ホットラインでは、今年も市民相談員を公募して、8月30日から9月3日まで、おとなと子ども両方のいじめの電話相談を行う。そのための学習会が7月の土日を使って5日間にわたって開催された。なお、学習会は相談員になることを希望しない人の参加も歓迎している。

 今回、「公表された学校のいじめ事例紹介」というテーマで話すことになったが、わざわざ「公表された」とあるのには理由がある。ホットラインでは電話をかけてきてくれるひとに対して「秘密は必ず守ります」と約束している。電話相談で知り得た内容は、本人の希望なしには一切、外へ出されない。そのため学習会では毎年、すでに世間一般に公表された事例を使うことにしている。

 私自身の活動が広がるにつれて、いろんな方から、なぜこのようないじめ問題に首を突っ込むことになったのか、問われることが多くなった。「お子さんを亡くしたんですか?」「仕事ですか?」「学校の先生ですか?」と尋ねられることもある。

 きっかけは、いじめホットラインの第一回目の学習会。ホットラインのメンバーでもある前田功さんの話だった。娘の前田晶子(あきこ)さんが、「明日、どうしてもつくしの中学へ行かなきゃいけない?」という母親への電話を最後に鉄道自殺したのは1991年9月1日。中学2年生、享年13歳だった(910901)。

シンとする会場に向かって功さんは、「同情はいりません」と言った。その言葉が耳について離れなかった。同情はしない。かわりにもっと知りたいと思った。

 当時、前田さんが原告となっていた「作文非開示取り消し訴訟」「学校の調査報告義務を問う裁判」の傍聴にも行った。晶子さんの母親、千恵子さんにもお会いして話をうかがって、亡くなった晶子さんも、ご両親も、どこにでもいる普通の家庭の普通の人びとだと思った。千恵子さんがいつも持ち歩いている笑顔あふれる家族旅行の写真を見せてもらった。功さんは晶子さんの生前、「(これ以上、成長しないように)芽え、摘んじょけ」と千恵子さんに言っていたという。まぶしいほどに成長していく娘。いつか自分の手の届かないところにいってしまうことの寂しさ。いつまでも自分たちの側において可愛がっていたい、守っていたい、功さんにとって晶子さんはそんな娘だったのだろう。それが、こんな形で生命の芽を手折られてしまうとは誰が想像し得ただろう。

 私にも娘がいる。晶子さんにおきたことが、同じようにこれから先、自分の娘にもおこらないとも限らない。どこまでも続くと信じていた子どもの未来のどこかに、ぽっかりと落とし穴が待ち受けているかもしれない。他人ごとだと言っていられないと思った。いじめのことを含めて、もっと、もっと、私たち大人が積極的に知らなければならないことがたくさんあると思った。それが、資料を集め出すきっかけとなった。そして、プラッサの仲間と知り合って、ホームページや冊子として結実した。

●現代のいじめ

 ホットラインの学習会に集まる人びとは、世間一般よりは、いじめに対する関心が強いし、知識もあるだろう。それでも毎年のように、「いじめは昔からあった」「いじめられる子どもが、自殺する子どもが弱い」「やられたら、やり返せばすむことだ」と発言するひとがいる。社会が移り変わり行くように、いじめも日々変化している。電話相談を受ける人びとには特に、そのことをまず理解してもらわなければならない。

 現在のいじめの主な特徴は、
・いじめの手口が陰湿
・隠蔽工作が巧妙
・集団が特定の個人を標的にする
・同一グループ内でのいじめが多い
・長く続く。小学校から中学校、中学校から高 校、卒業してもいじめがついて回ることがある
・一旦、「いじめられる人間」というレッテルを 貼られると、抜け出すことが難しい
・いじめているグループが複数のこともある
・直接いじめている人間と、それを命じている人 間とが別の場合がある
・ブレーキをかけるものがなく、とことんまで やってしまう(時に死に至るまで)
・誰もが加害者にも、被害者にもなり得る
・遊び感覚、ゲーム感覚でいじめる
・罪悪感がないか乏しい
・いじめの時間と場所が、学校の中から外へと拡 大しつつある
・今のいじめと絡むキーワードとして、「金」 「ゲーム」「仲間」「性衝動」などがある
などがあげられるだろう。

 また、ここ数年の特徴として、PHSや携帯電話がいじめの小道具として使われる。いじめる相手を親を介さずに直接呼びだすことができる。メモリー機能のお陰で繰り返し電話をかけやすい。無言電話が一日中鳴り響く。メール機能で悪口を送信する。また、地域でいじめのターゲットを見つけると、携帯電話で仲間を呼びだし、ゲーム感覚で追いつめたりする。もはや、学校にいかなければ安全であるという神話さえ崩れ始めている。

●いじめの主な手口

 いじめを大きく分けると、「心理的ないじめ」「暴力」「金銭が絡むいじめ」に分類される。この3つは複合して行われることが多い。最初は言葉だけのいじめが、やがて暴力を伴い、恐喝に発展することも珍しくない。

 私の集めた事例は、いじめや暴力、体罰、事故などで、結果として死に至ったり、大きな傷害を負わされたり、多額の金額を恐喝されたりした事件が中心になっている。全70件中「いじめに関する事例」は58件。被害者の性別は、男子42件、女子16件。全体的にも、新聞に載るようないじめ事件は被害者、加害者共に男子が多い。

 これら事例はあくまで氷山の一角である。いじめは隠されるものであるというその特質から、私たちが知りうるのは事実のごく一部である。そして、同じいじめでも受け止め方はひとによって様々である。いじめが一番多いのは中学2年、3年と最も多感な年頃だ。表面だけを見て、大したことはないと判断しないでほしい。

 男子42件のうち33件(79%)は「心理的ないじめ」を受けており、35件(83%)は「暴力」を、25件(60%)は「金銭が絡むいじめ」を受けている。男子のいじめの多くは暴力を伴っているが、心理的ないじめもけっして少なくない。

 一方、女子の場合、16件中13件(81%)に「心理的ないじめ」があったことが判明。「暴力」は5件(31%)、「金銭が絡むいじめ」は1件。女子の場合の「暴力」は数こそ多くはないが、いずれも深刻な被害を被っている。例えば、
小学校4年生の女児が転校した先で、男子生徒にぶたれたり蹴られたりしたあげく、「ズッコケ」と称するいたずらで足元に滑り込みをかけられて顔面を強打、前歯2本を折った(791101)。中学2年生女生徒は自殺した当日と前日に6、7人から暴行され、遺体には暴行の跡が残っていた(860708)。岩崎寛子さん(中2)は、廊下を歩いていた時、上級生が突然足を出して両手首を捻挫。スポーツフェスティバル開会式でも、男子にぶつかられて鎖骨を骨折。治療のため貼った湿布薬で「臭い」と言われ、いじめられるようになった(881221)。また、軽い情緒障害のある女生徒(中3)は、男子2名、女子2名のグループに、手を使えば汚れるとして、全身を蹴られて一週間後に死亡(911115)。中学3年生の女生徒は、同学年の男子非行グループ11名から繰り返し性的暴力を受け、強姦にまで至った(961200)。

 具体的ないじめの手口としては、表1のようなことがあげられる。



a.心理的ないじめ

 今のいじめは陰湿で際限がなく、子どもたちの心に強い恐怖心と絶望感を与える。いじめている側からすれば一つひとつの行為はたいしたことがなくても、複数からやられる被害者には、何倍にも何十倍にもなる。あっという間に広がり、ますますエスカレートし、しつこく繰り返されるいじめに出口が見えない。

 心理的ないじめは、暴力や恐喝を伴わないことで罪悪感は薄く、いじめている自覚すらないこともあるが、いじめられた人間は、自らの存在を否定される行為に、自尊心が深く傷つけられる。大河内清輝くんや、鹿川裕史くんのあだ名で呼ぶという悪質ないじめもある。これ以上、被害者を出さないよう願って遺書を残した子どもたちは浮かばれない。

 また、いろんな事件が起きるなかで、今の子どもたちにとって、「死ね」「殺す」という言葉は単なる言葉ではなく、「殺されるかもしれない」「傷つけられるかもしれない」という現実感を伴った恐怖となる。それがナイフで刻まれた言葉であればなおさら。

 持ち物に対するいじめは犯人がわからないだけに陰湿で、被害者は疑心暗鬼にかられる。

 子どもたちは学校生活のなかで、常に悪意の視線にさらされ、小さな攻撃を仕掛けられ、緊張状態が続く。いじめが始まって2カ月という期間でも、子どもたちは精神的不安定さと絶望感から自ら命を断ってしまう。

 よく、「死ぬ気になれば何だってできる」「死ぬくらいなら、いじめと闘え」というひとがいる。しかし、死ぬ気になっても、死んでからでさえ、いじめる側は変わらない。いじめられている子どもたちは、この状況から逃れるためには、「相手を殺すか」「自分を殺す」しかないと思い詰める。実際に、いじめ報復殺人事件や給食等に毒など異物を混入する事件、「やせ薬」と称して薬品を送りつける事件が起きている。

 そして、この年頃の子どもたちにとって「ひとりぼっち」にさせられることは、何より恐怖である。多くのいじめで、仲良くしている友だちに悪い噂を吹き込んだり、友人に「絶交状」を書かせたり、脅して引き離すなど、徹底して孤立させられる。かばえば今度は自分がいじめられるから、友人たちは去っていく。唯一の希望、信じていた人間にまで裏切られる絶望感を子どもたちは遺書に残している。



「学校に行っても友達はいますがその友達に僕を無視させたりしていそうでとてもこわいです。生きているのがこわいのです」(上越市春日中学校の伊藤準くん 851127)

「ねえ、この気持ちわかる?組中からさけられてさ、悪口いわれてさ。あなただったら生きていける?私もうその自信ない」(富山市奥田中学校の岩脇寛子さん 881221)



 何かと集団行動の多い日本の学校の中で、組む相手がいない、グループに入れないということは、多くの苦痛を強いられる。いじめられている子どもたちの多くが、暴力を振るったり金銭を強要するいじめグループから離れられないのは、そんな仲間でも誰もいないより、ひとりぼっちにさせられるよりはましだと思うからではないだろうか。



b.暴力・身体に危害を加えるいじめ

 最近の子どもたちの暴力は、遊びやゲーム感覚で行われることが多い。多くの大人たちが見かけに騙され、「男の子だから、荒っぽい遊びもするさ」とのんきに構えている。

 しかし、プロレスごっこやタイマン、罰ゲームなど公平な遊びに見えて、フェアーではないことがある。一方的に技をかけられたり、いじめられている側が反撃に出ようとすると周囲が押さえつけたり、勝てそうもない強い相手と対戦させられたりする。また、「肩パンチ」(肩を拳でなぐる)「エルボー」(肘打ちするプロレス技)「腹バン」(腹を殴る)「麻酔蹴り」(太股を蹴るとしびれて歩けなくなる)などは、言葉から受ける印象以上に、実際に与える苦痛は大きい。

 そして、戦闘意欲をなくしたものにさらに暴力を加えたりもする。いじめられている人間にだけ罰ゲームが強要されたり、力を込められたりする。一方、いじめられている側が勝った時には仕返しが恐くて強くやれない。掛け金が絡んでいることもあり、負けたほうは暴力を受けたうえ、金を払わされる。被害者は遊びに名を借りたいじめを拒むことができない。

 また、いじめる側はいろいろな理由をつけて暴力を振るうことがある。一方的なルールを押しつけて、「約束を守らなかったから」「ドジを踏んだから」と罰を与える。大人たちが自分たちにしていることを子どもたちも繰り返す。被害者は自分が悪いからだと思いこんだり、ゲームに負けたのだから仕方がないと無理に納得する。それらは、ばれたときの言い訳にもなる。受ける側は失敗に怯えたり、自罰的になるなど心理的な圧迫も受ける。

 今の子どもたちの暴力は大人たちの想像を超える。けんか馴れしていないくせに、ゲームや劇画で技や方法だけには詳しい。相手の痛みが想像できない。止める人間のいないなかで、とことんまでエスカレートする。親にさえ殴られたことがない、あまり暴力を受けたことがない今の子どもたちにとって、暴力にさらされることは死ぬほどの恐怖になる。実際に暴力を振るわれなくとも、恐怖心だけで子どもたちは相手のいいなりになる。



大河内清輝くんの場合、水深5〜6メートルほどの川に連れて行かれ、足をつかまれたり、頭を押さえられたりして溺れさせられそうになった。そんなことが4回もあった(941127)。

村方勝己くんの場合、11人のいじめグループに呼びだされ、1人が殴り疲れると他の者に替わるという形で次々に暴行を受け、そばに流れているクリークに転落すると、そこに駆け下りて暴行を続け、更に、はい上がったてきたところを棒で頭を思いっきり殴られた。その結果、勝己くんは20〜30秒気を失い、気づいてからも口から泡を吐いた。このようなひどい暴行が3回も繰り返された(960918)。

名古屋の5400万円恐喝事件でも、被害少年は暴行を受け、鼻骨骨折、肋骨骨折で2度入院。少年も母親も、金を払わなければ殺されるかもしれないという恐怖心から、事故で亡くなった父親の保険金を取り崩し、親戚に借金をしてまで、言われるままに大金を払った。加害少年らは事件が発覚しそうになると、「このままでは警察にばれる」「自殺に見せかけて殺すしかない」と話し合い、遺書を書かせようとしてKくんの携帯電話に何度も電話をしているうちに逮捕された(000314)。



 多くの暴力が恐喝と密接に結びついている。一度、死ぬほどの恐怖を味わった子どもたちは言うとおりになる。告げ口をしたことがばれれば、さらなる暴力が待っているため、周囲の大人から問いつめられても、本当のことが言えない。暴力は、単に肉体的なものへの影響だけでなく、「痛み」や「死」に対する恐怖、心理的ないじめでもある。また実際に暴行で殺人にまで至った例(841101、911115、930113、930420、981008、000423)もある。いじめから逃れるには殺すしかないと思い詰めた事件(841101)もある。

 中には命じられて暴力を振るう「代理暴力」というのがある。立場によって、暴力を振るうことはあっても振るわれることがないものと、殴る側と殴られる側と両方を経験し、いつ反転するかわからないものとがいる。後者は、暴力の加害者でもあり被害者でもある。

 もっとも精神的にダメージを与える暴力に、男女問わず性的な暴力がある。性的被害の告発にはとても勇気がいる。多くは被害者が泣き寝入りしていることだろう。表面にはあまり出ないが、性的関心の強い年頃の子どもたちが、性的ないじめをしないとは思えない。性的な辱めについて、子どもたちは遺書にさえ、はっきりと書くことをためらう。しかし少年犯罪として裁かれた事例を見ると、かなり陰惨ないじめが行われていることは想像がつく。ここでも、被害者は体だけでなく、心に一生残る傷を負わされる。



c.物や金に関する強要

 犯罪の低年齢化が言われて久しいが、小学校でもすでに金品要求が絡むと思われるいじめ自殺がおきている(860222)。ある加害少年は、「お金をとっているうちに感覚がまひしてためらいが消えた」と話している。

 恐喝もいじめのなかでカモフラージュされる。自分のいらないものと欲しいものを交換させたり、無理に売りつけたりする。また、ゲームの賭け金や壊した品物の弁償代、貸した金の利子という形をとることもある。いずれも見つかったときに言い訳がきく。罪悪感も薄い。

 いじめの代表格に「パシリ」というのがあり、学校を抜け出し弁当や飲み物、菓子などを買いに行かされる。多くは金を渡さず品物だけを要求する。命じられた生徒は手持ちの金がない場合、「カンパ」と称して同級生から金を集めたり、借金したりして工面する。命じた人間に「金を取った」という自覚はない。現場を見つけた教師も単なる買い食いぐらいにしか思わない。

 学校によっては、伝統的に上納金システムができあがっていることがある。恐喝にかかわらず、校内の非行グループがいじめに多く介在している。そのグループは、卒業生に支配されていたり(851209、940529、980320)、地元のやくざに就職した先輩に金を上納させられている(850926、000314)。卒業生は、先輩・後輩のネットワークを使って、在校生から金を集める、あるいは犯罪の下請けをやらせる。在校生はやくざや恐い卒業生の存在をちらつかせながら、同級生や下級生を支配する。しかも事件発覚後も多くは、直接、恐喝を行った生徒数人を捕まえることはできても、裏にあるルートには学校も警察でさえも手をつけられない。システムは解体されない。かつて恐喝された少年が自分が上級生になったときに加害者に回る例や二重被害も少なくない。名古屋の5400万円恐喝事件(000314)や中尾隆彦くんの事件(800916)とも共通する。

 被害者は、殺されないために他人から奪ってでも金を持っていくか、自ら命を断つしかないと思い詰める。「金がないので死にます」(960122)「八万円払った後、四万円が払えない。ぼこぼこにされるなら、死んだほうがまし」(980320)と、子どもたちは金が工面できずに暴力を振るわれることに耐えかねて、自ら命を断っている。

●子どもたちを救えなかった社会

 いじめ相談員のための学習会ということもあって、私が特に強調したいことがある。多くの大人たちは、子どもがいじめを大人に打ち明けさえすれば、問題が解決すると思っているが、実際には予想以上に多くの子どもたちが、親や教師にいじめを打ち明け、助けを求めていた。それでも、問題は解決しなかった。それどころか、対応のまずさから、ますます問題をこじらせたり、死への最後の一押しをしてしまっている。学校という場の問題の深さを感じずにはいられない。

 多くの教師は、生徒たちが「先生はいじめの現場を見ていた。だけど何も言わなかった」と証言しているにもかかわらず、「自分はいじめを見なかった」と言っている。そういう意味でも、表2であげられているのは氷山の一角である。

 一方で、親や教師に打ち明けられなかった理由を、大阪産業大学のいじめ報復殺人事件の主犯格の少年は述べている。「告げ口すれば、家に火を付け、親を殺し、おまえを苦しめたうえで殺す」と脅され、「何よりもましてKの報復が恐ろしかった」と答えた。裁判官の「単なる脅しとは思わなかったの?」の問いに、「Kくんはやりかねないと思いました」と答えている。また、「登校拒否をしなかったのは、親に理由を聞かれる。悲しんだ親は教師に連絡し、それが自分にはね返る。結局は退学することになるが、それまでの期間が恐ろしい。自殺は逃げることになるので考えなかった。警察に助けを求めることは思い浮かばなかった」と述べた。

 いじめは、親や教師が知ってからがむしろ危ない。中途半端な介入はかえって子どもたちを追いつめる。警察もまた民事不介入で動かない。まして、処罰の対象にさえならない年齢の少年相手の事件では、煩わしいだけで手柄にもならない。子どもが死んで、マスコミが騒ぎ出してようやく動き出すのが、今の警察だ。

 いじめ対策に万全策はない。大人たちの連携と、その問題にどれだけ真剣に関わる人間がいるかが、決め手になるだろう。大人たちに問題を解決する能力がない限り、子どもたちは大人に打ち明けられない。

●子どもたちは二度殺される

 今回、事例を分析してみて、改めて子どもたちは二度も、三度も殺されていると感じた。一度目は、いじめで、体罰で、事故で、肉体や心を傷つけられて殺された。そして二度目は、その存在そのものが葬りさられようとしている。

 自殺も「同情を引くために自殺の真似をしていたらまちがって死んでしまった。一種の事故ではないか」(850926)と言われたり、いじめマット殺人事件は「ひとり遊びをしていて、自分からマットに入って死んだ」という事故説を被告側に立てられる(930113)。遺書は悪意をもって曲解されたり、いじめがあったことは認めても、自殺との因果関係は否定される。あるいは本人の性格、学力の悩み、家庭の問題、その他もろもろの原因があるなかのひとつとしか認定されない。

 事例のいじめに関する民事裁判24件中、勝訴はわずか3件(850926、860201、961200)。和解が5件。日本では一つの裁判に5年も10年もかかる。情報入手時点の係争中が10件。その後、控訴したかどうかわからないものを含めて敗訴が5件。詳細不明が1件。その他の多くの遺族は泣き寝入りをしている。加害者も、いじめを放置した学校も責任を問われることはない。

 そして、勝訴した例(850926)でさえ、本人が自殺したことに4、家族が気付かなかったり、自殺を防止できなかったことに3の合計7が原告側の過失分として相殺されている。

 裁判官は「他にも方法はあった」と言う。しかし、親や教師、警察に言っても、教育相談をしても、人権擁護の申し立てを行なってなお、いじめを解決する決定打のない中で、被害者に大きな責任を負わせるのは酷ではないだろうか。それでは、加害者の「勝手に死なれた」という言い分と変わらない。名古屋の5400万円恐喝事件(000314)の被害者親子は、事件から1年を経過してなお、「ああするしかなかった」と話す。

 子どもたちの死は、生きて解決できる道を明確に示せない大人たちの責任だ。そして、いじめた子どもたちが心から反省することができないのも、自らの保身に走り「あれはいじめではなかった」「われわれ教師はいじめを見なかった」と口裏を合わせて言い張る学校・教師、「うちの子は側にいただけ」「たいしたことはしていない」と開き直る親たちの責任だ。

 子どものしでかしたことを、親が自らの子育ての責任であると認めてきちんと謝罪したり(841101)、教師が間に立って加害少年と家族が遺族にきちんと謝罪する機会を設けた場合(950416)、子どもたちは心から反省し、謝罪している。

 加害少年の厳罰化を議論する前に、大人たちが自らの責任を認め反省し、二度と同じ過ちを繰り返さないための具体的な方法を遺族とともに作り上げていかない限り、悲劇は何度でも起きる。現に、同じ学校で何人もの子どもたちが転校したり、不登校になったり、自殺さえしている。そして、被害者遺族は自らの子どもが受けたのと同じいじめを学校や社会から追体験させられている。これが、今の私たち社会の現状である。

 死んでいった子どもたちの最後のメッセージさえ受け止めてやれない大人たちに、生きている子どもたちの叫びが届くはずもない。





表1 現在のいじめの主な手口
分類1分類2いじめの手口
a.
心理的ないじめ
言葉でのいじめ悪口を言う、家族のことを言う、体の欠陥のことを言う、いやがるあだ名をつける、目の前で内緒話をする、悪い噂を流す、ウソを教える、咳払いをする、はやしたてる、口真似をする、「殺す」などと言って脅す、口をきかない、悪口や無言電話をかける、悪口や脅迫の言葉を書いた手紙を渡す、交換日記で一人だけを非難する、絶交状を仲のよかった友だちに書かせる、悪口を書いたメモを回す、悪口を落書きする
態度でのいじめ無視をする、嫌な顔をする、触らない、触ったあと手を服やハンカチで拭いたり石けんで洗う、逃げる、わざと避けて通る、つつく、押す、仲間はずれにする、ニセラブレターでからかう、言動を真似てばかにする、取り囲む、ナイフなどをちらつかせる、葬式ごっこ
持ち物への嫌がらせ持ち物をゴミ箱やトイレに捨てる、隠す、汚す、ナイフで傷つける、机や教科書等に落書きをする、持ち物や作品を壊す、机をひっくり返す、机やイスを勝手に移動する、掃除のときに机やイスを残す、机やイスにマーガリンやチョークの粉を塗る、給食に異物を入れたり、こぼしたりして食べられなくする、弁当や飲み物を取りあげたり盗む、給食の牛乳パックの裏に「大凶」「ハズレ」などと書く、他人の物をカバンや机に入れて盗みの疑いをかける、自転車をパンクさせたり、壊したりする
行動させる・させないいじめ使い走り、歌わせる、部活をさぼらせる、塾や勉強をさぼらせる、荷物を持たせる、わざと役につけて協力しない、みんなが嫌がる仕事を押しつける、「好きです」と言わせる、トイレの個室やベランダに閉じ込める、土下座をさせる、授業妨害をさせる、教師や見知らぬ人に向かって冗談やからかいの言葉を言わせる、仲のよい友だちを引き離して孤立させる、木登りをさせる、一発芸をさせる、命じて誰かを殴らせる、挨拶の強要
身体・服装への強制まばたきを禁止する、パーマをかけさせる、髪を染めさせる、髪を切る、丸ぼうずにする、眉毛をそり落とす、校則に反する服装をさせる、水や汚水をかける、ピアスの穴をあけさせる、マジックで顔などにいたずら書きをする
性的ないじめポルノビデオを借りさせる、エッチな雑誌を買わせる、大人のおもちゃや避妊具を買いに行かせる、服を脱がせる、スカートをまくり上げる、マスターベーションを強要する、性器にいたずらをする、下着姿や性的な場面を写真やビデオを撮る、着替え中にドアをあけたり着替え中に教室から追い出す
b.
暴力・身体的に危害を加える
体に害を与えるタバコや酒を強制する、汚い水を飲ませる、草・洗剤や泥を喰わせる、残飯や異物を混入した給食を食べさせる、髪の毛や陰毛に火をつける
遊びの形態をとるいじめプロレスやボクシングごっこ、肩パンチ、ジャンケンゲーム、罰ゲーム、タイマン、おしくらまんじゅう、ズッコケ、足をかける、ボールをぶつける、エアガンの標的にする、技かけの練習台にする
直接的な暴力殴る、蹴る、バットやモップで殴る、階段などから突き落とす、溺れさせる、マットなどで簀巻きにする
身体に傷を残すタバコの火やライター、マッチなどで火傷を追わせる(根性焼き)、熱湯をかける、入れ墨を入れさせる
性的暴力男女問わず性的暴行
c.
物や金に関する強要
物に関するいじめ壊れた品や中古品を新品と取り替えさせる、不要品を売りつける、自宅に上がり込んでものを取ったり壊したりする、指定したものを持ってこさせる、抽選券や金券など取り上げる、ゲームやソフトを取りあげる
恐喝や盗みの強要万引きの強要、自転車・バイク泥棒、車上荒らし、教室荒らしをさせる、恐喝をさせる、友人宅に盗みに入らせる
金銭の強要カンパ、ものを壊した弁償金、賭ゲームの強要、高金利の取り立て、架空パーティー券の売りつけ、自宅に上がり込んで金品を取る



表2 親の認知と学校の認知・対応例
事例本人の訴え親の訴えと認知教師の認知対策と結果
790909
林賢一くん
自殺
自殺未遂で遺書を残していた。自殺未遂のことは言わないでほしいと要望。子ども同士のふざけあいにしか見えなかった。担任は加害者らを呼んで、「これ以上いじめると自殺するよ。昨日、自殺未遂をしているのだから」と話した(本人否定)。自殺をネタにいじめがさらにひどくなった。
800916
中尾隆彦くん
自殺
4人に殴られたと親に名前を告げた。
登校拒否。
担任・学年主任に、プロレスごっこなどについて、適切な処置を要望。4人に確認するが口裏を合わせられ、大したことはないと判断。グループと手を切ることを勧めるが、「かもうてくれる時があったから別にいややない」と言われ、踏み込めなかった。ほとんど毎日、恐喝と暴行が続き、隆彦くんの欠席もなくなっていなかった。
841101
高1男子
報復殺
数人の先生に話した。
Aは親に言わなかった。Bは父親に打ち明けた。
Bの親は事件の前日に聞いて対策をとる直前だった。詳しい内容を言わなかったので取り合ってもらえなかった。Kくんのことは正義感のあるクラスのリーダーだと思っていた。「楽しく過ごすには殺すしかない」と思い、Kくんを呼びだして2人で殺害。Kくんが「助けてーや。もういじめへんから」と懇願したが、許さなかった。
850926
佐藤清二くん
自殺
学校に行きたがらないこともあった。担任教師にいじめられていることを訴えていた。
報復を恐れて家出を繰り返していた。
父親が担任教師に相談したが、「いじめはありませんから、心配しないでください」と言われていた。家出をした時も、すぐ帰ってくるだろうと軽く考えていた。その都度、いじめた生徒に「もう二度としない」と約束させていた。被害者に「お前も悪い」「勇気をもって拒否しろ」と指導。親に対して「学校は勉強を教えるだけ」「学校は何もできない」と言った。何度も告げ口をするたびに、それを理由に暴行を受けた。やがて話さなくなった。聞かれても否定するようになった。
851209
熊沢憲くん
自殺
学年主任に「卒業生に呼びだされているので早退したい」と言って早退。警察にも駆け込んで相談していた。  学校に告げ口したことで、殴られていた。
学校や警察は何の手だても打たず、3日後自殺。
860201
鹿川裕史くん
自殺
父親にいじめを打ち明けていた。登校しても職員用トイレや保健室に隠れていた。不登校をしていた。教師にもいじめを訴えていた。父親は担任に「いじめをやめさせてほしい」と依頼。いじめた生徒の家にも怒鳴り込んでいた。いじめ対策の面談で担任と教頭は「転校か、警察に訴えるしか、ほかに解決策はない」と転校を勧めた。教師たちも葬式ごっこの色紙を書いていた。転校先の候補としてあげられた学校は、以前、グループの命令で使いに行かされ殴られた学校だった。面談の翌日、家出、自殺。
870423
中2女子
自殺
生活ノートに「学校でいじめられる」と書いて担任に訴えていた。 どこを直したらいじめられずにすむか、クラスメイトの自分への気持ちが知りたいという本人の言葉に、クラス全員に女生徒の何がいやなのかをテーマに作文を書かせた。担任はクラスで書かせた作文の約半分を手渡した。
女子生徒は、「みんな人の気持ちがわかってほしかった。ひどい」と遺書を残して自殺。
881221
岩脇寛子さん
自殺
いじめのことを担任に訴えていた。死ぬ3日前、親しかった友人からいじめられていることを母親に打ち明けていた。母親は、「もうすぐ懇談会だから先生に相談しようね」「友だちなんだから、早く仲直りしなさいよ」と励ましていた。担任は生徒から何度もいじめの相談を受けながら、保護者には連絡をしなかった。担任はクラス全体に「遊びでやっても、やられた人は心を痛める」と言ったり、いじめている生徒に「いじめをやめるように」話したり、「一人ぼっちの本人のために仲良くしてくれるよう」お願いしたりした。いじめはますますエスカレートし、「チクった」と言われる。
891002
中3男子
自殺
担任教師に助けを求めていた。
当日、登校時間になってもぐずぐずし嘔吐の様子を見せていた。
 学校は暴力事件を被害者の親に連絡しなかった。
教師らは登校をしぶる男子生徒に登校を促していた。
暴力事件を担任に訴えたことで報復的な暴力を受けた。
教師らに登校を促された翌朝に、校内で自殺。
911115
中3女子
暴行殺人
2年生2学期後半から遅刻、早退、欠席が増加していた。親の面前で蹴られたこともあった。母親は学校に「娘へのいじめをやめさせてほしい」と訴えていた。2年生と3年生のクラス替えの際には、H子さんを支えていくことが可能な数人の生徒と同じクラスにしていた。1年生時からいじめられ、女子生徒をいじめた生徒は学年全体の3分の1に達した。事件のグループは、「H子なら、みんなが軽蔑していじめているから、きっとやり返さないと思った」と供述。
930420
中3男子
暴行殺人
以前にも数回、加害者から暴行を受けていたが、親や教師に話していなかった。暴行された時も、時折「やめてくれ」と言うだけで抵抗しなかった。小学生の時、脅されて家の金を持ち出し、父親は尻が真っ赤に腫れるほど叩いて怒った。
母親が担任にいじめの相談をしていた。
いじめに対してMくんは「それぐらいなら、耐えられる」と話していた。
学校で加害者に殴られ、早退したことがあった。
友人宅で3時間半にわたり、プロレス技をかける、柔道の技をかける、殴る蹴るの暴行を受け、翌日死亡。
940715
平野洋くん
自殺
服が破れていても、「転んだ」と言っていた。弟との喧嘩で手加減をしなくなっていた。家で何も話さず、涙も見せなかった。洋くんを巡る15例のトラブルを知りながら1件のみ親に連絡。校長にも報告していなかった。担任はトラブルがおきると互いに謝らせたり、握手させたりしていた。いつもは数々のいじめに自分なりに反撃していた洋くんが、この日は反撃せずに担任に申し出ていた。その日の夕方、自殺。
941029?br>舩島洋一くん
自殺
 学校から怪我をして帰ってくることがあり、三者面談の時に担任に相談していた。洋一くんからの訴えに、担任はいじめがあったかどうかをクラスでアンケートをとるが、何も出てこなかったため、みんなの前で洋一くんに謝らせた。 
941127
大河内清輝くん
自殺
怪我をしたり、金を持ち出したりすることがあり、親が何度も問うが何も話さなかった。清輝くんの心をほぐそうと家族でオーストラリア旅行にも行ったが、打ち明けなかった。祖母の金を盗ったことを知って清輝くんの頬を平手打ちし蹴った。命じられて自転車盗をした家には父親が一緒に謝りに行った。親や親戚からの相談に「精神カウンセリング」を勧めた。「いじめ・不登校対策委員会」に清輝くんのトラブル3件が報告されたが、具体策はとられなかった。清輝くんを問題グループの一員と考え引き離そうとしたが、「仲間といると楽しい。離れたくない」と言われて踏み込めなかった。いじめが続き、清輝くんは、視線が定まらなかったり、本人の意思では体のゆれが止まらなかったりするなど、精神的に不安定な様子を学校で見せるようなになっていた。
950531
池水大輔くん
自殺
腹が痛いなどと訴えるようになった。大輔くんの異変に気づいた両親が学校にいじめを訴えた。転校3日目の暴行恐喝事件は加害者親子が金を返して謝ったから一件落着とし、いじめの訴えを取り合わない。精神内科の受診を勧めた。 
951206
鈴木照美さん
自殺
いじめられてから「体調が悪い」と保健室に行くことが多くなった。
照美さんは泣いて帰宅し、「いじめられて、もう学校に行きたくない」と母親に告げた。
母親は「学校へ行きたくない」という照美さんを心配して担任に相談するが、「時期的なもので心配ない」と言われる。担任はいじめていた生徒に謝らせた。
自殺の当日、登校をしぶる照美さんを生徒指導主任が訪問し「少しぐらいのことにめげずがんばろう」「体調が悪くないなら学校へおいでよ」と励ました。
照美さんは、「午後には登校する」と約束したが、主任が学校に戻り、母親が外出したすきに自殺。
960122
大沢秀猛くん
自殺
家庭訪問の際、秀猛くんは「いじめられている」と泣いて訴えた。母親が担任に尋ねると「何人かの生徒と行き違いがあります」「秀猛くんにもそのような(ガキ大将)ところがあります。しばらくすると中学生の自覚ができ、仲良くやっていけるでしょう」と回答。担任は、秀猛くんとBくんの2人に説諭。事件のたびBくんの言い分を容れて、いじめと認めず、叱っただけだった。秀猛くんにも「口が悪い」と咎め、解決とした。秀猛くんは担任に相談しなくなった。(1年、3年時に担当)
960918
村方勝己くん
自殺
親に無断で学校を休んだ。教師からの連絡で親が問い質して初めて暴行されたことを打ち明けた。両親は、勝己くんに暴行を働いた少年のうち1人とその両親を呼びだして話す。
最後に、加害者の母親は息子と勝己くんを握手させて終わった。その後、勝己くんは自殺。
学校は上級生が下級生に集団的な暴力を振るうのを知っていた。2年生時の担任は、勝己くんが暴行を受けているのを目撃して、「やめなさい」と言ったが、その後は特別な指導は行わなかった。途中で気を失うほどひどい暴行が3回も繰り返されていた。
961200
中3女子
性的暴行
女子生徒は「男子生徒が胸やお尻を触ってくる」と担任に訴えていた。 加害者名や他の被害者名を確認したが、養護教諭にしか言わなかった。クラス全員に「生徒同士でも体を触ったらセクハラになる」と注意しただけだった。担任の発言以降、さらに行為がエスカレートし、強姦事件に発展する。
990427
中卒男子
自殺
中学2年から不登校になる。ベランダから飛び降りようとしたことがあった。死ぬ前に言動がおかしいことがあった。学校のすぐ横が自宅だった。環境を変えるために一軒家を購入して引っ越し、Kくんの希望で犬を飼ったりした。いじめられてオドオドしていたため、「態度がおかしい」と担任から殴られた。不登校になってから担任は一度も家庭訪問せず、毎日「学校に来るように」と電話。修学旅行は「問題をおこされたら困る」と言われた。親にも殴られたことのなかった男子生徒にとって、担任の暴力はショックだった。中学卒業後は家を出て、住み込みで働くと言っていたが、家出した足で自殺。
991015
高1女子
自殺
自殺の前日、女子生徒は同級生にカッターナイフを振りかざした。 担任は家庭訪問し、両親に「当分、学校を休ませるよう」勧め、「通信制高校を選ぶ道もある」と話した。女子生徒は、担任と両親との会話を2階で聞いていた。翌日夜、自殺。
991126
臼井丈人くん
自殺
11月に入ってから不登校になっていた。両親は、下着を無理やり脱がされたことを、不登校になってから、丈人くんの同級生に聞いて初めて知った。下着の件は本人が「大事にしないでほしい」と頼んだことから具体的な対策をとらなかった。丈人くんが休んでから家庭訪問をするとともに生徒2人を指導。 
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中卒男子
恐喝事件
暴行を受け、2度入院する。預金引き出しに気づいて、母親は、学校、警察に相談。しかし、具体的なことを本人が話さないため相手にされない。学校は警察に届けるよう指導。グループの問題行動を把握しながら、監視すること、警察に連絡、加害者の保護者に連絡するくらいしか手だてがなかった。学校と警察に相談した夜、リンチに合う。
金を渡してもこんな目にあうのだから、金を渡さなければ殺されるかもしれないと、父親の保険金や借金で金を払い続けた。