「カミサマ、カウカ?」の少年から
沢木耕太郎原作の「深夜特急」というドラマをご存知だろうか。
若き日の作家沢木耕太郎がインドからイギリスまで一人、バスの旅を続ける話なのだが、その旅の途中、バナーラスのカンジス河ほとりで、彼は12、3歳ほどの一人の少年に出会う。少年はガンジスにやって来る観光客を相手に、ヒンドゥー教の神々の小像を売り歩いている。沢木はここに数日間滞在するうち、この少年としばしば言葉を交わすようになった。少年が慣れた日本語で「カミサマ、カウカ?」と盛んに話しかけてくるからだ。
ある日、いつものように少年と沢木が
少年「カミサマ、カウカ?」
沢木「いくら?」
少年「500ルピー」
沢木「高い!」
という会話(?)を繰りかえしながら歩いていると、傍らを登下校中の小学生たちが楽しそうに話しながら通り過ぎた。それを見た沢木が、ふと思いだしたように少年に尋ねた。
「Do you go to school?」
少年は、
「No」
と首を横に振る。
ブラウン管の中のこの少年は、私が南インドで出会った子どもたちを、再びまざまざと思い出させた。
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