2003年７月（7月16日改訂）

労働基準法等改正と憲法調査会

大脇　雅子

　デフレ不況下における、深刻な雇用・労働情勢は、まったく改善の兆しが見えない。りそな銀行への公的資金１兆９,６００億円投入など、小泉内閣の金融経済政策は対症療法的で一貫性を欠き、日本の将来展望は全く見えていない。そして、９・１１同時多発テロ以降、アフガン・イラクにおいて、米国の戦争行為による多くの尊い人命が失われ、日本では「有事法制」関連３法案が約９０％の賛成で衆議院を通過し、６月６日に参議院で約８５％の賛成で採決された。

　その後、小泉内閣は、米軍のための武器・弾薬、兵員等の輸送を受け持つという「武力行使」を任務とする自衛隊をイラクに派遣するための「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動実施に関する特別措置法案」（いわゆるイラク新法）の成立を強行しようとしている。衆議院を通過し、現在参議院で審議中であり、２２日の委員会採決が見込まれている。

　以下、国会での労働法と憲法をめぐる状況を報告する。

１、労働法制改正について

　完全失業率は、昨年来５％台半ばの高止まり状態で、とりわけ新規高卒者の就職内定率は史上最低で、企業はますますリストラ策を強行し、正規雇用労働者から非正規雇用労働者への置き換えが進行している。

　この傾向は、１９８７年改正による労働法制の規制緩和政策の展開に符合し、現在第１５６回通常国会に提出された労基法・労働者派遣法の改正法案は、労働者の保護を切り捨て、企業にとって使い勝手のよい「柔軟な労働力」の活用をいっそう推進する方向に雇用を推し進めるものである。

　いったん失業した労働者の再就職は容易ではない。とりわけ中高年労働者の場合、基本手当の受給期間中必死で再就職活動をし、しかも離職前の賃金と比べて３～４割減額してもなお、再就職できない者が多いと言われている。さらに、若年労働者は正規雇用としての就職が困難で、パートタイマー、フリーター、派遣スタッフ、アルバイト、契約社員として働くことを余儀なくされる傾向にある。若年世代の完全失業率もこの間、１０％台半ばと高止まりしている。

（１）雇用保険法改正について

　まず、雇用保険法は、失業者の生活のセーフティネットとして、早期の再就職を実現することを目的とする法律である。枯渇する財政がもっとも大きな改正理由とされ、あわせて給付の見直しが行われた。しかし、改正には次のような問題がある。

①　厳しい雇用と失業の長期化によって、雇用保険財政は、労使の保険料負担者が激減し、基本手当受給者が激増することで逼迫してきた。改正法による制度改正は、あくまで対症療法であって、根本的な対策にはなっていない。

②　前回の法改正では、早期再就職を促進するために、離職理由による給付水準の見直しを中心に、「非自発的理由」による離職者には給付日数を長くし、自発的離職者には短くした施策を促進するものであったが、今回の改正は、いっそうその傾向を徹底するもので、基本手当日額より再就職時の賃金が低いという賃金の逆転現象の解消が打ち出されている。それはまさに「基本手当」の切り下げであり、保険制度を信頼して在職中に保険料を負担した受給者に対してあまりにも冷たい仕打ちである。一方、３５歳～４５歳の世代の非自発的離職者への給付改善は当然である。

③　今回のような「常用以外の早期就業者に対して基本手当日額の３０％上乗せ」策は、「不安定雇用」を生み出すことにほかならない。「常用」雇用へのインセンティブを考えるべきが筋であろう。

④　今回の改正では、通常労働者とパート労働者との給付内容を一本化し、「倒産・解雇等」と「それ以外」の離職理由による給付内容の改定がなされ、「倒産・解雇等」の離職理由が従来の通常労働者の水準通りとし、「それ以外」の離職者は「パート労働者の水準」にした。このことが、なぜ「多様な働き方への対応」なのかまったく意味不明である。

⑤　まず企業こそが、雇用に関する社会的責任を明確に果たすべきである。雇用保険制度の在り方は、生活防衛のために「とりあえず・緊急避難的」に低賃金や劣悪な労働条件による雇用をやむを得ず選択する労働者を減少させ、解消する政策でなければならない。いわゆる「常用雇用」、「長期・安定的な雇用」を継続し確保するための総合的な雇用創出のための政策とセットで考えられなければならない。

（２）労働基準法改正について

　今回の改正内容は、次のようである。

①　有期労働契約について

　有期労働契約の締結に際して、「期間の上限」の原則が、現行の１年から３年に延長された。労働者にとって「有期」の労働契約を結ぶことは、真に有期であることが業務上も必要であり、処遇において優遇的なものであって、しかも労働者と使用者の意思とが合致したときには、契約形態として労働者にとってメリットがなければならない。すなわち、有期契約締結自体に「合理的理由」が求められる。

　しかし、労働者が長期に安定して働きたいとの希望をもち、「期間の定めのない契約」の締結を申し入れても、使用者が決して応じようとしない現実を直視すると有期労働契約形態は、労働者にとってのメリットを何ら見つけることはできない（例、「契約スチュワーデス（客室乗務員）」問題等がこれを示している）。女性労働者たちが長い裁判闘争の苦難の末に「公序良俗違反」で違法であることが確立した「女子若年定年制」・「女子結婚退職制」が、形を変えて「合法的なもの」として復活するおそれがある。

　これまで、有期の期間を「雇用保障期間」として積極的に評価する学説があるが、それは、あくまで１年を超える有期契約の締結を違法とする労基法の原則条項の下で、労働者の保護を少しでも実現する意味で打ち出されたものである。安心して働き続けるためには、「長期安定雇用」を保障することこそ重要である。契約期間は労働者を拘束する性質をもつ一方で、不用になったらいつでも「期間満了」を「活用」して、労働者を雇止め（解雇）できる。こうした有期雇用の上限延長は、労働基準法の「保護法」としての趣旨にもとるものである。

　この点に関して、衆議院での修正により、附則第１３７条が設けられて、「期間の定めのある労働契約（一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が１年を超えるものに限る。）を締結した労働者は、……当該労働契約の期間の初日から１年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。」こととなった。すなわち、有期契約の期間が１年を超えて、２年の場合あるいは３年の場合に、労働者は、１年を超えればいつでも自由に退職できる権利を保障するものである。しかし、この場合でも１年間、あるいは１年以内の有期契約の場合には、その期間中は原則として「退職できない」のであるから、退職を申し入れたのち使用者から損害賠償が請求される事例など、個別紛争が発生することも予想される。「高度に専門的な知識・技能を有する労働者」は、上限期間５年とされているが、この契約期間中の退職・解約は原則としてできないこととされており、今回全く修正がなされなかったことで大きな課題が残った。有期労働契約を締結するに際しては、「退職・解約をめぐる協議条項」を必ず盛り込むなど、トラブル防止のための取り組みが重要である。

②　解雇ルールに関して

　労基法第１条が明記する労働条件の「基準」は、労働者の「人たるに値する生活を営むための必要を充たす」ものでなければならない「最低基準」である。だから、使用者の「解雇できる権利」を盛り込むことは、この第１条の趣旨に明確に反し、労働基準法の「変質」をもたらすものである。政府原案には第１８条の２で、「使用者は……労働者を解雇することができる」とあったが、衆議院での修正協議により、文言は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と修正された。

　そもそも、第２０条で「解雇予告」制度を定めたのも、民法第６２７条に定める期間の定めのない雇用契約の解約に際して、予告期間「２週間」では労働者の保護に欠ける実態を直視して、わざわざ使用者に「少なくとも３０日前」の予告を要件として義務づけていることをみても、使用者は「正当事由」がある場合には、「解雇予告」の方式で労働者を「解雇できる」ことを示している。解雇予告制度は、「解雇のルール化」の手法として、これまでも労働者を保護するために役立ってきた実績もある。

　「解雇紛争防止のため」に、使用者は労働者を「解雇できる」と条文に入れる必要性と意義はまったくなく、政府側も「まず解雇ありき」という事態が広がることを恐れ、誤解を与える危惧を認め、判例による「解雇権濫用法理」を明文化することになった。　これまで判例で確立してきた「解雇権濫用の法理」は、使用者は場合によっては労働契約の解約の権利を行使できるが、その際、民法第１条第３項にいう「権利ノ濫用ハ之ヲ許サス」の原則に従い、「濫用」は許されないという当然の事理を確認してきたものである。裁判実務における積み重ねが「解雇権濫用の法理」であり、改正法案第１８条の２の条項の文言で判例法理を明確にしたとはいえ、「その権利（解雇権）を濫用したものとして」の文言を挿入したことは蛇足といえよう。

　審議において、松原労働基準局長解雇理由の立証責任は主として使用者側にあることを認め、附則帯決議には次の文言が明記されている。「本法における解雇ルールの策定については、最高裁判所判決で確立した解雇権濫用法理とこれに基づく民事裁判実務の通例に則して作成されたものであることを踏まえ、解雇権濫用の評価の前提となる事実のうち圧倒的に多くのものについて使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判上の実務を変更するものではないとの立法者の意思及び本法の精神の周知徹底に努めること。」

③　裁量労働制について

　仕事の性質から、仕事の完成方法、業務、質的内容、労働者の達成感・満足感などを考慮して、働き方について「労働者の裁量」に任せた方がよい場合が裁量労働採用の基本原則である。しかし、裁量労働制をとる場合に、業績主義・成果主義に走るあまり、労働者自身の健康や家族的責任など、成果を求める上で長時間労働や強度のストレスが発生する働き方になったり、使用者は、それまでの時間外等の割増賃金の支払いを免れることになることが危惧される。

　とりわけ、企業の全体の重要な運営方針の決定箇所（本社・事業本部等）で「企画、立案、調査及び分析」の業務を担う「企画業務型」裁量労働制を導入した９８年改正の経緯をみれば、今回の改正は、対象事業場による歯止めの要件を緩和し、労使委員会による決議の要件の緩和などが行われた。これは労働者の働き方における保護を強める方向ではなく、使用者の際限のない成果主義・効率主義を求める方向が強められており、過労死・過労自殺の増加が予想される。

（３）労働者派遣法改正について

①　対象業務の拡大について

　労基法第６条の中間搾取の禁止、職安法第４４条の労働者供給事業の禁止原則は、労働者保護の観点から当然であり、基本的には、「労働者派遣」の形態での働き方は、決して基本的な働き方として容認できるものではない。あえて派遣労働の存在理由を認めるためには、「専門性・特殊性」を発揮できる業務で、労働者の能力・特性を公正に認める処遇がなされた場合だけにとどめられるべきである。
　今回の改正は、さらなる「規制緩和」そのもであり、これまで「違法」状態にあった現実を「追認」するものにほかならない。「派遣」を認めることで、同じ職場で働く正規雇用労働者との置き換え、他の通常の労働者やパートタイマーの労働条件の切り下げなどに結び付くものである。

②　臨時的・一時的業務の派遣期間制限の延長

　「臨時的・一時的」業務であれば、短期間しか労働者の受け入れの必要はないはずで、それを上限３年に「期間延長」することは、実は業務が「臨時的・一時的」ではないことを証明するものである。今回の法改正は、正規雇用労働者の派遣労働者による「置き換え」すなわち世紀雇用の派遣による代替化を推進することになる。

③　紹介予定派遣の制度化について

　今回の法改正で、「紹介予定派遣」が導入された。この導入が現下の厳しい雇用失業情勢を改善する方策として、「雇用のミスマッチ解消」に役立つと説明されていることは大いに疑問である。企業がこの間のデフレ不況を理由に、中高年労働者をリストラで切り捨てる一方で、「即戦力」を求め、高卒予定や２０代の若年世代を正規雇用として採用しない人事政策こそが問題とされなければならない。将来を担う世代を育てようとしない企業が「人材こそ企業の財産」というのはまったくの欺瞞である。たとえ「紹介予定派遣」で、少数の労働者が「ミスマッチ」を解消できても、この仕組みを使った試用期間の空文化と労働者の差別・選別がもたらす悪影響を見逃してはならない。

④　派遣労働者の「雇入れ」義務について

　今回の改正法案では、派遣先が派遣期間の制限を超えて派遣労働者を使用しようとする場合及び派遣期間に制限がない業務に３年を超えて同一の派遣労働者を受け入れている派遣先が、当該業務に労働者を雇い入れようとする場合には、その派遣労働者に対して、派遣労働者が希望する場合には雇用契約の申込みをしなければならないこととしている。実際に、派遣期間の制限を超えて当該派遣労働者を派遣先が必要とする場合や、派遣期間の制限のない業務で、新たに労働者を雇い入れようとする場合がどれほど現実に生じるかは疑問であるが、「雇用契約の申込み」に際して、労働条件の内容や長期に安定した働き方になるかどうか、解決すべき課題は多い。

⑤　「物の製造」業務への派遣解禁について

　確かに「物の製造」の現場では、「構内下請け」や「人材さん」と呼ばれる請負形態での就労が蔓延しているが、物の製造業務への派遣の容認は、この違法状態を追認し、合法化させることになり、労働者供給事業を禁止する職安法第４４条を有名無実化するものである。とりわけ、現場の安全衛生の整備が重要となる。医療現場における医師や看護師等の派遣は、チーム労働としての一体化が重視される現場での具体的対応が問題となろう。

（４）今後の課題

　厳しい雇用情勢であるからこそ、雇用創出を含む雇用の維持と確保政策が喫緊の課題である。あれほど論議を呼んでいた「ワークシェアリング」について、政労使三者で合意が形成され、厚生労働省が積極的な助成策を打ち出しているにもかかわらず、その後の進捗は定かでない。

　雇用確保のための緊急避難的ワークシェアリングだけでなく、労働・家庭生活の両立を図るため、時短を前提としたワークシェアリングが促進されなければならない。ワークシェアリングの積極的位置付けによる「整理解雇５要件」や、採用における「年齢差別の禁止」、同一、同種、同価値の労働をする正規労働者と非正規労働者との「均等待遇原則」の実現など、労働者の雇用におけるあらゆるステージでの差別の禁止と平等取扱いの保障がなされることが急務である。社民党は、これらを明文化した「雇用継続保障のための法制大綱」を策定している。

　また、企業形態による雇用創出だけでなく、「協同労働の協同組合法」制定も重要である。

　さらに、倒産・リストラ等によって企業が人件費削減を進める方策を進め、正規雇用労働者をパート・派遣・臨時労働者等に置き換えることも引き続き増加している（今や「パート労働者・派遣労働者等１５００万人時代」といわれる）。生活のステージに応じ、正規・非正規を労働時間に比例した権利保障の下に、差別を受けることなく、双方向に転換可能な制度の確立も喫緊の課題である。自分のライフスタイルに合わせた働き方を選択できることはきわめて重要で、仕事と家族的責任を両立するための育児・介護休業法等環境整備のための法制はさらに充実させなければならない。

　野党４党で「パートタイム労働者等の均等処遇を実現する議員連盟」を結成し、昨年１２月に『短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案要綱』を発表したが、ぜひともパート労働者の均等待遇を実現したい。ＩＬＯ１７５号条約の早急の批准も課題である。

２、憲法をめぐる問題

（１）日本国憲法を取り巻く状況

　２０００年１月に国会に憲法調査会が設置された。この調査会は、憲法について包括的総合的に調査研究することを目的とし、議事運営委員会の申し合わせにより、衆参議長に対し、５年（２００５年１月）を目処に報告書を提出することになっている。また、調査会は法案の提出権がないいことを確認している。１９５７年内閣に設置された憲法調査会では、社会党、共産党が不参加を貫いたが、その時とは異なり、今回は、全党が調査会に参加している。

　これまでの衆議院憲法調査会の活動については、憲法制定時の状況について、この国の機構、「国のかたち」について多くの参考人に対する質疑が行われ、ドイツ、スイス、ロシア、オランダ等のヨーロッパや東アジアなどに対する３回の海外視察と６回の地方公聴会が開かれている。また、「基本的人権の保障に関する調査」、「政治の基本機構のあり方に関する調査」、「国際社会における日本のあり方に関する調査」、「地方自治に関する調査」をテーマに４つの小委員会にわかれて論点ごとの詰めを参考人質疑と自由討論により行われている。２００２年１０月には『中間報告』が出され、参議院の憲法調査会より速度も密度も濃い審議が積み上がっている。中間報告のまとめによれば、委員の党派による傾向を反映して改憲論が多数を占めている。

　参議院憲法調査会は、隔週水曜日開催をルール化し、「この国のかたち」、「各界各層との意見交換」について各有識者の意見陳述と質疑や経済・労働界や学生等の意見陳述を経て、「統治機構」、「人権」についての参考人質疑、３回の中央公聴会とともに、アメリカ、ドイツ、フランス、スペイン、イギリス、ＥＵへの３回の海外視察を経て、５月７日より、「平和主義と安全保障」のテーマで参考人質疑に入った。いずれも委員の自由討議においては、改憲への傾向が強く滲み出ている。参議院では中間報告の作成は予定されていないが、「平和主義と安全保障」は、「前文と第９条」を終わり、テーマとして、「1�憲法と自衛権、自衛隊、2�憲法と集団安全保障、集団自衛権、日米安保条約、3�憲法と国際連合、国際法、4�憲法と国際協力、憲法と緊急・非常事態法制の課題で参考人質疑が進んでいる。また、２院制など参議院にかかわる特殊なテーマは小委員会方式として平行的に論点整理を行う進め方が検討されている。今後は自由討議の時間を多くとることが合意されており、衆参ともに改憲論に漸次比重がかかり、論憲論もあり、改憲論に傾斜して護憲論＝改憲反対は少数意見である。

　重要なことは、有事関連法案、教育基本法改正法案、住基ネットと個人情報保護法等、憲法の理念を空洞化する個別法の制定や改正が進行しており、さらに盗聴法、日の丸君が代法等含め、実質的な改憲作業が進められていることに注意を払われなければならない。

　憲法は、根源的には国民の権利義務の土台と枠組みを規定するものであり、各分野別の個別法により憲法の理念は具体化される。したがって、憲法を活かす法体系の整備なしに、憲法を暮らしに活かすことはできない。憲法の精神や原理をないがしろにする法律の策定は憲法体系を空洞化するものである。

　武力をもたず、国際紛争を解決する手段としては武力行使や武力の威嚇をしないこと、平和的対話と信頼醸成を国の安全保障の基礎に据えていくこと、平和創造と多元主義そしてジェンダー・フリーの国家像を憲法と平和的生存権理念を具現化するビジョンとして追求する日本という国の在り方こそ、日本が国際社会に名誉ある地位を占める基礎である、と思う。

（２）今後の課題

　現行の日本国憲法の未来を拓く作業が急務である。平和憲法は、わたしたちの暮らしにどのような効果を及ぼしてきたのか、平和活動を担う広範なＮＧＯの心棒として働いてきた憲法の国際社会における役割を今こそ多面的、重層的に検証すべきであり、その作業を通じて改めて戦後果たしてきた平和憲法の先駆的意義と役割を人々の共通の認識と思いにすることができよう。

　「職場に憲法を」と指摘されて久しいが、職場の人権侵害問題に対しても、裁判闘争を含めて憲法を実現する形での権利闘争がいっそう力強く展開されなければならない。　

　現実と憲法の乖離が語られる今、国際社会における紛争の平和的解決と法治の世界を創造するために、先駆的意義をもった日本国憲法の理念に現実をどう近づけていくか、そのための行動を継続する必要がある。戦争の惨禍を経て５６年間、生活の中で血肉化してきた憲法の理念こそ、国民がどのような「戦争の論理」を手にしようとも、人類普遍の価値あるものとして、わたしたちが自ら確信し、行動の論理として掲げていくことこそ今もっとも必要なことである。

大脇雅子国会報告Internet版

労働基準法等改正と憲法調査会

大脇 雅子

１、労働法制改正について

（１）雇用保険法改正について

（２）労働基準法改正について

① 有期労働契約について

② 解雇ルールに関して

③ 裁量労働制について