のじれん行動報告
黒岩大助
晩秋。まさにあっと言う間もなく短い秋。小さい秋などみっける暇もない。路上にはいつくばる仲間にとって1年は2つの季節しかない。5月の春と10月の秋の間の過酷な夏と、現在、迫り来る残酷な冬である。
「仲間の生命は仲間自身の力で守る」闘い=越冬闘争に向けて着々と準備が進められている。「アリとキリギリス」―「イソップ童話は反革命である」と、昔ある寄せ場の活動家は言ったが、一生懸命働いても、働かなくてもいともたやすく寒空の下に放り出されるのが昨今である。さて、我ら「ホームレス」、1年の半分もあるこの季節を生き抜く算段に忙しくしよう。
★9月9日(木)
全都実(全都野宿労働者統一行動実行委員会)に結集する新宿、山谷、渋谷、隅田川、池袋、東京駅など都内各地の仲間、自立支援センター早期開設を求め、場所問題の責任区である千代田区と団体交渉。対応にあたった生活福祉部長から「冬までの開設(7月、東京都福祉局との交渉で名前までに開設の目処をつけると確約)に向けて前向きに協議している」との言質。
★9月20日(月)
仲間の洗濯や入浴のために渋谷駅頭でカンパ行動。渋谷署公安刑事が執拗に妨害、「警告に従わない場合は検挙する」とわざわざ事務所に留守電する念の入れ様。その後銭湯で洗濯し、風呂につかり、夏の間たまりにたまった垢を洗い流す。
★9月21日(火)
東京都、多摩地区などの森林整備作業員に野宿者や日雇い労働者を積極的に採用する方針を都議会で明らかに。新聞報道によると、政府の「緊急地域雇用特別交付金」約2千億円の内、182億円が支出され、本年度は述べ360人、3年間に目標的3万人を採用する予定。
★9月26日(日)
品川八潮団地広場で障害者が中心になって企画した共生・共産マラソンに参加。仲間が積極的に呼びかけ、交通誘導や会場整理などを手伝九弁当隊ものじれん屋台として登場。売り上げは過去最高だったが、材料を買い過ぎたため大幅赤字。うーむ。
★10月1日(金)
全都実、自立支援センター開設問題について、特別区人事厚生事務組合(特人厚)及び江東区に対し、申し入れ書の提出と代表交渉。23区の共同事業などを取りまとめる機関である特人厚(特人厚の運営する宿泊所を、恒久施設によるセンター本格実施のつなぎとして活用する案が現在検討されている)は、最初「23区で決定しなければ動けない」と傍観者的な態度だったが、仲間の追及により「センター事業早期開始の努力はする」「決定すれば1週間でも事業開始の準備はする」と前向きな回答。
江東区は、宿泊所を自区内に多数持っているにも関わらず、センター開始に消極的な姿勢を取り続けている区で、我々が出向いてもわけがわかっていない様子。「うちは当たり前のことをやっている」と居直り、自区内宿泊所のセンター活用については「決まってからでなければ動けない」と何もやろうとしない姿勢を露呈させる。「センター開始に賛成と言った以上責任をもってやれ!」という仲間の強い声に、「やるのは当たり前です一との最後の言葉。
★10月7日(木)
全都実、千代田区交渉。「先月29日の自立支援センター対策委員会(場所問題を検討するため野宿者集中区など11区の福祉部長で構成)では、待人原宿泊所などを活用してつなぎ(暫定)事業を行うことを決定した」「4か所の宿泊所を持つ区(3区)とこれから協議に入り、今月中にもう一度対策委員会を持って来月初旬の全体部長会に報告する」「受け入れ区のゴーサインが出れば今月中に目処が出るでしょう」というセンター年内開設に向けかなり前向きな言質をかちとる。
★10月14日(木)
宮下公園の下のベンチで寝ていた佐藤さん死亡。享年45歳。死因は血管障害による心不全。亡くなる数カ月前に渋谷福祉事務所を通じて病院に行ったが異常が検出されず、亡くなる前日と前々日にも新宿福祉を通じて病院に行ったが、検査、入院等の措置は取られなかった。病院が負荷心電図による検査を行い、適切な治療をしていれば無念の路上死を迎えずにすんだかもしれない…
★10月15日(金)
自立支援センターの開設問題に最後の決着をつけるための都庁デモに、全都、全国から600人の仲間が大結集。集合場所の新宿柏木公園に全都の仲間と、大阪、名古屋、横浜、川崎、神戸、沖縄など全国各地から駆けつけた150人もの仲間が集結し、都庁に向けて怒涛の進撃。都福祉局との代表交渉では、センター推進の責任者である生活福祉部長から「関係者の合意さえできれば、後1か月程度で開始の決定ができるだろう一という今までにない具体的な回答を得る。
★10月16日(日)
文京区民センターで反失業全国集会が、同実行委主催、日雇全協(日雇い労働者の全国組織)呼びかけで行われ、全都、全国の仲間500人が参加。年々厳しくなっていく仲間の状況を改善していくため、「1)来年、政府に攻め上ろう! 2)排除と抗して闘おう! 3)団結して行動しよう!」の3点の実現に向けて全力を尽そうという集会基調を全体で確認。連帯アピールや全国各地の仲間の報告などの後、最後に「未来への希望ある展望を自らのカで切り開いていく!」と締めくくられた集会決議を熱い拍手で採択する。
★10月28日(木)
全都実、5度目の千代田区交渉。生活福祉部長からこの間の経緯と見通しとして「特人原宿泊所を利用しての事業開始については、部長会でも実現に向けて協議している」「特人厚にもその方向は了承してもらった」「月末までに23区のブロック(5ブロック)ごとの会で実現に向けた検討、協議をしてもらい、その結論をもって来月開催される対策委員会で全体で確認していきたい」と説明。また「もめるような区があれば、直接区や私が乗り込んで説得に当たりたい」との決意を示し、年内開設への「関係者の合意」に向けて最後の詰めに入っていることを明らかにする。
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