仲間による夏祭り
高畠 徹
今年の夏は、のじれんで初の試みとして渋谷で祭りを行うことになった。
東京地方の今夏は、めずらしくずっと晴天が続くなか、祭りの当日のみはなぜか朝から洪水警報が出るほどの大雨。予定外の天候に、これでは大幅な規模縮小は避けれられないという状況になってしまった。
が、準備段階では皆ずぶ濡れで大変な思いをしたが、天気は徐々に回復。祭りが始まるころには雨はすっかり上がってしまった。また、雨やどりで場所を宮下公園から、少々狭い児童会館前に移したことで、かえって親密さを増した結果になったかもしれないと思わせるような和気あいあいとした祭りになった。
今回の祭りでは、もうひとつ初めての試みがあった。それは仲間が発案し、作られたTシャツの販売である。他の稿で詳しく触れられると思うが、今日の夏祭りが初めてのお披露目だった。これにかかわった人たちの準備には大変なものがあった。資金的にも苦労が多く、売れるかどうか不安だっただけに、好評で賑わう販売ブースや、当初の予想を上回る売れ行きを見て、一同胸をなで下ろした。少し話がそれるけれど、夏祭り会場で、このTシャツは特に女性に人気があった。やはり、プロのデザイナーによるデザインと、安売りTシャツとの違いは、ファッションに敏感な女性には一目でそれとわかるのだろう。Tシャツが好評だったことは、夏祭りでうれしかった事の一つである。
悪天候により予定から1時間遅れで始まった祭りの最初に、亡くなった仲間の追悼会が執り行われた。
渋谷では今年、寒さがやわらいで来た春から夏にかけて、相次いで4人の仲間が亡くなってしまった。夏祭りの本来の意味である死者の野辺送りという意味と込めての追悼会である。亡くなった仲間達よ安らかに!
そして、普段よりちょっと豪華なメニューの炊き出しと、ささやかなアルコールを振るまい、祭りはすすむ。面白いのか面白くないのかよくわからない漫才や、酒の入った仲間同士でわいわいがやがやと、祭り独特の喧騒がそこにある。すこし高揚した気分が暗い日常を忘れさせる。
今回は、渋谷でははじめての祭りということもあって、なにかと準備では気を揉むことも多く、楽しんでもらえるかどうかを一番心配していた。普段の寄り合いと同じ場所の児童館前では祭りらしくならないのでは、という不安をよそに、集まった二百人の仲間が楽しそうにイベントに興じる仲間達を見て一安心。良かった、苦労して準備した甲斐があったというものだ。
だが、気になることもなかったわけではない。財政困難のために予算を絞ったことが、チューハイのアルコール度数の薄さや、変化の少ない出し物にもろに反映しているのは、誰の目にも明らかだった。
あとは気になったのは、監視の存在。いつもより目立つ感じですぐ後ろに立っている私服の刑事たち。まるで存在を誇示しているかのように、これ見よがしに監視する彼ら。祭りで酒が入った勢いで暴動に発展するとでも思っているのだろうか。でも、彼らの思惑は空振りだった。仲間達は彼らの思っているようなアウトローではなく、分別のある大人だった。そのうちにいつのまにか、彼らの姿も見えなくなっていた……。悲しい人達。
今年の夏祭りは、準備期間が少なかったことが最大の反省点といえるかも知れない。しかし初回としてはまずまずの出来だったと思う。のじれんのめざす「野宿者は、なったら終わりのただ我慢するだけの棄民ではない。人間らしい楽しみも当然必要だ」という考えのごく一部でも達成されたのなら幸いである。
このささやかな成功を糧として、次回以降はもっと楽しく、盛大に行いたい、などと、片付けながら心はすでに来年に飛んでいるのであった。
みなさん、来年もカンパをよろしく!!
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