のじれん・通信「ピカピカのうち」
 

Home | Volume Index | Link Other Pages | Mail Us | About Us | Contact Us   


<特集:野宿者排斥を許すな!!>

       
 代々木撤去問題報告  
                                   中郡千尋



はじめに:代々木公園立ち退き問題をめぐる経緯
 今年春、代々木公園管理事務所は、公園の渋谷門〜南門地域で、環境植栽工事及び南門の陸橋の耐震工事を行うと発表した。
 
 工期は陸橋が平成14年
 10月〜平成15年3月、環境植栽工事が同じく14年11月
〜3月。それまでに、当該地域に住む約80人の野宿者に対し、公園側が用意した代替地に移るよう求めてきた。
 
 公園管理事務所は、昨年末から今年の2月にも、原宿門〜渋谷門の地域ですでに同様の工事目的とした立ち退きを行っており、代替地を用意した排除勧告は今回が2回目である。

 前回は工事区域に住む約40人がさしたる抵抗をすることもなく、意に反して代替地へと移らざるを得なかった。
 代替地に移った住人たちは、当初「立ち退きたくない」
と話していたが、のじれんも結果として、それらの声を反対運動の形成に結びつけることが出来なかった。
 
 その立ち退きから間髪おかない形での、今回の立ち退き勧告に、わたしたちがこれ以上黙っていれば、問答無用の野宿者排除・移転という暴挙が繰り返され、どんどん公園側の都合のよい、しかし生活には適していない「代替地」へと、仲間たちが押し込められていくことは目に見えていた。
 
 そこで私たちは当該地域に住む仲間たちとともに、今回は代替地の条件交渉に安易に乗らないことで、公園側の意図に対する抵抗軸を構築することを獲得目標とし、抵抗運動をおこなってきた。
 
 そして、仲間たちが団結して声をあげることができるように、のじれんも一つの方針の元に全体でまとまってこの問題にあたっていくことを確認した。

写真のページ NO.4 NO.5 NO.6 NO.7

8月31日 寄り合い 結集 約50名
 1週間前から当該地域での集中話し込みを行い、寄り合いへの参加を呼びかける。
 前回の立ち退きの経緯もあり、のじれんに対する批判や消極的な反応も多かった。
 
 しかし、結集の程度から見て、この工事・立ち退き問題への関心は全体として高かった のだろう。
 寄り合いでは「のじれんがしっかりしなかったから前回抵抗もなく移らざるを得なかった」などさまざまな声を 受けた。

 最終的に「個別バラバラでは撤去に立ち向かっていくことは難しい。同じ問題に直面するもの同士、まとまって動い ていこう。」と確認した。

9月6日  要求書提出 結集 7名
 台風接近による本格的な雨で、当該地域の住民の結集はわずか 7人。大衆行動は雨に弱い。

 要求項目は次の3点。
 1)工事と それに伴う立ち退きが行われれば、確実に表れる仕事・生活環
境の悪化についてどう考えているのか明らかにすること。

 2) 当該地域の住人との交渉に決着がつかぬまま、一方的な工事を 進めないこと。

 3)上記2に基づき、団体交渉を行うこと。
 
 提出の際、東部公園緑地事務所の副所長は開口一番「前回の工事ではみなさまにご協力いただき、ありがとうございました。」 と発言。
 公園側の野宿者に対する意識の低さを思い知らされる。

9月13日 寄り合い
 要求書に団交の日時を13日と提示したが、公園側が回答を用 意できないとのことで、団交は20日に。
 
 急遽13日に寄り合いが持たれた。寄り合いでは代替地の条件交渉に乗らず、ねばればねばるほど、こちら側に良い条件が引き出せること、次週の団交 に結集を呼びかけてほしいことを確認。

 当該地域の仲間から、「図面を持った公園側の職員が個別に立ち退きを迫ってきた」
との報告があった。

9月20日 第1回団体交渉 結集80名
 隅田川−上野−山谷の仲間も応援の駆けつけてくれた。
 ホームレス特措法 第11条「公共地の適正化」、いわゆる適正化条項と絡み、公園の立ち退き問題は局地を超えた全国的な動きとなっている。

 交渉では、まず個別当該地域に住む仲間に立ち退きを迫ったこと について怒りの声が上がった。
 団体交渉をを無視するかのような対応に対し、事実関係を調査するとともに、二度とこのような個別対応による追い出し工作をしないよう要求、公園側はこれを認める。
 
 要求書の回答では、まず1)については「ご苦労さまですが、みなさまには我慢していただきたい」と発言。仲間の誰もが 納得がいかない。

 2)については「話し合いで解決するまで工事は着工しない」との言質を得る。公園側の工事説明は「あくまで 目的は工事であって追い出しではない」と言うものの、「では、工事終了後にもとの場所に戻れるのか」との声には「戻られては困る」という追い出しが目的としか思えないような回答。

 これには仲間から怒りの声が上がり、工事説明用に配られた資料をみな で公園側にたたき返した。

 団体交渉はひとまず成功に終わったが、その後夜8時ころ、当該 地域の仲間が放火と思われる火事に合い、焼け出される。火事にあった仲間は幸い軽いやけどだけで済んだが、小屋は全焼、一歩 間違えば命に関わる惨事だっただけに、同周辺に不安が走る。

9月27日
 寄り合いを持つ予定だったが、雨で延期。

10月4日 寄り合い
 第1回団交、火事を受けての緊急寄り合い。その後、公園の他の地域でも火災が起き、また、荷物撤去の張り紙や追い出しをほのめかすような発言がなされる等、公園側の動きも強まる。厳しい状況下、団結して不審な動きを監視し合い、支え合っていくことが確認される。

10月11日 要求書提出
 第1回の団交後、要求をまとめなおしての要求書提出。
 上野にある東部公園緑地事務所まで10数名の仲間で押しかけた。要求は次の通り。

 1)話し合いによる解決を 無視するかのような個別対応については調査し、今後
そのよなことはしないこと。

 2)次回の交渉までに工事 −立ち退きによって立ち表れる生活−仕事などの諸問題
について、当事者の納得のいく具体策を提示すること。

 3)第1回団交当日、管理事務所のまわりを警察が徘徊 していたことに対し厳重注意し、今後そのような動きをさせないこと。
 
 公園側は具体的な当事者の要求に対して は柔軟に対応する用意がある、また、野宿の根本問題・失業に関しては政府の補正予算をおろして、仕事出しも考えていると話す。

10月18日 第2回団体交渉 結集96名
 前回同様、山谷・上野などの仲間の応援を合わせて約 100名の大結集。
 
 まず、警察の徘徊や、公園内の他地域に立ち退きをほのめかすような発言をしたこと、一斉清掃を雨天中止ではなく延期していること、また個別立ち退きを迫ったことについて追求、謝罪させた。

 しかし「立ち退きによって立ち表れる生活環境の悪化」については、これまでの代替地の説明に毛が生えた程度。「こんな狭いスペースに押し込める気か!」など仲間の声があがる。
 
 結局、次回の団体交渉までにこちら側 が工事地域の仲間、代替地に先住している仲間、前回移転した仲間の意見をまとめ、公園側とつき合わせることになった。

10月21日 一斉清掃
 一斉清掃は雨で中止。 雨の中、移転地に一方的にテープで区画整理がなされる。
(9月の一斉清掃は25日。公園B地区のベンチにおいて改修工事−立ち退きをほのめかすような発言がなされる。)

10月25日 グループ討議 結集約30名
 いつもの寄り合いの趣向を変えて、小人数に分かれてのグループ討議を行う。
 団交で仲間たちの力により押しているという状況もあり、意見を言いやすい雰囲気になった。
 各班、支援・当該地域の仲間を含む7〜8人で45分間 話し合い、その後、各班ごとに意見をまとめ、発表。
 
 「スペースの確保」「トイレ・水道・街頭の整備」「他 の代替地の開放」「前回代替地に移った人の生活環境改 善が先」「条件をすべて実施するまで移転しない」など具体的な声があがり、結果はまずまず。

11月1日 寄り合い 雨で延期。

11月5日(火) 寄り合い 結集約25名
 具体的な要求を再度まとめなおす。代替地移転という公園管理事務所側の条件をもし飲むのであれば、こちらも最低条件をむこうに飲ませるまでは譲れない。
 「春まで移転 なし」「移転後はこれ以上移転を強制しない」など。
 
 寄り合い後、代替地に勝手に区画整理されたテープをみんなではがしにいく。

11月6日(水) 代表折衝
 当該地域の仲間5、6名とのじれんで公園側と代表折衝。
こちらでまとまった意見を発表、公園側は他の代替地の開放、代替地における水道などの整備に関しては検討の余地があると回答。
 
 こちらも緊急性のある南門の耐震陸橋工事に関しては「戻ってこれる」という条件つきで 手打ちの用意があることを伝える。また、「区画整理」を行ったことについて、白紙に戻し、今後の話し合 いで決めることを確認した。

11月8日 第3回団体交渉 結集約70人
 団交の前段・寄り合いでは今までの団交では公園側に「自分たちの納得のいく条件の提示」を要求してきたこと、こちらの要求を飲まない限り立ち退きはできないことを確認した。
 しかし、いざ団交のふた をあけてみると、話し合いの前提を崩すような事実が次々と噴出した。

 まず、移転地に一方的に区画整理したこと、そして区画整理をした後、一人移った当該地域の仲間に対し、管理事務所職員が「テープの外なら移っても良い」と話していたことについて仲間から声があがった。

 まさに今移転について交渉している最中に公園側が勝手に代替地への移転を認めてしまっては、こちらがまとめてきた要求は何の意味もない。
 
 その他、西門付近に 住んでいた仲間に対しても、「この場所は困るから 代替地に移るよう」話していたという問題が発覚。

 さらに、そこへ公園の一般利用者が侵入し「お前らにそんなことを言う権利があるのか!仕事もしないで!」と発言。この言葉に仲間の怒りは頂点に達し、事態は大紛糾。
 何人かの仲間は「話し合いにならない」と席を立って しまい、交渉は決裂した。

 この間、こちら側は誠実に解決に向かって話を進めてきたのであり、この事態の責任はすべて公園側にある。
 公園側は次週までに収拾策を提示することを約束。こちら側も再度寄り合いを持ち、今後どうするか話し合っていくことになった。


用語説明
・仲間=野宿の仲間
・門=代々木公園には原宿駅よりからぐるっと、原宿門、渋谷門、南門、西門がある。原宿門〜渋谷門は前回代替地への移転を強制され、現在は誰も住んでいない。今焦点となっているのが渋谷門〜南門地域。
・代々木公園管理事務所=渋谷区に所在する東京都立代々木公園の管理事務所。
・東部公園緑地事務所=東東京地区における各公園管理事務所の親玉。工事計画などについてはここが決定権を持つ。ただし、代々木公園は都市公園のため、管理事務所所長も役職としては下部というよりは同等、補佐役となっている。
・団交=団体交渉。代表者による話し合い(代表折衝)とは対。公園側との話し合いにおいて、公園内外全体に参加を呼びかける。
・寄り合い=仲間同士で意見を発言、確認し合う場。毎回、団体交渉の前段にも行われている。グループ討議などの形式を取ることもある。
・一斉清掃=月一回、公園管理事務所職員立ち合いで公園全体でテントをたたむ。過去に雨の日の一斉清掃を中止にさせることなどを勝ち取ってきた。本人不在の場合、テントや周りにある物が撤去されるおそれがあるため、公園側の恣意的な圧力がかからないよう、のじれんも監視にまわっている。

写真で見るページ NO.4 NO.5 NO.6 NO.7

 


(CopyRight) 渋谷・野宿者の生活と居住権をかちとる自由連合
(のじれんメールアドレス: nojiren@jca.apc.org