詩 三篇

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     冬

先輩たち、先輩たちよお
俺はおしえてほしいんだ
生きてゆくって言うことの意味はいったいなんなんだ?
生きてゆくって言うことの意味はいったいなんだろう?
生きてゆくのは大変だ、
生きてゆくのは斗いだ、
生きてゆくっていうことは、悲しいことであったりするよ
生きてゆくっていうことは、恥づかしいことの時もある。
だけど俺らは生きてゆく。どうして俺らは生きてゆく!?
最後にのこる言葉はなんだ?
先輩たちよ!
俺はこうだと思ってる。
「死んだらしまい」だってね
「死んだらいけない」んだってね
だから俺らは生きてゆく、「死んだらしまい」だからさ
酒を飲んで酔っぱらうこともある
一日中フテ寝していることもある
そうやって俺らは生きてゆく
「死んだらいけない」から生きるのさ!
オシャカさまが言ったのか? キリスト様がきめたのか?
それはどうでもいいんだよ
俺らは生きてる人間だ! だから生きてゆくだろう?
今日もあしたもあさっても絶対に生きてゆくだろう?
俺らは生きてる人間だ! 俺らは生きてる生き物だ!
生きて生きて生きぬいて、今日も明日もあさっても、
絶対に生きてゆくんだろう?
「死んだらしまい」「死んだらいけない」
それしか俺にはわからない。
先輩たち! おしえてくれよ!

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     春(中央公園)

お天道さまの光りはさ、誰のものでもなくってさ
みんなのものだと言うよなあ、だから貧乏したって、金持ちだって
わけへだてすることなしにさあ
このあったかさをいただけるのよ

道路だって同んなじさ、公園だとか川原とか、
ありゃ誰のものでも無いんだよ
だから文なし家なしの仲間たちだからこそさあ
使ってわるいはずがない。

建設省や東京都が管理すんのはわかるけど
所有すんのはすじちがいじゃねえのか?
不当に占有してるのは実はあいつらじゃねえのか?

それで俺が言いたいのは、
道路は通行人のためだけに有るわけじゃねえってこと
みんなで使えばいいわけよ、焼きイモだって、タコヤキ屋だって
ステテコオヤジやチーマーだって、自由に使えばいいじゃない
やたらとセン引きすんなよな
大概セセコマしいんだよ。

お天道様の光さえ、一人占めする奴がいる。
金で売ってる奴までいる。
そんな奴らにゃウンザリだ。

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     晩秋(山谷)

ビルの谷間にしずむ日は  あまり紅くは無いけれど
四角い空のはじっこで   雲が紅く光ってる
子供の頃はこの時間    学校帰りの路草で
夢中になって遊んでて   暗くなってからあわててた
秋の夕日はつるべ落とし  あとで覚えた言葉だが
子供の頃の俺たちは    肌身の感じで知っていた。

家に帰るのがいやだった。 だけどあたりが暗くなると
なんだか不安になって来て 街の中をかけぬけた。
戸を開けるなり叱られても 親が酒を飲んであばれても
やっぱり家はあったかい。

大人になった俺は今    家を無くした先輩と
センター前で釜を焚き   炊き出しをつくっているところ

さあワゴン車につみ込もう 新宿の仲間が待っている。

いのけん通信第 11 号(Mar. 30, 1996)
(c) 1996 大沼栄,渋谷・原宿 生命と権利をかちとる会
inoken@jca.ax.apc.org

$Date: 1997/08/12 14:52:06 $ 更新

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