出入国管理及び難民認定法
第五章 退去強制の手続
(違反調査)
- 第二十七条
- 入国警備官は、第二十四条各号の一に該当すると思料する外国人があるときは、当該外国人(以下「容疑者」という。)につき違反調査をすることができる。
(違反調査について必要な取調べ及び報告の要求)
- 第二十八条
- 入国警備官は、違反調査の目的を達するため必要な取調べをすることができる。ただし、強制の処分は、この章及び第八章に特別の規定がある場合でなければすることができない。
- 2 入国警備官は、違反調査について、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
(容疑者の出頭要求及び取調)
- 第二十九条
- 入国警備官は、違反調査をするため必要があるときは、容疑者の出頭を求め、当該容疑者を取り調べることができる。
- 2 前項の場合において、入国警備官は、容疑者の供述を調書に記載しなければならない。
- 3 前項の調書を作成したときは、入国警備官は、容疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、署名をさせ、且つ、自らこれに署名しなければならない。
- 4 前項の場合において、容疑者が署名することができないとき、又は署名を拒んだときは、入国警備官は、その旨を調書に附記しなければならない。
(証人の出頭要求)
- 第三十条
- 入国警備官は、違反調査をするため必要があるときは、証人の出頭を求め、当該証人を取り調べることができる。
- 2 前項の場合において、入国警備官は、証人の供述を調書に記載しなければならない。
- 3 前条第三項及び第四項の規定は、前項の場合に準用する。この場合において、前条第三項及び第四項中「容疑者」とあるのは「証人」と読み替えるものとする。
(臨検、捜索及び押収)
- 第三十一条
- 入国警備官は、違反調査をするため必要があるときは、その所属官署の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官の許可を得て、臨検、捜索又は押収をすることができる。
- 2 前項の場合において、急速を要するときは、入国警備官は、臨検すべき場所、捜索すべき身体若しくは物件又は押収すべき物件の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官の許可を得て、同項の処分をすることができる。
- 3 入国警備官は、第一項又は前項の許可を請求しようとするときは、容疑者が第二十四条各号の一に該当すると思料されるべき資料並びに、容疑者以外の者の住居その他の場所を臨検しようとするときは、その場所が違反事件に関係があると認めるに足りる状況があることを認めるべき資料、容疑者以外の者の身体、物件又は住居その他の場所について捜索しようとするときは、押収すべき物件の存在及びその物件が違反事件に関係があると認めるに足りる状況があることを認めるべき資料、容疑者以外の者の物件を押収しようとするときは、その物件が違反事件に関係があると認めるに足りる状況があることを認めるべき資料を添付して、これをしなければならない。
- 4 前項の請求があつた場合においては、地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官は、臨検すべき場所、捜索すべき身体又は物件、押収すべき物件、請求者の官職氏名、有効期間及び裁判所名を記載し、自ら記名押印した許可状を入国警備官に交付しなければならない。
- 5 入国警備官は、前項の許可状を他の入国警備官に交付して、臨検、捜索又は押収をさせることができる。
(必要な処分)
- 第三十二条
- 入国警備官は、捜索又は押収をするため必要があるときは、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる。
(証票の携帯)
- 第三十三条
- 入国警備官は、取調、臨検、捜索又は押収をする場合には、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
(捜索又は押収の立会)
- 第三十四条
- 入国警備官は、住居その他の建造物内で捜索又は押収をするときは、所有者、借主、管理者又はこれらの者に代るべき者を立ち会わせなければならない。これらの者を立ち会わせることができないときは、隣人又は地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。
(時刻の制限)
- 第三十五条
- 入国警備官は、日出前、日没後には、許可状に夜間でも執行することができる旨の記載がなければ、捜索又は押収のため、住居その他の建造物内に入つてはならない。
- 2 入国警備官は、日没前に捜索又は押収に着手したときは、日没後でも、その処分を継続することができる。
- 3 左の場所で捜索又は押収をするについては、入国警備官は、第一項に規定する制限によることを要しない。
- 一 風俗を害する行為に常用されるものと認められる場所
- 二 旅館、飲食店その他夜間でも公衆が出入することができる場所。但し、公開した時間内に限る。
(出入禁止)
- 第三十六条
- 入国警備官は、取調、臨検、捜索又は押収をする間は、何人に対しても、許可を得ないでその場所に出入することを禁止することができる。
(押収の手続)
- 第三十七条
- 入国警備官は、押収をしたときは、その目録を作り、所有者、所持者若しくは保管者又はこれらの者に代るべき者にこれを交付しなければならない。
- 2 入国警備官は、押収物について、留置の必要がないと認めたときは、すみやかにこれを還付しなければならない。
(調書の作成)
- 第三十八条
- 入国警備官は、臨検、捜索又は押収をしたときは、これらに関する調書を作成し、立会人に閲覧させ、又は読み聞かせて、署名をさせ、且つ、自らこれに署名しなければならない。
- 2 前項の場合において、立会人が署名することができないとき、又は署名を拒んだときは、入国警備官は、その旨を調書に附記しなければならない。
(収容)
- 第三十九条
- 入国警備官は、容疑者が第二十四条各号の一に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときは、収容令書により、その者を収容することができる。
- 2 前項の収容令書は、入国警備官の請求により、その所属官署の主任審査官が発付するものとする。
(収容令書の方式)
- 第四十条
- 前条第一項の収容令書には、容疑者の氏名、居住地及び国籍、容疑事実の要旨、収容すべき場所、有効期間、発付年月日その他法務省令で定める事項を記載し、且つ、主任審査官がこれに記名押印しなければならない。
(収容の期間及び場所並びに留置の嘱託)
- 第四十一条
- 収容令書によつて収容することができる期間は、三十日以内とする。但し、主任審査官は、やむを得ない事由があると認めるときは、三十日を限り延長することができる。
- 2 収容令書によつて収容することができる場所は、入国者収容所、収容場その他法務大臣又はその委任を受けた主任審査官が指定する適当な場所とする。
- 3 警察官は、主任審査官が必要と認めて依頼したときは、容疑者を警察署に留置することができる。
(収容の手続)
- 第四十二条
- 入国警備官は、収容令書により容疑者を収容するときは、収容令書を容疑者に示さなければならない。
- 2 入国警備官は、収容令書を所持しない場合でも、急速を要するときは、容疑者に対し、容疑事実の要旨及び収容令書が発付されている旨を告げて、その者を収容することができる。但し、収容令書は、できるだけすみやかに示さなければならない。
(要急事件)
- 第四十三条
- 入国警備官は、第二十四条各号の一に明らかに該当する者が収容令書の発付をまつていては逃亡の虞があると信ずるに足りる相当の理由があるときは、収容令書の発付をまたずに、その者を収容することができる。
- 2 前項の収容を行つたときは、入国警備官は、すみやかにその理由を主任審査官に報告して、収容令書の発付を請求しなければならない。
- 3 前項の場合において、主任審査官が第一項の収容を認めないときは、入国警備官は、直ちにその者を放免しなければならない。
(容疑者の引渡)
- 第四十四条
- 入国警備官は、第三十九条第一項の規定により容疑者を収容したときは、容疑者の身体を拘束した時から四十八時間以内に、調書及び証拠物とともに、当該容疑者を入国審査官に引き渡さなければならない。
第三節 審査、口頭審理及び異議の申出
(入国審査官の審査)
- 第四十五条
- 入国審査官は、前条の規定により容疑者の引渡を受けたときは、容疑者が第二十四条各号の一に該当するかどうかをすみやかに審査しなければならない。
- 2 入国審査官は、前項の審査を行つた場合には、審査に関する調書を作成しなければならない。
(容疑者の立証責任)
- 第四十六条
- 前条の審査を受ける容疑者のうち第二十四条第一号から第三号までの一に該当するとされたものは、その号に該当するものでないことを自ら立証しなければならない。
(審査後の手続)
- 第四十七条
- 入国審査官は、審査の結果、容疑者が第二十四条各号のいずれにも該当しないと認定したときは、直ちにその者を放免しなければならない。
- 2 入国審査官は、審査の結果、容疑者が第二十四条各号の一に該当すると認定したときは、すみやかに理由を附した書面をもつて、主任審査官及びその者にその旨を知らせなければならない。
- 3 前項の通知をする場合には、入国審査官は、当該容疑者に対し、第四十八条の規定による口頭審理の請求をすることができる旨を知らせなければならない。
- 4 第二項の場合において、容疑者がその認定に服したときは、主任審査官は、その者に対し、口頭審理の請求をしない旨を記載した文書に署名させ、すみやかに第五十一条の規定による退去強制令書を発付しなければならない。
(口頭審理)
- 第四十八条
- 前条第二項の通知を受けた容疑者は、同項の認定に異議があるときは、その通知を受けた日から三日以内に、口頭をもつて、特別審理官に対し口頭審理の請求をすることができる。
- 2 入国審査官は、前項の口頭審理の請求があつたときは、第四十五条第二項の調書その他の関係書類を特別審理官に提出しなければならない。
- 3 特別審理官は、第一項の口頭審理の請求があつたときは、容疑者に対し、時及び場所を通知してすみやかに口頭審理を行わなければならない。
- 4 特別審理官は、前項の口頭審理を行つた場合には、口頭審理に関する調書を作成しなければならない。
- 5 第十条第三項から第五項までの規定は、第三項の口頭審理の手続に準用する。
- 6 特別審理官は、口頭審理の結果、前条第二項の認定が事実に相違すると判定したときは、直ちにその者を放免しなければならない。
- 7 特別審理官は、口頭審理の結果、前条第二項の認定が誤りがないと判定したときは、すみやかに主任審査官及び当該容疑者にその旨を知らせるとともに、当該容疑者に対し、第四十九条の規定により異議を申し出ることができる旨を知らせなければならない。
- 8 前項の通知を受けた場合において、当該容疑者が同項の判定に服したときは、主任審査官は、その者に対し、異議を申し出ない旨を記載した文書に署名させ、すみやかに第五十一条の規定による退去強制令書を発付しなければならない。
(異議の申出)
- 第四十九条
- 前条第七項の通知を受けた容疑者は、同項の判定に異議があるときは、その通知を受けた日から三日以内に、法務省令で定める手続により、不服の事由を記載した書面を主任審査官に提出して、法務大臣に対し異議を申し出ることができる。
- 2 主任審査官は、前項の異議の申出があつたときは、第四十五条第二項の審査に関する調書、前条第四項の口頭審理に関する調書その他の関係書類を法務大臣に提出しなければならない。
- 3 法務大臣は、第一項の規定による異議の申出を受理したときは、異議の申出が理由があるかどうかを裁決して、その結果を主任審査官に通知しなければならない。
- 4 主任審査官は、法務大臣から異議の申出が理由があると裁決した旨の通知を受けたときは、直ちに当該容疑者を放免しなければならない。
- 5 主任審査官は、法務大臣から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは、すみやかに当該容疑者に対し、その旨を知らせるとともに、第五十一条の規定による退去強制令書を発付しなければならない。
(法務大臣の裁決の特例)
- 第五十条
- 法務大臣は、前条第三項の裁決に当つて、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該容疑者が左の各号の一に該当するときは、その者の在留を特別に許可することができる。
- 一 永住許可を受けているとき。
- 二 かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
- 三 その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
- 2 前項の場合には、法務大臣は、法務省令で定めるところにより、在留期間その他必要と認める条件を附することができる。
- 3 第一項の許可は、前条第四項の適用については、異議の申出が理由がある旨の裁決とみなす。
第四節 退去強制令書の執行
(退去強制令書の方式)
- 第五十一条
- 第四十七条第四項、第四十八条第八項若しくは第四十九条第五項の規定により、又は第六十三条第一項の規定に基づく退去強制の手続において発付される退去強制令書には、退去強制を受ける者の氏名、年齢及び国籍、退去強制の理由、発付年月日その他法務省令で定める事項を記載し、かつ、主任審査官がこれに記名押印しなければならない。
(退去強制令書の執行)
- 第五十二条
- 退去強制令書は、入国警備官が執行するものとする。
- 2 警察官又は海上保安官は、入国警備官が足りないため主任審査官が必要と認めて依頼したときは、退去強制令書の執行をすることができる。
- 3 入国警備官(前項の規定により退去強制令書を執行する警察官又は海上保安官を含む。以下この条において同じ。)は、退去強制令書を執行するときは、退去強制を受ける者に退去強制令書又はその写を示して、すみやかにその者を第五十三条に規定する送還先に送還しなければならない。但し、第五十九条の規定により運送業者が送還する場合には、入国警備官は、当該運送業者に引き渡すものとする。
- 4 前項の場合において、退去強制令書の発付を受けた者が、自らの負担により、自ら本邦に退去しようとするときは、入国者収容所長又は主任審査官は、その者の申請に基づき、これを許可することができる。
- 5 入国警備官は、第三項本文の場合において、退去強制を受ける者を直ちに本邦外に送還することができないときは、送還可能のときまで、その者を入国者収容所、収容場その他法務大臣又はその委任を受けた主任審査官が指定する場所に収容することができる。
- 6 入国者収容所長又は主任審査官は、前項の場合において、退去強制を受ける者を送還することができないことが明らかになつたときは、住居及び行動範囲の制限、呼出に対する出頭の義務その他必要と認める条件を附して、その者を放免することができる。
(送還先)
- 第五十三条
- 退去強制を受ける者は、その者の国籍又は市民権の属する国に送還されるものとする。
- 2 前項の国に送還することができないときは、本人の希望により、左に掲げる国のいずれかに送還されるものとする。
- 一 本邦に入国する直前に居住していた国
- 二 本邦に入国する前に居住していたことのある国
- 三 本邦に向けて船舶等に乗つた港の属する国
- 四 出生地の属する国
- 五 出生時にその出生地の属していた国
- 六 その他の国
- 3 法務大臣が日本国の利益又は公安を著しく害すると認める場合を除き、前二項の国には難民条約第三十三条第一項に規定する領域の属する国を含まないものとする。
(仮放免)
- 第五十四条
- 収容令書若しくは退去強制令書の発付を受けて収容されている者又はその者の代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、法務省令で定める手続により、入国者収容所長又は主任審査官に対し、その者の仮放免を請求することができる。
- 2 入国者収容所長又は主任審査官は、前項の請求により又は職権で、法務省令で定めるところにより、収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者の情状及び仮放免の請求の理由となる証拠並びにその者の性格、資産等を考慮して、三百万円を超えない範囲内で法務省令で定める額の保証金を納付させ、かつ、住居及び行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務その他必要と認める条件を付して、その者を仮放免することができる。
- 3 入国者収容所長又は主任審査官は、適当と認めるときは、収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者以外の者の差し出した保証書をもつて保証金に代えることを許すことができる。保証書には、保証金額及びいつでもその保証金を納付する旨を記載しなければならない。
(仮放免の取消)
- 第五十五条
- 入国者収容所長又は主任審査官は、仮放免された者が逃亡し、逃亡すると疑うに足りる相当の理由があり、正当な理由がなくて呼出に応ぜず、その他仮放免に附された条件に違反したときは、仮放免を取り消すことができる。
- 2 前項の取消をしたときは、入国者収容所長又は主任審査官は、仮放免取消書を作成し、収容令書又は退去強制令書とともに、入国警備官にこれを交付しなければならない。
- 3 入国者収容所長又は主任審査官は、逃亡し、又は正当な理由がなくて呼出に応じないことを理由とする仮放免の取消をしたときは保証金の全部、その他の理由によるときはその一部を没取するものとする。
- 4 入国警備官は、仮放免を取り消された者がある場合には、その者に仮放免取消書及び収容令書又は退去強制令書を示して、その者を入国者収容所、収容場その他法務大臣又はその委任を受けた主任審査官が指定する場所に収容しなければならない。
- 5 入国警備官は、仮放免取消書及び収容令書又は退去強制令書を所持しない場合でも、急速を要するときは、その者に対し仮放免を取り消された旨を告げて、その者を収容することができる。但し、仮放免取消書及び収容令書又は退去強制令書は、できるだけすみやかに示さなければならない。
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