一切の交渉を拒否しておいて「話し合い平行線」「万策尽きた」と強制排除

5 人を逮捕しなおつづく叩き出し攻撃と断固対決する

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新宿西口の事態 --- 4 名逮捕,通路封鎖の大混乱.問題の解決は難しいといたるところ で声高に叫ばれている.難しくしているのはどこのどいつだ.おれたちが求めるのは 生活保護と就労対策,これだけだ.「万策尽きて」強制排除に及んだという東京都が やってきた「策」とはどんなものだったか.イジワルバアサン青島幸男,知っている なら言ってみさらせ.知らないに決まっているから教えてやる.生活保護はほんのア リバイ程度やることはやった.しかし当事者の意見はまったく聞くことなく,短期収 容施設に名目だけ生活保護にして流しこみ,施設の中で 2 人の仲間が医者にもかかれ ず死んでいくようなお粗末な代物だった.就労対策にいたってはなんにもなし,これ が実態だ.

24 日,機動隊とガードマン,都庁暴力要員六百人を動員しての強制執行と大混乱を, 青島は「抵抗したのはほとんどが支援団体の者だった」から「都民の理解を賜りた い」と言っている.24 日の「過激な」行動はホームレスではなく支援者によるものだ という説はかなり流布しているようだ.

「ホームレスはおとなしいからあんな抵抗をするはずがない」という説もある.おれ たちをどこまでコケにしているのか.いったい,ホームレスをどういう人間だと思っ ているのか.従順で無気力なダメ人間,世捨て人というイメージから,他人とうまく つきあえない心優しい人というイメージまで,すべてが外れだ.いや,人間は一人一 人いろいろだからそれにあてはまる者もいるだろうが,いつでもそうだというわけじ ゃない.人間には喜怒哀楽というものがあって,いつも同じ顔をしているわけではな いからだ.無茶苦茶なことをされたら怒るのが人間としてあたりまえだ.寒ければ凍 えて死なないようにするし,寝るときは横になって寝る.人間は普通そうする.その あたりまえのことさえ許さないというのなら,死ぬ気になって抵抗するのが普通では ないのか?

東京都,青島や一部の言論人はホームレスを人間と見なしていない.だから,なに をされても怒るはずがないと思っている.当事者は従順であることにして世間を欺こ うとするのが半分,さらに自らをも欺いて「当事者は怒っていない,だから自分は間 違っていない」と思いたい願望が半分といったところではないだろうか.

最底辺で呻吟しながら働き,仕事を奪われ,家を奪われ,それでも生きてきた者の 鬱屈した思いは,いまはっきりと怒りとしての形を与えられた.この場所でふたたび つくりあげた一切合財を一方的になんの話し合いもないという事実すら嘘で塗りか ためて,暴力をもって破壊しさり,信頼を寄せられ運動を牽引してきた仲間を選別 して逮捕しさるという権力の横暴こそ,怒りに形を与えた張本人だ.

94 年 2 月 17 日,西口地下一斉撤去,身ぐるみ剥いで清掃車にブチ込むという暴挙へ の反撃がおれたちの出発点だった.野宿者一掃計画が逆に団結の契機となった.東京 都は自らの行為の結果に恐怖し,いまその決着をつけようと総攻撃をつづけている. しかし,奴らに都合のいい結末など絶対につけさせない.2 年前と同じように,ホー ムレスは生きられる条件のある場所に戻り,これまでと変わらず石にかじりついてで も生きぬこうとするだろう.


東京都は芝浦に収容所を建設したことで生活保障,就労保障を行っていると主張し ていますが,これまで都が設置してきた同様の収容施設が生活保障,就労保障に多少 でも益となった例はひとつもありません.入所前同様に路上に放り出され,野宿に戻 るのが当然の状態となってきたのです.芝浦収容所の運営がこれまでより改善されて いる点はなにひとつありません.

寒い間だけでも屋根のあるところのほうがよいはずだ,という理屈もありますが, これは真冬でなければ風が吹こうが雨が降ろうが吹きさらしの野外で寝ても平気だろ う,という理屈です.都内で最も生存条件の良い野宿場所をつぶす工事の期間中だけ の収容という事実とあわせて考えるとき,その欺瞞を感じざるをえません.

都の野宿者収容施設内で行われる「就労対策」とは,スポーツ新聞や求人雑誌を施 設内に置き,勝手に見て勝手に探せ,職安や面接に行く交通費だけは出してやる,と いうものにすぎません.求人雑誌を置くということすら,新宿の野宿者の要求によっ てはじめて実現したことです.収容施設内で仕事を探すこともできないまま収容期間 が過ぎて放り出されるというのが実態だったのです.青島が「2 ヶ月あれば仕事は見 つかる」と自信たっぷりに言い放つ根拠はなにもありません.二百人の仕事が 2 ヶ月 でおいそれと見つかるような画期的な手段があるのなら,なぜ今の今まで「就労対策 をたててくれ」という要求を黙殺し苛酷な失業状態を放置してきたのでしょうか.青 島は「2 ヶ月たったあとも面倒をみる」ともいいますが,そんなことができるなら最 初から生活保護を適用するなりの方法を講じればよかったのであって,大部分の野宿 者に生保適用の道が閉ざされている現状で,あとのことも大丈夫だといわれても信用 できる材料はなにひとつありません.

われわれが芝浦収容所を拒否するのは,施設内の管理手法のひどさもさることなが ら,生活の保障も就労の保障もされるとはいえない運営内容,そして収容所の主要な 役割が「動く歩道」工事中の隔離施設としてのものであるからです.収容所内のプラ イバシーや自由は問題ですが,そこに野宿者の主張の核心があるかのような論は問題 のすりかえに過ぎません.

当局やマスコミが (多くは悪しざまに) いう「支援者」とはいったいなんなのか, われわれもはっきりさせたいところです.

現在,日雇全協を軸に全国の日雇労働者が新宿に結集し新宿の仲間とともに闘っ ています.彼らの多くが,自身,新宿と同じように叩き出しや行政の無策にさらされ ている野宿者です.自分と同じ境遇にあり,しかも次は自分にふりかかるかもしれな い最も尖鋭な攻撃と対決する新宿の仲間を支援しようというのはまったくあたりまえ のことでしょう.そして,新宿の野宿者と他の地域の野宿者といっても明確な区別が あるわけではありません.日雇労働者として,仕事の増減に押されて全国を流動する 野宿者の数は多く,「支援者」のレッテル貼りにかかわらず,新宿だろうがなんだろ うが皆同じ仲間だ,あるいはおれも新宿の人間だ,当事者だという意識の者がほとん どです.現在新宿に住んでいる野宿者の側も同じ意識で仲間を迎え,共闘しています.

まったくの「支援者」として関わる者ももちろんいます.炊き出しのボランティア や,組合活動家や,人権問題を課題をする人々,政治的な主張を持つ人々,皆それぞ れの問題意識を持ちながら,当事者の利害を支持するという一点で断固足並を揃えて います.こうした支援者のいることがどう問題なのでしょうか.権力の総攻撃を受け るとき,なんの支援もなく孤立している者は正当で,仲間をつくり,連帯の絆をつく り闘おうとするものはペケということになるのでしょうか.われわれは多くの支援の 存在に胸を張り,さらに多くの支援をかちえなければならないと考えます.

しかし,事実として,支援者のほうが多いというのがまったくのデマであることは 現地の攻防拠点を見ればわかることです.

「ホームレスなんかに金を出さないで貧困家庭の保護を充実させろ.撤去賛成」とい う声を耳にします.まず撤去こそ十三億もの血税を無駄に使っているというのが事実 ですが,それ以上に,生活保護すら受けられないホームレスの現実と,福祉事務所に 小突きまわされ些細な理由で保護を打ち切られる貧困家庭の実情とが,福祉政策の手 のひらの内にあってまったく地続きのものであるということを訴えなければならない と思います.

「自分は懸命に働いている,遊んで寝ているホームレスは許せない」という人もいま す.ホームレスは遊んでいません.働ける体で,仕事の見つけられるものは働いてい ます.多くは恐るべき低賃金で.われわれが,底辺の民衆として,労働者として,分 断され敵対するのではなく,共通の利害をもって手をとりあうことのできる人々は, 社会にまだまだ広く存在しているのではないでしょうか.

われわれは 1 月 13 日 3 名,24 日 5 名の弾圧をはねのけ,もはや東京都をグウ ともいわせぬまで闘う決意です.幅広い支援を,何よりも求めています.

1996 年 1 月 25 日

新宿連絡会 (新宿 野宿労働者の生活・就労保障を求める連絡会議)
日雇全協 (全国日雇労働組合協議会)
山谷争議団
寿日雇労働者組合
笹島日雇労働組合
釜ヶ崎日雇労働組合


(c) 1996 渋谷・原宿 生命と権利をかちとる会
inoken@jca.ax.apc.org

$Date: 1997/08/12 14:50:20 $ 更新

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