申し入れ書


渋谷福祉事務所所長殿

私たちは,渋谷区内で野宿生活を余儀なくされているものと,その支援活動を しているものである.貴所との関係でいうと生活に困窮しているがゆえに,止 むに止まれず来所せざるを得ないものと,彼,彼女の生命と権利の保障のため に福祉行政の現行運用を監視するものである.再三再四貴所との申し入れや話 し合いの中で明かにしてきたように,路上に放り出され就労や医療の機会を奪 われ続けてきた野宿者にとって,貴所は最後の窓口なのである.生活保護法第 1条に照らし合せれば,野宿しているという理由で福祉という制度の活用を制 限されるということは許されてはならない.もとよりそれは行政による恩恵で も施しでもなく,当然の権利なのである.

しかるに現状をみてみれば,福祉行政に携わる機関や者が,野宿者に対して実 際に運用しているとはいいがたい.名古屋市における林訴訟が如実に示してい るように,野宿者はいかに生活に困窮しているといえども,行政の裁量により 福祉を受ける権利を著しくそがれているのである.長年貴所における野宿者に たいする対応をみていても,その怠慢行政,差別行政を指摘せざる得ない.い かに「自立支援」と美しい言葉で取り繕っても,その実態は当事者の現状に立 ち遅れているものなのか,貴所は深く認識すべきである.

私たちは,もはや貴所の野宿者への対応を看過するほど寛容ではない.行政に おける現場の当事者の一人である貴所に対して,その体質や運用の抜本的改善 を求めるべく以下申し入れる.

  1. 相談員の窓口対応を改善すること.相談員の中には窓口に赴いた野宿 者に対して,上から見下ろしつつ威圧的,傲慢的態度をとるものが見 受けられる.人に対する最低限のマナーを厳守すること. 〔声〕 〔説〕
  2. ケースワーカーの面談室対応を改善すること.役人言葉ではなく当事 者が納得いく言葉で説明し,そのための指導を徹底させること. 〔声〕 〔説〕
  3. 「路上対策事業費」の用途を改善すること.衣類や生活用品等野宿者 の需要に合わせ,購入した物資は単年度ごとに支給しきること.その ために物資ごとの購入価格,在庫状況を明かにし,野宿者に対して十 分な広報をすること.越年期等緊急時の援護費を準備するなど,柔軟 に対応できる体制を整えること.また風呂券支給分を計上すること. 〔声〕 〔説〕
  4. 生活保護行政運用を改善する事.現行では居宅保護の要件として民間 簡易宿泊所である銀扇閣を活用しているが,受給者の保養を考えれば 宿泊施設として不十分な施設といわざるを得ない.銀扇閣の援助を通 じての設備改善や他区施設の借り上げ等検討,実施すること. 〔声〕 〔説〕
  5. シャワー室を改善すること.野宿者の日常的な衛生管理のために,現 行の夜間温水装置から常時使用できるような設備に改善すること. 〔声〕 〔説〕
  6. 何ら福祉・就労対策なき,なし崩し的撤去には一切協力しないこと. また当該機関に対してやめさせること. 〔声〕 〔説〕
  7. 「路上生活者問題連絡会」を活性化させること.会議の議事録を作成 しその内容を常に明かにすること. 〔声〕 〔説〕
  8. 今後とも当事者である野宿者や支援者との話し合いの場を適宜設けること. 〔声〕 〔説〕

以上の点について検討の上,早急に回答され,団体交渉の設定をしていただ きたい.

1997年9月8日
渋谷・原宿 野宿者有志
渋谷・原宿生命と権利をかちとる会(いのけん)
東京都新宿区高田馬場1-25-5-1D
TEL 03-5273-5065
FAX 03-5273-5125

(c) 1997 渋谷・原宿 生命と権利をかちとる会
inoken@jca.ax.apc.org

$Date: 1997/10/17 03:53:36 $ 更新

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