冬は,路上で暮らす人々にとっては,死ととなり合わせになるもっとも厳しい 季節です.現在都内には 3300 人もの人々が路上での生活を余儀なくされている と言われます.そして渋谷区内にも,渋谷駅周辺や代々木公園内を中心に 200 人近い人々が,この寒さの中で野宿を強いられています.
野宿者を取り巻く社会的な環境は非常に過酷です.今年の 2 月から 5 月にかけて 渋谷・原宿の広い範囲で若者たちによる野宿者襲撃事件が頻発しました. こうした差別襲撃を未然に防ぎ,社会に広く見られる野宿者への偏見を取り除 くべき行政は,襲撃事件に対して実効性のある対策を打つどころか,自らが野 宿者に対する排除・追い出しを繰り返しています.
1997 年は,こうした行政や社会のあり方に対して,渋谷区内の野宿者が自らの 声を挙げ始めた記念すべき年でした.襲撃事件の頻発に対して仲間同士で身を 守り合う取り組みをきっかけに, 渋谷区の排除の姿勢に抗議が集中.その中で問題になってきた福祉事務所 の差別的な対応に対しては 9 月に団体交渉が実現し,福祉課長に窓口対応の 改善を約束させるなど具体的な成果をかちとりました.
また従来,支援団体である「いのけん」が配って歩いていた炊き出しも,野宿 の仲間がみんなで作ってみんなで食べる「共同炊事」方式に移行.仲間が作っ たスイトンを食べながらの「寄り合い」では,行政交渉の進め方や身の回りの 問題などを話し合う,ゆるやかな自治的なつながりが育まれてきました.
そして冬を迎えるにあたって,「いのけん」と野宿の仲間たちは,「97-98 渋 谷・原宿 冬をのりきろう!実行委員会」を結成し,厳しい冬をみんなで乗り 越えていく準備を開始しました.しかし寒い北風は路上だけでなく,何ら財政 的な基盤を持たない私たちの財布の中をも吹き抜けています.たくさんの方々 のご協力がなくして冬はのりきれません.どうか一人でも多くの方々の暖かい ご支援をよろしくお願い致します.
行動に参加を希望される方は,事前にご連絡くださると幸いです.
路上で越冬するとは,どういうことか.「仲間の命を仲間で守る」とは? 実際 に渋谷・原宿で野宿を強いられ,「生き抜く」ための取り組みを進めている仲 間たちと共に考えていきたいと思います.是非,ご参集ください.
97-98 渋谷・原宿 冬をのりきろう!実行委員会