新潟県内の軍事基地情報


はじめに

 新潟県には自衛隊の基地が6カ所と、2カ所の演習場があります。海上自衛隊の基 地は本州の日本海側では京都府舞鶴と新潟にしかなく、C3I戦略に組み込まれた重要 な通信基地もあります。「米どころ」「越後平野」としてイメージされる新潟県も、 実は緊張する日本海対岸情勢を睨んで、軍事化が進められています。もちろん、軍事 戦略は全国規模、世界規模で進められるもので行政区域単位で作戦が組まれるわけで はありません。しかし、私たちの地域で、いったい何が進められているのか、そして そうした動きと他の地域や世界規模の軍事戦略との関連を、きちんと見ておく必要が あると思います。
 とりあえず整理できる資料を掲載します。どんどん豊富化させていきます。今後も 御覧下さい。
 なお、ここに掲載する資料は、「軍事問題研究会新潟支部」が85年から91年にかけ て作成した資料、89年から90年にかけて活動した「日米共同演習に反対する市民ネッ トワーク」が作成した資料などを活用したものであることを明記します。

新潟県内の軍事施設


  • 陸上自衛隊新発田駐屯地

     (〒957新発田市大手町6-4-16 電話0254-22-3151)
     陸上自衛隊東部方面隊第12師団第30普通科連隊が駐屯。約1000名が駐屯。
     普通科連隊とは、いわゆる歩兵大隊に相当するが、実戦ではこの歩兵部隊に対して 同一師団内の他の専門部隊(例えば群馬県相馬原の戦車大隊、宇都宮の高射大隊な ど)の、通常はそれぞれ1個中隊づつが配属され「連隊戦闘団」を構成する。した がって新発田や高田のような「普通科連隊」は実戦の中核部隊であると言うことがで きる。この「連隊戦闘団」は普通科連隊に対し常に全ての専門部隊が配属されるわけ ではなく、目的に応じて各専門部隊の一部または全部が配属される。各専門部隊の配 属の様式が変化する。

  • 陸上自衛隊高田駐屯地

     (〒943上越市南城町3-7-1 電話0255-23-5117)
     新発田に駐屯する部隊と兄弟部隊に当たる同師団第2普通科連隊と、同師団第5施設 群が駐屯するので、新発田より人数は多い。普通科連隊の機能は新発田の項を参照。
    上記の通り実戦の際にはそれぞれの普通科が部隊の中核となるので、同じ新潟県に ある新発田と高田の部隊の関係よりは、新発田とそれぞれの専門部隊、高田とそれぞ れの専門部隊との関係の方が密である。
     この数年来県内で行なわれてきた日米共同訓練の中核部隊となっている。
  • 陸上自衛隊幕僚監部調査部第2課別室所属 小舟渡通信基地

     (新発田市 電話は不明)
     いわゆる自衛隊の諜報機関に属する通信施設で、ループアンテナを始め巨大な円形 のオリ状の通信施設、高く張り巡らされた網状のアンテナ群などが林立している。
     同様の通信施設は全国で9箇所しかなく、70年代、共産党が国会で追求するまで政 府はこうした基地の存在そのものを公開していなかった。この基地の所属する「陸上 自衛隊幕僚幹部調査部第2課別室」は、いわば日本版のCIA機関と考えられており、米 軍の通信網との密接な関連が指摘され、他の同様施設では米軍将校が出入りする姿が しばしば目撃されている。また大寒航空機事件の際、稚内にある同様の基地が通信の 一部始終を傍受しており、これが米軍に提供されていたという事実からも、この基地 の重要性が伺われる。
     米軍通信網との連動を私たちが実感したのは、米軍の在日米海軍潜水艦隊の通信基 地である上瀬谷通信基地のループアンテナと小舟渡通信基地のそれが、全く同時期 に、全く同型のものに変更・設置されたことである。オーストラリアの軍事評論家 オーエン・ウイリクス氏によれば、この型のアンテナはNATO諸国にも配備されてお り、ソ連(当時)の原潜の動向を探る必要性のある海域の都市に配備されているとい う。このループアンテナの旧型と新型(小舟渡と上瀬谷)については後日写真を掲載 したい。

  • 佐渡レーダー基地

    (〒952-12 佐渡郡金井町大字新保丙2-27 電話0259-63-4111)
     航空自衛隊所属で、正式名称を「第46警戒群」と言う。この基地も米軍の情報通新 戦略に組み込まれている。レーダー基地である「警戒群」は、航空自衛隊の編成上約 30箇所しかないが、実際には佐渡を含めて30以上の番号が振られており、この他50 以上の番号まである。この番号の不思議を、小西反軍裁判資料(佐渡レーダー基地所 属小西三曹が治安出動訓練に抗議して懲戒された事件)では基地関係者が「米軍の管 理上に組み込まれているため」と証言している(そんなあからさまな、とは思う が...。)。小舟渡の属する中部方面隊の各警戒群で集められた情報はいったん埼 玉県入間基地に集められ、さらに全国の各方面隊から中央に集約され、米軍の警戒情 報網と連動して情報処理が進む。
     また、この基地の機能は単に「レーダー」で探知することだけではない。これも同 裁判資料によれば「迎撃管制にあたる」ということが主要任務にあげられており、敵 機を迎え撃つ戦闘機への情報の提供・指令などの管制業務を担うわけである。実際の 戦争では「迎撃」と「攻撃」の境界が曖昧になることを考えれば、日本海での戦闘や 対岸諸国への侵略が行われればその前線指令基地となるのである。実際、朝鮮戦争時 にはこの基地の前身(米軍管轄であった)が、横田基地から飛び立った爆撃機を管制 し目的地へ誘導する役割を担っていたと考えられている。

  • 航空自衛隊新潟救難隊

    (〒950 新潟市船江町3-135 電話025-273-9211)
     海上事故や不明者に対する一般的な「救難」を主要任務としているわけではない。日本海での戦闘を想定し、その後方支援として負傷者の救助、不明者の捜索などを行ない、秋田の救難隊と連携することになっている。実際、日本海での日米共同訓練の際、負傷した米兵を秋田救難隊が市内の病院へ緊急輸送したこともあり、日本海有事の際は後述の海上自衛隊基地と共に後方で戦闘を支援することになる。そればかりではなく基地となりのる。

  • 海上自衛隊舞鶴地方隊新潟基地分遣隊

    (〒950 新潟市新潟市臨港町1-1 電話025-273-7771)  京都府の舞鶴地方隊は、本州の日本海側のほぼ全域をカバーする海上自衛隊艦隊基地であり、日本海側の防衛に当たると共に浮遊機雷の処理などもおこなう。新潟基地はその出張所のようなもので、上述の救難隊と共に日本海での戦闘の後方支援と出撃拠点となると考えられる。近年、頻繁に舞鶴基地所属の潜水艦を含む戦闘艦が来港し、見学者を乗せて公開演習などを行なっている。また、米軍は日本全国の港湾の水深や面積・受け入れ容量や機能、周辺都市の整備状況、関係自治体の体制、政治状況などを細かく検討し、有事の際に利用できる港をリストアップしているが新潟港もその中に入っていることは注意すべきである。


    最近の県内の軍事化の動き

    ・85年11月、東富士でおこなわれた日米共同演習「オリエントシールド」に、新発田・高田の部隊が参加。この中では仮想敵の一個機械化連隊が新潟県高田に集結と想定されたシナリオであった。
    ・87年から88年にかけて、小舟渡通信基地のループアンテナが新型に改修。小舟渡基地のアンテナと同型のアンテナが、米軍上瀬谷基地に同時期に配備されたものと同型であるということがのちに判明した。
    ・88年春頃、小舟渡基地の用地拡大のための買収計画がすすむ。
    ・88年5月、新潟港で自衛艦の体験搭乗。
    ・88年9月、日本海で日米共同の大軍事演習。
    ・88年10月、 ・88年秋、マイクロ通信基地計画発覚。県内5カ所に予定。
    ・88年から89年にかけて、小舟渡通信基地の拡張された用地にに大アンテナが新設。
    ・89年8月、新潟港沖で公開海上軍事演習。
    ・89年秋、環太平洋統合軍事演習
    ・90年2月、上越関山で日共同訓練。
    ・90年リムパック、韓国軍が参加。
    ・93年2月、上越関山で2度目の日米共同訓練。この年、中断していたチームスピリットが再開。
    ・94年5月、例年おこなわれていた新発田基地記念祭をはじめて大日が原演習場で施行、空前の規模の大公開演習を挙行。
    ・95年3月、新潟港に米軍フリゲート艦来港。
    ・95年11月、上越関山で3度目の日米共同訓練。
    ・97年11月、上越関山で4度目の日米共同訓練。
     * 県内の動きが、米軍との関係という点で進んでいることに注意。

    新潟県内でおこなわれた日米共同訓練について


  • 90年・93年におこなわれた積雪寒冷地訓練

     関山演習場で90年、93年の2回、いずれも2月〜3月の期間でおこなわれた。
     82年8月に策定された米軍の「FIELD MANUAL」では、この「積雪寒冷地訓練」の必要性を「敵が冬季、中央ヨーロッパあるいは朝鮮半島で攻撃して来る可能性がある。したがってアメリカ陸軍は、このような環境において作戦を遂行する能力を維持しなければならない。」「(そうした環境における)適切な設備、訓練およびリーダーシップが必要」としており、これが朝鮮半島や東欧、ロシアなどを想定した演習であることを明らかにしている。  また、これを物語るように、同時期には全国、日本海、そして「寒冷地」として想定された朝鮮半島全体を巻き込むさまざまな演習が各地で連動しておこなわれているのである。例えば朝鮮半島でおこなわれている米韓合同軍事演習「チームスピリット」がある。これは日本海での海峡封鎖、海上作戦を含み、半島の軍事境界線をはるかに越えた侵攻作戦を遂行し、核攻撃や化学戦をも想定した公然たる侵略軍事演習である。87年のチームスピリットでは、初日に韓国陸軍参謀総長が日本に飛来し米日軍部首脳と会談し北海道でおこなわれていた積雪寒冷地訓練を視察、続いて長田海上幕僚長が訪韓して軍幹部と会談、続いてヘイズ米太平洋軍指令が韓国と日本を連続訪問し、同時に米韓国軍による半島海域の封鎖作戦がおこなわれ、海上自衛隊は日米共同訓練という形でこれに参加、三沢でも航空自衛隊と在日米空軍が共同訓練をおこなった。またこの演習にはなんと核戦争作戦の中央指揮機であるE4Bも参加し、横田基地、嘉手納基地にも飛来した。  90年の関山での訓練もチームスピリットと近接した期間におこなわれ、朝鮮半島の政治情勢の一時的な安定と共に中断していたチームスピリットが93年に再開されたのと軌を一にするように、同じ時期に新潟関山で2度目の関山演習が行なわれたことを見ても、この演習がチームスピリットなど米軍のアジア地域の軍事戦略との関連でおこなわれ、朝鮮半島や極東地域での作戦を想定したものであることが明白である。新潟でたまたま演習が行われるのではなく、こうした演習が行われる際にはアジア規模で軍事作戦が展開され、朝鮮半島途日本列島は戦時さながらの状態となっているのである。  なお、共同訓練の相手は90年の際はアラスカに駐留する第6軽歩兵師団で、PACEXの先陣を切り開いたなぐり込み部隊である。93年の際は沖縄に駐留する米海兵隊第3軍団であったが、この部隊も正規戦部隊と言うよりは特殊作戦などもこなす強襲上陸用侵略作戦部隊である。80年代、ソマリア軍との共同演習も度々繰り返し、こうした演習で訓練された軍隊が現在のソマリア内戦で暴挙を繰り返す軍事集団となっていることを見逃すことはできない。
  • 95年11月におこなわれた共同訓練

     95年11月4日から18日にかけて関山でおこなわれた。秋期に他の演習場でも行われてきた共同訓練の一貫と思われる。関山で過去2回おこなわれた訓練と比べると大幅に規模が大きくなっている。これまで関山で行なわれてきた演習は、高田の部隊全員が参加するものではなく、中隊規模に留まっており、、相手の米軍も300名規模であった。しかしこの演習では1個連隊ほぼ全て(すなわち高田の部隊のほぼ全員)が参加し、米軍もハワイに駐留する第25軽歩兵師団1個歩兵大隊が参加した。また、新発田からも参加があった。ヘリコプターだけでなく、三沢基地のF16も参加した。さらに、上記の項で軍事演習は1カ所だけでなく他の地域と連動していると指摘したが、この演習は相馬原演習場でおこなわれる演習と連動したものであることを防衛庁自らが明らかにしている(相馬原には新発田・高田と同じ第12師団の師団司令部と戦車大隊が駐屯している)。そればからりでなく、この演習と同時期に、日本海で米・韓・日による空前の大演習があったことが後日報道された。社会党が路線転換した今日、こうした問題を集団自衛権との関係で論議する論調は、国会ではほとんどなくなってしまった。
  • 95年11月におこなわれた共同訓練

     これについては関山演習場日米共同訓練問題のページ

    在沖縄米軍実弾射撃訓練演習場の本県関山演習場への移転問題について

    (96年3月記)  95年9月、批判の高まっている在沖縄米軍実弾射撃訓練を縮小するために、本土の 「大演習場」を中心とした5箇所への演習場移転計画が明らかになり、さらにそれに加 えて関山演習場なども含めて9箇所に検討範囲を拡大との報道がなされた。9月時点では県議会で移転反対決議が提案されたが、自民党の「事実確認ができていない。まだ なんにもない話だ」との主張によって否決された。しかし地元市町村では移転反対の 方針が明確になっていたために、この時自民党は「候補地にあげられた段階では反対 の立場をとる」との立場を明確にした。
     そして年明けて96年1月28日付け読売新聞で、沖縄米軍射撃訓練の移転候補地とし て、5箇所から9箇所に増やすとの方針を政府が固めたとの報道が再びなされた。我々 が直ちに防衛庁側に確認したところ、まだそのような段階ではないし、名前も挙がっ ていないとの回答であったものの、一方、同記事を掲載した読売新聞に確認したとこ ろ、政府幹部への正確な取材に基づくものであるとの回答であった。上記のように昨 年9月の同様の報道など、これらのニュースソースが明らかにできないという報道機関 の事情があるため、事実関係としては厳密に確認し難いが、火のないところに煙は立 たぬとのたとえ通り、何度と無くこうした話が浮上する背景には、少なくともそのよ うな方針に至る非公式な検討などがあるはずだと考えるのが妥当である。
     われわれの調査によれば、実弾演習の射程5キロを直線で物理的に確保できる演習場 は、本土ではすでに名前の挙がっている5箇所の「大演習場」の他、全国の「中演習 場」のうち本県の関山演習場など4箇所しかなく、この点については我々の問い合わせ に対して防衛庁側も認めているところである。したがって、政策上候補地に挙げられ るか否かに関わらず、物理的に受け入れ可能な場所は本県の関山演習場を含め全国で9 箇所しかないということは厳然たる事実なのである。9月県会の際に自民党が主張し たような「候補地にあげられた段階で反対の立場をとる」などという態度では対応が 手遅れとなるということは、火を見るよりも明らかなことなのである。
     なお、この受け入れに対しては本年3月議会で知事が「反対の方針を明らかにしてい きたい」と表明しているが、沖縄の問題や在日米軍の問題に触れることなく、しかも 「安保」は必要、との認識を示しておきながら自分のとこだけ受け入れはイヤダとい うのは情けない。この点についてくわしくは沖縄基地問題 および新潟県関山演習場への実弾射撃訓練場移転問題に関する平山新潟県知事の96年 3月議会における答弁批判


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