「新ガイドライン」策定後初の
日米共同訓練−
新潟県関山演習場での訓練に関する報告


 97年9月、「日米防衛協力のための指針」の改訂がおこなわれ、いわゆる「新ガイ ドライン」がスターとした。その「新ガイドライン」策定後初の共同訓練が新潟県関 山演習場でおこなわれた。その概要と市民新党にいがたの活動を報告します。

<共同訓練の概要>

陸上自衛隊側が報道機関に公開した資料によれば、今回の演習の概要は以下の通り

1.目的:東部方面隊及び米軍の部隊がそれぞれ指揮系統に従い、共同して作戦を実 施する場合における相互連携要領等について、実行動により演練する。
2.期間:97年11月3日(月)〜11月15日(土)(13日間)
3.場所:関山演習場及び高田駐屯地
4.担任官
(1)陸上自衛隊 第1師団 師団長 陸将 石飛勇次
(2)海兵隊   第3海兵師団 師団長 海兵隊准将 ジェリーDハンブル
5.実施部隊及び規模
(1)陸上自衛隊:第32普通科連隊(市ヶ谷駐屯地)基幹 連隊長 1佐 柴田幹雄
 ○人員 約800名
 ○主要装備 84ミリ無反動砲 108ミリ無反動砲 74式戦車 81ミリ迫撃砲
       107ミリ迫撃砲 大型・中型・小型ヘリコプター
(2)米軍:第4海兵連隊第3大隊基幹
 ○人員 800名
 ○主要装備 対戦車火器(ドラゴン、トウ) 60ミリ迫撃砲 81ミリ迫撃砲
6.訓練の構成及び内容
訓練開始式 11月3日(月)
機能別訓練 11月4日(火)〜8日 
       日米間の相互連携に必要な各機能別の訓練(実射、攻撃、行進、ヘリ        ボン訓練等)
総合機動訓練 11月10日(月)〜12日(水)
          2夜3日の連続状況下での攻撃行動等
訓練終了式 11月15日(土)
 
市民新党からの若干のコメント:
※地雷処理訓練が11月4日におこなわれた。また、地雷訓練や上記内容について、当 該自治体には通知がなかった。
※11月10日から始まる総合機動訓練にあたって、演習場の飛び地に数十台の車両を 移動するため、白昼公道を軍用車輌数十台が通行。反対派や自治体の抗議で時間帯や 台数が当初予定から変更された。ということは、本来本当に必要な行動だったのかど うかも疑わしい。あからさまなデモンストレーション・挑発としておこなわれたと考 えるべきだ。また、抗議だけで予定を変更させるだけではなく、当該自治体や住民と の実効性ある協議機関の設置などを要求すべきであろう。

<新ガイドライン、関山演習に関する市民新党にいがたの活動報告>

■「反対派」も「行政」も「警察」も、実は地位協定の中味を知らない?  九〇年に初めておこなわれた関山での共同訓練の際(これまで関山演習場でおこな われた共同訓練、新潟県の軍事基地の状況などについてはこちら)、米軍車輌がナンバープレートを付けずに公道を走 行していたのが目撃された。「日米地位協定」により、米軍車輌には国内自動車に義 務づけられているような「ナンバープレート」の義務はないものの、「明確に識別で きる番号標」の装着が義務づけられている。そこで現地を警備していた若い警察官に 「いったいどういう根拠でああいう改造車みたいなのがナンバープレートもつけずに 堂々と行動を走れるんだ?」と聞いてみると、なんとその警察官は「私にはわかりま せん」と素直に答えた。現地の警察官でさえ、どういう法に基づき米軍が行動できる のか把握できていないのだ。では、この警官は目の前を猛スピードで走り抜ける米軍 車輌を取り締まることができるのか、それが事故を起こした際、日本の警察はどのよ うな関わり方をするのか、途方に暮れるしかないだろう。また、少なくとも県警幹部 はそのような指導や説明を現地警察官におこなっていないことが露見した。また、も しかしたら県警幹部もそうした細目までは把握してこなかった事が、この間の県議会 の答弁などでも見て取れる(詳しくは市民新党まで問い合わせを)。
 また、この九月県議会で武田県議は「沖縄県を始め米軍基地を抱えている一四の自 治体が明らかにしている地位協定見直し案に対する見解を」という質問をおこなった が、平山知事は「米軍基地を抱えていない我が県といたしましては..」と発言し た。しかし問題にしている「地位協定」の中には、「基地」という用語はいっさいな い。「地位協定」上は沖縄の米軍基地も「関山演習場」も、「米軍に提供している 『施設・区域』」のひとつであって、両者における米軍の諸権利に本質的違いはな い。事実、米軍や防衛庁関係の資料の「在日米軍配備状況」に関する統計資料には、 そこにちゃんと関山演習場も含まれている。法的には、「関山」は米軍基地のひとつ だといっても過言ではないのである。平山知事の答弁には、明らかにこうした法的諸 関係について行政が「知らない」という事実が反映されている。
 一方、では私たち反対派もこうした問題についてきちんと把握していただろうか。 「反対派」の多くは、安保や共同軍事訓練そのものに反対だから、法的問題には関係 無く、それが合法だろうが法の逸脱だろうが訓練全体に反対することは当然である。 しかし、このような共同訓練や米軍の軍事行動がどのような法的根拠に基づいておこなわれ、そしてどこに制限があるのか把握しておくことは、反対運動にとっても極め て重要なことであるはずだ。そればかりでなく、住民の安全を守るという立場に立つ はずの行政にとっても、そしてそのもとで円滑な交通を管理する県警にとっても同じ ことだ。
 私たちは、そうした観点からさまざまな取り組みをおこなったのである。

■「自治体を獲得するのが軍なのか市民なのか」−その攻防は極めて重要  こうした問題意識に基づき、山田市議・武田県議の議会での一般質問も取り組まれ た。これは従来の「革新政党」がただ単に「新潟港の軍事利用拒否を」とか「日本海 を平和の海に」と訴えてきたのに対し、具体的に自治体としてどういうことができる のか、どこが問題なのか指し示すものになった。また、現行の「日米地位協定」や 「新ガイドライン」が、具体的に新潟の行政や私たちの生活にどのように関わってく るのか、という観点から資料も作成し、県内外の報道機関や県外の平和運動活動家か らも高く評価されている(この資料についてはこちら)。
 また、「地位協定」は沖縄や神奈川だけに適用されるものではないから、県内で事 故や事件が起こったら他人事ではすまされない、と県・市議会や新聞紙上で私たちは 繰り返し主張してきた。その主張を裏付けるように十月二八日、米軍トラックが中郷 村の国道で横転事故を起こした。幸い被害はなかったものの、もし通学中の小学生の 列に突っ込み多くの命が奪われても、これは「公務中の事故」だから、運転手の処罰 や責任追及、原因調査などに関する日本側の捜査権は基本的にない、というのが現行 の「地位協定」なのである。
 演習が開始された翌日の十一月四日には、こうした問題点の指摘、米軍基地を抱え る十四自治体の地位協定見直し案への協力要請などを盛り込んだ申入書を携えて関係三市村及び新潟県へ申し入れをおこなっ た。妙高村長は「地雷訓練や夜間演習をやるなんて初めて聞いた。憤慨している」と不快感を露にしていた。また、これに先立ちこの三市村は自衛隊に対し今回の演習にあたって規模拡大や恒常化反対、隊員の規律遵守などを盛り込んだ要望書を提出していた。 その内容も「新指針」のもとで拡大される演習に危惧を表明するなど、かなり踏み込 んだ内容になっている。申し入れの際の対応などから見ても、やはり現地の当事者と して切実な課題としてとらえている、というのが実感であった。
 県庁の企画調整部長との会見も従来より踏み込んだ内容が引き出せた。県は米軍車 輌事故の詳細を把握していなかったし、これまでこうした安保・ガイドライン・演習 などの問題を総括的に把握するセクションがなかった。申し入れには沖縄の喜納昌春 県議(沖縄社会大衆党副委員長)も同行し、「沖縄では県警の他知事公室が米軍関係 の事故を全て把握している。住民の安全を守る立場からも、県が事故を把握しないな どというのは考えられない。」とダメ押しし、企画調整部長も沖縄県の行政としての 対米軍事故対策に強い関心を示した。また、今後こうした問題を扱う部署は企画調整 部が責任を持ってあたること、そして私たちの申し入れ内容に対しても「新潟県も無 関心ではいられない。主旨はよく理解した。」と明言した。これは従来の県の立場や 他団体に表明してきた態度から比較すると大きな前進であると言える。それは米軍車 輌の事故があったという事実もさることながら、私たちの論理的かつ具体的な申し入 れの中味に依るところが大きいと、内心自画自賛している。
 また、最初に書いたナンバープレート問題は、明らかに米軍側が現行地位協定さえ 逸脱していたもので、実際事故が起こった場合などにどの部隊のどの車輌が事故を起 こしたのかわからず、沖縄県でも問題になっていたものである。しかしこれも武田県 議がこれまで県警本部長に対し再三質問をおこない、本部長は「地位協定と道交法お よびその特例に基づき適正に運用する」と確約していた。そして十一月十日、演習場 周辺の公道を何十台もの米軍車両が走行した際には、全車両にナンバープレートが取 り付けられていたことが確認された。ささやかながら切実な要求のひとつが実ったと も言えるだろう。また、この「公道走行」の際には、この「番号標」装着の確認と、 地位協定第3条「米軍は周辺の交通を不必要に妨げるような方法を執らない」という 条項を盾に最大限の抵抗を試みるべきだという内容の要請書を関係自治体に要請し た。地位協定の内容を熟知しておくことによって、自治体の抵抗の余地や反対運動の 幅・柔軟性も拡大されるのである(この申入書は下記 にあります)。
 小樽港への米空母インディペンデンスが入港した際、抗議行動に参加した市民新党 のメンバーが前号の「たんぽぽ」で報告した通り、入港を支援したタグボートは小樽 市のものでそれを運転したのは組合員でもある市職員であった。その他屎尿処理、ゴ ミ処理、給水などで自治体が軍艦の軍事行動を「支援」したのである。これは大きな 問題であるが、逆にこうした支援がなければ軍事活動に大きな制約が生じることもま た事実なのである。その意味で、「新ガイドライン」の中で、自治体を獲得するのが 軍の側なのか私たち市民の側なのかで様相は全く違ってくるのである。その重要な攻防にあたって、私たち市民新党は従来の「議会政党」「革新政党」や「市民運動」の 双方ともひと味違った、私たちにしかできない活動を展開できているのではないかと 思う。議会活動や選挙と並んで、こうした活動が、私たちの重要な存在意義でもあ る。そのためにも、より多くの議員をつくり、私たちの活動の幅を広げたい。皆さん の支援をお願いしたい。


資料1:当該自治体(新井市・中郷村・妙高村)による高田駐屯地への要望書

関山演習場における日米共同訓練実施に関する要望      去る7月31日関山演習場において十一月三日か十五日の約二週間に渡り、日米共同 訓練が実施されることが公表されました。
 関係自治体並びに周辺住民は、その実施について、日米双方の隊員約二千名が参加 する大規模な演習であることや、当演習場が住宅や観光レジャー施設、農地等と隣接 していること、また隊員移動時には周辺地域における主要な生活道路の使用が考えら れること等から、住民生活に大きな支障が生じるのではないかと不安を抱いておりま す。
 さらに、今回の共同区連が過去におけるものと違い、高田駐屯地系列以外の指揮官 と部隊により実施されるものであるため、速やかな事前の情報提供がおこなわれない 等、地元住民に対する配慮がなされないのではないかとの不安を募らせております。
 また、当演習場における共同訓練の実施は今回で四回目でありますが、その実施間 隔が短縮されていることや、先頃の日米防衛協力指針見直しの中間報告では、共同訓 練の強化が謳われていること等から、当演習場での共同訓練の恒久化、頻繁化、大規 模化についても懸念しているところです。
 ついては、日米共同訓練実施にあたり、左記(原文まま)の事項を要望します。
一、周辺住民に及ぼす障害の未然防止・排除等のため、演習計画の詳細について事前 に十分な時間を持って公表・説明を行うとともに、関係自治体とは連絡を密にするこ と。
二、演習に伴う隊員移動時の車両の通行については、特に交通安全に配慮するととも に一般車両との混雑を防ぐよう時間帯・交通整理等について配慮すること。
三、演習に伴う爆音・騒音対策について、夜間早朝演習は行わない等、住民生活に影 響が及ばないようにすること。
四、訓練に参加する日米両隊員の規律・モラルの遵守について喚起を促すと共に、特 に関山演習城内駐留機関中における周辺警備や隊員の外出について配慮し、周辺住民 とのトラブルを起こさないこと。
平成九年八月二十八日
関山演習場周辺整備促進協議会
   会長 新井市長 大塚久郎
  副会長 中郷村長 吉田 侃
副会長 妙高村長 宮澤英雄
    陸上自衛隊高田駐屯地司令
    山口浄秀 様


資料2:当該自治体(新井市・中郷村・妙高村)及び新潟県への申し入れ文書

1997年11月4日

      関係各位 殿

日米地位協定ならびに「新ガイドライン」に対する取り組みについての申し入れ
                    市民新党にいがた
                    議長 佐藤志津
                    連絡先:新潟市真砂1-21-46
                     電話025-230-6368
   

 自治と住民の安全のための御活躍に心より敬意を表します。
 さて、去る9月24日、日米防衛協力のための指針(いわゆるガイドライン)見直し の最終報告が公表されました。この最終報告は、たとえ地球の裏側の「有事」でも、 それを「日本に関連する周辺有事」と認定すれば、自衛隊ばかりでなく日本国内の 「民間や自治体機能」を米軍の戦争・戦闘行動に総動員させることが明確にされ、こ れに基づき自治体の主権や国民の人権の制限を含む有事法制の整備までが謳われてい る、極めて危険なものです。
 現在沖縄では、米軍による事件・事故、基地による環境汚染が後を絶たず、また日 米地位協定や「特措法」の存在により、これらを解決する手段自体も制限されており ます。さらに基地の存在は、道路網や市街地計画・産業経済の発展などにも重要な障 害となっています。「新ガイドライン」によって、沖縄が抱えているこのような問題 が日本全土に拡大するばかりでなく、沖縄においても基地問題のいっそうの拡大と固 定化を招くことは明らかであると言わざるを得ません。
 関山演習場における日米共同訓練の恒常化も、地元関係自治体をはじめとして、広 く県民にとっても危惧されるところだと思います。新潟県は「本県は基地を抱えてい ない」との認識を示していますが、日米地位協定上は、多くの条項において米軍占有 基地と関山の演習場のような施設を同等に扱っています。また演習の拡大や恒常化ば かりでなく、最近問題となっている「低空飛行問題」も新潟県の上空をルートとして います。先日起こった本県中郷の国道での米兵事故は、本県にとっても米兵による事 件事故が無縁ではないこと、そして仮に被害者が出た場合、その補償や事故調査・責 任者処罰などの問題において沖縄が抱えてきたような地位協定上の障壁が立ちはだか るであろうことをはからずも明らかにしました。今、米軍占有基地を抱えている自治 体ばかりでなく新潟県並びに県下自治体、私たち県民も「地位協定」や「ガイドライ ン」問題の当事者であると言わなければなりません。
 すでに沖縄県や米軍基地を抱えている自治体は地位協定の見直しなどの要望書を国 に提出し、低空飛行問題を抱える高知県や広島の自治体なども同様の動きを見せてい ます。


 そこで、貴自治体においても以下のような取り組みをされることを要請いたしま す。


1.沖縄県や「 渉外関係主要都道府県知事連絡協議会」による地位協定見直しなどの 要望活動に協力し、これと連携あるいは独自に国に働きかけを行なうこと。
2.「新ガイドライン」と「有事法制」に対し、住民の安全と平和を守る立場からこ れに反対すること。
3.関山における日米共同訓練に対し反対の立場を明確にすること。


資料3:11月10日の米軍車輌通行に関する自治体への確認要請書

関山演習場関係自治体各位
        担当者殿
               1997年11月10日

本日の軍用車輌の一般道利用に関し「地位協定」の適正運用の確認・要請を                     市民新党にいがた 議長 佐藤志津
                       同 政策スタッフ 中山 均
                    連絡先:新潟市真砂1-21-46
                    電話:025-230-6368
      前略
 先日の「『新ガイドライン』に異議あり! 全国キャラバン」では大変御世話にな りました。快く受け入れて下さった上に私たちのお話に耳を傾けていただき、心より 感謝いたします。
 さて本日11月10日、自衛隊と米軍海兵隊を乗せた車輌が大挙して公道を通行する と聞きました。現行地位協定によって、今回のような行為や夜間訓練など関山演習場 周辺でも米軍行為の野放し状態が続くことはきわめて遺憾です。だからこそ、沖縄県 や米軍基地関係14自治体は住民の安全を守る立場から国に対して「地位協定見直し」 を要望しており、米軍占有基地を持たない自治体にとってもこうした要求が極めて重 要である、と私たちもかねてよりより主張しているところです。
 しかしながら、地位協定の見直し自体は国会の論議を必要としますから、現に今強 行されている共同訓練に対し、今すぐ必要かつ可能な対応として、少なくとも現行地 位協定の適正な運用を求めるべきであると考えます。沖縄をはじめ米軍基地を抱える 地域では、問題のある現行地位協定さえしばしば逸脱されたり不適正に運用されたりする実態があります。本文書をお手元にお届けすることができる時間は今回の軍用車 輌の通行には間に合わないかも知れませんが、今後のためにも是非御検討いただきた く、あらためて以下の点につき御連絡・要請する次第です。

 まず、今回のように米軍が関山演習場を出入りするのは、地位協定第5条[公の船 舶・航空機の出入国、施設・区域への出入権]の「2 1に掲げる船舶及び航空機、 合衆国政府所有の車輌(機甲車輌を含む。)並びに合衆国軍隊の構成員及び軍属並び にそれらの家族は、合衆国軍隊が使用している施設及び区域に出入りし、これらのも のと日本国の港または飛行場との間を移動することができる。(略)」によるもので す。この限りにおいて、現行地位協定上、米軍車両の移動に「待った」をかけられる ような根拠はないというのが実情です。しかしまず第1に、この条項は「施設・区 域」に出入りまたはその間を移動することを許しているものであって、不必要に演習 場周囲を自由に動き回って良い根拠にはならないことも押さえておくべきです。さら に同協定第3条[施設・区域に関する合衆国の権利]では「1合衆国は、施設及び区 域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要な全ての措置を執るこ とができる。(中略)」としながらもその次項「2 合衆国は、1に定める措置を、 日本国の領域への、領域からのまたは領域内の航空、通信または陸上交通を不必要に 妨げるような方法によっては執らないことに同意する。 略)」とあるので、演習場 内外の行為が周辺の交通を不必要に妨害することが禁じられています。したがって、 まずここが安全要求の最低限の根拠です。今回の一般道利用によって周辺住民の交通 が妨害されるとすれば、この条項違反となるということができます。
 さらに、同協定第10条[運転免許・車輌]では「1 日本国は、合衆国が合衆国軍 隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に対して開給した運転許可証若しくは運転免 許証または軍の運転許可証を、運転者試験または手数料を課さないで、有効なものと して承認する。」として、合衆国の運転免許を無条件で国内で有効としており、この ために先日のような事故が起きるのですが、同条次項では「2 合衆国軍隊の構成員 及び軍属用の公用車輌は、それを容易に識別させる明確な番号標または個別の記号を 付けていなければならない。」とされています。米軍の軍用車輌の場合、日本国内車 輌に義務づけられているナンバープレートは道交法の特例規定によって免除されていますが、そのかわりこの地位協定10条によって「容易に識別される明確な番号標また は個別の記号を付け」ることが義務づけられているのです。ところがこの規定はほと んど順守されず、沖縄県内の米軍車両事故などでも問題となっており、関山でも同 様、これまでも番号標なしの車輌がしばしば目撃されていますが、県警は去る9月県 議会でも米軍車輌の交通について「地位協定と道交法およびその特例に基づき適正に 運用」すると明言しているので、この「明確な番号標または個別の記号」が確認でき なければ公道の走行を許可すべきではありませんし、当該自治体としてもこの「番号 標または記号」が容易に誰の目で見てもわかるようなものでなければ地位協定違反で あり公道走行を認めない・許可すべきはでないと警察及び自衛隊・米軍に対して働き かけるべきだと思います。
 また、同協定第9条[軍隊構成員の出入国]では、「3(b) (略)合衆国軍隊の構 成員は、日本国にある間の身分証明のため、前記の身分証明書を携帯していなければ ならない。身分証明書は、要請があるときは日本国の当局に提示しなければならな い。」とあります。「日本国の当局」が自治体まで指すかどうかは議論の余地がある ところかも知れませんが、このような危険な行為をおこなう米兵に対し、ひとりひと りあるいは部隊長にだけでも、身分証明の提示を求め、自治体側の断固たる姿勢を明 らかにすることもできるはずだと思います。
 以上お示しした点は、本日の一般道利用だけでなく、今後もこのような行為を監視し必要な働きかけをされていく上で参考になればと考えております。
 そのような形で、「国策」である安保や演習に対し、当事者自治体として今後も住 民の命と安全を守られる立場で具体的な働きかけをされることを心から期待いたしま す。私たちとしても、出きる限りのことをおこなっていくつもりです。

   以上、今後ともよろしくお願いいたします。皆様のいっそうの御活躍と御健勝を祈 念いたします。


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