最終更新:2001年5月20日
私たちは、日本の市民団体で、名前を「ノーモア南京の会」といいます。 従来の日本では「ノーモア広島、長崎」に代表されるように、 戦争の被害の側面が強調され、被害の前に、 南京大虐殺を始めとする加害があったという側面が軽視されてきました。 そこで、歴史の事実を知ることを通し、加害の側面に目を向け、 侵略の歴史を二度と繰り返さない運動をすすめようという考えから、当会は始まりました。
私たちは、1995年に出版された笠原十九司教授の『南京難民区の百日、 虐殺を見た外国人』により、ミニー・ヴォートリンの生涯を詳しく知り、 99年の『南京事件の日々―ミニー・ヴォートリンの日記』で、 彼女の南京での恐怖の日々を学習して来ました。 昨年は、来日された南京師範大学の張連紅副教授をお招きして講演会を開き、 中国の人々から、いかに彼女が慕われているかを知りました。 私たちの学習会は、 南京師範大学から出版された「魏特琳(ヴォートリン)伝」に紹介されもしました。
私たちは、日本軍兵士が繰り広げた暴行、殺戮、略奪、 なかでも婦女子に対する見境のない強姦および強姦後の殺害を目の当たりにしてもなお、 ヴォートリンが日本の女性たちに大きな希望を抱いていたことに衝撃を受けました。 侵略戦争を下から支えたのは、日本人大衆のアジア蔑視から来る侵略思想なのですが、 女性もまたその一翼をになっていました。 彼女が、同じ女性として、日本の女性も南京の惨状を知ったならば、 自分たちの父や夫や兄たちに暴行を止めるように勧めるだろうという望みは、 現実にはなりませんでした。
そのことは、同時にまた今日の日本が「新しい歴史教科書をつくる会」の、 歴史を歪曲した中学校歴史教科書を検定合格させたことにつながると思います。 戦争放棄を謳った日本国憲法の改憲をもくろみ、教科書に皇国史観を入れ、 日本を戦争が出来る「普通の国」にしようという政治勢力と、 それを下から支える大衆の右傾化傾向は、 まさに「いつかきた道」を再び歩んでいると言えるでしょう。
私たちは、被害を受けた中国の人々や、 安全区を作り中国の人たちを護ったアメリカの友人たちとともに、 60年前にまさしく日本侵略軍が死に追いやったヴォートリンの業績をしっかり記憶にとどめ、
その生涯を多くの人に知ってもらうことを通して、 二度と再び人類の惨状を繰り返さない運動を行う必要があるでしょう。 一緒に頑張りましょう。
2001年5月10日
「ノーモア南京の会」代表 田中 宏(Tanaka Hirosi)
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