ノーモア南京の会
代表 田中宏(龍谷大学教授)
私たちの会は、1997年に発足した市民団体で、ノーモア・ヒロシマによって戦争と平和を語る時、そこに至る過程をも想起すべきとの趣旨から、「ノーモア南京の会」と名づけました。
南京大虐殺の1937年12月、日本国内では「南京陥落」を祝って、昼は「日の丸」の旗行列、夜は「提灯デモ」をくりひろげていました。その様子を伝える日本の記事及び海外の報道を集めた冊子『報道に見る南京1937―歓喜の日本列島 阿鼻叫喚の南京 人類と文明への冒涜と世界は語る』(1997年12月)を作成したのも、会の活動の一つです。また、毎年12月には、中国の犠牲者に“思いを馳せ、心に刻む”べく、私たちは中国現地から「歴史の証人」を招請し、日本側の証言も加えて、当時を検証する市民集会を持っています。そして、集会終了後には、毎年、往時の祝賀行事に想いを至して、犠牲者の「追悼デモ」を行っています。
さて、貴教育委員会が設けている「ホットライン教育ひろしま」の「意見のひろば」には、私たちとしても、到底看過できない内容が掲載されていることを知り、会として検討した結果、この公開質問状を送ることにしました。
そこには、例えば、「南京大虐殺など史実としてない。当時、国民政府も中国共産党も抗議声明も発していなかったし、新聞も外電も大虐殺など報道しなかった」(2000年10月16日、歴史教科書の記述を歪める中国の内政干渉をゆるすな!)とか、「当時、蒋介石や毛沢東も南京虐殺の非難声明はしなかったし、国際連盟も非難決議などしなかった。それは大虐殺などなかったからである」(2000年10月27日、根拠なき南京大虐殺説を教えるべきでない)などとあります。
ご存知の通り、昨年1月23日、大阪で「20世紀最大のウソ『南京大虐殺』の徹底検証」と題する集会が開かれました。前引の文はこうした流れを汲むもので、意図的な誹謗・中傷というほかありません。そこには、中国側の抗議もなく、報道もない……とありますが、例えば、1937年12月15日付シカゴ・デイリーニュースは、一面トップで、NANKING MASSACRE STORY(南京虐殺物語)と題する記事を載せています。前述の冊子『報道に見る南京1937』には、約20点の当時の中国国内の記事が収録されています。『救国時報』(1938年1月5日・旧暦)の見出しは「日本軍の南京での暴行―放火、殺人、強姦、略奪を至る所で」となっています。
国民政府の蒋介石総統は、盧溝橋事件一周年にあたる1938年7月7日付「日本国民に告げる書」で、「貴国の出征将兵はすでに世界でもっとも野蛮、もっとも残酷な破壊力になっていることを諸君は知っているだろうか。貴国がいつも誇っている『大和魂』と『武士道』はすでに地を払い消滅してしまった」と述べています(日本語訳『暴を以って暴に報ゆる勿かれ』白楊社、1947年)。
また、共産党の毛沢東が「占領区を研究しよう」と題する前書きを書いている『中国占領区の日本帝国主義』(延安時事問題研究会編、延安・解放出版社、1939年)には、南京を含む地域ごとの暴行についての資料が載っています。いずれにしても、「南京大虐殺はなかった」というのは明らかに事実無根なのです。
貴委員会は、同ホームページで「他人を誹謗・中傷するもの、公序良俗に反するもの、教育に関する内容でないもの」については「削除若しくは当該部分を修正・削除して掲載させていただきます」とうたっています。そのことと、「南京大虐殺はなかった」が堂々と掲載されていることとはどういう関係になるのでしょうか。被爆地広島の教育委員会の見識が問われていると思います。その見解をうかがいたいというのが、私たちの会での討論の結果です。
以上、ご検討の上、下記連絡先に回答いただくとともに、ホームページ上でもご回答ください。
本件の連絡先
〒612-8577 京都市伏見区深草塚本町67
龍谷大学経済学部 田中宏研究室
電話及びファックス 075−645−8561(直通)
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