宍塚の自然と歴史の会が宍塚大池のほとり、80アールの雑木林の下草刈を始めたのは1990年の2月である。 地元の方の話では、大池はマムシの巣窟とのこと(この話は宍塚に限ったことではなく、結構方々で聞くが)。マムシにかまれた話も結構聞いた。筑波大学が生物実習でこの場所を利用していた時には、マムシの血清を持参したという。草刈を行っていた林は以前山火事があり、樹木が余り大きく育っていなかった。そこで、樹木の種類を減らさないために、草刈はほとんど手刈りで行った。刈る前に、当日の草刈り予定地を参加者皆で回り、ヘビ除けを行った。マムシばかりかスズメバチが刈った林の林床の大きな腐った切り株に巣を作ったこともある。当然のことながら、里山での活動は危険と背中合わせだ。
草刈は多くの人と行いたいと、地域のミニコミ誌を通して参加を募っている。勿論、作業の度に最低とは言え保険入っているが、林の作業をする前、必ず危険について話すことにしている。最近は、刈り払い機を使っての作業で、危険はもっぱらスズメバチ。刈る場所を事前に歩き、スズメバチの確認作業をしている。
里山は自然との関わりがとても希薄になっている今の子ども達が自然とふれあう場所として、自然の営みを学ぶ場として貴重なところだ。会が始まる前から我が子を始め隣近所の子ども供達と大池で遊んだ。会を作ってからはなるべく学校に働き掛けて、「自然教室」「自然発見」「自然体験」などを行ってきた。しかし、常に事故のことが頭から離れることはない。親子参加のイベントでは、かなり大きなカッターを使って竹の楽器やおもちゃを作る。その時は、「怪我について、会には責任はありません。総て親御さんの責任です。他人のお子さんに怪我をさせないよう、お子さんの手元をしっかり見ていてください」と話している。ほとんどの方が、うなずきながら話を聞いてくださる。
小学校の観察会は会内部の「子ども部会」が行っている。年4回を1コースとして計画することをお願いしている。子ども達、始めはおっかなびっくりだが、3・4回目ともなるとかなりゆったり自然を楽しむことができるようになる。先日ある小学校3・4年150人が大池散策にやってきた。常連の学校であり、既に大池体験をしている学年なので、この人数を引き受けた。以前程マムシは見られないものの、内心ハラハラドキドキ。子ども達が生き物の観察が行いやすいよう、ヘビなどを見つけやすいよう、小川の縁や、田んぼの畦、観察路は「里山さわやか隊」によって事前に草刈がなされているものの、心配は尽きない。
一度事故を起こしたら、会の活動に大きな打撃があることは勿論だが、それより何より、自然は怖い物、危険なところの感情が先走り、子ども達が益々自然から遠ざかり、自然について学ぶチャンスを失うことの方がずっと重大だ。自然の中の危険を肌で感じ、危険を避けることなど、危険について学ぶことは子ども達にとってとても大事なことだから。
と言ってもそこがジレンマ。マムシを見せたいが、会が行うには限界がある。スズメバチの巣が観察路の近くにあったらもちろん取り除くことになるだろう。このような大人数の観察会で、今我々が行っているのは、子ども部会に所属していない方にも、日頃大池を歩いている会員方に助っ人をお願いしている。より多くの目で危険の回避を心がけている。助っ人の多くは主婦であり、又現役をリタイヤされた方々だ。孫のような子供たちの面倒を見るのは楽しいと大張り切りで参加されている。その場所を良く知っている大勢の協力が必要だ。幸い、これまで、勿論事故らしい事故はなかったけれどこれからも万全を期したい。
それにつけても里山がこれまで以上に活用されるようになった時、もし事故があったら誰が責任を持つのだろう。これまで整備された公園で事故があると、その責任は行政に向けられることが多かった。事故が起こることを想定し、過剰な整備がされてきたと言える。里山の管理・利用には、これまでの公園の管理とは異なった考え方のルールを編み出していくことが必要だと考えている。
もし事故があったとき、里山を利用する者がその責任を負うことが必要なのではあるまいか。
里山の保全・利用・管理・・・里山についての問題の整理は、いまだ未熟な感がある。市民団体によって様々な試みがかなり進んできてはいるが、保全を進めるための早急な議論が必要だ。
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