BNFLは、米国の核兵器製造を手助けする
BNFL to help US build nuclear arms

戦場用兵器を製造する国有企業の合弁会社は、核不拡散条約に対する懸念を駆り立てる



2003年11月2日 インディペンデント日曜版
ソロモン・ヒューズ、アンドリュー・バンコム、ジェフリ・リーン


http://news.independent.co.uk/uk/politics/story.jsp?story=459663


ジョージ・ブッシュ大統領が論争の的になっている新世代「戦場用」核兵器を製造するのを助けることで、BNFLは数百万ポンドもうけようと狙っている。インディペンデント日曜版による調査が明らかにする。

論争の的である国有企業のパートナーである合弁企業が、なぜ兵器の部品を製造するためにロビー活動をしているのかについて、大臣は今週説明を求められるだろう−その兵器は国際的な核不拡散条約を崩壊させる恐れがある。

ウエスティングハウス・サバンナ・リバー社は、サウスカロライナ州のエーケン近くのサイトで、30億ドルの施設を建設するためにブッシュ政権と議員に圧力をかけるため彼らに手紙を書くよう地元の人々にしきりに勧めてきた。それは、その会社が弾頭用のプルトニウム・トリガー[訳註:プルトニウム・トリガーとは起爆時に用いられる中性子発生装置のことを指していると思われる]を供給できるようにするためである。

一方政府は、核拡散の危険を高める別の高度に論争の的になっている事業について、BNFLを支援している。2週間前のインディペンデント日曜版の中で報告したように、エネルギー大臣スティーヴン・ティムズは、その会社からプルトニウムを含む核燃料の購入に関する4年間の禁止を終了するよう説得するために、日本を訪れる予定である。

核拡散の専門家は、地球の裏側へのいわゆる「混合酸化物」(MOX)燃料の輸出は、テロリストがプルトニウムを入手するチャンスを大幅に増加させるだろうと述べる。プルトニウムはMOX燃料から簡単に抽出でき、彼らが核爆弾を手に入れることを可能にする。

その2つの開発は、多量破壊兵器の拡散を禁止するという政府が公言した決定を著しく損なう。政府の決定は、イラク戦争のための、そしてイランおよび北朝鮮の核兵器開発を防止する熱心な外交努力のための理論的根拠となっている。

BNFLが、プルトニウムの生産から核汚染の浄化に切り替えることによって心機一転するように見えた、わずか2ヶ月後に、これらのことが起きている。BNFLのセラフィールド・サイトの管理者ブライアン・ワトソンは、使用済み核燃料からプルトニウムとウランを回収するソープ再処理工場が、10年契約の終了によって閉鎖され、廃棄物処理施設に切り替わるだろうと発表した。

しかしながら、サバンナ・リバー社の開発は、その会社のためにはるかにずっと運命的な新たな出発をしるす。BNFLは、その歴史を通じて、爆弾のための核物質を提供してきたが、今度のことは、兵器の実際の生産に関与する初めてのことになるだろう。

昨年、ホワイトハウスは、その「核戦力体制見直し」(Nuclear Posture Review)の中で、より小さな戦場用核兵器の開発を望んでいることを明らかにした。それは化学・生物兵器を保管する強化された地下施設を破壊することができるだろう。それらの比較的低い威力の兵器が、ならず者国家に対するより確実な抑制となるだろうし、合衆国はより一層広範な損害を与える従来の兵器よりそれらの使用をより好むであろう、と戦略家達は信じている。

しかし、専門家達はまた、それらが核不拡散条約に違反するかもしれないし、新しい軍拡競争に導くかもしれないと警告する。

今まで、英国におけるBNFLの役割に関する論争や議論はなかった。しかし、政府によって完全に所有された会社が、そのような論争の的になっている新たな核兵器を開発するための取り組みに関与しているという発覚は、議員の間で憤激を引き起こした。

労働党議員ルー・スミス(この人は今週この問題に関する一連の質問を取り上げる予定である)は述べた:「BNFLがブッシュの爆弾を後押しするために英国の納税者の金を使うとは、まったく恥ずべきことだ。」

そして、自由民主党の環境スポークスマン、ノーマン・ベイカーは付け加えた:「公的に所有された英国の会社が、英国での議論なしにこれを行うことは無法である[とんでもない]。それはBNFLが平和的活動にのみ興味を持っているという考えの偽りを立証する。彼らはブッシュのために爆弾を製造することにより熱心なように見える。国民は、アメリカの爆弾を作ることに関するBNFLの役割を支持しないだろう。彼らは、この問題に関して本当の事を言おうとしない政府を、なおさら支持することはないだろう。」

BNFLの関与は、米国の核の巨大企業ウエスティングハウス社を1999年に買収したことから始まっている。米国議会は、外国の会社がその私的に管理された軍の核サイトを運営することを許さなかった、そしてウエスティングハウス社は、サバンナ・リバーといった最も機密事項を扱う場所で、アメリカの主要な建設及びエンジニアリング企業の一つであるワシントン・グループとの共同作業の一部分として操業すべきであると主張した。ウエスティングハウス・サバンナ・リバー社(WSRC)は、その結果できた会社である。

BNFLはWSRCに出資していないが、利益の40パーセントを受け取り、その取締役会に強力な[影響力のある]役員を持っている。それは声明で述べた:「この役員の同意は、多くの戦略上の政策決定のために必要である」。ウエスティングハウス社は次のように主張する:トリガーをつくるための契約に関して、公開の会合で社長のロバート・ペディが地域社会の人々に国会議員と接触するように依頼したことはあるが、米国政府に直接的なロビー活動はしていない。

ペディ氏のスポークスマンであるウィル・カリコットは述べた:「私たちは、そのサイトのためによく適しているあらゆる任務に興味を持っている。しかし、あなた方が活発なロビー活動と呼ぶかもしれないあらゆるものは、地域社会によって行われている」。実際、その提案は、すさまじい地域論争を引き起こした。その地区にとって仕事にありつくための機会として可能な契約と見る人々と、その事業は不必要で汚染を引き起こすかもしれないと言う人々とに分かれて。

サウスカロライナ女性有権者同盟のメアリー・ケリーは、その計画が「公衆衛生および環境を保護する必要と、国際的な協力および合意を通じて世界平和を保護する必要にとっては、さんたんたるもの」だと述べた。

[英国エネルギー大臣]ティムズ氏は、彼の[日本]訪問を今週から新年の早い時期に、たった今延期した。MOX燃料に関する品質保証書がねつ造されていた事をインディペンデント紙が暴露した後、1999年に課されたMOX燃料の購入禁止を取り消すため、彼は日本を説得しようとするだろう。これは、BNFLにその燃料の主要な顧客を失わせた。

その注文の回復によって、何百ものテロリスト爆弾を製造するのに十分なプルトニウムが、断固とした攻撃を撃退することが困難と分かるような軽武装船で世界中を輸送される状態が生じることを、核拡散の専門家たちは深く懸念している。

首相のトニー・ブレアは、テロリストがプルトニウムを手に入れることさえできれば、彼らは核爆弾を作り使用するだろうと、絶えず繰り返してきた。

しかし彼は、大臣達から危険を警告されたにもかかわらず、米国に対する2001年9月の攻撃のわずか数週間後に、MOX燃料を製造し輸出するBNFLの計画を承認した。


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