[翻訳の紹介]

ソープ再処理工場を運転している英国原子力グループ(BNG)は、ソープでの放射性溶液の大量漏えい事故について「調査委員会報告書」(BNG内部調査報告書)を5月26日にまとめた。表題は「ソープ供給清澄セルにおける1次格納物質の喪失を伴う配管破損」である。翌日の5月27日に、BNGはプレスリリースのみを発表した(このプレスリリースの翻訳資料は、http://www.jca.apc.org/mihama/uk_france/bng050527.htm)。その後、固有名詞などを黒塗りにして、6月29日に「調査委員会報告書」そのものを公表した。報告書は英文で34頁、そのうち、本文は23頁で、付録1−3が付いている。以下は、報告書本文の重要な部分である1章−6章、付録2を翻訳したものである。報告書の黒塗り部分は、■で表している。

BNGの報告書原文は下記で公開されている。
http://www.bnfl.co.uk/library/upload/docs/005/2765_1.PDF

2005年7月13日
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会





調査委員会報告書


事象番号:BN05040181(SIR:35/05 / IER:SE9924)
発生日:20/04/2005
報告書タイトル:ソープ供給清澄セルにおける1次格納物質の喪失を伴う配管破損

本報告書は会議に諮り承認を得た:B・スネルソン 常務取締役、英国原子力グループセラフィールド
署名:
年月日:2005年5月26日

1 概要
2005年4月20日、セラフィールドの熱中性子炉酸化物燃料再処理工場(ソープ)のセル220(Cell 220)は、カメラによる検査を受け、セルの床面におびただしい量の溶解溶液が溜まっていることが明らかになった。その検査が実施されたのは、核物質バランスの計算が合っていなかったことと、ひとつのセルサンプ(sump: 水溜め)に溶解溶液が見つかったことの結果であった。その検査によって、計量容器V2217Bの供給配管が、同容器に非常に近い箇所における破損によって、壊れていることが明らかになった。そのセル内に溜まった溶解溶液は83.4立方メートルであると見積もられた。

調査によって、溶解溶液は数ヶ月という期間にわたってセル内に漏れ続けていたことが判明した。その配管が大きく破損したのは2005年1月15日か、あるいは、その日あたりのことであったと見られるが、これ以前からその配管では漏えいが始まっており、それは2004年7月くらいにまでさかのぼるのではないかと考えられている。

セルの床面は、水位検出装置を備えたサンプに排水されるようになっている。さらに、サンプからは定期的にサンプルが採取される手順になっている。水位検出装置とサンプリング検査とが示していたどちらの異常状態に対しても、運転スタッフは適切には対応しなかった。

計量容器は吊り下げ式になっており、セルの天井を突き抜けている支持棒(ロッド)によって支えられている。配管の破損は、計量容器の過大な運動による疲労応力によってもたらされたと本報告書は結論する。このような応力は、設計変更と容器の動きを抑制するという目的が引継がれなかった結果である。調査に基づく勧告としては:
・疲労をもたらした応力の観点から、計量容器の将来における運転を見なおし正当化すること。
・他の吊り下げ式タンクに対するリスクを必要な箇所で考慮し評価すること。パルス駆動型ポンプによる機械的荷重にさらされる配管に対して、実際の配管設計を確認すること。
おびただしい量の溶解溶液の喪失は、2次格納容器への漏えいをより早い段階で検知することによって避けることができたはずであり、そうするべきであった。直接的原因と根本的原因とが確認されてきており、以下を勧告する:
・核物質の移動をほぼリアルタイムで追跡するようにすること。
・サンプリング作業と警報管理を含む、サンプ管理の見直しと改善。
・水位計測警報器(pneumercators)の維持体制の見直しと改善。
・原子力安全の基本を認識した運転管理の見直しと改善。
本報告はまた、今回とこれまでの事象から得られた証拠に基づいて数多くの重要な所見を述べている。1次格納系の健全性に関する運転上の自己満足につながった「新しいプラント」文化("new plant" culture)が存在したと思われる。それに加えて、ソープの運転管理は、将来のすべての機器や人のパフォーマンスに関わる重要問題について、疑問を持つ態度と安全保守側に立った対応で応じるのを確実なことにするように、プラントについての安全文化を改善しなければならないと考えられる。

2 調査チームメンバー
・■■■■■ 議長  ■■■■■■■■■■■
・■■■■■ 調査委員長 ■■■■■■■■■■■
・■■■■■ 調査委員 ■■■■■■■■■■■
・■■■■■ 調査委員 ■■■■■■■■■■■
・■■■■■ 組合代表(職員) ■■■■■■■■■■■
・■■■■■ 組合代表(TU) ■■■■■■■■■■■
・■■■■■ 事務局 ■■■■■■■■■■■
・■■■■■ NDA代表(オブザーバー)■■■■■■■■■■■
・■■■■■ NDA代表(オブザーバー)■■■■■■■■■■■
この調査委員会は■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■によって重要な支援を与えられた。(訳注:■■■は黒塗りを意味する。)

3 委託された事項
・2005年4月20日に明らかになったソープ供給清澄セルの2次格納容器内でのおびただしい量の溶解溶液漏えいに至る事象を招いた、そして、それを取り巻いていた状況を調査すること。
・HPES方法論を用いて(事象と原因との図式化と結びつけた、作業と変更、障壁分析を含め)、事象の根本的な原因を決定すること。
・ソープの他のエリアやサイト全体に対して、この事象の根本原因を検証し、再発防止を目的とする勧告を行うこと。
・2次格納容器内の溶解溶液の発見以前にあった前兆事象を含め、この事象の時間経過を確立すること。
・この事象の時間経過に対してとられた操作上の諸決定を検討し、批判すること。
・この事象の直接原因と根本原因を究明するための適切な勧告を行うこと。
・該当する安全性説明書(safety case)の要請事項へのいかなる違反をも明らかにすること。
・該当する安全性説明書におけるいかなる欠陥をも明らかにすること。
・該当するサイト規制の要請事項へのいかなる違反をも明らかにすること。
・該当するサイト規制におけるいかなる欠陥をも明らかにすること。
・調査によって明らかになった事項に照らして、事象のカテゴリゼーションに必要な変更を明らかにすること。
・環境への影響についての勧告を行うこと。
・補修作業の管理に対して責任を負うべき適当な上級管理者を明らかにすること。
・企業統計(Company Statistics)を編集する目的に関して、この事象に対するオーナーシップをとるべき適当な上級管理者を明らかにすること。
・より広い教訓を明確に示し、コミュニケーションのための最善の方法を決定すること。
以上の委託事項のそれぞれがどのように扱われてきたかを説明する要約は、本報告の付録1に与えられている。

4 事象を招き、取り巻いていた状況
調査委員会は2つの主要な調査の流れを追跡した、すなわち:
 ・配管はどのようにして、なぜ破損したのか。
 ・配管破損に対する運転員の認識と対応。

本報告書では最初に、計量容器の設計と製造設置、運転の目的についての検証を含めて、どうしてその配管が破損したのかをまとめる。それに続いて、その破損、破損の兆候、そのような兆候に対する対応についての運転員の認識に対する批判について述べる。

工程の簡潔な記述と計量容器の簡単な図面は付録2に与えられている。

事象の時間経過は付録3に与えられている。

4.1 配管破損モード
計量容器V2217AとV2217Bはセルの天井から吊るされており、セルの天井を突き抜けて上部の重量計測装置にとどく4本のロッドで支持されている。短い期間だけ、重量計測システムの基準線づくり、すなわち校正のために、その容器はセル内側の鋼鉄製枠組みの上の最も低い位置に置かれる。それ以外の時期については、容器は吊り下げられた状態で操作される。

調査委員会は計量容器V2217Bに接続していた配管は、その容器と配管との間の相対運動がもたらした、金属疲労によって破損したと強く確信している。この結論を支持する論理的根拠は次のとおり:
・運転中に計量容器が振動していたことを示唆する証拠が運転記録にある。これは、運転員が示した事例証拠によって支持されている。
・回復の間(during the recovery)運転している他の計量容器のビデオ映像があるが、攪拌と吐出サイクルの間、その容器がはっきりと動いているのが記録されている。
・破損の位置は疲労破壊と符合している。配管は容器に入るノズル部分で破損したが、2つの計量容器のいずれのノズルでも、その位置で最大の疲労応力を受けていた。
・事象後の評価によって、破損したノズル部分で±1mmから±3mmの揺れを起こすようなタンクの運動については、それらの応力は、それぞれ、3×106と1.5×105サイクルという疲労寿命に対応することが示されている。その振動の振幅や、容器の運動を引き起こした運転サイクル上の要素が何であったのかについては、結論は得られていない。そのタンクが経験したサイクル数の評価は、汲み上げ装置のサイクル時間だけに基づいており、8.0×105程度である。吐出時、あるいはそれ以外の時間における攪拌、そして、より高い振動数を持ったタンクの運動は、タンクが受ける振動サイクル数を増加させることになる。観察された運動と大雑把な振動サイクル数とは全体として、破損が金属疲労で生じたことと整合している。
・亀裂の形成と伝播とによって進行していた配管破損と、より深刻な最終的な配管破損を示唆する証拠がある。このことは金属疲労がもたらす破損と一致する。
破損したサイトを間近で検査することが出来ないため、配管破損モードについて完全な結論を出すことは調査委員会にとって不可能である。もしも破損サイトから物的試料が切り出されたとしても、くり返し溶解溶液にさらされたことによる破損表面のダメージが、決定的な証拠を破壊しているであろう。しかしながら、次のことが指摘できる:
・浸食や腐食、応力腐食割れのような、他の潜在的破損モードを支持する証拠はない。
・建設時の記録からは、何らかの材料の欠陥や加工の品質に関する問題を示唆する証拠はない。
・先に記したように、配管が疲労応力にさらされていたという有無を言わせぬ証拠がある。
したがって、調査委員会としては、配管の破損は金属疲労による亀裂によって破損したと結論する。

4.2 破損発生時期
溶解溶液は2004年7月頃から配管から漏れはじめていた証拠がある。この証拠には、発送受領不一致データ(Shipper Receiver Discrepancy data)、サンプ試料、(調査の一部分として実施された)物質バランスの計算、が含まれている。その証拠についてはこの章の後半で詳しく記述し、時間経過の中で明らかにされている(付録3)。

水位計応答、サンプ温度応答、そして、発送受領不一致データからのさらなる証拠は、2005年1月15日かそのあたりで、漏えい速度に階段状の変化があったことを示しており、それは配管破損の規模が階段状に変化したことを示唆している。この時期の直前まで、そのタンクはほとんど連続して攪拌する運転期間にあった。タンクはまたちょうどその時に重量計測機構の校正のために下まで降ろされ、ついで鋼鉄製の枠組みから持ち上げられた。

4.3 破損の原因−容器の設計と試運転、運転操作
計量容器の元の設計は、横方向の動きを抑制する耐震対応であった。概念図には、水平方向位置で容器を保持する機械的支柱を有し、(重量計測のために)鉛直面内で動くことのできる容器が描かれている。その概念設計では、その耐震抑制が、機械的な動きとポンプが誘導する応力をもまた制限するとされている。このような思想は製造図面上では容器周辺に置かれる鋼鉄製枠組みの抑制ブロックにつながった。したがって、元の設計目的は、容器は吊り下げて操作するが、水平方向の動きを抑制するシステムを伴っているというものであった。

しかしながら、設計の基礎としてその安全性説明書(safety case)が作成された時には、容器は耐震能としては鋼鉄製枠組みとは切り離された。この変更に対応するために、その抑制ブロックが設けられず、さらに、幾つかの鋼鉄製の構造が計量容器と鋼鉄製枠組みとの間にさらなる隙間を設けるように設計変更されたことが、物的証拠から明らかになっている。

調査委員会は、抑制機構を除去した変更の後に金属疲労を考慮する設計の見直しが行われたという証拠を見いだすことが出来なかった。そのような計算が行われていたとすれば、その計量タンクを水平方向の抑制機能なしで吊り下げモードで運転することが許可されたとは信じられないと、調査委員会は考える。この点をはっきりさせるためには、大量の設計および試運転記録があるので、さらなる調査が必要である。

調査委員会は設計目的が変更されており、そして、これは容器と支持鋼鉄製構造の元の設計時点以後のある時点であったが、試運転初期よりも以前の時点に行われたと断定した。しかしながら、入手可能な履歴情報が極めて膨大な量に及ぶので、調査委員会は、どうしてその設計目的が設計の進展と試運転の期間に削られてしまったのかを明らかにするために、勧告としては、さらなる調査を継続するべきであると考えている。

最近になって一様な試料を得るために、そのタンクが以前に必要であったよりも長い時間攪拌されていたことを示す証拠がある。このことは配管破損のタイミングに影響を与えているだろう。

4.4 核物質計量
■■■■キャンペーン(■■■2004年7月14日から2004年8月3日まで)の核物質計量において、軽微な逸脱を示す幾つかの指標があった。この発送受領不一致(SRD)は0.59%であった。この値は、通常期待されている許容偏差±0.45%から外れてはいるが、深刻な懸念を抱かせるほどのものではなかった。しかしながら、後知恵ではあるが、これは深刻な事態に発展する問題の兆候であった。

計量における有意な不一致があるとする最初のはっきりとした指標は、安全保障部(Safeguard Department)が■■■■■■■■■に知らせた、2005年3月17日に現れていた。その電子メールは、2004年9月9日から2005年1月29日まで実施されていた、■■■■キャンペーン(■■■■■)のSRDが3%であったことを示していた。この不一致は、計算が複雑であるということで、■■■■■によっても、安全保障部によっても、まだ計算エラーであると信じられていた。その計算の独立したチェックによっても、その不一致は確認された。

安全保障部はその結果を再検討するための会合を組織した(2005年3月22日)。進行中であった■■■■キャンペーン(■■■■2005年1月31日から2005年2月25日に行われた)の初期の指標は、有意な損失を示さなかった。そのためにその会合は、問題は■■■■キャンペーンだけに限られており、計算におけるエラーによって生じたものだと結論した。翌日(2005年3月23日)に■■■■■を引き続いて再チェックすると、確かに不一致のあることが示された。結果として、安全保障部は完了した■■■■キャンペーンと進行中の■■■■キャンペーンの双方についての最終のバランス計算を急いだ。

2005年4月13日に安全保障部は、■■■■■に電子メールを送り、■■■■キャンペーン(■■■■)の最終的分析で、喪失が今や3.9%になっていることを明らかにした。これに続いて翌日には、安全保障部から■■■■■■■への電子メールで(2005年4月14日付)、■■■■キャンペーン(■■■■■)についての3度目のSRDが9%であることが明らかになった。

その■■■■キャンペーンのSRD情報を受け取ったのと同時に、■■■■■■は、セルの供給清澄区域のサンプからのサンプル結果を確かめた。それらは2004年11月26日と2005年2月24日の両日において供給清澄槽サンプにかなりの高い濃度のウランが存在していたことを示していた(サンプリングの状況と、調整槽サンプと供給清澄槽サンプとの関係についての詳細な説明は4.5節を参照のこと)。さらに、■■■■■■は、■■■■■■■に関する検討課題を提起し、2005年4月15日には、続いて■■■■■に関する検討課題を提起した。すなわち、SRDとサンプサンプリングの結果を明らかにし、セル内のカメラによる検査を要請した。

2005年4月18日に■■■■■によって完了した、引き続いての計算から、質量バランス計算によって、約19トンのウラン(溶解溶液の85立方メートルにほぼ相当する)が3回のキャンペーンにわたって1次格納系から喪失していたことが確認された。

(注釈:調査委員会は、破損の時刻を正確にねらう目的で、キー入力した時点でのスポットの物質バランスを得るために、制御システムトレンドからの情報を利用してきている。これらのバランスは影付きの区域として時間経過にそって示されており、定積供給装置から供給される体積とタンクが受け取った体積とのずれを示している。これらは計量タンクV2217Bだけに供給されたスポットのサンプルであることに注意しておくことは重要である。核物質計量によって示される不一致は、キャンペーン全体にわたる合計であり、計量容器V2217Aに供給中のものを含む。したがって、物質バランスはSRDの値よりも高い割合で物質の喪失を示すことになる。)

4.5 サンプリング操作
セル220内には2つのサンプが設けられており、ひとつは清澄過程の下にある区域から集められているサンプであり供給清澄槽サンプ(F2226)として知られている。もうひとつは計量容器と調整容器とが置かれている区域から集められているものであり調整槽サンプ(F2268)と呼ばれている。漏えいした溶解溶液が集まったのは調整槽サンプF2268である。その調整槽サンプF2268は、供給清澄槽サンプの上にある捕集ポット(catchpot)に、集まった水のいくらかを吐出するようにしてサンプリングされる。次に、自動サンプリングシステムが捕集ポットから試料を取り出し、その液体試料を真空試料ボトルに移す。試料ボトルは続いてソープ内のHA実験室に分析のために自動的に送られる。

安全性説明書(safety case)は、サンプ内の液体は吐出される前にサンプリングされることを要請している。しかしながら、これは予想外の水位上昇があった箇所でのみ要請されているにすぎない。サンプル調査結果は、吐出されるべき液体が、臨界安全性説明書によって想定されている3.5g/lのPu濃度以内にとどまっていること、したがって、いずれかの受け入れタンクに移せるようになっていることを確認するよう要請されている。システムはまた3ヵ月毎にサンプのサンプルが自動的に採取されるようになっているが、これは安全性説明書の要請ではない。

サンプF2226とF2268の 操作指示(Operation Instruction)(OI/02/0411)は、カテゴリーBの指示である。この指示が行われたことを示す承諾記録書(CRS: compliance record sheets)については、2000年12月以来記録が残っていない。

調整槽サンプF2268では体積ゼロとされたサンプルの記録がある。2003年6月5日と、2003年10月3日、2004年3月1日、2004年5月30日、2004年8月28日、2004年11月26日、2005年2月24日、そして、2005年4月14日に2回、2005年4月15日に1回採取されたサンプルのすべてが体積ゼロと記録されている。体積ゼロとは、分析の実験室に送られた試料ボトルの中に液体が無かったということを意味しており、システムにおけるタイミングのずれによって生じ得る。すなわち、自動サンプリング装置が試料をつかみ取るには、捕集ポットへの液体の吐出が早すぎたか遅すぎたかのいずれかである。2005年4月14日の2回目の試料と2005年4月15日の試料とを別にすれば、他の体積ゼロであったどの試料についても再度採取する試みはなされなかったことを証拠が示している。

2003年6月5日から溶液が発見された時までに、サンプF2268からのサンプリングに成功した試料がひとつだけあり、それはウラン濃度が50.1g/l という結果であった。しかしながら、このサンプルは2004年8月28日の00時35分に採取されたものであり、この時にはセラフィールド実験情報管理システム(SLIMS)とソープ化学プラント情報コンピュータ(CPIC)とを結ぶコンピュータ間接続が稼動していなかった(詳細は所見の5.6節)。その結果は他のサンプル分析結果とともに、ソープにファックス送信された。F2268からのサンプル再採取が、後にその夜になってから行われたことが自動サンプリング記録装置に残っている。しかしながら、その装置内の記録が失われているので、この試料を採取せよという通常外のサンプル採取要請様式は見つけられていない。調査委員会は、どうしてサンプル採取が再度要請されたのかについて解答を出せないままになっている。

サンプF2268からの液体がサンプリングのために捕集ポットに注入されると、次いでその捕集ポットは供給清澄槽サンプF2226に液体を戻すことになっている。したがって、正常なサンプリング操作の間には、調整槽サンプの液体は供給清澄槽サンプに移されることになる。ウランが存在するという陽性反応が出た供給清澄槽サンプからのサンプルは2つあり、2004年11月26日(9 g/l ウラン濃度)と2005年2月24日(61 g/l ウラン濃度)に採取されたものである。これらの結果のいずれかに対処がなされたことを示す証拠はない。実際のところ、何人かの運転操作をする正当な指名職員(DAP)は、先行するサンプル履歴がウランの存在を示していないけれども、サンプの放射能が陽性であると言う結果は異常なことではないと報告している。さらに、ソープの設計の基礎は、サンプは汚染されないとしており、著しい漏えいでもない限り、観察された大きさのウラン陽性という結果が得られるのは信じ難いのである。後知恵であるが、これらの陽性の結果は調整槽サンプF2268から採取された溶解溶液が、捕集ポットから供給清澄槽サンプF2226に排水されたためであったのは明らかである。(訳注:DAP: Duly Authorised Person 「正当な指名職員」。英国では、サイトの特定の主な安全関連機能や緊急関連機能にはDAPという資格が確保、維持されている必要がある。)

証拠によると、3回あった発送受領不一致(SRD)に対する対応措置として、■■■■■■が供給清澄槽サンプF2226からの試料のウラン陽性反応の結果をCPICに入力したのは2005年4月14日であった。サンプリング結果を受けての何らかの対応措置としては、これが最初の表示である。調整槽サンプからのその一つの陽性反応結果は、コンピュータには入力されていなかった。というのは、それはファックスで既に送られており、 CPICにはまだ手動で書き込まれていなかったからである。供給清澄槽サンプF2226からのサンプルの結果が、発送受領不一致(SRD)とともに、その後運転管理上の問題を提起し、カメラによる検査要請につながった。陽性反応が供給清澄槽サンプからであったがために、その時点では潜在的な問題はセル内のその部分であろうと思われていたということは注目に値する。

4.6 サンプ水位計測警報器(Sump Level Pneumercator)
サンプF2268には、溶液水位を測定するために機器が取り付けられている。その機器はpneumercatorタイプの装置で、LIJ2596と呼ばれている。その機器は運転員に溶液喪失を警告するためにある。その設備は、安全性関連(Safety Related)のものであり、プラントの臨界安全性説明書からの要求である。放射能安全性説明書は、サンプのモニタリングの必要に言及していない。

調整槽サンプ水位計LIJ2596に関連する異常なアラーム動作の深刻な履歴がある。2004年7月1日(その機器の最後の実証試験)から2005年3月22日までの期間、アラームは100回以上、低、あるいは低低状態の信号を出していた。この期間における運転記録の中に、2004年12月8日と9日にアラームが検査されたという証拠がある。しかしながら、記録された情報は、硝酸溶液がサンプに流れる音がしていたにもかかわらず、(正常過程と同じように)指示水位に変化がないと示している。その機器が補修されたという証拠はない。この調査の後、2005年3月22日までに約51回の低および低低アラーム信号が続いた。この期間に、調査または補修作業がなされた証拠はない。

2005年1月15日に、LIJ 2596は、8センチメートルのサンプ水位の急速な増加を記録した。(DCSトレンド記録歴に記録されている)この上昇した水位は、その後低下し、その上昇前のレベルを水位計は示すようになった。ほぼ同時にサンプの温度も3℃上昇したが、セル内の温度は予測されるパラメータ範囲内にとどまっていた。サンプ温度の上昇は衰えることなく、事象が発見された時まで確実に温度は上昇した。温度情報は記録歴から利用できるが、運転員が通常モニターするパラメータではない。

水位計は正常なサンプ水位を示し続けていたが、2005年4月20日のカメラ検査は、おびただしい量の溶解溶液の存在を確認した。LIJ2596を点検するようにとの保守依頼が、2005年4月22日に出された。高圧側への空気供給が調査された時に、空気供給ロタメータの表示球が、通常流量を示す位置で固着していたことが明らかになった。流れは著しく下がっていたので水位計の指示値は実際のものよりもはるかに低くなっていたこともまた報告されている。空気流量が正確な量を示すように調節された時、LIJ2596によって示された水位は、0.2メートルから1.8メートルに跳ね上がり、おびただしい量の液体がサンプに存在していることが明らかになった。調査委員会は、なぜ、そしていつ、空気流量が低下していたのかを確定することはできなかった。しかしこの状態は、以前の保守作業によって気づかれないままだったと考える。

この事象以後、また、セル内にあった溶解溶液のモニタリング中に、水位のわずかな下降傾向が検知された。これによって装置の更なる調査が行われたが、それによって圧力移送機の校正がずれていたことが判明した。その移送機は2005年5月7日に取り替えられ、そして水位は以前の指示値に戻った。水位はそれ以来、この報告書の編集のときまで安定している。

4.7 検査直前の管理対応
■■■■■■キャンペーンの発送受領不一致(SRD)に関する安全保障部からの電子メール(2005年3月17日)が、何か重大な間違いが起こっていることに気づける最初の兆候であった。上記4.4節で記述された理由で、その問題は2005年4月15日(金)まで、(■■■■■■を含む)運転管理部に提起されなかった。

供給清澄槽サンプF2226からの、ウランが存在するという陽性反応により(2004年11月26日と2005年2月24日)、そのときには、潜在的な問題がセル220の供給清澄エリアに起きていると考えられた。調整槽サンプ(2004年8月28日に50. 1 g/lの ウランが採取された)に見られた唯一の陽性反応は、CPICシステム上で利用できなかった。なぜなら、研究所SLIMSとCPICの間を接続するコンピュータはダウンしており、分析研究所はSLIMSを「マイナー・カスタマー」モードとして知られているものへ切り替えていたためである。このモードは情報のより容易な手動検索を許可するが、そのコンピューター接続が回復する時、結果のどんな自動書き込みも不能にする─そのサンプルの履歴はCPICへ手動で再生されなければならない。2004年8月28日からの結果は見つからず、事象後までCPICに入力されなかった。運転管理に利用可能な全てのデータは、そのセルの供給清澄エリアを示していたので、カメラ検査はこのエリアに対して計画された。

カメラによる検査は、当初、2005年4月16日と17日の週末に実施されるように計画された。調査行動計画では、調査は生産よりも優先されるという取り決めになっていた。しかしながら、週末にわたっていつもの運転チームを召集している期間、カメラによる検査の準備のための人的資源が不足するかも知れないという懸念を■■■■■は抱いた。同じその週末にわたって続いていた議論の中で、交代の運転チームが全ての作業を実施するのは合理的ではなく、そして、カメラ検査の準備はいつもの運転チームが戻ってくる月曜日(2005年4月18日)まで延期するということに■■■■は同意した。■■■■はその会話を行った時点では、その検査が持っている基本的理由を認識していなかったと報告している。

2005年4月18日月曜日の遅くに、■■■■■は■■■■■■から物質バランスのSRDのこととサンプの検査結果のこと、そして、2005年4月19日には供給清澄槽エリアのカメラ検査のために生産を中止させることになることを聞かされた。その日の後になって、■■■■■■は■■■■■に生産の中断はセルの調整槽エリアを検査するために翌日(2005年4月20日水曜日)も続くということを確認した。そうしてこの検査によって、セルの調整槽エリアの床面に大変な量の溶解溶液が存在していることが明らかになったのである。

5. 所見
5.1 新しいプラント文化
溶解溶液が喪失したという事実に関しては、カメラ検査によってその溶液が発見されるより以前に、1ヶ月にわたって不一致を示していた計量プロセスによって決着がついていた。計量担当者や運転員、チームリーダー、そして管理担当者ら、聞き取り調査を受けた全てのスタッフの回答は、このようなスケールの溶液喪失が漏えいによって起こるのは、まずありえないことであり、書類に何かの間違いがあるにちがいない、と彼らが信じていたというものであった。

共通している大規模破断に対する懐疑には、その奥底に、ソープが、漏えいなどあり得ない、最高の水準で建設された新しいプラントであるという思い込みがあった。プラントの健全性に対するそのような信頼は間違いであった;強固な設計は、格納機能喪失のリスクを小さくすることはあっても、それを無くすることを保証するものではない。適切な監視によってのみ、健全性が維持されていることは保証される。健全性に対するこの信頼は安全性説明書に反映される。:

「供給清澄及び計量セル内の容器と配管とはすべて溶接構造であって、高い基準の健全性を満足するように製作されている。したがって、セル床面への大きな漏えいはありそうもないと考えられる。それにもかかわらず、もしもそのような事象が起こったならば、サンプ警報によって運転員には注意が喚起されることになる。」

残念なことに、サンプ警報は運転員に注意を喚起しなかった。そして、この事実について勧告がなされることになっている。「新しいプラント」文化は、ソープ組織内のあらゆるレベルに浸透している。漏えいは起こりうるし、実際に起こることを証明した経験が以前にあったにもかかわらず、このような文化が続いていた点には注意が要る。そして、過去に起こった漏えいでも、事実の認識は遅れ、状況をさらに悪化させていた。2つの例が特に関連している。

a) 1998年に、溶解槽セルの排出配管にある、粒の粗い微粒子の排出装置に腐食による穴が開いた。非常に強い放射性溶液が、2次格納系に漏れ出した。問題があることを示していたサンプ水位、サンプの試料採取、そして、放射線検知器の示す汚染にもかかわらず、このことは何年間も気づかれないままになった。(維持管理調査の後に)サンプの試料採取と水位のモニタリングについての勧告が出された。

b) 2005年2月に、3人の労働者が溶解槽Cのサーモウェル・ポケット(thermowell pocket)の熱電対の交換を行った後に、はなはだしく汚染された。この汚染は、溶解溶液がポケットに漏れていたことを示していた。この事象についての調査委員会報告では、次の点が注意された。すなわち、その事象は「…『新しい』プラントであるという心理とプラントの健全性に対する余りに度の過ぎた信頼がもたらした結果の、また『もしもこうならば』と注意する主体が充分でなかったよい例であった」。

セル220の調整槽サンプへの漏えいは、これらの過去の事象に見られるすべての特質を備えている。プラントの異常な兆候はすぐには認められず、閉じ込めの喪失は信じ難いと考えられていた。過去の事象はこのような態度に影響を及ぼさなかったようである。これらすべては、ソープの前処理の運転文化について、第1次の閉じ込め機能が失われたことを検知することに関してひとりよがりになっていて、過去の事象が与えた教訓を十分に学んでいなかった、という見方を調査委員会にとらせることになった。事態を改善させるために、以下の提案をよく考えるべきである:

i) 運転員は、ソープを通常運転に復帰させるのに必要であるクリーンナップと回復作業については、できるだけ全てに参加する。参加、特に制御室スタッフの参加によって、運転員は1次格納系の裂け目からの結果を直接見ることができる。

ii) 安全性説明書は、もはや漏えいは起こりそうもないとは主張しないように修正される。それに代わって、漏えいは抑制されるようにはなっているが、最も早い段階で確実に漏えいを検出して止めるために、継続的な警戒と通常状態からずれた兆候に対する疑問と追跡とを要求する。この変更はすべての運転員に対して説明されなければならない。

5.2 運転管理の有効性
3回の連続した高い発送受領不一致(SRD)が生じるまで、すべてのレベルにおけるソープの運転管理は、計量と安全保障(accountancy and safeguards)の観点から高まっているインベントリー異常(inventory anomalies)についての懸念に気づくことがなかった。セルのCCTV点検を行うという運転上の決定がなされた時でさえも、これがなされる理由についての 上級管理者レベルの誤解によって、2005年4月16日と17日の週末にわたって、検査の準備よりもソープでの生産の方により高い優先順位がつけられてしまったように見える。運転管理機構も調整槽サンプの水位計とサンプのサンプル結果に関する積年の問題に気づいていなかった。

安全文化に関する遂行目標において、WANO(世界原子力発電事業者協会)は次のように言っている。「組織のすべてのレベルの個人が原子力安全は圧倒的プライオリティーをもつと考えている。彼らの決定と行動はこのプライオリティーに基づき、そして、彼らは原子力安全の懸念が適切な注意を受けることを確かめるために、どこまでも追求する。作業環境、個人の態度と振舞い方、および方針と手順は、そのような安全文化を促進する」。WANOの目標は、「世界クラス」基準を表す。

高い品質で建設されたにもかかわらず、ソープ内で1次格納機能が破れるような重大な故障が起こることを、この事象は実証した。そのような事象の歴史経過がある以上、この報告における勧告が包括的に履行されたとしても、さらにプラントの故障が将来起きる可能性は相当な程度残されそうである。ソープの運転管理の目標は、したがって、どのようなプラントの故障が発生しても、それを素早く検出し、安全側に立った方法で運転上の対応をとることを確実とするように、安全文化を向上させることでなければならない。

したがって、次のことが提案される:
i) ソープの運転管理者は、仕事場に本人が直接訪れて、運転員の運転作業と仕事ぶりだけでなく、プラントと工程の状況を、頻繁にモニターし、観察し、評価する。これらの訪問から得るべき運転管理者の目標は、彼らが機器と人のパフォーマンスの問題を追跡し、そして原子力安全と疑問を持つ態度、安全側に立った意思決定の重要性が強化されるように、現在の運転状況と問題について完全に精通することである。

ii) 上級管理者が彼らの工程における化学と熱力学、物理学についての深い理解を与えるようなバックグラウンドを持っていないところでは、彼らが直接的にアドバイスとコーチを受けることができる「技術顧問」を配置するべきである。

5.3 サンプ操作 ―指示書とトレーニング―
サンプの操作者指示(OI: operator instruction)OI/02/0411はカテゴリーBの指示であり、サンプのサンプリングと水洗のための手順書になっている。この指示はカテゴリーBであり、臨界安全性説明書の操作指示に応じていて、次の点を要求する:

「予想外の水位上昇がセル220のどちらかのサンプで起こったなら、合理的に実行可能な限り速やかに、サンプルを採取しプルトニウム分析を実施しなければならない。分析結果が3.5g/l 以上のプルトニウム濃度を示すならば、サイトの原子力安全役職員(Site Nuclear Safety Officer)からアドバイスを求めなければならない。そうでなければ、合理的に実行可能な限り速やかに、サンプを空にしなければならない」

その操作指示はあいまいであり、何が予想外であると考えるのかについては運転員の裁量にゆだねられている。勧告では、指示における明快さの欠如について述べられている。しかし、あいまいでなかったことは、カテゴリーBとしての操作者指示に対して承諾記録書(CRS: compliance record sheet)に署名することを要求していることであった。たとえサンプが明らかに満杯になってさらに吐出されていたとしても、4年以上にわたって、その指示に対するCRSの記録が全く無い。

さらに、その指示が変更された際には立ち会っていたチームメンバーのグループによっていったん署名されるならば、操作指示に関する習熟記録書(FRS: familiarization record sheet)は保管された。したがって、新しいチームメンバーは、彼らがその指示を理解していることを示すためのFRSに署名していない。トレーニング記録挿入のシステムはこのような不備を克服するために使用されて来ているのであるが、これは前処理化学プラント管理チームが気づかないままに止められていた。このことは、正当な指名職員(DAP)にはカテゴリーBの操作者指示についてのトレーニング実施状況を追跡する手段がないということを意味している。

前処理化学のSQEPシステムの調査では、24のSQEPパッケージ(それらはすべて、それらの内で前処理化学の操作者指示(OI)のクロスリファレンスをつけられたものに関連していた)が無効にされて、初任者をSQEPに鍛えるためではなく、元々はSQEP運転員の再評価のために書かれた7つの高水準のSQEPパッケージと取り替えられたことが分かった。SQEPパッケージ内でOIのクロスリファレンスのものを取り除くことは、トレーニング部門の意図である。■■■■■は、24のSQEPパッケージの取り消しを知らなかった。(訳注:SQEP: Suitably Qualified and Experienced Person 「適正な資格と経験を有する職員」。英国では事業者は、安全関連機能を果たす全職員がSQEPであることを徹底させる義務がある。)

サイトライセンス規則(SLR)224条項1.2.4と4.l、 SLR 224 b条項7.1.16、7.1.17は次の点を要求する:
−操作指示のトレーニングのために適切な準備がなければならない。
−上級管理者は、新しい/修正された操作指示のトレーニングのための記録を、個人が彼らの責任区域に雇用されている限り、保存しておかねばならない。
−指示の管理されたコピー(controlled copy)を受け取っている主任は、すべてのチームメンバーが関連した/修正された指示に精通しているようになったことを確かめなければならない。(FRSのものは、したがって、カテゴリーAとBの指示のために必要である。)

次の行動が取られることが提案されている:
i) 分類された指示としてCRSに署名する慣行が規則に服従するものであることを確かめること。
ii) 新しい運転員を訓練するためにSQEPパッケージが適切であること、および新しい運転員がカテゴリーAとBの指示に対して訓練されたことを確かめる機構を再調査すること。

5.4 存続期間にわたる履歴の記録
計量容器に関連した履歴と情報のすべてを追跡するために、多大な努力が要求されたことに注意することは重要である。記録図面は比較的簡単に取り出せるが、関連した計算パッケージや設計時の変更等は、すぐには入手できず、書庫で個々にたどらなければならない。したがって、次のことが提案される:

i) 存続期間にわたる記録を組み立てることに考慮が払われ、設計意図、設計パラメータ、試運転および運転履歴がプラントと設備の主な項目に対してパッケージ形式で確実に編集されるようにするべきである。

5.5 維持管理の記録
コンピュータ化されたメンテナンス管理システム(CMMS)についての取調べから、調整槽サンプの水位計LIJ2569の履歴がわずかしかないことが明らかになった(訳注:LIJ2569はLIJ2596の誤りと思われる)。通常の年次メンテナンスと2005年4月22日に行われた調査は記録されている。しかし、2005年5月13日に行われた記録履歴の印刷から、2004年12月8日から9日にかけて行われた調査の記録がないこと、および2005年5月7日に実行された移送機の交換の記録がないことが明らかになった。計器、特に安全性に関係するものとして設計された計器の、通常でないメンテナンスについてコンピュータ化された記録が欠如していることは憂慮すべきである。したがって、次のことが提案される:

i) ソープの前処理化学プラントにおいてコンピュータ化されたメンテナンス管理システムの利用法を再調査する。その際に、不定期なメンテナンスが以下の項目を含めて十分に記録されることを確実にすることに特別な注意を払う:
−不定期なメンテナンスの理由。
−いかなる調査活動でも、その調査結果。
−実施された補修作業。

5.6 SLIMSの「マイナー・カスタマー」モードへの切替
2004年8月28日のサンプルの陽性の結果が相手側にファックスされたとき、CPIC(化学プラント情報コントロール)が作動中ならば、それが運転員の対応を促したであろうことを示唆する証拠はない。実際、コンピュータ接続を通して得られた、サンプF2268(訳注:F2226の間違いと見られる。)に関する他の陽性の結果(2004年11月4日と2005年2月25日の日付)は、運転員の対応を喚起しなかった。したがって、コンピュータのリンクがダウンしたとき、最も重要な寄与要因であるとみなされるのは、サンプ管理に対する運転員の態度である。この問題の取り扱いについて勧告がなされた。

リンクがダウンしたことの重要性は、カメラ調査に一層関連する。リンクがダウンしていた間、ファックスするために研究所がより簡単に手動で結果を編集できるように、SLIMSシステム(実験情報管理システム)は「マイナー・カスタマー」モードに変えられた。「マイナー・カスタマー」モードに切り替えられたとき、接続が再度確立されても、検索結果は自動的にSLIMS から CPICへ書き込まれない −結果は手動で書き込まれなければならない。 F2268からの2004年8月28日のサンプルの結果は手動で書き込まれておらず、したがって、計量の不一致の調査が行われたとき、それらを調査チームに提供できなかった。結果として、調査チームは最初、問題がセルの供給清澄槽エリアにあると信じ込んだ。プラント履歴を見落とす危険を増加させることは明らかに好ましくないのであり、次のことが提案される:

i) SLIMSの「マイナー・カスタマー」モードへの切替えを制限し、研究所管理の正式な認可によってのみ可能にする。「マイナー・カスタマー」モードが可能にされたならば、自動的に書き込まれない情報のすべてがコンピュータに再入力されることを確実とするために、積極的な措置(positive measures)が適切に行われなければならない。

6. より広い教訓および情報伝達手段
本調査委員会は明確に改善することを必要とする数多くの分野を特定した。組織としてこの調査から得られた教訓を深く学び取ることを確実なものとするために、目標達成のための行動が提起されている。

より広い教訓が適用されるべき重要な鍵となる3つの分野がある。
・水位計測警報装置の操作。
・物質と溶液の計量。
・核燃料の計量。

・以下の問題点が、製造部門のトップ(あるいはそれと同等者)によって問われるべきである。

水位計測警報システムに関して、あなたは、
・所定の検査見回りを行っているか?
・システム管理を行っているか?
・検査で見つかったことを記録しているか?
・保守管理の後に装置が適切な稼働状態に復帰していることを積極的に確認しているか?
物質と溶液の計量に関して:
・例えばセル内部やそれ以外の、すべてのサンプ区域における「異常」状態に対して運転員が正しく対応することを確実にするために、どのようなコントロールが適切であるか?
・あなたのエリアの運転員は、彼らが運転する工程におけるサンプ水位上昇にどのように対応するべきかを理解しているか?
・設計通りに確実に働くようにするために、すべてのサンプと関連するサンプリング装置の日常的点検と保守を行うように管理監督しているか?
核燃料の計量に関して:
・溶解溶液が含まれている重要な運転工程について、質量バランスや体積流量のような、リアルタイムの物質計量に頼る以外に、1次格納機能の喪失を検知するのに使用することが可能などのようなシステムをあなたは持っているか?
今回の事象に関する一般的状況説明を助けるために、セラフィールド運転経験フィードバック(Operating Experience Feedback: OEF)エンジニアは、この事象の学習パック(Learning Pack)を作成することになっており、それはOEFコーディネーターネットワークを介して配付され、地域事象検討チームの会合(Local Event Review Team Meetings)で検討される。


付録2
供給清澄、計量および調整貯蔵セル220の解説

そのセルは、2つの分離したサンプを備えた2つのエリアに実際上分割されている。供給清澄容器および廃液検査タンク(effluent sentencing tank)が入っているエリアには、サンプF2226が、計量と調整貯蔵タンクを含むエリアには、サンプF2268が備えられている。

前処理溶解セルからの溶液はセル220に入り、清澄のために遠心分離機(G2200A/B)に通される。この清澄によって、2つある計量タンク(V2217AとV2217B)の一つに移送される前に、その溶解溶液から「細かい微粒子」が除去される。

計量タンクは、約23立方メートルの有効体積を持っており、2.9 M(モル濃度)の硝酸に250 g/lのウランが硝酸物として溶けている溶液を、流れ作業からの供給物として受け入れる。これらのタンクはバッチ方式で作動し、溶液注入と重量計測、溶液排出を順次繰り返す。

その計量では2つの基本的方法が使われており、それはサンプル分析と結び付けられた、重量測定と水位測定である。いったんその測定が実施されてサンプルの体積が求められると、その溶液は3つの調整貯蔵タンク(BSTのV2241A-C)の一つに逆流変換器(Reverse Flow Diverters (RFD's))を用いて移送される。

計量システムの操作の一環として、それら2基の計量タンクは、それぞれのタンク内部に設置されている撹拌/排出システムによる継続的な撹拌を行う。これは、溶液が均質であり、得られたサンプルが溶液の組成を代表していることを保証する。

2基のタンクは、4本のステンレスのロッド(支持棒)に支えられており、それらロッドはセルの上に設置されている重量計測器に、セルの天井を突き抜けてつながっている。セルの内部には鋼鉄製枠組みが設置されており、そこにはタンクが重量計測の校正やその他の目的のために、降下させて置けるようになっている。支持用のロッドはタンク上端近くに巻かれているステンレス鋼のカラー(collar:襟のような分厚い円環)を通じて固定されている。この上部のカラーはまた、それが下げられた時にタンクを鋼鉄製枠組みにのせて支える目的に使われる。両方のカラーに固定されたトラニオン(軸受けピン)は、建設時に使用されたもので、校正または通常運転中には荷重はかからない。

タンクの下の鉄骨構造は炭素鋼でできており、塗装で保護されている。それは2階構造をしており、それらの高さは5.75メートルおよびl.75メートルである、そして2つの階の間に多くの垂直な支柱がある。この鋼鉄構造は、セルのコンクリート壁に埋め込まれたプレートによって支えられている。ステンレス鋼製の受け皿(高さ0.3メートル)よりも低い位置には鋼鉄製構造物は何も存在しない。図1参照。