ソープ再処理工場の供給清澄セル─新情報

Thorp Feed Clarification Cell Update.

英国原子力グループ(BNG)プレスリリース

2005年5月27日

http://www.bnfl.co.uk/library/upload/docs/004/2574_1.doc


4月22日、英国原子力グループ(BNG)は、セラフィールドのソープ前処理施設にある供給清澄セルとして知られる厳重に防護壁で囲まれたセルの1つの中にある配管が破損し、多量の溶解された核燃料が密封された閉じ込め区域に放出されたと報告した。

溶液の漏えいは、CCTVカメラがセルに導入された4月19日に確認された。この発表のとき、セラフィールドの常務取締役バリー・スネルソンは次のように述べた。「皆様ご安心ください。工場は安全で安定した状態にあります。安全モニタリングは空気中での放射能異常がないことを確かめており、私たちの従業員や環境に影響はありません。私は、プラントの再処理工程のせん断設備を含む前処理施設を閉鎖するよう要求しました。プラントは安全な静止状態にあります」。この状況は、依然として事実である。この事象は、一人の個人へも害を与えていないし、環境への放射能放出も引き起こさなかった。

約83立方メートルの溶液が、計量タンクの一つに注ぎ込んでいる配管(第1の閉じ込め壁)の破損箇所から、特別に建てられたステンレスの内張りをもつ厚いコンクリート壁のセル(第2の閉じ込め壁)の中へと流出した。第2の閉じ込め壁は、この事象で漏えいしたよりも著しく大量の漏えいをもたらすような第1の閉じ込め壁の破損に備えて特別に設計されていた。それは、セルの床から溶液をポンプで汲み上げて、そのセル内の第1の閉じ込め壁内のタンクに戻すように設計された装置を備えている。

この事象が報告されて以来、漏えいした溶液を第1の閉じ込め壁内に戻す作業が開始されてきた。全ての溶液の回収には、更に4週間かかる予定である。

我々の原子力敷地許可の下での協定に従って、何が起こったかを正確に見出す目的で、また、すべての必要な教訓が実行されることを保証するよう、セラフィールドの常務取締役に勧告するために調査が組織された。

その調査は今ではもう完了している。どのようにして、かつ、なぜ破損が起こったか、及びそれに対する対応という2つの線での調査が行われた。その重要な調査結果は、次の通りである:

●その配管の破損は金属疲労で起こった。金属疲労は、吊り下げられたタンク(タンクの内容物の重量を測るため)にその配管が取り付けられていたという事実に起因する応力によって引き起こされた。タンクがこのように設置されているのはソープ(そして、実際はセラフィールドの他の施設を含めて)の中で、これが唯一の場所である。

●第2の閉じ込め壁は設計どおりに働いた。いったん配管が破損すると、(放射性)物質は、環境への放出や人への害を防ぐために特別に設計された区域に集まった。

●破損の原因は、吊り下げられたタンクの制動メカニズムの変更が導入されたときの設計意図の変更までさかのぼる。この変更は連結された配管に予測されたよりも大きい応力が働くことを許した。

●配管は2004年8月に破損し始めたかもしれないことを示唆する証拠がある。配管の破損(その時点で、相当な量の溶液がセルに漏えいし始めた)は、2005年1月半ばに起きたと思われている。

●しかし、2005年1月(おそらくそれ以前)と2005年4月19日の期間に、物質が第2の閉じ込め壁内に流出していることを示したはずのセル内サンプリングやレベル測定のような機会は見逃された。破損をその段階で防ぐことはできなかったにしても、これらの機会を捉えていれば、漏えいした溶液の量を著しく減らすことができたであろう。


調査報告書は、3つの広いカテゴリーに分類される勧告を行った:

●応力に起因する金属疲労の可能性がセラフィールド全体で適切に対処されていることを確認するために、詳細な技術的再調査がなされることを保証すること。

●プラントの異常を表示するセルの計測器や他のシステムに関するメンテナンスや試験や信頼性を改善すること。

●得られた教訓が実行され取り入れられることを保証するために、プラント全体での運転上の慣行を再検討すること。


上記のように、我々は現在、溶液を第1の閉じ込め壁内に戻している。セラフィールドの常務取締役バリー・スネルソンは、以下のように述べた:「私たちが現段階で利用できる情報から、私たちにはソープの業務を再開する可能性があると確信しています。」

調査報告書にコメントしながら、彼は述べた:「調査は実に完全で、事象の根本原因を突き止めています。勧告がソープだけでなくセラフィールド全体で実行されることを、私は個人的に保証するでしょう。プラントの表示装置が本来あるべきように素早く働かなかったことに私は失望しています。そして、プラント情報に従って行動することに関するどんな慣習にも取り組むことを保証するために私は行動していくでしょう。安全性の維持と環境保全は、溶液を戻すという進行中の作業及びその後のプラント業務の再開の両方において、依然として私たちの絶対的優先課題です」。

NII[政府の原子力施設検査局]も事象に関する独自の調査を実施している。

以上


編集者への注
Notes for Editors

ソープは改良ガス冷却炉と軽水炉の使用済み燃料を再処理している。再処理では、使用済み燃料中の成分、すなわち96%のウラン、約1%のプルトニウム及び約3%の廃棄物を分離する。ウランとプルトニウムは、新しい燃料にリサイクルできる。

ソープの概念設計は1974年に開始され、公的な計画設計の審査は1977年に行われた。詳細設計とサイト準備作業をした後、主な建設作業は1985年から1992年にかけて実施された。プラントは、次に5段階の試験や指示を実行し、その後1994年になって生産を始める許可を受けた。

ソープの建屋は、5つの主要な操作区域から成る:受け入れと貯蔵;供給水槽;前処理施設;化学分離区域、そして生産物の仕上げライン。

建屋は、約260m×120m×48mの大きさで、190,000立方メートルのコンクリートと2,200,000メートルのケーブルから成り、2,000以上の区切られたスペースをもつ。

生産が1994年に始まった時から、合計5,729トンの使用済み燃料がソープで再処理された。

ソープの再処理とそれに付随する業務には、英国、ドイツ、スウェーデン、オランダ、イタリア、スイス、日本、カナダとスペインを含む世界中の9つ以上の国の34の電力会社からの注文を受けて、全体で120億ポンドの注文台帳がある。

我々は、ソープの120億ポンドの注文台帳の道のりの半分以上にまで進んでいる。

多くの先進的な設計と技術に立脚した機能がソープに組み込まれた。主な生産段階は、配管や容器の破損事故の場合でも全ての放射性物質が安全に封じ込められることを保証するために、完全に密閉され防護壁で囲まれた部屋またはセルの内部に置かれている。

ソープの供給清澄セルは、放射性の漏えい物を閉じ込めるように設計されていて、そのような漏えい物を元に戻す機能を備えている。セルの床にはステンレス鋼で内張りされた堤で囲まれた区域と汚水だめがあり、その内に溶液は閉じ込められる。設置された蒸気排出機は、溶液をうまくセルの床から持ち上げ、処理工程の容器に戻している。

セルの床の上に流出した溶解液は、硝酸に溶けた使用済み燃料の溶液である。

供給清澄セルの主な目的は2つある−溶解液は、まず細かい微粒子状の物質を取り除くために遠心分離される、それから、計量タンクで重量が測られる。これらの行程は、配管、容器及び遠心分離機で行われ、それらは完全に密閉されたセル内に保持されている。そのセルは、配管や容器などからの溶液漏えい事故の際に、放射線の遮蔽と第2次レベルの閉じ込めの機能を果たす。

破損配管を検査し、ソープをどのように再開するかで合意するために組織されたプロジェクト・グループは、影響を受けたタンク周りの仕事や破損部分の修理または取り替えを含む可能な解決策を検討した。いったん好ましいオプションが選ばれたならば、それは原子力廃止措置機関(NDA)と当社の監査委員会とで共に進められるであろう。