ガラス固化試験再開に向けての原燃報告書に関する
再処理ワーキンググループへの要望書

2010年10月26日
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)

核燃料サイクル安全小委員会再処理ワーキンググループ
 主査 松本 史朗 様
 委員各位 様

 ガラス固化溶融炉試験の再開に向けて日本原燃が8月23日に出した報告書改正版(以下、改正報告書)について、貴ワーキンググループ(WG)は9月8日と22日に検討されています。非公開なので私たちに詳細は分かりませんが、いくつかの意見が出されたことは議事概要から伺えます。
  当会はすでに9月5日に、この問題についての要請書を貴WGに送りました(下記URL)。
   http://www.jca.apc.org/mihama/reprocess/jnfl_req100905.htm
また、10月5日には全国の268団体で経済産業大臣宛の要望・質問書を提出し、原子力安全・保安院などと交渉を行いました(要望・質問書は下記URL)。
   http://www.jca.apc.org/mihama/reprocess/meti_req101005.htm
 今回、さらに改正報告書に対する疑問点を再整理して当会の見解にまとめましたが、その詳細は下記URLに掲載しています(別紙参照)。
   http://www.jca.apc.org/mihama/reprocess/jnfl_glass101025.pdf

 委員のみなさまには、これらの内容はよくご存知のことですので、ここでは簡単に疑問の要点を述べた上で、下記のように要望いたします。よろしくご検討くださるようお願いいたします。

1.日本原燃の対策に関する疑問点
(1)日本原燃の新たな対策
 日本原燃が改正報告書で原因判断を踏まえて打ち出した主な対策は次の点であると考えます。
@ これまでガラス温度が的確に把握できていなかったので温度計を増設し、その妥当性を確かめるために初めから、すなわち化学試験段階に戻って試験をやり直す。
A 前回は底部電極温度を高めに設定したが、白金族が降下するので低めに戻す。
B 白金族の堆積を防ぐための洗浄運転(実廃液を入れない運転)を定期的に行う。
これらのうち、
A については、底部温度を高めると白金族の沈降・堆積を早めるが、低めるとそれが直接流下ノズル温度の低下につながり流下を妨げるというジレンマの問題ではないでしょうか。
B の洗浄運転の定期化はまったく姑息な方式で、仮にこれで試験がうまく行ったとしても、本来の廃液処理という目的からはずれるものではないでしょうか。

(2)ガラス温度が把握できていなかったという驚くべき事実
 今回の日本原燃の見解では、白金族が堆積した原因は、実はガラス温度が的確に把握できていなかったことにあるとしています。そのため初めから、すなわち化学試験に立ち戻ってやり直すとしています。しかし他方、ガラス温度が把握できなかった原因は仮焼層の影響にあると考えているようです(9月22日再処理WG議事概要)。それならば問題の根本は仮焼層の不安定にあるのではないでしょうか。ところが仮焼層の不安定をもたらす泡(ガス)の影響などを考慮しモデル化する意思はないようです(第43回WG議事録15頁)。仮焼層の影響を認めながらそれに深く立ち入ろうとせず、もっぱら温度計の増設という対症療法に頼っています。これでは、3度目の白金族堆積に終わるのが目に見えているのではないでしょうか。

(3)炉内残留物の調査をなぜしないのか
 2008年10月試験では、不溶解残渣を入れた段階で白金族の沈降・堆積が著しくなったのは事実です。ところが日本原燃は、不溶解残渣が仮焼層の変化をもたらしたという面しか見ていません。不溶解残渣には大量の白金族が含まれているために、それだけ多くの白金族が沈降するという面は完全に無視しています。これと関連して、A炉内残留物の調査・分析はまったく予定されていません。別の文献調査や小型溶融炉試験結果等で済ませています。これは、2008年2月14日に原子力安全・保安院が示した方針に反しています。一般に原因分析で当然とられるべき措置が、今回は意図的に避けられているのではないでしょうか。

2.要望事項
 日本原燃の温度管理に絞った対症療法でうまく行くなどというのは誰も信用しません。私たちは、この型の溶融炉には白金族の沈降・堆積という本質的欠陥があると考えています。日本原燃の溶融炉では、その欠陥が是正されるどころか、むしろ拡大されたのではないでしょうか。その直接要因として、東海1号で設置されていた濃縮器がコストを理由に設計段階で省略されたこと、及び容量が5.5倍に大型化されたことを挙げることができます。
 そこで、上記の疑問点を含む次の点について検討されるよう要望します。

(1) 上記第1項で述べた疑問点について検討してください。

(2) 濃縮器が省略されたことの影響について根本的に総括してください。
 東海1号溶融炉では仮焼層の挙動など全く問題になっていませんでした。そのガラス温度は、日本原燃溶融炉のようなランダムで激しい動きは示していません。このことは、濃縮器が省略されたために仮焼層が不安定になったことを強く示唆しているのではないでしょうか。
(3) 容量を5.5倍にも大きくしたことの影響について根本的に総括してください。
 容量が大きくなればそれに比例して白金族も多く沈降します。それでも漏斗状底部の形は変わらないため、底部に付着する白金族がそれだけ多くなることは避けられないのではないでしょうか。

 貴WGでは、仮焼層の挙動などにすでに着目されているようでもありますが、この際専門家としての責任において、根本的な問題にまで立ち入ってぜひ検討されることを強く要望いたします。

  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
    大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581


(10/10/26UP)