美浜3号機事故の配管取替─配管製造番号の改ざんと隠ぺい事件
関電の安全管理のずさんさがまたも発覚
関電は、美浜3号機の事故調査の真っ最中に、
取替用の配管を発注し、改ざんを隠ぺいし続けていた
美浜3号機の運転再開などもってのほか


 本日(11月10日)、美浜3号機事故で破断した配管の取り替え用配管で、この配管を製造した三菱重工業が配管の接続ミスを行い、それを隠すために製造番号の刻印を削り取り番号を改ざんしていたことが明らかになった。関電は、約9ヶ月間もこの事実を隠し続けてきた。

1.三菱重工業が配管の製造番号を改ざんしたのは、今年の2月である。この時期は、まだ美浜3号機事故の事故調査が続いていた。関電が最終報告を出したのが、3月1日。原子力安全・保安院が事故の「最終報告」をまとめたのが3月31日だった。事故調査において、関電は何度も報告書の書き直し等を要求されていた。また、事故調査では、関電の安全管理、品質保証に重大な欠陥があると指摘されるなど、関電の安全性に対するずさんな体質そのものが大きな問題となっていた。
 その事故調査の最中に、関電は早くも取り替え用の配管を発注し、その中で起きた改ざん事件を隠ぺいし続けていたのである。事故調査委員会のたびに深々と頭を下げていた関電は、その裏で、早くも運転再開の準備を始め、自らの「外注先の管理能力」にまたも汚点がつく事実をひた隠しにしていた。関電の安全管理のずさんさと隠ぺい体質は、何ら改善されておらず、組織の奥深くにまで染みついたものであることが、今回の事件によって改めて明らかになった。

1.関電は本日、「お知らせ」として自社のホームページに「美浜発電所3号機の配管取替え工事における刻印打替の記事について」という短い文章を出している。新聞各紙で報道されてしまったから「お知らせ」しますというだけのものだ。その中では、「当社においても、その対応において不適切な点があり、反省しています」と述べているが、対応にどのような不適切な点があったのか、何を反省しているのかは一切書かれていない。そして「技術基準上は・・・問題はない」とわざわざ書き、運転再開には問題はないこと、本日から始まった保安院による配管検査にはなんら支障はないとわざわざけん制をかけている。
 関電がまずやるべきことは、今回の事件について、事実を全て公表し、その責任を明らかにすることである。

2.報道発表によれば、今回の配管製造番号改ざんについて、美浜発電所は「正規の配管に交換し品質保証に問題ない」として、関電の原子力事業本部にも連絡していなかったという(読売新聞WEB版11/10)。11名もの死傷者を出した美浜3号機事故後でも、このようなずさんな管理を行っていたわけだ。トップが「安全第一」とかけ声をかけても、各発電所は自社の本部にも不都合なことは報告しないという風通しの悪さと、不都合なことは徹底して隠せという体質が末端まで染みついている。
 また、「関電は国への書類で不正の発覚を報告し、実際に作業をやり直したにもかかわらず、同じ報告書の中で、是正措置(やり直し)の必要はないとの判断を記し、混乱を招いていた」(朝日新聞WEB版11/10)という。製造番号の改ざんがあっても、取り付けのやり直しの必要はなかったと判断していたというのだろうか。関電がいかに安全性をないがしろにしているかを示すものである。

3.三菱重工業は、配管の接続を間違い、その間違いを隠すために配管の製造番号を改ざんした。同社は、美浜3号機の破断部位を点検リストから漏らしていた会社でもある。美浜3号機事故の後には、安全管理を徹底するとしていたが、それも口先だけのことだった。今回の事件について、「刻印の重要性を再教育する」と早々と再発防止策を口にしている。しかし問題はそんなところにはない。配管の接続を間違えたことを上司に報告すると「直せ」と指示され、作業員は「改ざんせよ」と理解したという。「直せ」とは「改ざんせよ」というのが三菱重工業の中でまかり通っていたことを示しているのではないのか。それほどまでにずさんな安全管理が横行するような会社が、危険な原発機器を製造しているのが実態だ。

4.原子力安全・保安院は、本日から明日にかけて美浜原発の立入検査を行っている。事故後に経済産業大臣が出した「技術基準適合命令」に対する立入検査のためである。破断した配管は、ステンレス鋼の配管に取替られた。新品のこの配管が国が定める技術基準を満たしていることは、よほどのことがない限り当然のことである。保安院がやるべきことは、今回の製造番号改ざんと隠ぺい事件そのものを徹底して調査することだ。そうでなければ、自らが主催した「事故調査委員会」と自らがまとめた「最終報告」が愚弄され、顔に泥を塗られたままで引き下がることになる。
 電気事業法に基づく「技術基準適合命令」は、配管を取り替えれば形式上は終わってしまう。しかし、関電が引き起こした美浜3号機事故と、今回の不正・隠ぺい事件は、改めて関電の安全管理のずさんさを示すものであり、関電に危険な原発を運転する資格がないことを示している。原子炉等規制法に基づき、美浜発電所の運転許可を取り消すべきである。

5.福井県は、美浜3号機事故直後から、県独自で原子力安全専門委員会を開催し事故調査を行ってきた。関電は10月月31日、福井県と美浜町に、配管取替の「実施報告書」を提出した。10月12日には、県の専門委員に取替現場を公開し、なんの問題もないかのように振る舞っていた。関電は、またも、福井県をだまし、今回の不正を隠ぺいし続けてきた。福井県が美浜3号機の運転再開を認めないよう、強く要望する。


 美浜3号機事故そのものについても、関電がいつの時点で破断した配管部位が未点検であることを知っていたのか等、多くの疑惑が残っている。事故予見可能性に係わる重要な問題である(詳細は11/8保安院ヒアリング内容を参照)。これらの問題を徹底して解明し、関電と保安院の責任が明らかにされるべきだ。

 また、美浜発電所では最近、事故やトラブルが頻発している。美浜1号では8月上旬の調整運転の準備中に給水ポンプの水漏れが明らかになり(8月5日)、その後運転を再開しようとする度に、湿分分離過熱器での蒸気漏れ(9月17日)、加圧器安全弁からの蒸気漏れ(9月29日)、1次冷却材ポンプからの水漏れ(9月29日)と続き、さながら老朽炉が悲鳴をあげているようである。福井県議会でも、大きな問題となっていた。そして今日、調整運転を再開する予定だったが、関電は、明日11日に延期すると、本日夕方発表した。美浜発電所の安全管理そのものが問題になっている最中である。「万全を期す」ために、即刻原子炉を停止すべきだ。

 今回またもや不正が明らかになった美浜3号の運転再開など、断じて許されるものではない。

2005年11月10日