5月27日関電交渉報告 |
使用済MOX燃料 |
「プールでの保管は法で定められた『処分の方法』にはあたらない」(関電) |
「プールの安全性は貯蔵期間では評価していない」(関電) |
5月27日、グリーン・アクションと共同で関西電力との交渉を行った。関電本店の近くにある住友中之島ビルの地下1階で、午後6時から約3時間の交渉だった。関電からは広報3名、市民は約20名が参加した。事前に提出していた質問書「使用済MOX燃料の『処分の方法』、MOX燃料の内圧評価の変化等に関する質問書」(5月11日付)と「相次ぐ高燃焼度燃料の漏えいに関する質問書」(5月12日付)、「英国SMP施設におけるMOX燃料加工についての質問書」(5月21日付)を基に交渉を進めた。 使用済MOXの問題について関電は、「先のことは絶対とは言えないが、2010年頃から検討が開始される第二再処理工場で再処理されるだろう」と国任せでまるで他人事のような無責任な姿勢を取り続けた。また、使用済燃料プールでの保管は、法律で定められている「処分の方法」にはあたらないと認めた。さらに、使用済MOXの超長期保管に伴う使用済燃料プールの安全性確認については、水温等で確認しているだけで、「貯蔵期間で評価しているのではない」として経年変化等による評価は行っていないと認めた。燃料被覆管の経年劣化についても「メーカでは確かめているはずだが」と曖昧な回答だった。搬出先も明確にできず、超長期保管の安全性もきちんと確認できていないことが明らかとなった。このまま、プルサーマルを実施することは許されない。 次に、関電の原発で相次いで起こっている三菱製の高燃焼度燃料からの放射能漏えいについては、漏えい原因を、燃料棒と支持格子との間に隙間ができ、振動でこすれるフレッティング摩耗としているが、まだ原因が最後まで特定されていないことが確認された。それにもかかわらず関電は、使用中止にするのは、漏洩した燃料と「同時期に製造」したものと限定し、漏洩監視で対応するとしている。三菱製の燃料をすべて使用中止にすべきだと強く要求した。 最後に、5月13日に関電が発表した、イギリス・セラフィールドにあるMOX燃料加工工場(SMP)での燃料加工に関する電力10社と英側との枠組み合意を巡って交渉した。今回は、1999年のデータねつ造事件の際、データねつ造を知りながらそれを隠していたことを、福井県や住民になんら謝罪していないことについて追及した。これに対して、関電は沈黙を続け「何も言うことはない」と事実上回答を拒否した。何も反省していない。 以下、主要な点について報告する。 1.使用済MOXの問題について (1)「使用済MOX再処理の委託先の目途は立っていない」 関電が1998年5月に出した高浜3・4号プルサーマルに関する設置変更許可申請書では、使用済MOXの「再処理の委託先については、搬出前までに政府の確認を受ける」としている。5月11日付の質問書は、委託先の目途はあるのか聞いている。これに対して関電は、政策大綱で2010年頃から検討を開始することになっていること、昨年7月に五者協議会が論点整理を原子力委員会に報告していること、原子力委員会でも今後検討が進められると聞いていると長々とした回答を続けたが、委託先の目途はあるのかという質問には直接答えなかった。そこで、きちんと質問に回答するよう求めたが、「2010年頃から検討・・・」を繰り返した。しかし、最後には「今の時点で搬出先が具体的に決まっていないということでよいですね」と確認を求めると、関電は「はいそうです」と認めた。 (2)使用済MOXの超長期保管の安全性は「貯蔵期間では評価しない」 質問書では、使用済MOXが搬出されるまで、何十年の保管を想定し、その期間の安全性をどのように確認しているのか聞いている。関電は、「2010年頃から検討が開始される第二再処理工場で再処理されるまで適切に貯蔵・管理される」とした上で、「安全性の確認は冷却水の水温等を評価して冷却能力に問題はないことを確認している」とした。関電の回答は、「何十年の保管を想定しているのか」に直接回答するものではなかった。 そこで、改めて「何十年を想定しているのか」と回答を要求すると、「貯蔵期間では評価しない」と答えた。これに対して参加者は驚き、「100年でも問題ないということなのか」「再処理するまで何十年も置いておくということはあらかじめ想定されていなかったのではないか」と追及した、これに対して関電は、「水温で評価している」と繰り返すだけだった。そこで「使用済燃料プールは何年間使えると評価しているのですか」と聞くと、「原発についてもプールについてもあらかじめ決まった耐用年数というものはなく、30年を超えた段階で再評価する」ということだった。また、「燃料被覆管の耐用年数は評価されているのか」と聞くと、「メーカではやっているはず」といい加減な答に終始した。被覆管の耐用年数については、調査の上、後日回答になった。 (3)1998年の申請書で「使用済MOX搬出までに再処理委託先を確定すればよい」とした根拠は何も示せず 原子力安全・保安院は2004年3月に内規を出し、それまで燃料装荷前に再処理委託先を申請書に明記しなければならなかったものを、プールから搬出するまでに委託先を確定すれば良いことに変えてしまった。つまり、再処理先が決まらなければ、いつまでも使用済MOXはプールに止め置かれることになる。使用済MOX燃料の超長期保管を認めるものである。 一方、関電は内規が出される6年も前の1998年に出した設置変更許可申請書で、内規の内容を先取りするように、「再処理の委託先については、搬出前までに政府の確認を受ける」とのただし書きを付け、使用済MOXの超長期保管を打ち出している。 質問書では、1998年の段階で、関電は何を根拠にして「再処理の委託先については、搬出前までに政府の確認を受ける」としたのか聞いている。 これに対して関電は、「1997年2月の閣議了解等を踏まえて申請し許可を受けた」と答えた。閣議了解のどこに、搬出前までに再処理委託先を決めれば良いなどと書いているのか具体的に示すように求めると、関電は「プルサーマルを推進すること」等閣議了解の中身をいくつか述べ始めた。そこで、「どこが根拠になるのか具体的に示してください」と追及すると、「閣議了解の前段階で原子力委員会などの決定もあり、発生するすべての使用済燃料を再処理するということを前提としているわけで・・・」と言い始めた。「どこが根拠になるのですか」と重ねて聞くと、「全量再処理が前提ということを受けて役所の方と協議して、申請して許可を受けているということ」などと言い始めた。参加者からは、「どこにも根拠はないじゃないか」「関西電力が自主的に再処理委託先の決定を発明したということでいいのか」との声があがった。また、「役所と相談してとはどういうことですか」と確認を求めると、「そんなことは言っていない。揚げ足を取るならこういった面談もうやめましょう」とまで言い始めた。最後には「先ほど行った通り以上のものはない、こういう申請書を出して許可を受けたということ、それ以上の回答はない」と居直った。 結局、関電としては、保安院の内規のはるか以前から、すなわち法的には何も根拠がないにもかかわらず、使用済MOXはプールから搬出する前に再処理先を決めればよいと手前勝手な手続きをひねり出したにすぎない。国はそれを追認したということだ。 (4)「使用済燃料プールでの保管は原子炉等規制法の定める「『処分の方法』ではない」 原子炉等規制法では、原発の設置にあたって「使用済燃料の処分の方法」を明確にすることを定めている。質問書では、プールでの使用済MOXの保管は、この「処分の方法」に該当するのかどうか聞いていたが、関電は最初、直接には答えなかった。そこで、「プールでの貯蔵はあくまでも再処理の前段階であって、処分の方法そのものではないですね」と確認すると、「はい。その通りです」とやっと認めた。続けて、「処分の方法について申請書では具体的に書いていないということで良いですね」と重ねて確認すると、「処分の方法は再処理です」と一般論でしか答えなかった。 また、六ヶ所再処理工場で再処理する使用済燃料について積立金制度を設けているが、再処理の具体的目処がない使用済MOXはこの法律の対象外となっている。そこで電力会社は、「再処理等準備引当金」という名目を与え、内部留保の形で引当金を計上している。関電の有価証券報告書では、この引当金の対象となるのは「再処理等を行う具体的な計画を有しない使用済燃料」であるとしている。質問書では、この引当金の対象に使用済MOXが含まれるのか聞いている。これに対して関電は、使用済MOXは、「再処理等を行う具体的な計画を有しない使用済燃料」であると回答した。また、引当金の計上は装荷前や装荷後ではなく、「燃焼に応じて引き当てを行うということで、燃焼が進んで行くそれぞれの段階で計上する」ということだった。 (5)「2010年頃から検討するといっているのだから国が何か決めるのでしょう」「結論(第二再処理工場)が決まっていなければ、(プルサーマルを)できないというものでもないでしょう」 最後に、参加者から「関電として本当のところ、第二再処理工場はできると思っているのか、それとも確信はないのか」と質問があった。これに対して関電は、「先の事は絶対こうなるとは言えないが、国の方としては2010年頃から検討するとしているので何らかの結論は出るのでしょう」と、まるで他人事のような投げやりな回答をはじめた。「関電として、絶対に第二再処理工場はできるという確信を持っていないのにプルサーマルをやるのですか」と聞くと、「国が検討すると言っているので、何かの結論は出るのでしょう」とし、「先のことはわからない、どうこうとはいえない」とまで言った。このような姿勢に対し、参加者からは、「国の結論も出ていないのに、なぜプルサーマルだけを進めるのか、無責任ではないか」等、わっとばかりに批判の声があがった。これに対して関電は「何事も、結論が決まっていなければ、できないというものではないでしょう」とまで言った。「処分の方法も決まっていないのに、使用済MOXを作り出すことに不安を持っているのです」と言うと、「太陽光でも、パネルの処分方法が確立していないからといってやめるということにはならないでしょう」と問題をすり替え、居直った。再処理されるかどうかは国まかせ。再処理されるとは明確に言えないが、プルサーマルは進めるし、使用済MOXも出てきますというのが、関電の基本姿勢である。 2.相次ぐ高燃焼度ウラン燃料からの放射能漏えい (1)隙間なしでも漏えいしたのはなぜ?−−回答なし 続いて、頻発している高燃焼度燃料集合体(ステップ2 燃焼度55,000MWd/t)からの放射能漏えい問題にうつった(5月12日付質問書)。これは大飯原発1・2・4号機で、1年半の間に7本もの燃料棒から漏えいが起こっている問題である。主に次の2点を追及した。 1)関西電力は漏えい原因を、燃料棒と支持格子との間の隙間に生じた振動でこすれるフレッティング摩耗としている。しかし、7本中3本には隙間が見つかっていない。 2)大飯原発の漏えいが三菱原子燃料製ばかりで起こっており、関電のプレスリリースでも三菱製燃料集合体の構造が他メーカの構造と異なることが原因の一つであると問題視している。ところが使用しないのは、同時期に製造されたものに限定している。これは不可思議な対策である。 関電の回答では、上記のように7本のうち3本で隙間が見つかっていない。そのうち大飯4号の漏えい燃料棒については、搬送先の研究施設で詳細調査するために引き抜く際に引っかかりがあったので、発電所ではわからなかったが支持板等のわずかな入り込みがあったと推定しているという。しかし、隙間がなかった他の2本については、聞いても何も答えなかった。また、研究施設での詳細調査結果については、2008年に漏えいした大飯4号の結果を今年度中にまとめる予定。2009年に漏えいした大飯2号の結果は2013年度中に出るよう計画中だが、今年起こった大飯1号についてはその2例で結果が得られると考えているので詳細調査は行う予定はないという回答であった。このように、関電の回答からも、漏えい原因=「隙間説」には納得できない点がある。 (2)三菱製の燃料は全て使用するな 使用しないのは「同時期(3つの時期)に製造」した燃料に限定−その場しのぎの対応 「放射能濃度を監視する」と保安院に合わせた後退姿勢 燃料集合体の製造時期については、2004年6月(大飯4号)、同年7月(2号)、同年10月(1号)であると回答した(資料1参照)。「同一時期」とは「一つのプロジェクト、要するに製造単位、発注単位のこと」という認識を示し、これら3つは別の製造時期に属するとした。 関電の対策では、使用しない燃料を「同時期に製造」したものと限定している。その場合の「同時期」とは上記の3つの時期どれかと重なった場合をいうとのこと。しかし、同時期に限定するのではなく、同型の燃料はすべて使用すべきではないと私たちは主張した。これに対して関電は、今回の対策で漏えいの可能性を低減でき1次冷却水の放射能の濃度監視を行うことで十分であるとして問題点をはぐらかした。さらに追及すると、同型で同時期製造は使用しないという関電の対策は、「念のため」のものであると答えた。自らのプレスリリースでは、三菱製の燃料ばかりで漏えいが起こっている理由を構造の問題としているのに、今回の交渉では全くそれに触れようとしなかった。「同時期」とは関電の原発では3つの時期だが、伊方原発での漏えい燃料は2006年5月に製造されており、そうすると、「同時期」は4つの時期になる。しかし関電は3つの時期に製造されたものを「同時期」として使用しないとしている。これは、その場しのぎの対応でしかない。 今回の関電の対応には、どうも別の事情がありそうだ。実は、保安院が5月6日の原子力安全委員会に提出した資料(4月28日付)では、関電が示した対策の内、「同型で同時期製造の燃料は使用しない」という項目がなぜか抜け落ちている。今回の関電回答は、この保安院報告と一致した姿勢に後退してしまったと見ることができる。保安院は3月1日の交渉で、漏えいを容認する「放射能濃度の監視」を対策としてあげていた。私たちは関電に対し「保安院の報告から抜けている関電の対策について保安院に指摘し、抜け落ちている『同型・同時期の燃料は使用しない』を明記するよう」申し入れた(資料2参照)。 その他、ステップ2の高燃焼度燃料ではないが、高浜1号で起こった漏えいも三菱製燃料であったと関電は回答した。 資料1.高燃焼度燃料からの漏えい
資料2.アンダーラインの部分が保安院の報告からは抜けている
3.セラフィールドのMOX燃料加工工場(SMP)での燃料製造について 関電は5月13日のプレスリリースで突然、関電を含む電力10社がイギリス・セラフィールドにあるMOX燃料加工工場(SMP)での将来的なMOX燃料加工に関する全体的な枠組みについて、SMPを運営する英国原子力廃止措置機関(NDA)と合意したことを明らかにした。SMPはかつてBNFL社が運営し、その後NDAが引き継いでいるが、品質保証上の不祥事、問題をたびたび繰り返している(1999年に関電のMOXを製造したのはMDF、新工場SMPは2001年に操業開始)。 質問書では、事実確認を行うとともに、1999年のデータねつ造事件の際、関電はBNFL社からねつ造に関する報告を受けていたにもかかわらず、そのことを福井県や一般に公表せず握りつぶしていたことについて、その後福井県に謝罪したのかどうか、反省しているのかどうか聞いている。 これに対して関電は、BNFL問題の再発防止と品質保証活動の改善に関する報告書を2002年に国と福井県、高浜町に提出したという周知の事実だけを述べた。ねつ造を知りながら、それを隠していたことについては一切答えなかった。「ねつ造の事実を知っていたというのは事実ですよね」と聞いても、「先ほどの答の通り」と言うだけ。「それも認めないのですか」と聞くと、だんまりを決め込む。「一回も福井に言っていないですよね」と聞いても沈黙のまま。参加者から「どうして黙っているのですか」「答えなさい」と追及の声があがった。これに対して関電は、「先ほどの回答以上のものはない」と最後まで回答を拒否し続けた。関電は、10年前のデータねつ造事件について、未だ何も反省していないことが改めて明らかになった。この点については、再度回答するよう求めた。 また、2009年12月末時点で、関電が英国で所有するプルトニウムは、核分裂性プルトニウムで1.84トン、全プルトニウムで2.71トンであり、約60体分のMOX燃料に相当すると回答した。 |
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(10/06/01UP) |