チェルノブイリ原発事故から18年
ようやく公表された
ベラルーシのガン登録データが示す成人ガンの過剰発生


 「科学者たちは、放射性ヨウ素がもたらした被曝によって小児甲状腺ガンが増加したということに関しては、くり返し何度も言及している。しかしながら、我々がチェルノブイリ事故後に成人の甲状腺ガンが増えているというデータを公表しているにもかかわらず、国際原子力機関IAEAや国連原子放射線の健康影響に関する委員会UNSCEARの報告書には、この成人の甲状腺ガンが5倍に増加しているという事実は反映されていない。(本文より)」
 チェルノブイリ事故から18年を経た2004年11月になって、1990年から2000年までのベラルーシにおけるガンが、事故前よりも40%増加していることを示す、国家ガン登録のデータを分析した研究が"Swiss Medical Weekly"誌に公表された。国際的な、あるいは国内的な政治的圧力によって、現場の科学者達には自由に解析することすら許されていないと伝えられている、この国家ガン登録のデータが公表された意義は大きい。そこには成人の甲状腺ガンとともに結腸や膀胱のガンが増加していることが示されている。比較的汚染レベルが低かったとされるベラルーシ国内のビテプスク地区を対照群に選んでも、汚染の高いゴメリではガンが増加していることが明確に示されている。事故処理に動員され最も高い被曝を受けたリクビダートルの間にもガンが増加していることが明らかにされている。
 放射線影響に関する国際的権威筋は、この事実を、チェルノブイリ原発事故がもたらした健康影響の実態を、低線量の内部被曝がもたらす悪影響を、人々の目から隠しつづけている。意識的に国際社会を欺こうとしている。彼らが何をどのように語って来たのかを再度確認しておこう。国際放射線防護委員会ICRPが全面的に依拠する、国連原子放射線の健康影響に関する委員会の報告書(UNSCEAR2000)は、次のように述べている:
「チェルノブイリ原発事故から14年後の電離放射線に関係する公衆の健康への悪影響については、ベラルーシやロシア、ウクライナに見られる小児甲状腺ガンの実質的増加を別にすれば、それを示すいかなる証拠も存在しない。放射線被曝に結びつき得るいかなるガンの発生率やそれによる死亡率の増加も観察されていない。放射線被曝に最も敏感に反応する白血病のリスクは、事故処理に携わった労働者や子供の間でも、高くなってはいない。電離放射線に関係する非ガンの健康障害についても、増加しているという科学的な証拠はない。・・・大半の公衆は自然バックグラウンドよりも数倍高い放射線レベルにさらされた。生活についてはチェルノブイリ事故によって混乱があったが、この付録の評価に基づくと、ほとんどの個人の将来の健康については、全体的に良好であるという見込みが支配的であろう。」
 これが国連の立場である。しかし、ここで紹介する論文に書かれているように、放射線による悪影響の証拠が無いのではない。証拠を隠しているのである。これらの国際機関は「科学」を標榜し、世界の人々に嘘をつき続け、嘘を宣伝しているのである。そして、六ヶ所村の再処理工場を含む日本と世界の原子力政策は、その嘘で固めた放射線安全説に立って進められている。
 数多くの困難の下で、この研究論文を公表された著者らに敬意を払いたい。同時に、この貴重な研究を我々の運動の中で活用できるように努力したいと考えている。

<抄訳>