長尾光明氏を多発性骨髄腫に追い込んだ
福島第一原発の被ばく労働環境を告発する


 東電・福島第一原発などで70mSvの被ばくを強いられた長尾光明氏の労災認定を勝ちとるための支援運動が始まっている。7月24日には、厚生労働省交渉東電交渉が行われた。厚生労働省への申し入れ書にあるように、この支援運動の内容は2つの柱から成り立っている。
 第一は、もちろん長尾氏の多発性骨髄腫の原因が原発労働による被ばくにあるとして、労災認定を迫ることである。白血病では、年5mSv以上の被ばくがあれば原発労働が原因であると認定されているが、長尾氏の場合はその約3倍被ばくしている。さらにプルトニウム吸入による内部被ばくが加わった可能性があり、この点では、当会代表の小山の意見書が8月5日付けで福島県富岡労基署にだされている(概要は美浜の会HPに掲載)。また、医学書では多発性骨髄腫も白血病の一種であるとの概念で捉えている。労災認定がされるのは当然のことである。 
 第二は、長尾氏の被ばくを、被ばく労働による多くの被害の典型的な表れとして捉えようという普遍的立場である。とりわけ、長尾氏が福島第一原発で働いていたちょうどその時期に、そこはα核種(プルトニウム)で汚染されていた。この問題はみなし制度の範囲で検討されるべきだとの立場もあるが、支援運動はそのような考えはとっていない。長尾氏の労働環境がα核種でも汚染されていたことを積極的に明らかにし、それを覆い隠した責任をも問題にしようとしている。7月24日の厚生労働省交渉では、α核種の問題に重点をおいて厳しく迫り、その後の東電交渉でも、α核種問題で資料を出すよう東電に迫った。
 さらにこの第二の線で、各分野で実際に運動が準備されている。8月19日には福島第一原発の地元で、α問題について東電交渉が行われた。さらに地元では、東電交渉の第二弾や、地域的な会議での質問などが準備されている。また別に、東芝との交渉が首都圏で準備されている。

 長尾氏の被ばく労働は、スペインの新聞EL MUNDOの今年6月8日付けでも、長尾氏のカラー写真入りで大きく取り上げられた。表題は「日本の原発奴隷」で、A3表裏いっぱいの記事である。電力会社や大企業が、危険な原発内労働で、いかに下請け労働者などを犠牲的に利用しているかが、樋口健二氏や藤田祐幸氏の話に基づいて綿々と綴られている。
 「大企業がかかわる仕事では、何も悪い事態が起こるはずはないと考えられてきました。しかし、これらの企業が、その威信を利用し、人々を騙し、人々が毒される危険な仕事に人々を募っているのです」という長尾氏の言葉が引用されている。
 この長尾氏の告発の内容、その精神は、我々支援運動の普遍的な観点と一致している。一刻も早く長尾氏の労災認定が実現するよう、また隠されてきた被ばく環境の実態を暴くよう協力してがんばろう。