今夕(30日)行われた「裁判官にも人権を!寺西裁判官懲戒処分を許さない市民
集会」の集会アピールです。「職務」を終えたあと仙台から駆けつけた寺西さんの「
最高裁がどのような判断を下そうとも、憲法を守ることを厳格に要請されている裁判
官として、今後も人権を守るために発言をつづけるつもりだ」という言葉に会場から
大きな拍手が起こりました。
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集会アピール
私たちは、7月24目、仙台高等裁判所が寺西和史裁判官に対して下した「戒告」の
決定に対し、強く抗議します。決定は、寺西裁判官が、今年4月18日に開かれた盗聴
法に反対する市民集会に出席し、一般参加者の席から、「集会でパネリストとして話
すつもりだったが、地裁所長から懲戒処分もあり得るとの警告を受けた。仮に法案に
反対の立場で発言しても、裁判所法で定める積極的な政治運動に当たるとは考えない
が、パネリストとしての発言は辞退する」と述べたことが、言外に同法案反対の意思
を表明する発言をし、集会主催団体等の政治運動に積極的に加担した、と認定し、そ
れが「積極的な政治運動」にあたる、としました。
裁判官にも目本国憲法21条が保障する言論・結社・集会参加等の表現の自由が認め
られており、国連の司法の独立に関する基本原則でも、裁判官の表現の自由が明記さ
れています。寺西裁判官の発言は、彼の表現の自由の行使として、当然に保障されな
ければなりません。最高裁判所事務総局が編集した「裁判所法逐条解説」ですら、単
に政党に加入して政党員になったり、一般国民としての立場において政府や政党の政
策を批判することは、積極的な政治運動には当たらない、としており、この見解に照
らしても、寺西裁判官の発言は懲戒処分の対象とはなり得ないものです。
そればかりか、仙台高裁の決定は、寺西裁判官が、昨年10月に「信頼できない盗聴
令状審査」と題して新聞に投書したことを取り上げ、その件で寺西裁判官が旭川地裁
所長から注意処分を受けたにもかかわらず、令状審査に関する自分の見解を国民に対
し発言し続けようとしたとして、令状審査の実情につき語ろうとすること自体を非難
しています。逮捕状や勾留状、捜索差押などの令状は、濫発されれば大変な人権侵害
が引き起こされ、その被害を完全に回復することは不可能なものです。特に現在、国
会で継続審議となっている盗聴法案は、通信の秘密など憲法上の重大な人権を侵害す
る危険性があると各方面から指摘されていますが、法務省は「裁判官の発する令状に
よって盗聴捜査が適正にコントロールできる」と説明し、令状による捜査の適正化を
強調しています。しかし、私たち市民には、そうした令状の審査が、裁判官によって
慎重に行われているのかどうかを確かめる手段はありません。寺西裁判官は、実際に
令状審査に携わる立場から、私たちが本当に知りたい令状実務の実態を語ろうとした
のです。寺西裁判官のこのような姿勢は、賞賛に値するものではあっても、決して非
難されるものではありません。
これまでにも、多くの現職裁判官が、民事訴訟法や少年法の改正問題などについて
発言を繰り返しましたが、誰一人処分されたことはありません。なぜ、ひとり寺西裁
判官だけが処分されるのでしょうか。また、なぜ、寺西裁判官本人が強く望んだのに
、裁判の過程が市民に対し一切非公開とされ、秘密裡に行われたのでしょうか。ここ
にこそ、令状審査の実態を隠そうという、司法当局の積極的な政治的意図があろと言
わざるを得ません。
裁判官も基本的人権を享有する一人の人間であり、市民です。人権を守られていな
い人に、他人の人権を守ることはできません。まして、裁判官の人権を、懲戒処分に
よって積極的に侵害するような裁判所に、市民の人権を守ることができるなどとは、
到底信頼できません。
私たちは、寺西裁判官に対する懲戒処分を断じて許さず、これに強く抗議するとと
もに、私たちひとりひとりの人権を守るためにも、これからも裁判官の市民的自由を
確立する運動を進めていくことを宣言します。
1998年7月30日
「裁判官にも人権を!寺西裁判官懲戒処分を許さない市民集会」
参加者一同
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なお、以下に参考記事があります。
・『法学セミナー』98.2
裁判官の市民的自由 新聞投書による注意処分(寺西和史)
・『週刊金曜日』第226号(1998.7.10)
裁判官の発言と市民の利益
私が語ることは人としての義務なのです(寺西和史)
市民は裁判官の発言を求めている(阪口徳雄)
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MARUYAMA K. kaymaru@jca.ax.apc.org
2GO GREEN
http://www.jca.ax.apc.org/~kaymaru/2GG_JCANET.html
3月、4月、5月、6月、7月、