資2 甲山事件救援会から
栗本氏への質問状


    質      問      状

1992年6月29日
甲山事件救援会

栗本 慎一郎 殿

私どもは甲山事件で無実を訴えつづけている被告の支援を続けている甲山事件救援会と申します。
 SPA!(週間スパ)1992/4/29・5/6合併号掲載の貴殿のコラム、「栗本慎一郎の脱帽的ニュース新論−甲山事件上告棄却 学園内の小権力のほうが国家権力よりも怖い!?−」は後に指摘するような明らかな誤り、または、出所不明の資料に基づき、あたかも被告が真犯人であるかのような印象をあたえる結果となっています。私たち甲山事件救援会にとって見過ごすことができず、何を根拠に、このような文章を書かれたのか、また、公判中の被告人の権利についてどのようなお考えを持っておられるのか、以下の点につき、おたずねいたします。なお、1992年7月30日までに救援会事務所あてに文書でご返事下さるようお願いします。

 1、 明らかな誤りについて
ア, 32ページ1段目終わりから3行目「2人が『殺されて』いるが、」一人は浄化槽のうえで遊んでいて誤って落ちたことが明らかになっており、そして、二人目について裁判で争われているのですが、「殺人」と断定する根拠はどこにもありません。「殺人」と断定したことは明らかに誤りです。いかなる根拠によりこのような記述を行ったのですか?
イ, 同2段1行〜「逮捕され起訴されたが、神戸地裁の判決は無罪だった。だが事件後3、4年たったあとで、ほかの園児たちの証言が改めて取り上げられた」実際の経過は、逮捕、不起訴、再捜査、(事件から3・4年後に初めてでてきた園児証言)、事件から4年後の再逮捕、起訴、一審無罪、二審「地裁差し戻し」判決、上告棄却(神戸地裁での差し戻し審開始が決定)、です。
貴殿の記述では、二審になって新証言がでてきて「有罪」(実際は「差し戻し」であり、これも明らかな誤りである)になったかのようになっています。新証言は一審で審理され一度信用性は否定されたのです。
ウ, 同2段目5行〜「この保母が殺された園児たちを抱きかかえて浄化槽のほうへ行ったなどの行動を見たという証言」このような園児証言はありません。明らかな誤りです。
エ, 同5段13行目〜「精神薄弱児に証言能力がないと主張せんばかりであった」    誰が「主張せんばかり」なのかはっきりしませんが、少なくとも被告弁護側はそのような主張をしたことはありません。何にもとづく記述ですか?

 2、 出所不明で事実誤認の記述
ア, 32ページ4段目終わりから7行目〜「『検察は無実の民に罪をぬる』ごとき当とする論告に対し、高らかに軽蔑したかのごとき大声で(被告が)笑った』といった表現」    この文からは、検察官論告求刑公判の記事であることがうかがわれますが、当日、全く「高笑い」などなく、この記述は被告の印象を悪くするものです。いったいどんな報道記事を引用したのですか?
イ, 同5段目終わりから6行目「『変なことをいってはいけませんよ』とばかりの抑圧がかけられた』 (といわれる)」これは何に基づく記述ですか?また、「といわれる」という不確かな事柄を根拠に「被告が真犯人」との重大な推測が許されるのですか?

3、 裁判の争点に関わる記述
 32ページ5段目10行〜「教員一同が、残った園児たちの証言を抑える動きがあった」など貴殿の全体の趣旨は、いわゆる「園児に対する口止めがあった」ことを前提にされておられます。これは検察官がしきりに主張しているものですが、具体的事実は何一つ明らかにされていません。もちろん弁護側は、「口止め」などないこと、また、あり得ないことを主張してきました。裁判の争点にかかわる重大な問題について、なんら根拠もなくあたかも「あった」かのように断定的に記述したのはなぜですか?

4、一方的な主張 
ほかに、「フタは重くて子どもが持ち上げられるようなものではない」「報道はごく一般的にいって最初、権力による冤罪というトーンであった」など、誤った記述が見られ、最後には、「園児がおそらくは内部(?)のものによって殺されたのだ」と根拠なく断定しておられます。また、「裁判を遅らせるのは、一方に  弁護団の責任もあることを忘れてはならない」も、全く理由も示されず、一方的な主張になっています。
これらの点も慎重な配慮が必要なのではないでしょうか。

 5、 公判中の被告人の人権について
被告は18年にもわたって無実を訴え続けており、公平な裁判が求められるところです。また社会的にも被告人の地位にある人間が有罪の推測を受けるいわれはありません。よって、今回のコラムを書くに当たって、裁判官への影響、社会的な被告人の名誉にどのような配慮をされたのか明らかにしていただきたい。

6、その他
 「外見からの一般の議論」とはいえ、軽々しく見過ごすことはできず、「法学部専門課程の教授だった」貴殿の責任は重大であると思いますb。誠意を持ってご回答下さるようお願いします。
                                 

以 上


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