人権フォーラム21設立総会アピール(1997.11.10)


 21世紀を人権の世紀とすることは、私たちの悲願であるとともに、人類共通の課題として、是非とも実現しなければならない世界の人々の願いでもあります。私たちは、このことを確信し、人権が完全に尊重される日本と世界とを築くことをめざす市民のネットワークとして、ここに「人権フォーラム21」を設立することにしました。

 日本は、人権赤字国・人権小国と呼ばれ、国内外に多くの問題を抱えております。したがって、21世紀を人権の世紀とするためには、険しい山を登るような辛く、また根気のいる努力が必要です。しかも、私たち日本列島に居住するあらゆる個人が自分の人権を主張するとともに、他者の人権を尊重する人権文化を造る必要があります。また、あらゆる差別をなくし、人権の保護と伸長とを確立するために、法制度を整備し、国や自治体の政策を推進し、諸々の社会制度のなかに隠されている差別の根を根こそぎにする必要があります。私たちは、こうした取り組みをすすめ、平和と人権の確立を求める私たちの願いを、世界、とりわけアジアの人々と手を携えて実現していきたいと考えています。

 昨年12月の第139臨時国会で成立した「人権擁護施策推進法」は、「今日においても、同和問題等社会的身分や門地による不当な差別、人種、信条、性別による不当な差別その他の人権侵害がなお存在しており、また我が国社会の国際化、高齢化、情報化の進展等にともない、人権に関する様々な課題もみられるようになってきている」ことを深刻に受け止めるとともに、「人権の擁護に関する施策の推進について、国の責務を明らかにするとともに、必要な体制を強化する必要がある」ことを確認しています。

 私たちは、今なお存在している人権侵害について正確な情報を収集し、人権に関するさまざまな課題の解決に必要な体制を整備することについて、市民としての意見をまとめるとともに、人権確立にむけた施策に関する国と自治体のアカウンタビリティ(説明する義務)を保障する責務を負っていることを深く認識するものです。また、この「人権擁護施策推進法」にもとづいて本年5月に設置された「人権擁護推進審議会」は、「差別意識解消にむけた教育および啓発に関する施策」については2年、「人権侵害に対する救済に関する施策」については5年を目処に答申を出すことになっています。私たちは、この法律の成立にあたっての衆・参両院の附帯決議にしたがって、この審議会の透明性の確保を期待し、「人権教育のための国連10年」の国内行動計画の充実と具体化の取り組み、人権関係諸条約の批准にむけた国の積極的な検討など、日本の人権政策確立にむけたさまざまな施策を求めていくものであります。

 このように、今、私たちは、国内外の差別の実態をより正確に把握することに努めるとともに、さまざまな差別に対して国連をはじめ世界の人々がすすめている闘いに参加し、幅広く市民各層の対話を促進するために、「人権フォーラム21」を設立するものです。

 21世紀が人権の光に照らされ、その熱に暖められて、すべての人々が充実した生活を平和のうちにおくることができるように、私たちは、この「人権フォーラム21」の設立を契機として、広く日本社会のなかで差別され、差別と闘っている人々に、あらゆる立場や意見の違いを乗り越えて結束して闘うことを呼びかけるものであります。

1997年11月10日
「人権フォーラム21」設立総会



<設立総会で承認された役員体制>(1997.11-1998.12)

代表武者小路公秀(反差別国際運動日本委員会理事長)

副代表イーデス・ハンソン(アムネスティー・インターナショナル日本支部支部長)
上田卓三(部落解放同盟中央執行委員長)
金東勲(龍谷大学教授)
久保田真苗(世界人権宣言中央実行委員会実行委員長)
小西清則(全国同和教育研究協議会委員長)
笹村二朗(北海道ウタリ協会理事長)
徐 正禺(在日コリアン人権協会会長)
樋口恵子(東京家政大学教授)
山田昭義(障害者インターナショナル日本会議議長)
山田匡男(『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議議長)
鷲尾悦也(日本労働組合総連合会会長)

事務局長江橋 崇(法政大学教授)

事務局次長津和慶子(日本婦人会議中央本部事務局長)
金 政玉(障害者インターナショナル日本会議)
組坂繁之(部落解放同盟中央本部書記長)
友永健三(社・部落解放研究所所長)

教育啓発部会長元木健(川村女子学園大学教授)
教育啓発副部会長神本恵美子(日本教職員組合中央執行委員)
規制救済部会長高野真澄(福山平成大学教授)
規制救済副部会長福島瑞穂(弁護士)
(注)上記メンバーと若干名で企画運営委員会を構成する。


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