人権政策提言骨子(案)
2000.9.7
人権フォーラム21
規制・救済部会作業部会

1.【人権政策の指導原理】

1-1.〔人権政策三原則〕
 これまでの日本の人権政策は、内容と実施の両面において不十分なものであった。人権侵害・差別を受けた当事者は、地域や草の根の生活現場で、苦悩や抗議の声を上げてきたにもかかわらず、政府は中央集権的かつ省庁割拠主義的な対応に終始し、当事者の声を聞いて総合的な解決を図るための効果的な方策を実行してこなかった。こうした現実を直視すれば、今後の人権政策においては、(1)総合性、すなわち「人権政策の策定・実施にあたっては、縦割り行政の弊害を排した総合的な取り組みを行うこと」、(2)当事者性、すなわち「当事者の視点に立った施策の推進、及び当事者自らによる問題解決に対する適切な支援を行うこと」、(3)地域性、すなわち「人権問題は原則として地域社会において解決されるべきであり、地域的な取り組みに対する支援に重点を置くこと」という三原則を柱にした積極的な取り組みが必要である。

1-2.〔国・自治体の責務〕
 日本国憲法第13条は、「すべて国民は、個人として尊重される」と定め、続けて「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定し、人権の尊重が国政上の最重要課題であることを確認している。これは各国の憲法に共通する近代憲法の基本原理である。また、日本が批准した人権諸条約でも、たとえば、市民的及び政治的権利に関する国際規約第2条第1項は、締約国は「この規約において認められる権利を尊重し及び確保することを約束する」と規定し、締約国の人権尊重・確保義務を定めている。さらに1993年に国連主催の世界人権会議で採択されたウィーン宣言及び行動計画第I部第1項は、「人権及び基本的自由は、すべての人間が生まれながら有する権利である。それらの促進及び保護は、政府の第一義的な責務である」と宣言している。こうした規定から、国及び自治体は、人権の尊重・確保を積極的に実現する責務を負っていることを改めて確認する必要がある。

1-3.〔地域・市民の責務〕
 実際の人権侵害や差別事象の多くは、地域社会で生起する。そのため、地域に根ざした様々な人権運動が、第二次大戦以後、活発に展開され、日本社会における人権規範の定着と実質化を促してきた。こうした実績を踏まえ、地域社会や市民は、今後も引き続き、国、自治体、NGO等と協働し、人権が尊重される社会を実現していかなければならない。


2.【新たな法的基礎づけが必要】

 人権が尊重され、確保される社会を実現するためには、これまでの行財政的措置だけでは不十分であり、新たな法的基盤づくりが必要である。

2-1.〔実質的意味の人権〕
 法的基盤づくりにおいては、法律上の狭義の「人権」、すなわち国家によって「人権」と認められた権利だけではなく、当事者の視点に立った実質的意味の「人権」を広く扱うこととし、そのような当事者本位の新たな人権観に立った上で、人間の尊厳が真に尊重され、個人の人格的生存が保障される日本社会を目指さなければならない。

2-2.〔教育・啓発法の制定〕
 人権が尊重される社会を構築するための基本は、人権に関する教育及び啓発を充実化させることにある。よって、人権教育・啓発施策の根拠法として、「人権教育・啓発法」を制定する。

2-3.〔差別禁止法の制定〕
 日本国憲法第14条第1項が定める平等原則を具体化するため、社会的差別禁止法又は人種差別禁止法(部落差別・アイヌ民族差別・外国人差別の禁止、人種差別撤廃条約の国内法化)、性差別禁止法、障害者差別禁止法等の事由別差別禁止法、及び雇用差別禁止法(ILO111号条約を批准し、これを国内法化)等の分野的差別禁止法を順次制定する。これら諸法の整備は国民的課題であり、また国際社会に対する責務でもある。

2-4.〔差別禁止事由・差別禁止分野の明記〕
 上記差別禁止諸法の整備にあたっては、「国連・反人種差別モデル国内法」(別紙)を参照し、差別禁止事由と差別禁止分野を明示し、差別行為の予防ならびに規制、及び差別を受けた者の救済を図るものとする。

2-5.〔差別禁止法の段階的整備〕
 当初は事由別及び分野別の差別禁止法を順次制定し、後日総合的な差別禁止法の制定を検討する。

2-6.〔地域性の原則にもとづく条例の整備〕
 地域において人権侵害・差別事案を自ら解決するという地域性の原則にもとづき、地域社会における人権の尊重と確保を実現するため、自治体は積極的に条例制定に取り組む。その一環として、自治体は引き続き人権のまちづくり条例や差別禁止条例の制定を積極的に進めるべきである。


3.【政府から独立した国内人権機関の設置を】

 現行の法務省による人権擁護行政及び人権擁護委員制度は十全に機能していない。また、裁判所による司法的救済も時間と費用がかかり、かつ手続も煩雑である。加えて、これまでの裁判所は、人権侵害を受けた者の実効的な救済に役立ってきたとは言い難い。そこで、人権侵害・差別被害者に対する救済施策の実施主体として、政府から独立した国内人権機関を創設し、当事者の経済的な負担が軽く、手続が簡易で、かつ早期の実効的救済が期待できる体制を整備する。国内人権機関は、(1)総合性、(2)当事者性、及び(3)地域性の重視という人権政策三原則(上記1-1.参照)を活動指針とする。

3-1.〔人権委員会の設置の趣旨・目的〕
人権委員会は、個別の人権侵害事案を総合的に解決することを通じて基本的人権を保障し、あわせて事案処理の経験から得た知見を基に、人権に関する法制度や人権状況一般の改善に努め、社会正義と平等の実現を図ることを目的とする。

3-2.〔人権委員会の活動〕
 人権委員会は、(1)人権侵害・差別を受けた者の救済、(2)人権に関する政策提言等の活動を行う。これらの活動にあたっては、年次報告書の公表等により公開性と透明性を確保し、説明責任を果たさなければならない。

3-3.〔人権委員会法の制定〕
 人権委員会の根拠法として人権委員会法を制定し、(1)総合性、当事者性、地域性を原則として、人権侵害・差別事案の解決にあたること、(2)事案の処理を通じて明らかになる社会構造上の問題に関して意見を表明し、人権状況の改善を図ること等の人権委員会の責務を明らかにするとともに、(3)人権委員会の組織及び権限を定める。

3-4.〔人権委員会法上の「人権」定義〕
 人権委員会法上の「人権」とは、日本国憲法第3章に規定された人権及び日本が締約国となっている人権諸条約が規定する人権をいう。

3-5.〔地方及び国における人権委員会の設置〕
 政府から独立した国内人権機関として、各都道府県及び政令市ならびに国に人権委員会を設置する。(以下、前者を「地方人権委員会」、後者を「中央人権委員会」という。)

3-6.〔地方人権委員会ローカル・ポストの設置〕
 地方人権委員会は、地域住民が容易に利用できる体制を整えるため、各市区町村に少なくとも1箇所ローカル・ポストを設置する。人口規模の大きい自治体にあっては、人口30万人に1箇所を目途にローカル・ポストを追加設置する。広大な面積を抱える地域については、人口規模にかかわらず適宜ローカル・ポストを追加設置する。

3-7.〔国際機構、他国の国内人権機関及びNGOとの協力〕
 中央人権委員会は上記の活動を実施するにあたり、国際連合等の国際機構、他国の国内人権機関及び人権の促進と保護にあたっている国際・国内NGOとの連携協力をはかる。地方及び中央人権委員会は、市民社会との協働を確保するため、国内NGOとの恒常的な協議の場を設けるものとする。

3-8.〔委員及び委員数等〕
 地方及び中央人権委員会には、人権問題に関する経験と高い識見を有した常勤の委員5?7名を置く。人権委員会の委員には、一定数の法曹有資格者を加えなければならないものとする。委員の任期は6年とし、再任は1期のみ認めるものとする。

3-9.〔委員の任免と議会の同意〕
 地方及び中央人権委員会委員の任命及び罷免を都道府県・政令市議会又は国会の承認案件とし、委員任免の公開性及び透明性を確保する。 

3-10.〔委員の独立性・多元性の確保〕
 地方及び中央人権委員会委員の選定については、「国内人権機関の地位に関する原則」(パリ原則)を強く念頭に置き、委員の独立性と委員構成の多元性(ジェンダーバランスやマイノリティ出身者の確保等)に留意しなければならない。

3-11.〔人権委員会事務局職員の専門性・多元性の確保〕
 地方及び中央人権委員会の事務局職員は、職務の遂行に必要な専門的識見又は経験を有する者の中から採用し、その構成は社会の多元性を反映できるよう配慮する。

3-12.〔人権委員会の財源〕
 地方及び中央人権委員会の経費は国がこれを負担し、予算編成にあたっては人権委員会の自主性・独立性を尊重しなければならない。


4.【人権委員会の救済機能】

4-1.〔人権委員会による人権侵害・差別事案の救済〕
 人権委員会は人権侵害・差別事案に関する申立を受理し、あっせん、調停、仲裁等を通じて人権侵害の救済を図る。また、正確な事実関係の把握を期するために、必要に応じて当該事案に関する資料・情報の収集又は調査を行う。

4-2.〔調査・救済に際しての基本原則〕
 人権侵害・差別事案の調査・救済に際しては、非権力的・任意的な手法をもってこれを行うことを旨とし、人権侵害・差別を行った者と過度に敵対することを避け、説得と理解によって事案の解決を図ることを基本原則とする。

4-3.〔申立人の範囲〕
 人権委員会に対する申立は、人権侵害・差別を受けた当事者はもちろんのこと、その支援者及びNGO等の第三者でも行えるものとする。

4-4.〔表現の自由が関わる人権侵害・差別事象にかかる申立の取扱い〕
 人権委員会は、新聞、雑誌、放送等の報道機関による人権侵害・差別事案に関する申立を受けた場合には、言論・報道・表現の自由に最大限配慮しつつ申立人の実効的な救済の確保に努める。このため、人権委員会は、「放送と人権等権利に関する委員会(BRC)」のような独自の救済システムが機能している分野にかかる申立については、原則としてこれを受理せず、申立人に当該救済システムを利用するよう促すものとする。また独自の救済システムが機能していない分野にかかる申立についても、人権委員会は新聞倫理綱領(2000年6月21日制定)のような業界団体の倫理綱領等を尊重し、当該団体と協議し、申立人の実効的な救済と言論・報道の自由との両立に努める。

4-5.〔国、自治体又は民間団体による人権侵害・差別救済制度との関係〕
 国、自治体又は民間団体がすでに救済制度を運用している特定人権分野に関連する申立があった場合には、人権委員会は当該制度の運用主体と十分に協議し、申立人の実効的な救済の確保に努める。

4-6.〔国、自治体又は民間団体による人権侵害・差別救済制度との協力〕
 人権委員会は、人権侵害・差別にかかる救済制度を運用している国、自治体又は民間団体と恒常的かつ密接に協力し、人権侵害・差別にかかる申立人の実効的な救済の確保に努める。

4-7.〔地方人権委員会への相談〕
 地方人権委員会は人権ソーシャルワーカー及び人権促進市民ボランティア(後述)と協力して、人権侵害や差別に関する相談を受け付ける。

4-8.〔地方人権委員会の所掌〕
  地方人権委員会は、(1)中央人権委員会の所掌する事案以外のすべての事案、(2)当該都道府県又は政令市住民のかかわる事案及び当該地方で生じた事案を扱う。

4-9.〔中央人権委員会の所掌〕
 中央人権委員会は、(1)複数の都道府県・政令市にまたがる人権侵害・差別事案、(2)公権力の行使に伴う又は公務員による人権侵害・差別事案、(3)深刻で重大な人権侵害・差別事案等を扱う。

4-10.〔地方人権委員会への申立〕
 人権侵害・差別に関する申立は、原則として地方人権委員会が受理し、これを処理する。地方人権委員会が受理した申立が、中央人権委員会が処理すべき事案であった場合には、地方人権委員会は中央人権委員会にその処理を委ねる。
 人権委員会が自ら人権侵害・差別事案を探知した場合は、人権侵害・差別を受けた者に申立を促すことができるものとする。

4-11.〔他の機関等への付託・捜査機関への告発〕
 相談又は申立を受けた人権侵害・差別事案の内容が、他の機関又は団体等による救済に適しており、かつ当該機関又は団体等に事案の処理を委ねた方が、相談者又は申立人の利益に適うと判断される場合には、人権委員会は当該事案の処理を他の機関又は団体等に付託することができる。
 相談又は申立を受けた人権侵害・差別事案の内容が、刑事事件を構成すると判断される場合には、人権委員会は当該事案を捜査機関に通報又は告発する。ただし、捜査機関に対する通報又は告発が、相談者又は申立人の不利益になる場合には、原則としてこれを行ってはならない。

4-12.〔人権委員会によるあっせん、調停、仲裁〕
 地方及び中央人権委員会は、申立を受けた人権侵害事案の内容にしたがって、その解決のために必要なあっせん、調停又は仲裁を行う。あっせん、調停、仲裁に際して地方及び中央人権委員会は、必要な資料・情報を収集して正確な事実関係の把握に努めるとともに、当事者に十分な弁明の機会を与えなければならない。
 地方人権委員会は、あっせん、調停によって事案の解決が図れなかった場合には、当該事案を中央人権委員会に付託することができる。

4-13.〔中央人権委員会の調査権〕
 地方及び中央人権委員会によるあっせん、調停等によっても解決が見られなかった事案については、中央人権委員会がこれを調査する。そのために、中央人権委員会には適切な調査権限を付与し、当事者又は関係者に対する出頭要求、釈明要求又は資料提出要求等を通じて、的確な事実認定が行えるようにする。

4-14.〔中央人権委員会の強制調査権〕
 中央人権委員会は、公権力の公使に伴う又は公務員による人権侵害・差別事案の調査にあたって、当事者たる公務員又は関係行政機関の協力が得られず、かつ当該事案の解決にとって必要であると認められる場合には、強制的な立入及び押収等の強制調査を行えるものとする。

4-15〔地方人権委員会への調査の委託〕
 中央人権委員会は、調査の実施を地方人権委員会に委託することができる。ただし、強制調査は中央人権委員会の専管事項とし、地方人権委員会への委託は認められない。

4-16.〔中央人権委員会の勧告権〕
 調査の結果、人権侵害行為が認められた場合には、中央人権委員会は当該行為の停止、侵害された権利の回復・補償、損害賠償、被害者に対する謝罪、反差別プログラムの策定・実施等を勧告することができる。勧告は、その勧告を受けた者の氏名等を含めて原則としてこれを公開する。

4-17.〔地方人権委員会の意見表明権〕
 地方人権委員会は、自らが中央人権委員会に付託した事案、所掌地域内で発生した事案又は所掌地域内の住民が関与した事案を中央人権委員会が処理するに際して、随時意見を述べることができる。地方人権委員会から意見が表明された場合には、中央人権委員会は地方人権委員会と協議し、その意見を十分に尊重しなければならない。

4-18.〔人権委員会の訴訟参加等〕
 申立のあった事案が訴訟になった場合には、地方及び中央人権委員会は当該訴訟に参加することができるものとする。また、人権委員会の斡旋、調停あるいは勧告によっても解決が見られなかった事案に関しては、委員会自らが裁判所に訴訟を提起する権限についても検討する。

4-19.〔人権委員会の申立人への回答義務〕
 人権委員会は、申立人の求めに応じて、申立処理の経過及び結果について回答する義務を負う。


5.【人権委員会の政策提言機能】

5-1.〔中央人権委員会の政策提言機能〕
 中央人権委員会は、国会及び内閣に対し、(1)国の人権教育・啓発にかかる政策及び施策のあり方、(2)人権問題にかかる法令の制定又は改廃、(3)人権施策の実施にかかる行政慣行の変更、(4)人権諸条約の批准又はこれへの加入、(5)国際連合の人権保障機関や他国の国内人権機関との協力、(6)日本が締約国となっている人権諸条約上提出が義務づけられている政府報告書の作成等の国の人権政策や施策のあり方等について提言を行うことができる。
 国会又は内閣は、中央人権委員会から受けた提言の内容及び提言に対する対応について、国民に説明しなければならない。

5-2.〔地方人権委員会の政策提言機能〕
 地方人権委員会は、都道府県又は政令市の首長ならびに議会に対し、(1)当該地方自治体の人権教育・啓発にかかる政策及び施策のあり方、(2)人権問題にかかる条例の制定又は改廃、(3)人権施策の実施にかかる行政慣行の変更等の地方の人権政策や施策のあり方等について提言を行うことができる。
 首長又は議会は、地方人権委員会から受けた提言及び提言に対する対応について、住民に説明しなければならない。

5-3.〔中央人権委員会による注意喚起〕
 中央人権委員会は、日本における人権状況一般ならびに特定分野の人権問題について、国会及び内閣に対し注意を喚起し、対策を講ずるよう促すことができる。

5-4.〔地方人権委員会による注意喚起〕
 地方人権委員会は、当該地方における人権状況一般ならびに特定分野の人権問題について、当該地方の議会及び首長に対し注意を喚起し、対策を講ずるよう促すことができる。


6.【人権に関する官庁の新設を】

 人権政策の立案及び人権施策の実施にあたる総合調整機能をもつ官庁を内閣に新設する。

6-1.〔内閣府人権庁の設置〕
 国の人権施策の実施主体として5年以内に内閣府に人権庁を設置し、人権政策・施策にかかる強い総合調整機能をこれに持たせる。

6-2.〔法務省による人権擁護行政の原則的終了〕
 法務省人権擁護局の人権擁護行政は、原則として、これを内閣府に移行させる。

6-3.〔法務省地方法務局人権擁護部の廃止〕
 法務省の地方法務局人権擁護部を直ちに廃止し、その所掌事務を地方人権委員会事務局に移管する。地方人権委員会事務局の事務は都道府県又は政令市に委任する。

6-4.〔自治体人権部局の整備・新設〕
 都道府県及び市区町村における人権施策の実施機能を強化するため、人権問題担当部局を整備、又はこれを新設する。


7.【人権擁護委員制度の改編を】

 現行の人権擁護委員制度は抜本的に改編する。

7-1.〔委員数の削減〕
 現行の委員数約14,000名体制を6,000名に縮小する。

7-2.〔委員の研修と人権ソーシャルワーカーへの移行〕
 各年度2,000名づつに3か月間の人権研修を実施し、人権研修を受けた人権擁護委員を「人権ソーシャルワーカー」とする。人権ソーシャルワーカーはボランティアではなく有給とし、少なくとも週に数日は職務に専念させ、専門職化する。人権ソーシャルワーカーの手当等の総額は年間300億円(500万円×6,000人)と想定する。

7-3.〔人権ソーシャルワーカー研修所〕
 人権ソーシャルワーカーを対象に、国家公務員初任者研修に準じて、3か月間の研修を実施する。このため人権ソーシャルワーカー研修所を設ける。その費用として年間20億円を想定し、事務は中央人権委員会事務局が担当する。

7-4.〔人権促進市民ボランティア制度の新設〕
 人権ソーシャルワーカーに協力し、地域における人権問題を発掘するボランティアとして、新たに「人権促進市民ボランティア」制度を創設する。人権促進市民ボランティアには人権問題に関する現場体験豊富な人材を積極的に登用する。人権促進市民ボランティアの活動にかかる事務は、地方人権委員会が担当する。

7-5.〔地域における相談・援助〕
 人権ソーシャルワーカー及び人権促進市民ボランティアは、地域における様々な人権侵害・差別に関する相談を受け、必要な援助を行う。

7-6.〔地方人権委員会への事案付託〕
 相談内容が、人権委員会が処理すべき人権侵害・差別を構成すると思料される場合には、人権ソーシャルワーカー及び人権促進市民ボランティアは地方人権委員会に事案を委ねる。

7-7.〔住民の利便性の確保〕
 人権ソーシャルワーカー及び人権促進市民ボランティアを各地にバランスよく配置し、市民が気兼ねなく相談できる体制を整備する。


8.【議会の人権問題審議機能の強化を】

8-1.〔国会の人権問題審議機能の強化〕
 人権問題に関する国会の審議機能を強化し、国政調査権を有効に機能させるため、衆議院予算委員会及び参議院予算委員会又は行政監察委員会において、人権問題を広範かつ総合的に審議する慣行を確立する。そのために、各会期において人権問題を集中審議する日を設けることを検討する。あわせて、人権問題にかかる立法能力・国政調査能力を高めるために、両院の事務局ならびに国立国会図書館調査局及び立法考査局に人権問題調査室を新設する。

8-2.〔地方議会の人権問題審議機能の強化〕
 人権問題に関する地方議会の審議機能を強化するため、各会期において議会内で人権問題を集中審議する日を設ける。


9.【裁判所における人権侵害・差別事案処理の専門化】

9-1.〔人権法研修〕
 法曹に対する人権法教育を充実・徹底させるため、国際人権法を含む人権法を司法修習プログラムに取り入れる。現職裁判官に対しても、司法部内において同様の人権法研修を実施する。

9-2.〔事案処理の専門化〕
 高等裁判所及び地方裁判所に人権侵害・差別事件を専門的に扱う部を新設することを含め、人権侵害・差別事案の専門的審理のあり方を検討する。


10.【国際人権法の国内実施体制の整備を】

10-1.〔人権諸条約の批准等〕
 自由権規約第一選択議定書及び女性差別撤廃条約選択議定書を早期批准し、同時に人種差別撤廃条約第14条及び拷問等禁止条約第22条にもとづく宣言をし、各人権条約の実施機関に日本における人権侵害・差別にかかる苦情を個人通報できる体制を整備する。あわせて、人種差別撤廃条約第4条の留保を撤回する。こうした措置によって国際人権法の国内実施体制を強化する。

10-2.〔地域的人権保障システムの確立〕
 アジア・太平洋地域における地域的人権保障システムの確立へ向け、各国ならびに関連する国際機構・NGOとの連携協力を促進する。


11.【市民社会との協働と「人権文化」の定着を】

11-1.〔市民社会との協働〕
 人権政策の立案及び実施にあたっては、市民社会との積極的協働によりこれを推進する。

11-2.〔「人権文化」の確立〕
 以上の人権政策及び施策の立案及び実施によって、日本国内に「人権文化」を定着させ、同時にアジア・太平洋地域及び世界に向けて「人権文化」を発信し、21世紀を人権の世紀とする国際的な取り組みに貢献する。

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