人権政策提言骨子(案)
2000.9.2
人権フォーラム21
規制・救済部会作業部会

1.【人権政策の指導原理】

 1-1.〔人権政策三原則〕
 これまでの日本の人権政策は、内容と実施の両面において不十分なものであった。とくに、人権侵害・差別を受けた当事者は、地域及び草の根の生活現場で苦悩や抗議の声を上げてきたが、政府は中央集権的かつ省庁割拠主義的な対応に終始し、当事者の声を聞いて総合的な解決を図るための効果的な方策を実行してこなかった。こうした現実を直視し、人権問題においては、@総合性、すなわち「省庁の縦割り行政の弊害を排した人権侵害・差別事案への総合的取り組み」、A当事者性、すなわち「当事者の視点に立った人権施策の推進、および当事者自らによる事案解決に対する適切な支援」、B地域性、すなわち「地域において人権侵害・差別事案を解決する取り組みの支援」という三原則を柱にした積極的な取り組みが必要である。

 1-2.〔国・自治体の責務〕
 日本国憲法第13条は、「すべて国民は、個人として尊重される」と定め、続けて「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定し、人権の尊重が国政上の最重要課題であることを確認している。これは各国の憲法に共通する近代憲法の基本原理である。また、日本が批准した人権諸条約でも、たとえば、市民的及び政治的権利に関する国際規約第2条第1項は、締約国は「この規約において認められる権利を尊重し及び確保することを約束する」と規定し、締約国の人権尊重・確保義務を定めている。さらに1993年に国連主催の世界人権会議で採択されたウィーン宣言及び行動計画第1部第1項は、「人権及び基本的自由は、すべての人間が生まれながら有する権利である。それらの促進及び保護は、政府の第一義的な責務である」と宣言している。こうした規定から、国および自治体は、人権の尊重・確保を積極的に実現する責務を負っていることを改めて確認する必要がある。

 1-3.〔地域・市民の責務〕
 実際の人権侵害や差別事象の多くは、地域社会で生起する。第二次大戦後さまざまな人権運動は、地域に根ざした運動を展開し、日本社会における人権規範の定着と実質化を促してきた。こうした実績を踏まえ、地域社会や市民には、今後も引き続き、国、自治体、NGO等と協働し、人権が尊重され、確保される社会を実現する責務がある。


2.【新たな法的基礎づけが必要】

 人権が尊重され、確保される社会を実現するためには、これまでの行財政措置だけでは不十分であり、新たな法的基盤づくりが必要である。

 2-1.〔実質的意味の人権〕
 法的基盤づくりにおいては、法律上の狭義の「人権」だけでなく、当事者の視点に立った実質的意味の「人権」を広く扱うこととし、人間の尊厳が真に尊重され個々人の人格的生存が保障される日本社会を目指さなければならない。

 2-2.〔教育・啓発法の制定〕
 人権教育・啓発施策の根拠法として、「人権教育・啓発法」を制定する。

 2-3.〔差別禁止法の制定〕
 日本国憲法第14条第1項が定める平等原則を具体化するため、社会的差別禁止法または人種差別禁止法(部落差別・アイヌ民族差別・外国人差別の禁止、人種差別撤廃条約の国内法化)、性差別禁止法、障害者差別禁止法等の事由別の差別禁止法、ならびに雇用差別禁止法(ILO111号条約の批准し、これを国内法化)等の分野的差別禁止法を順次制定する。これら諸法の整備は、国民的課題である。

2-4.〔差別禁止事由・差別禁止分野の明記〕
 上記差別禁止諸法の整備にあたっては、「国連・反人種差別モデル国内法」(別紙)を参照し、差別禁止事由と差別禁止分野を明示し、差別行為の予防的規定と事後規制的規定を盛り込む。

 2-5.〔差別禁止法の段階的整備〕
 当初は事由別および分野別の差別禁止法を順次制定し、後日総合的な差別禁止法の制定を検討する。

 2-6.〔地域性の原則にもとづく条例の整備〕
 地域において人権侵害・差別事案を自ら解決する取り組みを支援する地域性の原則にもとづき、地域社会における人権の尊重と確保を実現するため、自治体は積極的に条例制定に取り組む。その一環として、自治体は引き続き人権のまちづくり条例や差別禁止条例の制定を積極的に進めるべきである。


3.【政府から独立した国内人権機関の設置を】

 現行の法務省による人権擁護行政および人権擁護委員制度は十全に機能していない。また、裁判所による司法的救済も時間と費用がかかり、手続も煩雑である。加えて、これまでの裁判所は、人権侵害を受けた者の実効的な救済に役立ってきたとは言い難い。そこで、人権侵害・差別被害者の救済施策等の実施主体として、政府から独立した国内人権機関を創設し、これに被害者救済にかかる準司法的機能を持たせ、当事者の経済的な負担が軽く、手続が簡易で、かつ早期の実効的救済が期待できる体制を確保する。国内人権機関は、@総合性、A当事者性、およびB地域性の重視という人権政策三原則(上記1-1.参照)を活動指針とする。

 3-1.〔人権委員会の設置の趣旨・目的〕
人権委員会は、個別の人権侵害事案を総合的に解決することを通じて基本的人権を保障し、社会正義を実現し、あわせて事案処理の経験から得た知見を基に、社会秩序の維持、法律制度の改善に努めるものとする。

 3-2.〔人権委員会の権限〕
 人権委員会は、@人権侵害・差別を受けた者の救済、A人権政策提言等の活動を行う。これらの活動にあたっては、年次報告書の公表等により公開性と透明性を確保し、説明責任を果たさなければならない。

 3-3.〔人権委員会法の制定〕
 人権委員会法を制定し、@総合性、当事者性、地域性を原則として、人権侵害・差別事案の解決にあたること、A事案の処理を通じて明らかになる社会構造上の問題に関して意見を表明し、人権状況の改善を図ること等の人権委員会の責務を明らかにするとともに、B人権委員会の組織及び権限を明記する。

 3-4.〔人権委員会法上の「人権」定義〕
 人権委員会法上の「人権」とは、日本国憲法第3章に規定された人権および日本が締約国となっている人権諸条約が規定する人権をいう。

3-5.〔地方および国における人権委員会の設置〕
 政府から独立した国内人権機関として、国ならびに各都道府県および政令市に人権委員会を設置する。(以下、前者を「中央人権委員会」、後者を「地方人権委員会」という。)

 3-6.〔地方人権委員会ローカル・ポストの設置〕
 地方人権委員会は、地域住民が容易に利用できる体制を整えるため、各市区町村に少なくとも1箇所ローカル・ポストを設置する。人口規模の大きい自治体にあっては、人口30万人に1箇所を目途にローカル・ポストを追加設置する。広大な面積を抱える地域については、人口規模にかかわらず適宜ローカル・ポストを追加設置する。

 3-7.〔国際機構、他国の国内人権機関およびNGOとの協力〕
 中央人権委員会は上記の活動を実施するにあたり、国際連合等の国際機構、他国の国内人権機関および人権の促進と保護にあたっている国際・国内NGOとの連携協力をはかる。地方および中央人権委員会は、市民社会との協働を確保するため、国内NGOとの恒常的な協議の場を設けるものとする。

 3-8.〔委員および委員数等〕
 地方人権委員会には人権問題に関する経験と識見の高い常勤の委員5〜7名を置く。中央人権委員会には、同様の経験と識見を有する常勤の委員5〜7名を置く。(なお、中央・地方人権委員会とも、委員の中に最低1名は法曹有資格者を加えなければならない。)人権委員会委員の任期は6年とし、再任は1期のみ認めるものとする。

 3-9.〔委員の選任と議会の同意〕
 地方および中央人権委員会委員の任命及び罷免を都道府県・政令市議会または国会の承認案件とし、委員任免の公開性および透明性を確保する。

 3-10.〔委員の独立性・多元性の確保〕
 地方および中央人権委員会委員の選定については、「国内人権機関の地位に関する原則」(パリ原則)を強く念頭に置き、委員の独立性と委員構成の多元性を確保できるよう配慮する(ジェンダーバランスの確保、マイノリティ出身者の確保等)。

 3-11.〔人権委員会事務局職員の専門性・多元性の確保〕
 地方および中央人権委員会事務局職員については、職務の遂行に必要な専門的識見を有し、その構成は社会の多元性を反映できるよう配慮する。

 3-12.〔人権委員会の財源〕
 地方および中央人権委員会の経費は国が負担し、予算編成にあたっては人権委員会の自主性を尊重する。


4.【人権委員会の救済機能】

4-1.〔人権委員会による人権侵害・差別事象の調査・救済〕
 人権委員会は人権侵害・差別事案に関する申立を受理し、これを調査し、調停等を通じて人権侵害の救済を図る。

 4-2.〔申立人の範囲〕
 申立は人権侵害・差別を受けた当事者、その支援者およびNGO等の第三者が行うことができるものとする。

4-3.〔表現の自由が関わる人権侵害・差別事象にかかる申立の取扱い〕
 人権委員会は、新聞、雑誌、放送等の報道機関による人権侵害・差別事案に関する申立を受けた場合には、言論・報道・表現の自由に最大限配慮しつつ申立人の実効的な救済の確保に努める。このため、人権委員会は、放送と人権等権利に関する委員会(BRC)のような独自の救済システムが機能している分野にかかる申立については、原則としてこれを受理せず、申立者に当該救済システムを利用するよう促すものとする。また独自の救済システムが機能していない分野にかかる申立についても、人権委員会は、新聞倫理綱領(2000年6月21日制定)のような業界団体の倫理綱領等を尊重し、当該団体と協議し、申立人の実効的な救済と言論・報道の自由との両立に努める。

 4-4.〔国、自治体または民間団体による人権侵害・差別救済制度との関係〕
 国、自治体または民間団体が既に救済制度を運用している特定人権分野に関連する申立があった場合には、人権委員会は当該制度の運用主体と十分に協議し、また当該制度に第一次的な救済の確保を委ねることを申立人に促し、申立人の実効的な救済の確保に努める。

4-5.〔国、自治体または民間団体による人権侵害・差別救済制度との協力〕
 人権委員会は、人権侵害・差別にかかる救済制度を運用している国、自治体または民間団体と恒常的かつ密接に協力し、人権侵害・差別にかかる申立人の実効的な救済の確保に努める。

 4-6.〔地方人権委員会への申立〕
 人権侵害・差別に関する申立は、原則として地方人権委員会が受理し、これを処理する。地方人権委員会は人権ソーシャルワーカーおよび人権促進市民ボランティア(後述)と協力して、人権侵害・差別の影響を受けた者の相談を受け付ける。

 4-7.〔地方人権委員会の所掌〕
 地方人権委員会は、@中央人権委員会の所掌する事案以外のすべての事案ならびにA当該都道府県または政令市住民のかかわる事案および当該地方で生じた事案を扱う。

 4-8.〔中央人権委員会の所掌〕
中央人権委員会は、@複数の都道府県・政令市にまたがる人権侵害・差別事案、A公権力の行使に伴うあるいは公務員による人権侵害・差別事案、およびB深刻で重大な人権侵害・差別事案等を扱う。

 4-9.〔中央人権委員会の調査権〕
 中央人権委員会には適切な調査権限を付与し、当事者又は関係者に対する出頭要求、釈明要求又は資料提出要求等を通じて、的確な事実認定が行えるようにする。当事者又は関係者が調査を妨害した場合には、氏名公表等の処分を行えるものとする。
(調査にあたって当事者又は関係者の協力が得られず、かつ当該事案が著しく深刻かつ重大なものである場合には、裁判官の発する許可状を得た上で、強制的な立入及び押収等を中央人権委員会が行うことを可能にする方途も検討する。)

 4-9-2.〔中央人権委員会の勧告権〕
 調査の結果、人権侵害行為が認められた場合には、中央人権委員会は当該行為の停止、逸失利益等の補償又は被害者に対する謝罪等を勧告することができる。

 4-10.〔中央人権委員会の排除措置命令権〕
 中央人権委員会は、著しい人権侵害がなされたと疑うに足りる相当な理由があり、かつ回復しがたい損害を避けるため緊急の必要があるときは、当該行為の停止または禁止を命ずることができる。

4-11.〔地方人権委員会における調査・勧告権、排除措置命令権の行使〕
 地方人権委員会は、著しい人権侵害行為がなされたと疑うに足る相当な理由がある場合には、当該事案を中央人権委員会に報告し、中央人権委員会からの委任を受けた上で、中央人権委員会が有する調査権限を行使できる。また、人権侵害による回復し難い損害を避けるため緊急の必要が認められる場合には、地方人権委員会は当該事案を中央人権委員会に報告し、中央人権委員会からの権限委任を受けた上で、中央人権委員会の有する勧告権及び排除措置命令権を行使できる。

 4-12.〔人権委員会のあっせんおよび調停権〕
 地方および中央人権委員会は、人権侵害事案の内容にしたがって、その解決のために必要な斡旋および調停を行う。斡旋・調停に際して地方および中央人権委員会は、当事者及び関係者から事情を聴取するとともに、当事者に十分な弁明の機会を与えなければならない。
 地方人権委員会は、斡旋・調停によって事案の解決が図れなかった場合には、当該事案を中央人権委員会に付託することができる。

 4-13.〔中央人権委員会の審判権〕
 中央人権委員会は、被申立人が勧告に従わなかった場合には、これを審判に付することができる。

4-14.〔人権委員会の訴訟参加等〕
 申立のあった事案が訴訟になった場合には、地方および中央人権委員会は当該訴訟に参加することができるものとする。また、人権委員会の斡旋・調停あるいは勧告によっても解決が見られなかった事案に関しては、委員会自体が裁判所に訴訟を提起する権限についても検討する。

4-15.〔人権委員会の申立人への回答義務〕
 人権委員会は、申立人の求めに応じて、申立処理の経過及び結果について回答する義務を負う。


5.【人権委員会の政策提言機能】

 5-1.〔中央人権委員会の政策提言機能〕
 中央人権委員会は、国会および内閣に対し、@国の人権教育・啓発にかかる政策および施策のありかた、A人権問題にかかる法令の制定または改廃、B人権施策の実施にかかる行政慣行の変更、C人権諸条約の批准またはこれへの加入、D国際連合の人権保障機関や他国の国内人権機関との協力、E日本が締約国となっている人権諸条約上提出が義務づけられている政府報告書の作成等の国の人権政策や施策のありかた等について提言を行うことができる。国会または内閣は、中央人権委員会から受けた提言および提言に対する対応について、国民に説明する義務を負う。

 5-2.〔地方人権委員会の政策提言機能〕
 地方人権委員会は、都道府県または政令市の首長ならびに議会に対し、@当該地方自治体の人権教育・啓発にかかる政策および施策のありかた、A人権問題にかかる条例の制定または改廃、B人権施策の実施にかかる行政慣行の変更等の地方の人権政策や施策のありかた等について提言を行うことができる。
 首長または議会は、地方人権委員会から受けた提言および提言に対する対応について、住民に説明する責任を負う。

 5-3.〔中央人権委員会による注意喚起〕
 中央人権委員会は、日本における人権状況一般ならびに特定分野の人権問題について、国会および内閣に対し注意を喚起し、対策を講ずるよう促すことができる。

 5-4.〔地方人権委員会による注意喚起〕
 地方人権委員会は、当該地方における人権状況一般ならびに特定分野の人権問題について、当該地方の議会および首長に対し注意を喚起し、対策を講ずるよう促すことができる。


6.【人権に関する官庁の新設を】

 人権政策の立案および人権施策の実施にあたる総合調整機能をもつ官庁を内閣に新設する。

 6-1.〔内閣府人権庁の設置〕
 国の人権施策の実施主体として5年以内に内閣府に人権庁を設置し、人権政策・施策にかかる強い総合調整機能をこれに持たせる。

 6-2.〔法務省による人権擁護行政の原則的終了〕
 法務省人権擁護局の人権擁護行政は、原則として、これを内閣府に移行させる。

 6-3.〔法務省地方法務局人権擁護部の廃止〕
 法務省の地方法務局人権擁護部を直ちに廃止し、その所掌事務を地方人権委員会事務局に移管する。地方人権委員会事務局の事務は都道府県又は政令市に委任する。

 6-4.〔自治体人権部局の整備・新設〕
 都道府県および市区町村における人権施策の実施機能を強化するため、人権問題担当部局を整備し、またはこれを新設する。


7.【人権擁護委員制度の改編を】

 現行の人権擁護委員制度は抜本的に改編する。

 7-1.〔委員数の削減〕
 現行の委員数約14,000名体制を6,000名に縮小する。

 7-2.〔委員の研修と人権ソーシャルワーカーへの移行〕
 各年度2,000名づつに3か月間の人権研修を実施し、人権研修を受けた人権擁護委員を「人権ソーシャルワーカー」とする。人権ソーシャルワーカーはボランティアではなく有給とし、少なくとも週に数日は職務に専念させ、専門職化する。人権ソーシャルワーカーの手当等の総額は年間300億円(500万円x6,000人)と想定する。

 7-3.〔人権ソーシャルワーカー研修所〕
 人権ソーシャルワーカーを対象に、国家公務員初任者研修に準じて、3か月間の研修を実施する。このため人権ソーシャルワーカー研修所を設ける。その費用として年間20億円を想定し、事務は中央人権委員会事務局が担当する。

 7-4.〔人権促進市民ボランティア制度の新設〕
 人権ソーシャルワーカーに協力し、地域における人権問題を発掘するボランティアとして、新たに「人権促進市民ボランティア」制度を創設する。人権促進市民ボランティアには人権問題に関する現場体験豊富な人材を積極的に登用する。人権促進市民ボランティアの活動にかかる事務は、地方人権委員会が担当する。

 7-5.〔地域における相談・援助〕
 人権ソーシャルワーカーおよび人権促進市民ボランティアは、地域におけるさまざまな人権侵害・差別に関する相談を受け、必要な援助を行う。

 7-6.〔地方人権委員会への事案付託〕
 相談内容が、人権委員会が処理すべき人権侵害・差別を構成すると思料される場合には、人権ソーシャルワーカーおよび人権促進市民ボランティアは地方人権委員会に事案を委ねる。

 7-7.〔住民の利便性の確保〕
 人権ソーシャルワーカーおよび人権促進市民ボランティアを各地にバランスよく配置し、市民が気軽に相談できる体制を整備する。


8.【議会の人権問題審議機能の強化を】

 8-1.〔国会の人権問題審議機能の強化〕
 人権問題に関する国会の審議機能を強化し、国政調査権を有効に機能させるため、衆議院予算委員会および参議院予算委員会又は行政監察委員会に、人権問題を集中的かつ総合的に審議する権限を認める。あわせて、両院の事務局ならびに国立国会図書館調査局及び立法考査局に人権問題調査室を新設し、人権問題にかかる立法・国政調査能力を高める。

 8-2.〔地方議会の人権問題審議機能の強化〕
 人権問題に関する地方議会の審議機能を強化するため、各会期において議会内で人権問題を集中審議する日を設ける。


9.【裁判所における人権侵害・差別事案処理の専門化】

 9-1.〔人権法研修〕
 法曹に対する人権法教育を充実・徹底させるため、国際人権法を含む人権法を司法修習プログラムに取り入れる。現職裁判官に対しても、司法部内において同様の人権法研修を実施する。

 9-2.〔事案処理の専門化〕
 高等裁判所および地方裁判所に人権侵害・差別事件を専門的に扱う部を新設することを含め、人権侵害・差別事案の専門的審理のあり方を検討する。


10.【国際人権法の国内実施体制の整備を】

 10-1.〔人権諸条約の批准等〕
 自由権規約第一選択議定書および女性差別撤廃条約選択議定書を早期批准し、同時に人種差別撤廃条約第14条および拷問等禁止条約第22条にもとづく宣言をし、各人権条約の実施機関に日本における人権侵害・差別にかかる苦情を個人通報できる体制を整備する。あわせて、人種差別撤廃条約第4条の留保を撤回する。こうした措置によって国際人権法の国内実施体制を強化する。

 10-2.〔地域的人権保障システムの確立〕
 アジア・太平洋地域における地域的人権保障システムの確立へ向け、各国ならびに関連する国際機構・NGOとの連携協力を促進する。


11.【市民社会との協働と「人権文化」の定着を】

11.【市民社会との協働と「人権文化」の定着を】

 11-1.〔市民社会との協働〕
 人権政策の立案および実施にあたっては、市民社会との積極的協働によりこれを推進する。

 11-2.〔「人権文化」の確立〕
 以上の人権政策および施策の立案および実施によって、日本国内に「人権文化」を定着させ、同時にアジア・太平洋地域および世界に向けて「人権文化」を発信し、21世紀を人権の世紀とする国際的な取り組みに貢献する。

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