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特定非営利活動法人
日本下水文化研究会
Japan Association of Drainage and Environment
日本下水文化研究会は新しい人と水との関係を考えていきます。
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定例研究会




第25回 定例研究会



南アジアの都市環境問題発展途上国の水道の現状と問題点

カトマンズの水・し尿・衛生

辻井 清吾氏

発展途上国の水道の現状と問題点

与田 博恭氏



 海外からの話題を2つ提供いたします。本会も昨年の研究 発表会で海外からの記念講演ならびに研究発表があり、国際化の扉を少し開いたところです。とくに途上国における人と水とのかかわりや水文化を知り、これからの海外支援のあり方について考える機会になればと思います。講異なりますが、長く途上国との関わりを持ち続けてこられた方々です。

会場:水道会館(日本水道協会7階会議室)
プログラム:
1.カトマンズの水・し尿・衛生 −文化人類学的視点から−
   ネパール・トリブヴァン大学客員教授 辻井清吾氏
【講演要旨】
 ネパ―ル国民は60余の多民族・言語から構成され、社会構造上、多岐の職業カ−スト社会からなる。その典型的な営みが今回の公衆衛生問題において重き役割を成している。今回、その一端を今日の課題として問題提起をしたい。
【講師紹介】
辻井清吾氏:1970年伊藤忠商事入社以来、ネパ−ルに永く関係。1993年5月以降国立トリブヴァン大学客員教授として年1〜2回の集中講義を担当中。所属学会は、国際開発学会、国際経済学会、アジア政経学会等

2.発展途上国の水道の現状と問題点
   海外環境エンジニアリング 与田博恭氏
【講演要旨】
 援助の基本に言及し、過去調査した国々の水道の現状を紹介するなかで、技術上、行政上の問題点を取り上げ、被援助国に望まれる援助のあり方について私見を述べる。
【講師紹介】
与田博恭氏:1972年日水コン入社後、国内水道(主に計画分野)に約10年間。1982年以降海外事業部に所属し、インドネシア国ジャカルタ、ウジュンパンダン、タイ国バンコック、ラオス、タンザニア、セイシェル、トリニダードトバゴ等の発展途上国の水道プロジェクトに従事。1994年有限会社海外環境エンジニアリングを設立。ヨルダン国ザルカ、ケニア地方7都市、ホンジュラス国テグシガルパ市、東ティモール15都市、グアテマラ地方7都市等の水道プロ ジェクトに関与。

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定例研究会報告

文責 酒井 彰

1.カトマンズの水・し尿・衛生 −文化人類学的視点から−

辻井 清吾氏 ネパール・トリブヴァン大学客員教授

 辻井さんは、商社員という仕事の面でもまた、学術面でもネパールに長年かかわられた方。もともとは文化人類学を専攻され、ネパールでの恩師は川喜田二郎先生とうかがっています。現在、トリブヴァン大学で毎年集中講義の形で講義をもたれておられます。

 講演では、そうしたご専門から、水・し尿・衛生に関する問題の社会的背景、とくに世襲的なカースト制度を含めた伝統的な社会構造ゆえに、途上国における都市環境問題がいかに複雑であるかについて話を展開されました。複雑化させている要因には、財政問題、都市計画の不備、行政の問題解決能力、住民の認識などがあること、また、観光立国を目指すネパールが、その玄関口であるカトマンズの環境問題が観光客離れをもたらしかねないことを指摘されました。
 興味深く聴いたのは、カースト制度は穢れの概念が基底にあり、地位の違いが明白で、かつ職業と離れがたく結びついていること、そして「清掃カースト」という階層が存在し、そのカーストの人々は、市などの公的機関の清掃員として、雇用機会も多く、定年まで雇用されるので、ヒエラルキーは低い位置にあるものの、経済的に安定した立場に居るこということでした。一方、このために上位カーストは清掃は彼らに任せておけばよいとの意識が強く、自ら環境問題にも関与 しようとしないそうです。

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2.発展途上国の水道の現状と問題点

与田 博恭氏 海外環境エンジニアリング

 与田さんは、海外プロジェクトに数多く携わってこられておられますが、先日今世紀最初の独立国となった東チモールやグアテマラでの経験を中心に話をされました。

 多くの途上国の水道インフラが、いかに機能していない状況であるか実例をあげるとともに、これまでの途上国支援プロジェクトの問題点を指摘されました。とくに、援助国の資機材(とくに機電関係)を使ったケースでは、移管後メンテナンスができない状況が各地に見られ、被援助国が自力で補修できることが、最重要な要件であることを強調されました。すなわち、援助される側の立場からの技術の導入が重要であり、そのためには高精度や効率化といった日本流の設計思想から脱却すること、そして、現地にふさわしい技術を開発する能力を有する人材を援助する側、される側の双方で育成することの重要さを指摘されました。日本の援助では、どこへ行ってもワンパターンの浄水プロセスが提案され、途上国側にとっての適正技術を提案するという点では遅れがみられるとの見解が示され ました。

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