定例研究会
第16回 定例研究会
英国における環境ホルモンに対する取り組み
住山 真 氏
今回の研究会(9月25日)は.「地球環境時代」とか「環境ホルモン」といったいま話題にはなっているが.私にとってその内容が今ひとつぼやけた感じである文言を含むテーマなので、この際少しでも理解を深めたいと思い出席した。
研究会では二つのテーマが用意されていて、それぞれ膨大な内容の割には短時間の講演であった。いずれも、機会があればじっくりと聞きたい話である。
佐山真氏の「英国における環境ホルモン対策への取り組み」について
氷上 克一
1週間という短期間の訪英ではあったが、氏の報告講演は実に内容豊富であった。まず驚きは,EDC(いわゆる環境ホルモンのこと)に関して先進国だと思っていた英国で市民の関心があまり高くないという話。日本でも大変な問題だといいながら、どうすればいいかがさっぱり解らない実情である。しかし、魚の精巣の写真を見せられると、これは大変な問趣なのだと背筋が寒くなる思いがした。最近、男らしい男性が少ないのはEDCの影響ではないかといたくなる。講演にもあった医療用の女性ホルモンも問題になっていることは、別のところでも聞いてびっくりしたことがあった。EDSと下水道との関係をもっとはっきりさせて、因果関係があるならその対策を講じる必要があるのかもしれない。
このEDCの問題は、物質が特定された後にどうすればいいのかその方策の確立も併せて進める必要があると思う。
佐山真氏「英国の環境ホルモン対応」講演感想
白子 定治
前の話では、「地球環境時代の都市づくり」という、都市という大きなスケールを対象に、さらに地球スケールの視点から論じられた。これに対し最近問題になっている環境ホルモンは、極微量の、百万分の一或いは一億分の一という超微量の化学物質の問題である。こんなに低濃度の化学物質が生物の種族を絶滅の危機に晒すのだから生物は実にシビアな条件の下に存続していられるに過ぎないのである。
ダイオキシンの例に見られるように、直接関知できない問題に対し、日本政府の対応は非常に遅い。しかし、 「奪われし未来」が出版されたことにより、内分泌撹乱物質(環境ホルモン)の恐ろしさが明確に警告され、国の一部での対応はこれまでになく速かった。
多くのヨーロッパの国々では日本よりずっと以前から人工化学物質への関心は高かったため、英国からの報告には期待が持たれた。講演報告の中で、とりわけ内分泌撹乱物質のレポートを国民に配付し、意見を聴取したとの報告は、日本では奇異ですらあった。真の民主主義が定着している民主国家ならではの対応であろう。多くの内分泌撹乱物質の中で、界面活性剤に起因するアルキルフェノール類が注目されていた。この物質は、日本を始め世界共通の問題物質であり、国による対応の違いが注目される。英国の対応で注目されるべきは、年間1600トンも生産されているノニルフェノールポリエトキシレートの生産禁止という、具体的で強力な対応策を既に決定している点である。単に調査のみでなく、対応策を決定したところに人権意識の高さが伺える。また、微量であっても人間のホルモンの影響を受けやすい酵母に対する応答を調査しているところに研究者として興味を覚えた。内分泌撹乱物質のように多くの生物が影響を受け、長期にわたる調査研究により初めて明らかになる種類の影響への対応は、人類始まって以来のことであろう。暗中模索の面があり対応策の選択肢は非常に多いうえ、認識されていない対応策もあるだろう。このような場合、欧米を始めとした先進国の情報を集めることが、より的確な対応に結びつくと考えられる。本講演は、多くのスライドを交えた解りやすく示唆に富んだものであり、このような要請に応えるものであった。
初めて下水道文化研究会に参加させていただきありがとうございました。これからの時代の知識人の集まりとの感触を受けることができました。