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日本下水文化研究会
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第15回 定例研究会



アル・ゴアの環境思想

稲場 紀久雄氏



別の道 へ
 稲場教授の講演「アル・ゴアの環境思想」を聴いて

栗田 彰

 アメリカ副大統領のアル・ゴア氏が、レイチュル・カーソンの「沈黙の春」に序文を書いた。日本では「沈黙の春」は新潮文庫から出ている。なのに、新潮社は新潮文庫の「沈黙の春」にゴア氏の序文を載せることをしない。なぜだろう?。
 しかし、新潮社がそうであるために、この「序文」は日本では稲場紀久雄教授がブックレットのかたちにして、大阪経済大学生活協同組合から発行することが出来た。しかも、 「日本の学生諸君に」というゴア氏のメッセージつきで。環境保全に対するゴア氏の若者たちへの期待の大きさがわかる。
 いま、水の破局が近づいている。なぜ、そうなったのか。ゴア氏は言う。『現在のシステムは、ファストの悪魔との契約、つまり長期間の悲劇という犠牲を払って短期間の利益を得るものに他ならない』と。利便性と経済性が優先され、人の心が忘れられた。それがいまの社会システムではないか。
 衝撃的な詩がある。「ター君の残した詩」である。

   黒くけがれた空を見上げてぼくは考えた。
   あんたらはぼく達に何を残してくれたというのか
   テレビか車か海外旅行か宇宙への旅立ちか国際社会か
   ぼく達はそんなもの何一つ望まない
   ぼく達が求めるのは
   土の匂いなんだ
   風の匂いなんだ
   青い空なんだ

 地球の行く末に心を痛めていた16歳の少年ター君は、この詩を残して自殺したという。少年ター君の自殺の新聞記事を読んだ同い年の少女は新聞に投書を寄せた。
 息をするのが苦しくなって涙が出てきて止まりませんでした。私は彼の詩に感動しましたが、彼の生き方に反感を覚えずにはいられませんでした。「どうして死んでしまうの。あなたのような人こそ地球のために必要なんじゃないの」 。でも、涙が出たのは彼の生き方がまぶしくてうらやましくて自分があわれに思えたからかもしれない。ペットボトルを川に投げ捨てる友だちに何も言えなかった私。この記事を読んで、次は言えました。 「そんなところに捨てるんやったら私、持って帰るわ」 。失われているのは自然と「ヒト」との粋ではないでしょうか。
 「ター君の残した詩」と少女の投書記事は講師の奥様であり、当研究会会員でもある稲場日出子氏によって朗読された。
 日本の政治家や財界人たちは、この詩、この投書をどう受けとめるだろう。期待は出来ない。しかし、世界の潮流は『長期間の悲劇という犠牲を払って短期間の利益を得る』道とは別の道、カーソンの言う『地球の安全を守れる』道を進みつつある。政治家や財界人によってではなく、世界中の消費者の「知る権利と学ぶ義務」によって、そうして16歳の少女のような「勇気」によって別の道、これからの社会システムがつくり出されて行く。
 稲場講師は熱っぽく説く。生命の尊さ。その生命に欠かすことの出来ない「水」の大切さ。そして「ゴア氏の環境思想を学んで欲しい」と。最後に再び稲場日出子氏によって、別役実氏の詩「誰も知らなかった、気がついたときは遅かった」が朗読された

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