定例研究会
第13回 定例研究会
江戸屎尿施肥攷
−佐藤信淵著『十字號糞培例』現代語訳を通じて−
森田 英樹氏 聖徳大学附属中・高教諭
平成9年9月12日6時30分 日本水道協会会議室
古代社会から現代にいたるまで、人と屎尿の付き合いは2度の転換点がみとめられる。すなわち、人口密度の低い古代社会では、”厠(川屋)”に示される自然の水洗便所によって投棄した。 屎尿の肥料としての価値が生じたのは鎌倉時代であり、以来太平洋戦争直後まで化学肥料とともに利用されてきた。そして、下水道普及時代には、屎尿は再び処理・処分される存在になった。
森田氏の研究の主題は、肥料としての屎尿の使われ方であり、とくに「施肥の際、他の肥料との分量配分がどの程度であったか」を解明し、「農村における屎尿の需要量を正確に認識し」 「都市と農村との屎尿流通過程を捕える」ことに絞り込まれている。
このたび現代語訳された佐藤信淵著「十字號糞培例」 (1824)には、屎尿と他の肥料との配分などが学術的に記述され、貴重なデータを提供している。氏の古典文献への造詣の深さに驚嘆するとともに、今後の研究の進展を期待したい。
講演では、関西と関東で便所の構造が異なるのは屎尿の価値の差に由来することなどを、多くのスライドを用いて説明された。