中川金治翁を偲ぶ会
2004 中川金治翁を偲ぶ会に参加して
昨年11月23日夕刻、私たちは奥多摩のもっと奥にある丹波山村という静かな村に着きました。碧い水をたたえた奥多摩湖は名残の紅葉を映して夕陽に輝いています。ここは東京の水源の村、中川金治さんは、明治から昭和の初めにかけて村人とともに水源林を守り『山の御爺』と呼ばれた人で、後に中川さんを慕う人々によって富士山をのぞむサオラ峠に中川神社が建てられました。
2003年、古くなった木造の中川神社の祠が建て替えられることになり、以前からのよきご縁によって当研究会も協力させていただき、石造りの立派な祠が完成しました。
2004年の『中川金治翁を偲ぶ会』は、会長の伊藤巌さん経営の民宿『たちばな』において、中川さんの親戚の方、村長さん、中川さんを知る長老の方、村会議員、登山家あこがれの宿『三条の湯』のご主人など多彩な方々の参加を得て開かれました。当研究会からは、偲ぶ会副会長の藤森正法さんとその魅力あふれる山のお仲間や友人、学生時代からの登山の達人谷口さん、京都から稲場夫妻が参加しました。
あたたかなまなざしの中川さんの大きな写真が中央に掲げられ、目の前のお膳には村の方の心尽くしの手作りのご馳走が並び、来賓のご挨拶と献杯で会が始まりました。奥さんたち手作りのコンニャク、手打ち蕎麦、煮物、酢の物、焼き物、この日のために猟師さんが狩をして下さったというシカ肉、新鮮な馬肉などおいしそうなものばかり。「馬と鹿だ!」「気にしない、気にしない。」などとおいしく楽しくいただきました。
民話の紙芝居
地形的に都会から遠く、厳しくも美しい自然にめぐまれた丹波山村は、伝説や民話の宝庫でもあります。伊藤巌さんや木下勲さんが問わず語りに話して下さったお話をもとにした創作紙芝居、丹波山村シリーズ第二作目は『龍魂淵の伝説』という、龍魂淵に棲む凛々しい龍の若者と可憐な村娘の純愛を中心に、竜巻、大雨などの自然現象や、丹波デンデーロなど村の地名を織り込んだ雄大な物語で、感動的な展開に拍手が起こりました。このシリーズが村の民話研究家の方々とともにずっと続いていきますように。
祠のあるサオラ峠へ
翌朝はすぼらしいお天気!いよいよ祠のあるサオラ峠に登ります。脚に覚えのある方は徒歩で急峻な山道を登り、その他の人は東京都水源林事務所新設のモノレールに伊藤さんのご尽力で特別に乗せていただけることになりました。山の専門家用のモノレールは、ヒエーッな状態で止まったりして大迫力ですが、徒歩よりはずっとずっと楽です。落葉松や三つ又の木、無数の滝、シカに樹皮を食べられツルツルになった木の幹などに心惹かれながらサオラ峠に着くと、中川神社の石の祠が私たちを迎えてくれました。そして、山々の向こうに雪を頂いた富士山の姿が見えると思わず大きな喚声と拍手が!
神社に参拝し、中川さんに地酒をささげ、民宿の奥さん手作りのおいしいお弁当をいただいたあと、猟師さんが三発の祝砲を献じ、丹波山締めでキリリと締めて行事が終了しました。
この日のためにこれほどの準備をして下さった丹波山村の方々、熱心に誘っていただき愛車で村まで連れてきて下さった藤森さん、楽しい宿のお仲間の皆さん。誠実であたたかな多くの人の心に触れた水源の村への旅は、人の手と心によって守られている自然の尊さを教えてもらった旅でもありました。帰り際に「またいつでも来て下さいよ。」と笑顔で言って下さった村の方の言葉をいつも思い出し励まされています。
(蓼倉虫b)