本部 活動報告
平成13年度活動実績
まとめと提言:「21世紀の水環境と進化する下水道の方向」
日本下水文化研究会
下水道は生活と環境をつなぐものであり、環境はわれわれが利用し、依存する資源につながっています。すなわち、われわれの生活をとりまく、一貫した水循
環システムのなかで重要な位置を占めているといえます。したがって、市民は水環境の実態と生活とのかかわりについて知る権利をもっており、他者に管理を依
存する無意識の存在であってはなりません。
環境が共有の資産であるとともに、そこにつながる下水道は市民が共同して利用する装置であることを再認識する必要があります。下水道の身勝手な利用は、
環境を損なうことにつながります。市民は、利己的な使い方をしない義務があり、また、これを認めない社会規範が求められます。
下水道は社会的施設であり、社会環境条件や市民の価値観を反映して変化します。これからの変化は、いたずらに短期的な効率性や利便性を求めるのではなく、社会や環境資源の持続を目標とした進化でなければならないでしょう。
下水道の進化は近代化の過程でとられてきた技術文明への過度の依存から転換し、下水文化と融合する進化の方向を見つけ出す必要があります。そのために人
々の暮らしやこれまでの水との関わりを振り返るとともに、それぞれの国や地域で継承されている文化を内在した地域固有の進化の方向を認めましょう。
進化の方向を見出すために、水をとりまくさまざまなリスクが存在することを市民も含めて理解する必要があります。そのためには、広範な情報の共有化と学習が欠かせません。
進化を進めるために、既存のルールを見直すとともに、市民の参加を含めた新たな役割分担の構築、説明責任の徹底が求められます。
下水文化を融合した下水道システムの運用にあたっては、コスト負担の見直し、誘導策の導入、共同利用装置であることを喚起させる方策の導入など、市民の参加意識を醸成する政策が欠かせません。市民の広範な参加が新たな水文化形成の推進力になります。
進化する下水道が市民に浸透するために、日本下水文化研究会は、人と水循環系とが対話できる状況を作りだすことを目的とし、問題認知のための啓発活動、関係者の合意形成の支援、関連する情報の集約・解釈・発信などに努めていきます。