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特定非営利活動法人
日本下水文化研究会
Japan Association of Drainage and Environment
日本下水文化研究会は新しい人と水との関係を考えていきます。
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下水文化研究発表会


下水文化研究会では2年に一度発表会を開催しております。



第9回 下水文化研究発表会開催要領

テーマ:地域社会から受容される技術協力
第9回下水文化研究発表会を下記の企画で開催いたします。

1.テーマと趣旨
 日本下水文化研究会では、地球環境基金の助成を受け、2004年度よりバングラデシュ農村域において資源循環型のエコサン・トイレの導入事業を実施してまいりました。衛生改善とし尿の資源循環の見通しが得られ、地域社会からも受入れられつつあります。さらに、現地パートナーの協力を得ながら、新たな広がりの可能性も生まれてきているところです。本年度からは国際協力機構の草の根技術協力事業として採択され、手続き・準備を進めています。また、来年は「国際衛生年」でもあります。本会のこれまでの活動で得られた成果を共有し、今後、衛生分野での国際協力にどのようにかかわっていくかについて、関係者をお招きし議論したいと思います。
 今回は、4年ぶりの東京開催となります。2年前の大阪での熱意と盛り上がりを継続できるよう、「下水文化史」、「下水文化活動」、「下水文化研究」、「海外下水文化」の各分野における会員各位の研究成果をふるって応募いただきますようお願い申し上げます。研究発表については、じっくり発表でき、多くの方が聴講できるように配慮するつもりです。研究発表会翌日には、「小平市ふれあい下水道館」を中心として「下水文化を見る会」を開催します。
2.プログラム
  日時:11月17日(土) 9:20−17:00
  会場:日本水道協会会議室(日本水道会館)
基調報告:
「バングラデシュ農村域における資源循環トイレ導入の経験と展望」(海外技術協力分科会)
パネルディスカッション:
「地域社会から受容される衛生技術とは?」をテーマに、
@ 開発途上国での衛生の実態
A バングラデシュ農村における地域ニーズと技術の選択
B 普及にあたっての課題
C 技術支援・技術移転のあり方
などを議論します。
研究発表
 下記の分野から募集します。記載のキーワードにとらわれずふるって応募ください。
@ 下水文化史:下水文化(し尿、トイレ、ごみ、排水、水の使い方、活かし方)の歴史など。
A 下水文化活動:下水文化の普及活動、流域の上下流交流、下水道事業における住民参加など
B 下水文化研究:水環境・水資源・水循環の総合的管理、上下水道事業の経営、民営化など
C 海外下水文化:これまでの海外技術協力の経験、課題、途上国の実状に適した技術、これから技術移転のあり方、海外の水文化・水事情など
・ 発表時間は1件30分を確保できるようにします。
・ 各分野ごとに発表会場を設け、分科会とするものではありません。参加者ができるだけ多くの発表を聴けるように配慮します。
展示コーナー:バングラデシュで導入したトイレの模型、活動記録の写真などを展示します。
申込用紙 (ワード形式)

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「下水文化をみる会」のご案内

日本下水文化研究会

 第9回下水文化研究発表会の開催に併せまして、「下水文化をみる会」を下記の要領で実施いたしますので、会員の皆さまにおきましては会員外の方々をお誘いのうえ、ふるってご参加くださいますようお願い申し上げます。

1.日時; 平成19年11月18日(日)
2.集合時間; 午前10時00分(厳守)
3.集合場所; JR国分寺駅改札口(1箇所のみ)
    目印として、案内人が「下水文化をみる会」と明記した旗を用意する。
4.見学施設;@「ふれあい下水道館」(電話:042-326-7411。無料)
 本施設の地下28mに布設されている下水道管(直径4.5m)を直接体験することができる。
A「玉川上水」(東京都歴史環境保全地域。散策路あり)
 昭和61年、多摩川上流水再生センターで高度処理された下水の再生水が導水され、かつての清流が復活した。
B「江戸東京たてもの園」(電話:042−388−3300
  入館400円(65歳以上200円))
          当日、「玉川上水と分水」が特別展示されている。
5.スケジュール; 
     10:30 ふれあい下水道館
     12:30 昼食
     13:30〜15:00 玉川上水散策
     15:00 江戸東京たてもの園
     16:30 解散
6.費用;  各自負担
7.案内人; 地田修一(090−7816−6299)
       松田旭正
※なお、問い合わせ等は、地田修一(090−7816−6299)までお願いします。                           以上

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第9回 下水文化研究発表会報告

 平成19年11月17日、日本水道会館において第9回下水文化研究発表会が開催され、約50名が参加しました。当日は、木下哲評議員の開会挨拶ののち、セッションI、II に別れての研究発表およびパネルディスカッションを行いました。セッション座長、パネルディスカッション・コーディネーターより報告いたします。



セッションI

地田 修一(本会副代表)

 セッションTは「下水文化史」、「下水文化活動」、「下水文化研究」の広範囲な分野からの発表となりました。

I − 1 江戸の下水奉行について」(栗田 彰氏)

 下水奉行の廃止については江戸の町触に記録が残っているが、ではそれが設置されたのはいつなのかという疑問から端を発した精緻な論考です。下水奉行は、町奉行所の中に置かれ町奉行を補佐して下水の見廻りをする役職で、その配下に下水奉行衆と呼ばれる同心たちがいたと推論しています。

I − 2 近江八幡の近世都市水利(神吉 和夫氏)

天正年間(16世紀後半)に城下町として建設された近江八幡の旧市街に造られた、背割り下水ならびに井戸を水源とし竹管を用いて生活用水を給水した古式水道、それぞれの起源と維持管理について考察したものです。これらの施設の一部は改修、改築を経て現存しており、地域の文化遺産として永く記憶に留めておきたいものです。

I − 3 農民哀史にみる屎尿曳きの実態(地田 修一)

 主要部分が日記体で述べられている「農民哀史」(渋谷定輔著)をテキストにし、大正末における最寄りの駅までの屎尿の購入・運搬の実態を紹介するとともに、この当時の屎尿の肥料としての位置付けを明らかにしようとするものです。渋谷の詩「沈黙の憤怒」の中の、「こんなかぎりない嘲罵と冷笑を浴びながら、内部にさか巻く熱い血汐と魂の憤怒とをじっとこらえて、夜十時過ぎに停車場へ糞尿ひきにいく」の一節が心に深く残りました。

I − 4 寄生虫予防法と、その汚物掃除法および清掃法との関係(稲村 光郎氏)

 大正〜昭和初期における寄生虫予防をめぐる衛生行政の取組みを述べるとともに、屎尿の安全な肥料化への施策展開をあらためて跡付けたものです。屎尿を肥料として利用することの影の部分を克服すべく改善してきた行政側の努力を忘れてはならないでしょう。

I − 5 大規模地震に備えた仮設トイレの整備に関する考察(野村 誉久氏)

 緊急時に必要となる仮設トイレ数の新たな算定法を検討するとともに、マンホールトイレの効果を評価したものです。避難者や帰宅困難者の集中する度合いから必要トイレ数を算定する方法は、不足箇所及び不足数とその対応策の効果を評価するうえで有用な方法であり、また、マンホールトイレの整備は非常に効果的であるが、接続先下水管の地震対策も併せて行うことが不可欠であるとしています。

I − 6 市民ボランティアネットワーク「石津川に鮎を」の発足と活動(木村 淳弘氏)

 下水道ができたら川はきれいになると言ってきた下水道人の立場で、環境関係の様々な市民活動に参加してきた当研究会関西支部の活動の一端を紹介したものです。「川の環境改善は行政だけではできません。市民一人ひとりが川を大事にするという心がけがなければ川はきれいになりません。」という、発表者の言葉には活動者としての重みがありました。

I − 7 水制度改革と下水道(稲場 紀久雄氏)

 これからの50年先を見据えると、下水道という特定の部門だけでなく水資源や水環境をも含めた、水制度全般にわたっての根本的な改革が必要であることを説いたものです。「水制度改革推進市民フォーラム」の活動を通して確認された現状認識を基に、水管理基本法(仮称)の制定、水管理庁(仮称)の創設など7項目の提言を行なっています。

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セッションU

高橋 邦夫(本会運営委員)

 伊藤章夫氏(立命館大学)「発展途上国におけるODA水供給プロジェクトの受益者定性的評価」、中村作二郎氏(伊藤忠林業)「養豚農場の自家用廃水浄化施設」、坂本麻衣子氏(東北大学)「バングラデシュにおける住民の自発的な水環境改善に関する一考察−特に飲料水に着目して−」、Tofayel Ahmed氏(JADE BangladeshOffice)「Water and Sanitation in Bangladesh: AClose View from Socio-cultural Aspect」、高橋邦夫(日本下水文化研究会)「バングラデシュ農村地域におけるエコサン・トイレの導入効果と衛生改善便益」の5編の研究発表がありました。
 これら論文は、安全な飲料水の供給と排泄物の管理に焦点をおいたものであり、地域における衛生改善方策と評価、ひいては水環境改善方策と評価につながるものです。ことに、ODA水供給プロジェクトやバングラデシュに関する論文は、東南アジア・南アジアの発展途上国における衛生問題を扱ったものであり、住民の意識調査をもとに、問題の枠組み、受益者の評価、施策の効果と便益評価などを論じたものです。
 こうした国々で研究目的にかなったデータを取得し蓄積することは容易ではありません。多くの場合、仮説検証型のスタイルをとる場合が多いと思われますが、さまざまな背景を持つ地域や、そこに居住する住民の活動をどのように認識するかという問題の枠組みと調査方法に 常に留意する必要があると思います。また、取得したデータを不用意に加工することなく、十分な配慮が必要となることはいうまでもありません。
 途上国の衛生問題に対する本研究発表会での成果のひとつとして、安全な飲料水の供給と排泄物の衛生的な管理は、水の流れや住民の衛生環境意識を介して一貫したものであるとの認識をもとにした、問題の枠組みの再考と方法論の再構築をあげることができます。従来、下水文化研究会が取り組んできたエコサン・トイレの普及を主としたバングラデシュ農村地域における衛生改善活動に対し、本研究発表会での最大の示唆と言えるのではないでしょうか。
 なお、劉軍・加藤善盛氏(日水コン)「中国水汚染の実態と政策課題−日本人は何をすべきか−」は著者の都合により発表キャンセルとなりました。参加者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びします。

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パネルディスカッション

コーディネーター:酒井 彰(本会代表)

 パネルディスカッションは、本会・海外技術協力分科会が地球環境基金の助成により実施した衛生改善事業が平成18年度で終了し、新たに平成19年10月から2つのプロジェクトがスタートしたことを受け、「生活改善技術と地域社会の受容」というテーマで行いました。技術の選択にあたって何を考えなければいけないか、適用した技術が地域の人や社会に受け入れられるためにはどういうプロセスが必要か、地域の生活環境を改善するためにはさらに何が必要かということを議論しました。参加したパネリストの方々は、村瀬誠氏(雨水市民の会)、山村尊房氏(厚生労働省)、益田信一氏(JICA 地球環境部)、TofayelAhmed 氏(JADE, Bangladesh Office)です。
 村瀬氏は、雨水タンク導入の経験からモノを作るだけでなく、これを社会の仕組みのなかに組込んでいく必要性を指摘され、住民のモーティベーションを高める必要性からトレーニングの場にもなる「雨水村」建設の構想などが披露されました。山村氏からは、膨大な資源が投入されても、すぐに使われなくなってしまうような無駄をなくすためには、計画から管理までを一貫して対応できる人材育成や組織の養成の必要性が指摘されました。
 益田氏は、個別の技術やモノを導入してもなかなか生活改善につながらない事例を紹介するとともに、JICAでは草の根レベルの衛生改善の事業化に向けての調査を大学やNGOとともに進めていることが報告されました。
 Ahmed 氏からは、バングラデシュでは住民のモーティベーションを高める役割を担うべき役人がその責務を果たしておらず、住民教育や啓発はもっぱらNGOに依存されている現状が語られました。途上国では、そうしたNGOがビジネスになっており、パートナーを組むにあたっては、現実を踏まえた注意が必要なことが村瀬氏から指摘されました。
 パネリストが共通して指摘されたことは、技術やモノだけでは地域社会の生活環境改善にはつながらないことです。本会の海外協力活動では、トイレづくりから生活環境全体を視野に入れていくつもりですが、そのためには、地域社会それぞれで、生活習慣や生活の現実そのものをよく知らなければならないと感じました。また、山村氏から指摘されたことですが、日本の縦割り行政は、衛生改善に貢献しにくいところがありますが、本会のようなNGOにもその活動成果を広く開示・伝播していくことが求められると考えています。

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下水文化研究発表会に参加して

北九州高等工業専門学校 上小澤 初馬

 私は昨年の5月ごろから、発展途上国における衛生問題に興味を持ち始め、将来、全ての人々が基礎的な衛生設備(トイレ)にアクセスできるような世界を実現し、人々の生活環境を改善したいと思うようになりました。
 そこで自分には何ができるだろうかと、インターネットや図書館で勉強していたのですが、17歳の今、大学で何かを専門的に勉強しているわけでもなく、何を知ればよいかがわからなくなることがしばしばありました。ならば現地でのプロジェクトに関わっている方に、今の時期私は「何を勉強すればよいか」といったことを直接お聴きしようと思ったのが、今回の研究発表会の参加動機です。
 研究発表会については、日本下水文化研究会ホームページに掲載されていた案内で知りました。しかし九州に住んでいる私にとっては、気軽に参加できるものではなかったので、九州近辺で途上国における衛生問題への取り組みに関する催しがないか調べたのですが、見つからなかったので今回の研究発表会に参加させていただくことに決めました。
 研究発表会では、トイレに限らず下水や衛生に関する幅広い分野における研究について知ることができ、視野が広がる良い機会となりました。分野ごとの分科会とせず、参加者が多種多様な発表に触れることのできるようにするという試みがよかったのだと思います。
 後半のパネルディスカッションでは、主にNPO・NGOによる開発援助の在り方や、どのような形態で実施されるべきかについて議論され、パネリストの方々の経験を踏まえた教訓などを聴くことができました。
 しかし、課題もあるかと思います。パネルディスカッションは、あらかじめテーマが設定されていたとはいえ、前半の各種研究発表のテーマに関連する話題がもっと取りあげられてもよかったのではないでしょうか。普段なかなか接することのない分野の方々が集まって、各々の研究成果を発表し交流する機会なのですから、互いの研究の交流によって何らかの建設的な提案がなされてもいいはずです。それを実現するためには、広報・論文募集の段階からの工夫が必要だと思います。
 また今回は若者の参加が少なく、全体として内輪のための催しだったように感じます。次代を担う若者へのアプローチをもっと積極的に行うことは、途上国の衛生問題に取り組む人材を生み出すきっかけづくりをするためにとても重要です。他の分野で国際協力活動を行っている国内のNGOは、若い世代向けのイベントを開催するなど、積極的なアプローチを行っていて、そのイベントをきっかけにその分野での活動を志すようになった若者は少なからずいます。衛生問題に関する活動を行っている国内の団体も、連携をとりながら若者にアプローチしていくべきではないでしょうか。

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学ぶことの多いすばらしい国 日本
Japan, an Amazing and Exemplary Country

トファエル・アーメドTofayel Ahmed(JADE, Bangladesh)

 11月10日5時半成田空港に到着、霧雨が滑走路を濡らしていた。長い間待ち望んだ日本の地に最初の一歩を踏み出すことができた。入国審査を終え、出迎えに来てくれていた高橋さんと挨拶を交わし、京成線で東京へ向かった。紙幣も硬貨も使える自動販売機、自動で管理されている駅の改札に、日本の技術水準の高さを知った。市ケ谷駅に着いたとき、雨は激しくなっていた。JICA のゲストハウスまでタクシーを使ったが、近距離と私の荷物の大きさからなかなか乗せてもらえない。ゲストハウスのチェックインを済ませ、近くの居酒屋に向かう。高橋さんは、「郷に入っては郷に従え」と言って、すべて日本料理を注文する。私は、宗教上口にできないものだけは注文しないようにお願いするだけだった。そこで、生まれてはじめて「刺身」とゆでた蛸を「飲み込」んだ。それは、ひとつの冒険だった。日本滞在中、さまざまな「日本食」を経験した。それらは、蒟蒻(英語ではa devil’s tongue という)、かき、さば、麺類である。さばは、私たちの国のhilsa という魚に似た味でおいしい。
 次の日、日本下水文化研究会の事務所において、研究発表会で発表する論文について指導を受けた後、横浜にある酒井代表の自宅に招かれた。その途中、車が通っていないにもかかわらず、道路を渡らずに待っている人々を見て奇異に思った。信号が変るのを待っていること知り、規則にしたがって行動する日本人に驚いた。私の国では、絶対にそんな行動はとらない。しばらくして、駅のエスカレータで、横に並んで立った私に酒井代表は、後ろに立つように言った。理由は急ぐ人にスペースを空けなさいということだった。日本人のお互いを思う行動を知るとともに気恥ずかしい思いをした。
 12日は新幹線で京都に向かった。車窓から見える、山、森、海の美しさにうっとりしていた。ことに富士山は、飛行機からも見ることができたが、ほんとうに魅了させられた。京都では、ともに住民からのヒヤリング調査を行っている京都大学大学院の柴田翔さんと清水寺を訪れた。色とりどりの紅葉に彩られた木造の舞台が私の心をとらえた。そして頭が良くなると言われて「音羽の滝」の水を飲んだ。その夜はさらに神戸へ向かい、酒井代表や柴田さんそして明日神戸を案内していただける兵庫県庁の植松京子さん達とインド・レストランで食事をした。
 翌朝、ホテルへ迎えに来てくれた植松さんに神戸を案内していただいた。まず、市役所展望台からポートアイランド、神戸港、六甲山、ロープウェイなどを鳥瞰し、神戸市水の科学館を訪れた。神戸水道が保存しているさまざまな資産を見ることができた。夕方から、流通科学大学へ向かい酒井教授のゼミでバングラデシュの人々の生活について写真を紹介しながら講演を行った。
 東京でも京都でも神戸でも、道路にごみが落ちていないことも驚きだ。分別用のごみ箱がいたるところに置かれ、人々は自分でごみを捨てている。日本人の公共空間に対する責任感はバングラデシュ人よりずっと高い。
 バングラデシュとの違いをもっとあげてみよう。横浜のホテルでのこと、私は、ペットボトルの水があるはずと思っていた。ホテルの人に水は自分で買わなきゃいけないのか聞いてみると、tap water が飲めると言う。水道の水が安心して飲めるということも驚きだ。
 日本では、目の不自由な人、老人、障害のある人、子供を背負った女性、妊婦など社会的弱者の権利が保障されていると思った。目の不自由な人専用のルートが道路にも駅にもある。交差点では、音で信号の変化を知らせている。電車には優先席がある。交通の発達にも目を見張る。私は東京でいかなる交通トラブルにも遭遇しなかった。東京中の地下に地下鉄のネットワークが張り巡らされているようだ。
 雨水市民の会の村瀬さんに「雨水資料館」を案内していただいた際、岸辺を歩いた隅田川にも、その水がきれいだったこと、鳥の多いこと、鳥が人を恐れていないことに驚いた。日本人は自然を大切にしていると思った。
 私の来日の目的である下水文化研究発表会での発表が17日に終わり、その翌日は、かつて修士論文のテーマにバングラデシュを選び、私が現地でお手伝いした福島陽介さん(現・国土交通省)に東京タワーと後楽園遊園地を案内してもらった。後楽園で乗ったローラーコースター、80 度の傾斜を急降下したことは、今でも恐ろしく、忘れられない経験だ。
 日本に滞在した10日あまりで、私は、教育、モラル、法律遵守、秩序、適切な指導力が国の向上にとって重要な要件になることを学んだ気がする。(翻訳:酒井)
 ※トファエルさんは日本滞在中、ここに書かれていない多くの方ともお会いし、お世話になりました。本人になりかわりまして、御礼申し上げます。

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下水文化をみる会報告

小平市ふれあい下水道館、玉川上水を訪ねて

 第9回下水文化研究発表会に併せて、屎尿・下水研究会が主体的に企画した「下水文化をみる会」は、平成19年11月18日(日)に以下の3箇所の施設を見学しました。
 @  小平市ふれあい下水道館:玉川上水の辺にあり、平成7年10月開館。地下5階にあるふれあい体験室から地下28mに埋設されている実物の下水道管(内径4.5m)に入ることができる。
 A  玉川上水:江戸時代初期・1654年に完成した玉川上水は、昭和40年(1965)に淀橋浄水場が廃止されるまで、江戸・東京への飲料水供給の用水路として300年余の永きにわたって機能してきた。その後、多摩川の羽村の取水堰から小平監視所までは廃止された淀橋浄水場の代替として建設された東村山浄水場への導水路として引き続き使用されたが、それより下流は空堀となっていた。しかし、清流復活を要望する都民の声を受け、昭和61年から多摩川上流水再生センターの高度処理水が送水され、玉川上水の中流域は蘇った。
 B  江戸東京たてもの園:玉川上水沿いの都立小金井公園の一画にある、都内各地に現存していた各種建物を移築・修復したうえで展示している野外博物館である。たまたま、ここの展示室で特別展「玉川上水と分水」が開催されていた。
午前10時JR国分寺駅集合ということで、関西支部からの2名の方を含めた総勢17名の老若男女が絶好の小春日和のもと参加。案内は、地元の松田旭正氏(元小平市下水道部、当研究会監事)にお願いしました。
 実は今回、多摩地区の施設見学を企画したのは、多摩地区を主な拠点としている多摩信用金庫が地域文化振興の一環として発刊している『多摩のあゆみ』(第126号、平成19年5月)に「多摩の下水道」が特集され、当研究会の5人が執筆者として依頼されたことがきっかけとなっています。ちなみに、執筆者とタイトルは次のとおりです。
 栗田彰「下水とは何か?−近世絵図にみる下水のかたち」
 ノ下重雄「江戸から明治初期 八王子宿の下水の行方」
 北川知正「多摩川流域における水の利用、排水処理」
 知田修一「下水道がなかった頃のトイレ事情」
 松田旭正「小平市ふれあい下水道館」
 なお、本特集の主論文は、東京都下水道局流域下水道本部・坂巻和男氏の「多摩地域の下水道整備のあゆみ」です。この冊子は1万数千部ほど印刷され、希望者に無料で配布しているとのこと。この度の執筆が縁で、当研究会の名前が多摩地区の人たちにいささかでも記憶していただければありがたいことです。
 「小平市ふれあい下水道館」の地下4階の特別展示室(近代下水道前史)の展示物ならびにその解説の多くは、当研究会が全面的に協力したものです。
 参加者の多くの方が実際の下水が流れている下水道管の中に入るのは初体験。異口同音に「もっと臭いと思っていたが、さほどではなかった。」との感想をもらしていました。講座室では、顕微鏡に接続した映像モニターにより、下水を処理している微生物を拡大して見せていただきましたが、意外と可愛い姿に皆見とれていました。
 昼食後、いよいよ玉川上水に沿って江戸東京たてもの園へと向かう。途中、松田さんからの説明を受けながらの1時間半ほどの散策。玉川上水の本流からの分水の話、その分水を利用しての水車の話、短時間ではあるが舟運があったという話、上水沿いの桜並木の話 などなど。
 たてもの園での特別展では、玉川上水の大きな模型が展示されており、先ほど歩いてきたコースを振り返るとともに、玉川上水の全体像を俯瞰することができました。
 園内の展示建物は20数棟もあるので自由見学ということにし、ここまでで幹事団はお役ご免に。案内役の松田さん、ありがとうございました。

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