仮面のダンス
ティヴァダル・ソロス/著
ハンフリー・トンキン/編
山本明代/監
三田地昭典/訳
2017年6月刊行
定価2200円+税
4-6並製・404頁
ISBN978-4-7738-1710-2 C0036
変化と冒険で溢れている。
ただ、運を味方にしなければならない。
1944年3月から翌45年2月まで、戦況の不利に喘ぐ終末期のナチス・ドイツに占領されたハンガリーの首都ブタペシュト。ユダヤ系ハンガリー人の法律家ティヴァダル・ソロスは、妻と義母、そして二人の息子や親しい友人たちとともに生き延びるために、「仮面」をつけて生活する道を選択した。
極限状態にあっても冷静さとユーモアを失わず、偽造の身分証や隠れ家を求めて繰り広げられる頭脳ゲーム。結果として、家族の全員と数多くのユダヤ人の命を救ったティヴァダルが、濃密な1年弱の経験を語った自叙伝が本書である。
20世紀前半のハンガリーにおけるユダヤ人社会や、これまで日本に紹介されることが少なかったドイツ軍占領下のブダペシュトの様子を克明に描くと同時に、投資家、社会事業家として世界に名を馳せる息子ジョージ・ソロスの思想を育んだ背景も明らかにする。
「この日本語版は、本書『仮面のダンス』の11番目の言語への翻訳である。父ティヴァダル・ソロスが、今や日本の読者に直接語りかけることができるようになったことを、私はとても嬉しく思う。ハンガリーを占領したナチスに直面したときの父の勇気、楽観主義、そして創意工夫によって、私たち家族は生き延びることができた。またこういった父の美点は、生涯を通じて私の発想の源であり、私を鼓舞しつづけてきた。今度はこの本を通じて、きっと多くの人たちを奮い立たせるであろう。」(ジョージ・ソロス)
【著者紹介】ティヴァダル・ソロス(ティヴァダル・ソロス)
ハンガリー生まれの法律家、著述家。投資家のジョージ・ソロス、エンジニアのポール・ソロス兄弟の父として知られる。第一次世界大戦に従軍し、シベリアの捕虜収容所に送られたが自力で脱出。数年をかけて革命期のロシアを通り抜け、故郷ブダペシュトにたどり着いた経験をもつ。従軍中にエスペラントに出会い、1922年にエスペラント雑誌『リテラトゥーラ・モンド』を友人たちと創刊、1924年まで編集長を務めた。ナチス占領期のブダペシュトを生き延びた経験を語った本書『仮面のダンス』(初版はエスペラント出版社J.Reguloから1965年に出版された)に加えて、シベリアの捕虜収容所脱出からブダペシュト帰還までの経験を綴った『現代のロビンソンたち』(1923)やTeo Melas名義での著作がある。1956年のハンガリー動乱に際して米国に亡命し、以後、1968年に死去するまでニューヨークで暮らした。
【著者紹介】ハンフリー・トンキン(ハンフリー・トンキン)
英国出身の英文学者、国際言語学者。ペンシルヴァニア大学、ニューヨーク州立大学などで教鞭をとったのち米コネチカット州のハートフォード大学の学長を務め、現在も同大学で研究、教育に従事する。献身的なエスペランティストとしても知られ、エスペラントの著訳書多数。これまでに世界エスペラント協会の会長を2回務めた。
【著者紹介】山本明代(ヤマモトアキヨ)
名古屋市立大学大学院人間文化研究科教授。ハンガリー史専攻。20世紀における東欧の移民問題を専門とする。主な著書に『大西洋を越えるハンガリー王国の移民—アメリカにおけるネットワークと共同体の形成』(彩流社、2013)、『移動がつくる東中欧・バルカン史』(共著編、刀水書房、2017)、訳書にノーマン・M・ナイマーク『民族浄化のヨーロッパ史—憎しみの連鎖の20世紀』(刀水書房、2014)などがある。
【著者紹介】三田地昭典(ミタチアキノリ)
社会福祉法人電機神奈川福祉センター勤務の傍ら、森川莫人のペンネームでアナキズム関係の翻訳を雑誌やウェブサイト上で行う。主な訳書に『問題行動解決支援ハンドブック』(共訳、学苑社、2003)、『アナキズム読本』(共訳、『アナキズム』誌編集委員会、2006)、『アナキズムの展望』(『アナキズム叢書』刊行会、2014)がある。