『革命』『落盤』の短篇二本を皮切りに、1966年、初の長篇『ウカマウ』を製作。これが、大衆の圧倒的支持を得たことから、そのタイトルをそのまま集団名とした。以来、アンデス地域の先住民(インディオ)を主題とし、彼らの母語であるアイマラ語やケチュア語の作品を製作している。

69年『コンドルの血』を米国の告発を目的とした反帝国主義映画として製作。71年、『人民の勇気』撮影後、軍事クーデターによって亡命を余儀なくされ、その時、国内派とに分裂する。ペルーやエクアドルに亡命中にも、現地の映画人の協力で『第一の敵』『ここから出ていけ』を製作した。

82年の文民政権樹立後、ボリビアに帰還し、初のドキュメンタリー『ただひとつの拳のごとく』を製作する。のち、特異なワンシーン・ワンショットに基づいた死と再生の物語『地下の民』を撮り、ついで、95年に『鳥の歌』を完成させた。

映画製作に固有のヒエラルキーを拒否し、一貫して人民の自由な参加に基づいた集団製作を続ける。現在、アンデス映画学校を設立し、インディオの映画人育成にもつとめている。著書に『革命映画の創造』がある。

来日ゲスト

ホルヘ・サンヒネス
1937年、ボリビアに生まれる。チリの大学で映画技術を習得してのち帰国し、62年の短篇『革命』を皮切りに、ウカマウ集団の長篇8本・短篇2本の製作に監督として参加。ラテンアメリカの新しい映画運動の代表的な監督のひとりで、伝統的映画文法の解体、集団的創造、先住民族文化の重視などに象徴される独自の視点が注目されている。

ベアトリス・パラシオ
ボリビアに生まれる。70年代前半からウカマウ集団に参加し、プロデユーサーとして働く。近年には脚本も書き上げ、製作資金の準備ができれば監督も担う予定。

ウカマウ集団を迎えて―太田昌国

私たちの世代にとって、ボリビアとはチェ・ゲバラが死んだ土地だった。ゲバラの死から二年後の忘れがたい米国映画「明日に向かって撃て!」のブッチ・キャシディとサンダンス・キッドが最後に流れついた土地だったと言ってもいい。あくまでも外部からの視線で眺めていて、疑うことがなかった。

そんな私たちが、ゲバラの死から八年後、いまから25年も前に、ボリビアの映画グループと、同じアンデス地域のエクアドルで会った。その映画を観ると、先住民族が主体となる、別なボリビアの貌が見えてきた。何かひとつのことを激しく想う青年期を過ぎようとしている時期、そのひとつをなお大事だと思いつつ、それだけではおさまらない多様な貌つきを持つ世界を知った。

今回来日するのは、その強力な媒介者であったウカマウ集団の監督とプロデューサーである。「ただひとつの」形には収まりきらない、多様な出会いが、このオリエントの地で生まれるといい。

12/16●土よりシネマ・下北沢にて『地下の民』『鳥の歌』2作同時ロードショー!
同時開催:全作品回顧モーニングショー上映
『革命』『落盤』『ウカマウ』『コンドルの血』『人民の勇気』『第一の敵』(ニュープリント)
『ここから出ていけ!』 『ただひとつの拳のごとく』

★「ボリビア・ウカマウ集団の軌跡」10月刊行予定(現代企画室)

*前売り券はチケットぴあにてお買い求め下さい。
主催:シネマテーク・インディアス 共催:アテネ・フランセ文化センター(14日)
協力:現代企画室/スタンス・カンパニー/ムヴィオラ 助成:

お問い合わせ:現代企画室 Tel.03-3293-9539/ムヴィオラ Tel.03-5366-1675
*来日ゲスト、上映作品はやむを得ぬ事情により、変更する場合があります。
“ウカマウ集団:観客との対話” 2000年10月7日[土]
会場:カンダパンセホール(水道橋)入場料:前売2,000円(当日2,300円)
14:00 
第一の敵 Jatun Auk'a(74)*ニュープリント
ホルヘ・サンヒネス監督/16mm/110min
●農民のための一つの媒介となるという目的から、農民が集団的主人公として登場し、事態の推移そのものに観客が参加できるように作られている。農民たちの農園主への反乱、ゲリラ部隊と農民の共闘、人民裁判、既成の秩序の打破により現われる第一の敵・ヤンキー帝国主義。最後には農民たちの政治的自覚が象徴される。

16:00
地下の民 La Nacion Clandestina(89)
ホルヘ・サンヒネス監督/35mm/125min
●街に暮らしていた先住民セバスチャンは生まれ故郷の村に戻る決意を固める。彼はかつて、理由あって村を追放され、そこに戻ることは死を意味していた。「死の踊り」を象徴する大きな仮面を背負って彼は帰郷への旅を急ぐが…。現実と虚構、過去と現在が大胆に入り混じり、世界を驚愕させた伝説的作品である。

18:30―20:30 監督ホルヘ・サンヒネス講演と観客との対話(ティーチ・イン)
進行:太田昌国
●1943年生。ラテンアメリカ滞在時、ウカマウ集団と出会い、シネマテーク・インディアスの前身である「第一の敵」上映委員会メンバーとして日本での自主上映運動を開始する。以後も全作品の上映を手がけ、現在は、共同製作も行う。

あああ

“ウカマウ集団に聞く” 2000年10月14日[土]
会場:アテネ・フランセ文化センター(お茶の水)
入場料:前売2,000円(当日2,300円)/
アテネ・フランセ文化センター会員、映画美学校受講生は当日2,000円
13:00 コンドルの血 Yawar Mallku(69)
ホルヘ・サンヒネス監督/16mm/85min
●北米人によって組織された援助組織「平和部隊」の婦人科施設が、アンデス地域の農村女性に対して、本人の承諾を得ないまま不妊手術を施していたという犯罪的行動を告発している。発表当時、J.L.ゴダールは「人々を革命的行動に動員する映画」と評した。

14:40 鳥の歌 Para Recibir el Canto de los Pajaros(95)
ホルヘ・サンヒネス監督/35mm/104 min
●ボリビアのある映画集団が、16世紀スペインによる「征服」という歴史的過去を批判的に捉える映画を製作しようとするのだが、撮影地である先住民の村に到着した一行の振る舞いは、思いに反して村人との軋轢を生んでゆく。『コンドルの血』撮影時に彼らが実際に体験したことを下敷きに、新たな境地を見せた最近作。

16:45―18:00  ウカマウ集団:監督ホルヘ・サンヒネスに聞く 
聞き手:鵜飼哲
●1955年生。一橋大学助教授。大学在学中、関西ラテンアメリカ研究会でウカマウ集団の上映運動に携わる。アクチュアルな知識人としてフランス文学、思想の翻訳にとどまらない、幅広い活動を展開する。

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