(c)落合由利子
4万人近い外国人が暮らす埼玉県川口市は、日本で最も外国人人口が多い自治体だ。クルド人の集住地域でもあり、その数、約2000人。難民として逃れてきたトルコ国籍者が多い。 単一民族を国是とするトルコで差別や迫害を受けるクルド人は、諸外国では難民認定率が4割を超えるが、日本ではいまだに認定ゼロ。そんな理不尽を強いられるクルドの子どもたちや母親のために、「クルド日本語教室」(寺子屋)を開いて日本語教育から生活全般の支援に奔走しているのが小室敬子さんだ。 コロナ禍のワクチン接種では、情報を拡散してほしいと保健所からも連絡が来るほど、クルド・コミュニティーとの橋渡しとして信頼されている。
最初の一歩は30代の頃。 「娘の幼稚園にフィリピン人のお母さんがいて、園からのお知らせが読めずに困っていたので、英訳してあげたんです。そしたらとても喜ばれて。小学校ではブラジルの2世、3世が増えて、子どもたちの宿題を見てあげるようになり。根が、おせっかいなんですね(笑)」
東日本大震災の経験も大きかった。東京都心の六本木の勤め先から帰宅できず、子どもだけで夜を明かすことに。「もっと近くで、もっとやりがいを感じられる仕事がしたい」。そう思った矢先、地元川口での日本語教師のボランティア募集に目が留まった。 見学した次の週には「今日から教えて」と言われ、絶句。 「それでもやり始めたらめちゃくちゃ面白くて」、中国人の中学生から高校選びがわからないと聞けば、一緒に高校見学に行き、受験に付き添い、都内の会社勤めと二足のわらじで頑張った。そして早期退職し、日本語教師の養成学校へ。 ところが「宿題は多いし、模擬授業をすればダメ出しばかり。先生に怒られ通しで、学校に行きたくなくて、泣きました」
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