フォークゲリラの熱気をもう一度!
ベトナム戦争の反戦運動が日本でも盛り上がっていた1969年。東京・新宿西口広場に歌声が響いた。「フォークゲリラ」と呼ばれた若者たちだ。
その中に「新宿ローザ」と呼ばれた小柄な女性、大木晴子さんがいた。
あれから45年。忌まわしい足音が近づいてきた今、大木さんは再びあの場所に立っている。
ギターではなく自作のプラカードを持って。
69年2月、出版社に務めていた20歳の大木さんは、赤いビニールケースに入ったギターを抱えて新宿西口広場へ向かっていた。「ベトナムに平和を!市民連合」(べ平連)の若者たちの歌による反戦運動=フォークゲリラに参加するためだ。
「私が弾けるのは岡林信康の『友よ』だけ。でも歌う人、話す人がいて、広場に討論の輪がいくつもできて、ほんとうに熱気がありました」
当時、べ平連は若者たちを中心に広がりがあり、最盛期には全国に「ひとりべ平連」も含む360ものグループがあったという。音楽や芝居などを通じて非暴力で反戦平和を訴えた。毎週土曜日に広場をステージに変えたフォークゲリラも、そのひとつだった。
「あの時代、終電に乗ると周りもベトナム戦争や社会の話をして、いっしょに西口にいたおじさんが『遅いから気をつけて帰りなよ』。そのおじさんが家に帰るとおばさんが『あんた、また西口行ってたの?』と言いながら話を聞くというあったかい情景が浮かぶのね。そんなゆとりがいまは社会にないのかもしれない」
ところが広場は「通路」に替えられ、7月には仲間たちが道路交通法違反で次々と捕まった。そのたびに抗議の参加者が増え、数千人規模に。大木さんも逮捕され、4日間留置された。
続きは本紙で...
おおき せいこ
1949年東京都生まれ。ベトナム戦争反対運動「べ平連」が行った新宿西口広場のフォークゲリラに加わる。2014年6月15日、新宿書房より『1969新宿西口地下広場』(DVD付き) を出版。詳しくはhttp://seiko-jiro.net/