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ふぇみんの書評

奥さまは愛国

北原みのり、朴順梨 著

  • 奥さまは愛国
  • 北原みのり、朴順梨 著
  • 河出書房新社1400円
東京・渋谷駅前でベビーカーに乗せた子どもに日の丸を振らせ、「従軍慰安婦はウソ」と街宣する女性。ヘイトデモで「平壌を火の海にする」と叫ぶ女性。そんな「愛国女性」が増えているという。分かりやすい言葉、手作り感たっぷりの運動。どこかかつての女の運動との既視感を感じながら、フェミニストの北原と在日コリアン3世の朴が愛国女性たちに迫った。  登場する愛国女性たちは、シングルマザーだったり、主婦だったり、語学堪能で中国駐在経験のある会社員だったりする。共通するのは日本の男への信頼と、女は弱者ではない、「弱者ぶる輩」への憎しみだ。そこに北原は、女たちの日本社会への絶望の深さをみる。それは、「サヨク的建前の完敗」とも。  ヘイトデモへのカウンターなど、この社会で起きていることをやり過ごさない人たちの存在で自分の属性を肯定できたと言う朴。自分の言葉で世界を紡ぐことの重要性を説く北原。ここにかすかだが確実な希望の光をみた。(登)

ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件 〈ヘイトクライム〉に抗して

中村一成 著

  • ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件 〈ヘイトクライム〉に抗して
  • 中村一成 著
  • 岩波書店1800円
  いま日本で起きているヘイトデモは、それを行う在特会など加害者側の、過激で、耳をふさぎたくなるような下品な言葉や行動に目を奪われがちだ。が、本書は被害者側を丁寧に取材したルポだ。  2009年12月、在特会などのメンバーは、京都朝鮮第一初級学校(当時)の校門前で、拡声器で罵詈雑言を周囲に浴びせた。怯える生徒、必死で生徒を守り、事態に対応する教員や保護者たち。子どもたちの被害の大きさははかりしれないが、保護者や教員も傷つけられ、学校も様々な損害を受けた。被害者たちは何度も話し合い、裁判に訴えることを決意。13年、被害の認定に人種差別撤廃条約に照らした、民事訴訟の画期的判決が出るまでの、勇気ある闘いの記録でもある。  本書は、排外デモを簡単に認める警察や、「在日」に対し排除と同化政策を続ける政府、市民の悪意と敵意、無関心の姿も炙り出す。怒りの涙が止まらなかったが、力が湧いてくる一冊だ。(り)

原発の倫理学

古賀茂明 著

  • 原発の倫理学
  • 古賀茂明 著
  • 講談社1400円
 3.11直後、「アスベストが大量に飛散しているから、被災地に行くならマスクとゴーグル必携」というアドバイスが記憶に残る。  元経産官僚によるメルマガを再編集した脱原発論。当初、規制緩和や民営化を唱える「構造改革派」の著者が、タイトルに「倫理学」とつけたのは意外に思えた。  「カネよりも命」と訴える反原発派もいて、著者のいうとおり、「倫理」を語れば「感情的」とレッテルを貼られかねない。だから金子勝のような経済学者は、あえて「脱原発した方が経済発展する」という語り方をする。  小泉元首相も都知事選の応援で「脱原発による発展」を提唱していた。ただ、彼らの活動の背景には、原発事故をきっかけに「人の生き方」や「倫理」への目覚めがあったと著者は解釈し、脱原発における「倫理」を強調する。  原発は倫理的に許されないという立場と、倫理とは切り離して電力規制改革を進めるべきだという立場。両者が行き着く到達点に大差はないのだと著者はいうが、金子とは逆の方向から、両者をつなげているように見えて興味深い。(道)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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