関西障害者運動の現代史 大阪青い芝の会を中心に
定藤邦子著
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- 関西障害者運動の現代史 大阪青い芝の会を中心に
- 定藤邦子著
- 出版社:生活書院 価格:3000円
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「愛と正義を否定する」などの言葉を生みだした脳性まひ者の「青い芝の会」。だが、着替え・トイレ・食事など生活すべてに介助が必要な重度障害者が、親元や施設でなく「地域で暮らす」ことがどのように実現されてきたのかについてはあまり知られていない。
1970年代の関西で、映画『さようならCP』の上映運動、映画製作運動を契機に新しい動きが起こる。在宅重度障害者への「こんにちは訪問」など、地を這うような運動を通して、重度障害者が地域に出始め、必然的に健常者も深く運動に関わっていく。制度も理解も何もない社会で、彼らは様々な壁につきあたり葛藤したが、後戻りせず進んできた。大衆的な自立生活運動の広がりと定着。その実際を、本書を通して知ってほしい。
カリスマがいるわけでない、群像劇のような運動だが、この歴史を知ることは今の私たちに確かな希望を与えてくれると思う。豊富なインタビューや記録が当時の空気を伝えてくれる。(め)
ホロコーストを知らなかったという嘘 ドイツ市民はどこまで知っていたのか
F・バヨール、D・ポール著 中村浩平、中村仁訳
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- ホロコーストを知らなかったという嘘 ドイツ市民はどこまで知っていたのか
- F・バヨール、D・ポール著 中村浩平、中村仁訳
- 出版社:現代書館 価格:2200円
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第2次世界大戦中にユダヤ人を粛清した、戦慄のホロコースト。多くのドイツ人は今でも「知らなかった」と口をつむぐが、本当なのだろうか。著者が大勢の市民から聞き取り、検証した本である。ホロコーストの萌芽は、1933年ごろにはすでにあった。世界恐慌のあと、裕福だったユダヤ人に反感を持つ人が増え、小学校でもユダヤ人生徒へのいじめが始まった。街角で検挙されるユダヤ人の姿が当たり前となり、やがてシナゴーグの焼き討ちや強奪したものを競売にかける風景が、「当たり前」のものとなった。密告が奨励され、国家への貢献にすりかえられた。「排除されるべき人たち」がナチによってガス室に送られたときでさえ、市民は見て見ぬふりをし、大きな非難は巻き起こらなかった。戦後、国際社会から非難されたホロコーストを、全面的にナチの責任とする多くのドイツ市民がいた。だが、追認したものたちの罪は?これは私たち日本人にも、問われるべきことだと思う。(室)
- ホワイトエレファント
- 出光真子著
- 出版社:風雲舎 価格:1800円
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女であるが故に、父に疎まれて育った、弘子・映子・房子・咲子の四姉妹。まだ海外旅行さえ珍しかった時代、弘子はニューヨークで画家を目指し、咲子はロサンゼルスで国際結婚を選ぶ。
強くあろうとして、常に論理を優先させる弘子。強くなれずに悩む、「ノー」と言えない咲子。
姉妹の物語は、戦前・戦中・戦後、そして、カウンターカルチャー全盛の60年代を疾走する。
家父長制に支配された家で、互いの存在を認め合えぬまま、心の距離を埋める術を見失ってしまった姉妹たち。
根深い感情の澱を溶かしたのは、咲子が初めて口にした、自分の意志を貫くための言葉だった。
ラストの一言は、「シスターフッドの原点」として優しく深く読む者の胸に迫る。
世界的映像作家である著者が、自らの表現への希求と家族の葛藤を活写する、フェミニズム萌芽期を舞台にした女の成長の物語。
熱い息吹と爽やかな余韻が快い「シスターフッド小説」。(平)