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ふぇみんの書評

学校教育の中のジェンダー子どもと教師の調査から

直井道子、村松泰子 編

  • 学校教育の中のジェンダー 子どもと教師の調査から
  • 直井道子、村松泰子 編
  • 出版社:日本評論社 価格:2,800円
 学校現場の男女平等教育は、2000年前後からジェンダーバッシングがあったが、最近どうなっているのだろうか? 本書は教員養成を行う東京学芸大学の教員を核に、小中学校のジェンダーに関する実態を明らかにしようと05~06年に行った研究結果を中心にまとめたものだ。4地域で児童・生徒2692人、教師665人に及ぶ調査を行っている。
 調査結果では男女が希望する職業の違いなど、ジェンダーの偏見は依然として見られるが、女子のほうが「将来の夢や目標」を持っており、様々なところで変化している面も見られる。「女子に比べ自分の気持ちをはっきり言えない」男子は、我慢を他者への暴力で一気に爆発させる傾向がある。これは「弱みは見せられない」男子への社会的な圧迫というジェンダーの問題だ、との指摘は今日的な課題として説得力がある。現職教師の「男女特性論」は未だ根強く、ジェンダーに敏感な教師を育成することの重要性を改めて思った。(み)



いのちに贈る超自立論すべてのからだは百点満点

安積遊歩 著

  • いのちに贈る超自立論 すべてのからだは百点満点
  • 安積遊歩 著
  • 出版社:太郎次郎社エディタス 価格:1,600円
 なぜ著者の言葉はこんなにも強烈なパワーをもって胸に迫ってくるのだろう。
著者は「骨形成不全症」という「特徴」を持ち、「虐待」以外の何ものでもない医療介入と社会にはびこる優生思想や差別から、自分のからだと心を豊かに取り戻すたたかいを続けた。支えたのは「自分のお尻を自分で拭かなくてもいい」(自己決定権を行使できるのが自立)とする自立生活運動や、感情や涙を徹底的に聴き合う再評価カウンセリング。そして今、自分と同じ「特徴」を持つ娘とパートナー、仲間たちと共同生活をする。 
 何より「たったひとつの私のからだと心」を取り戻した著者だから、自分の存在の確かな手応えを軸にあらゆるいのちを真っすぐに、深く、やさしく見つめる。娘はもちろん、フィリピンの貧しい子どもたち、出生前診断で捨てられるいのち、環境破壊で失われる生き物たち。いのちは「サンクチュアリ」だという著者の力強いメッセージが詰まっている。(登)



家族を超える社会学新たな生の基盤を求めて

牟田和恵 編

  • 家族を超える社会学 新たな生の基盤を求めて
  • 牟田和恵 編
  • 出版社:新曜社 価格:2,200円
「一対一の男女の対の関係(とその子ども)」という核家族的関係ではない人々の新たなつながりから築きうる「家族」の可能性とは。性愛や血縁のみを家族・親密さの基盤とする必要はないのではという問題意識から「家族」のつながりの根拠と可能性を論じる。
 多くの論者がマーサ・A・ファインマンの「ケアの絆」論をよりどころとし、カップルではなく母(ケアする側)と子(ケアされる側)関係を法的な保護の対象とすべきだという。牟田はオルタナティブな「家族」を構想し母と父の非対称性にも言及。
 また若者に浸透する「シェアハウス」やステップファミリーなどの調査から「家族」を逆照射。前者には「家族の甘えを忌避しつつ独りでは得られない『寂しくない』感覚」があるという。家族に求める「アイデンティティ欲求」の代替ができうるのかという山田昌弘の提起も価値がある。
 「家族のオルタナティブ」と題する日本家族社会学会シンポジウムをもとにした論集。(衣)





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