- 子どもの貧困 日本の不公平を考える
- 阿部彩 著
- 出版社:岩波新書 価格:780円
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すべての親は子どものために一生懸命に「温かい家庭」を築こうとするのであろうが、親の年収によって子育ての環境は大きく異なる。本書はデータでそのことを明らかにする。「子どものことでの相談相手が家族の中にいない」とした親は年収200万円以下では20%、1000万円以上では0%。
最も不利な立場の子どもとして、著者は、母子世帯の子どもたちをあげる。 日本の母子世帯の母親は長時間労働で低収入、子どもが親と過ごす時間が少ない。母子世帯の母の平日の育児時間はなんと46分。共働きの母でさえ、113分あるのに。より手厚いケアの必要な子どもは放置される。だからシングルマザーに「もっと働け」という就労支援策の誤りを指摘する。
学歴と貧困、子どもにとっての必需品とは何かのデータも興味深い。
著者はいくつかの処方箋を示し、その中には給付付き税額控除もある。イギリスやアメリカなどで導入されているが、誰にでも給付が行え、子どものいる世帯全般をターゲットにできるという。
本書を活かした政策論が成立することを切に期待したい。(衣)
- 生きる 大阪拘置所・死刑囚房から
- 河村啓三 著
- 出版社:インパクト出版会 価格:1,700円
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著者は、1988年に「コスモリサーチ事件」を起こし、2004年、死刑が確定した死刑囚。本書は、死刑廃止のための大道寺幸子基金第3回死刑囚表現展(2007年)の奨励賞となった作品をもとに、加筆・改稿されたものである(前作は第1回表現展優秀作品)。
被害者の体のぬくもりや絞め殺す時の手の感触を忘れることができないという著者。犯した罪に苦しみながら人生を問い直し、死刑執行された仲間や世話になった刑務官を思い、彼らの足跡を残そうとする。また、囚房の様子や死刑囚の生活を細かく綴る。不衛生な囚房、外部交通(面会、信書など)の厳しい制限…。長期間独房に入れられる死刑囚は「拘禁反応」から心身を病む人も多いという。死刑確定者にも労働を義務付け、被害者に賠償金を支払えるシステムづくりを提案するなど、収容者の環境や人権、賠償の問題など、考えさせられる点も多い。
いつ死刑執行されるか分からない日々の中で、懸命に生き、自らの人生を意味づけようとする著者の強靭な精神力に驚く。議論もあろうが、著者には生きて償いを続けてほしい気持ちがわき上がった 。(り)
六ヶ所村ラプソディードキュメンタリー現在進行形
諸橋泰樹 著
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- 六ヶ所村ラプソディードキュメンタリー現在進行形
- 鎌仲ひとみ 著
- 出版社:影書房 価格:1,500円
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映画『六ヶ所村ラプソディー』は著者監督による、青森県にある六ヶ所村核燃料再処理工場の問題を描いた作品。完成以来日本内外で500回以上の上映会が開かれ、今まで「運動」や「政治」と距離のあった若い世代を中心に「六ラプ現象」と呼ばれる「新しい市民運動」が広がった。本書は同映画の制作ドキュメント。「傍観者」から「当事者」になり、自分の生きる場所でムーブメントを起こしている市民のコラムもある。
著者が目指したのは再処理工場をめぐる推進派や反対派の立場を、「色分け」せずに「公平」に伝えること。推進派と反対派で村が二分し、双方が心の傷を負い、双方とも「本当に理解されていない」と感じていたからだ。それゆえ双方から批判も受けたが、著者は制作の過程を開き、コミュニケーションの場をつくるために、撮影過程をビデオレターで公開してきた(『六ヶ所村通信』)。その手法によって、映画が多くの人の心に柔らかく確実に届いたのだろう。
シカゴ大学教員のノーマ・フィールドさんとの対談も。「手垢のついた」政治をいかに取り戻すかの議論もある。(登)