立ち読み: ポーンセンターブックレットシリーズ No. 1

「地域通貨の可能性: ピーナッツ実践報告」

村山和彦・塚田幸三著

コラム1 「ピーナッツ」試行錯誤

「ピーナッツ」の運営に当っての試行錯誤は現在も続いています。そして、楽しく皆で試行錯誤を続けられることが、「ピーナッツ」の活力でもあり、また働きでもあるのような気がします。

「ピーナッツ」は、1999年2月14日の特定非営利活動法人(NPO)千葉まちづくりサポートセンターの設立総会を機に、NPO会員とNPO事務局間で試験的運用を始めました。最初は小切手型でした。そのうち、6月になって急にマスコミの取材が来るようになりました。それほどの実績でもないのに何事かと元を辿ったら、加藤敏春氏の取材に行った記者が紹介されたり、5月にNHKのBSで放送された「エンデの遺言」の影響でした。新しいまちづくりの手法としてもさることながら、市場優先の競争社会に対抗するシステムとしてマスコミの興味を惹くようになりました。当初から段階を追って小切手型のNPO会員とNPO事務局間だけの仕組みから、本来の地域通貨の機能が発揮できる形に移行する予定ではありましたが、「エンデの遺言」のお蔭で急ぐことになりました。最終的にどのような形式の LETS を目指せば良いのか模索していましたが、最終形態はスイスの WIR BANK (ヴィア・バンク)方式ではないかと見当をつけました。そして、そこに至る過程で使うべきツールは何か考えました。

アメリカのイサカアフーズの様に通貨を印刷して流通させる方式、多角的に利用できる小切手型、デンマークのような交換リング通帳型、どれがよいかいろいろ調査しました。先ずイサカ方式については、日本では贋金作りに対す…

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〈感動の爆発〉「今までは、近所の店の人と話しをすることもなかった。それが、商店会ができて変わり始め、「ピーナッツ」の導入でさらに大きく変わってきた。予想外のことが爆発的に起きている」と海保さんは驚いています。その一つが「ピーナッツ」の縁でできた野栄町とのつながりです。2000年8月のゆりの木商店会の夏祭りには野栄の皆さんも参加し、有機野菜、有機肥料、健康タマゴなどが「ピーナッツ」を使って売買され盛況でした。そして、有機栽培のお米を使っての餅つきには、それこそ懐かしい昔の杵柄をとる人、子供にみせたい、やらせてみたい人などが次々と現われ、できたてのお餅を待つ大人と子供の長い列もできました。事前に打ち合わせたのではなく、皆が自然に集まり自主的に手伝い合いました。大きなお祭りにくらべるとほんのささやかな規模ではあるけれど、懐かしいお祭りの原風景だったように思います。野栄とのつながりは、それから様々なかたちで発展しています。ピーナッツクラブに参加するお店も一気に増え、後述する福祉施設などとのつながりもでき、マスコミ報道などを通じて日本各地とのつながりも次々とできてきました。「ピーナッツ」がゆりの木を開放したともいえるのではないでしょうか。

海保さんはまた、「市とも今までは接触が少なかったが、「ピーナッツ」を契機によい関係ができてきた」といいます。市民と行政が同じ土俵でますます密接に協力しあうということが、時代の要請てしょう。この面でも「ピーナッツ」は既に一役買って出てくれたわけです。「ピーナッツ」はなんだか魔法の杖のような感じになってきました。でも、「ピーナッツ」を使い、活かすのは私たちです。現代という時代の中で心身ともに疲れ果て…

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第三章健康な農業生産の町−野栄

(前ページより)

NP0の総会では、いきいき農業塾の皆さんとNPOの会員が一緒になって、「野栄の環境共生型農業を地域づくりに活かしていくには」というワークショップも開催され、延藤代表を交えて、正しくいきいきとした一時がもたれました。

NPOの総会は磯料理のなぎさ旅館で行われましたが、ご主人の唐鎌さんは総会開催に当っての面倒な調整役を快く引き受けてくださり、地域のコーディネーターといった方です。ご夫人を初め家族、従業員の方々がとても気持ちよく対応してくださいました。

地域の振興には行政の役割が重要なことはいうまでもありませんが、野栄町役場では、企画課長の鈴木さんを初めとする関係職員の皆さんの前向きな取り組みが印象に残りました。事前の打ち合わせのほか、総会のプログラムにも積極的に参加してくださいました。もちろん、「ピーナッツ」プログラムにも参加されました。

二「ピーナッツ」勉強・体験プログラムとその後

「ピーナッツ」勉強・体験プログラムは、6月11日の午後、なぎさ旅館で行いましたが、前日からわざわざ泊りがけで参加してくださった地域通貨の権威の森野栄一さんやゆりの木商店会長の海保さん、そして成東町と東金市からの参加者も加えて、30人を越す人たちが参加しました。まず、村山が簡単に地域通貨および「ピー…

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