第3期「国境を越える運動と模索」

第1回

「移住労働者教育プログラム日米比較

労働組合の参加とコミュニケーションの違いを巡って

講師:ジョン・マクラフリンさん(全国一般東京南部執行委員、APWSL日本)

 3月16日、第3期連続セミナー「国境を越える運動と模索」の第1回目が開催された。講師は全国一般東京南部の執行委員で、APWSL日本のメンバーでもあるジョン・マクラフリンさんであった。
 ジョンさんは12年にわたる日本滞在を終え、米国に帰国する直前の講演であり、日本の仲間への置き土産でもあった。ジョンさんはまず日本に来てからの自分の運動の歴史を振り返った。95年に大阪のYMCAで英語を教え始めたが、運動に係わるようになったのは東京に来てAPWSLと係わるようになってからであった。その後、国際労働研究センターで外国人労働者の研究に係わったり、全国一般東京南部の組合員となり東京外語専門学校の争議に参加するようになった。しかし、研究者という立場で係わることに満足せず、99年からは東京南部の大学教師組合の委員長になり、KTUF(関東語学教員組合連絡会)の活動を担ってきた。
 その中で感じてきた問題は、外国人組合員に充分な情報提供がなく、外国人組合員が積極的に組合運営に参加し、意思決定に参加する仕組みが欠けている点であった。ジョンさんは外国人を組織する日本の組合への提言として、母国語での情報提供、外国人組合員交流と参加の場の確保、バイリンガルな外国人のオルグ養成などを挙げた。そしてこれらの提言を「移住労働者のための教育プログラム」の提言と位置付けた。
 労働者教育というと、日本ではあまり良いイメージがなく、系統的に行われていないが、ジョンさんはアメリカの大学での労働者教育の具体例を挙げて、我々のイメージを変えてくれた。二つの具体例の内の一つは、ジョンさんが帰国後勤めることになるミシガン州立大学の労働研究センターであった。女性労働者やラテン系労働者の活動家養成のための講座があり、多くの組合員が組合費で参加して実践的な教育・訓練を受けている。
 ジョンさんの講演は「移住労働者教育プログラム日米比較」と題されており、題名を見ただけではその主旨が分かりにくかった。しかし、アメリカでの具体的な取り組みを聞き、そこにジョンさんが参加していこうとしていることを聞いて「国境を越える運動と模索」と銘打った講座の第一回にふさわしいものであることが実感できた。

12年間の仲間・ジョンさんの送別会

 講座終了後、場所を移してジョンさんの送別会が行われた。ジョンさんの誠実な人柄が旧い友人と新しい友人を結び付け、95年以来の首都圏でのAPWSL活動を振り返る場ともなった。アメリカに帰っても日本との関わりを続けてもらいたという気持ちをこめて、講演料の代わりに記念品として国語辞典が参加者一同から贈られた。

             

第3期 連続セミナー「グローバル化と労働」